『ドラえもん のび太の宇宙開拓史』(ドラえもん のびたのうちゅうかいたくし)は、藤子不二雄名義で発表された漫画作品(1980年8月連載開始。のちに「大長編ドラえもんシリーズ」として単行本が発売)。および、この漫画を原作として作られたドラえもん映画作品(1981年3月14日公開)。大長編漫画、映画ともに第2作。
漫画は藤本弘(のちの藤子・F・不二雄)による単独執筆作品。
部屋の畳の下と宇宙船のドアが超空間でつながったことから、開拓星・コーヤコーヤ星へ行けるようになったドラえもんとのび太達の活躍を、この星の少年・ロップル達との友情を絡めて描いた長編作品。
以下では漫画作品を基準に記述する(アニメ映画のみの事柄の場合はその旨を明記する)。
ドラえもん のび太の宇宙開拓史(連載) | |
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漫画 | |
作者 | 藤子不二雄 |
出版社 | 小学館 |
掲載誌 | 月刊コロコロコミック |
発表期間 | 1980年8月 - 1981年1月 |
話数 | 6 |
その他 | 全171頁(扉6頁を含む) |
テンプレート - ノート |
1980年(昭和55年)9月号から1981年(昭和56年)2月号まで、『月刊コロコロコミック』に連載された。全6回。
1980年9月号にて連載が開始された時点でのタイトルは「ドラえもん のび太の宇宙開拓史」。扉には煽り文句として「超新作!! 大長編!!」と記載されているのみで「大長編ドラえもん」というシリーズタイトルは掲載されていない。
同年12月号(連載第4回)で映画化が発表され、扉には「映画化決定!!」の煽り文句が記載された。
1981年2月号(連載第6回)ではじめて扉に「映画原作」と記載された。
連載期間は前作『ドラえもん のび太の恐竜』の倍の6か月となり、夏に始まり翌年春に終わる形式となった。
前作は過去の短編に加筆する形で執筆されたが、本作は全編描き下ろし。次作以降のシリーズ作品も完全新作が基本となる。ただし、似た内容の短編が存在することが多い。本作はSF短編『ベソとこたつと宇宙船』(1978年12月)、『ドラえもん』の短編「行け! ノビタマン」(1979年8月の初出時は「ノビタマン」。てんとう虫コミックス21巻収録)、「ガンファイターのび太」(1980年3月の初出時は無題。てんとう虫コミックス24巻収録)の要素が多分に含まれている。その要素は、下記の3つに分類できる。
『ベソとこたつと宇宙船』でのコタツと宇宙船のハッチが繋がるという描写は、畳と宇宙船のドアが繋がるという本作の描写と類似している。
重力が弱い異星でのび太が力を発揮するという展開は、本作の発表以前にも「行け!ノビタマン」や、1980年モスクワオリンピック記念の特番として制作されたアニメオリジナルエピソード「のび太の夢の金メダル」(1980年5月5日放送)で描かれている。一般的に古くからあるアイデアだが、同じアイデアが使われている映画『スーパーマン』が1978年に公開されている。
作品のヒントとなったのは、映画の『シェーン』(ジョージ・スティーブンス監督、1953年)と『ブリガドーン』(ヴィンセント・ミネリ監督、1954年)であると作者が語っている。加えて「西部劇をモチーフとして、のび太の特技である銃の腕前を思い切り振るわせること」という要素が作品コンセプトとなっている。
クライマックスにおけるのび太と本作の敵役・ギラーミンとの早撃ち対決の描写から、師である手塚治虫が藤本を連れて見に行った西部劇映画『ベラクルス』のそれを意識しているのではないかという指摘もある。
ドラえもん のび太の宇宙開拓史 | |
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Doraemon: The Records of Nobita, Spaceblazer | |
監督 | 西牧秀夫 |
脚本 | 藤子不二雄 |
原作 | 藤子不二雄 |
出演者 | レギュラー 大山のぶ代 小原乃梨子 野村道子 たてかべ和也 肝付兼太 ゲスト 菅谷政子 杉山佳寿子 小山茉美 内海賢二 柴田秀勝 |
音楽 | 菊池俊輔 |
主題歌 | 岩渕まこと「心をゆらして」 |
撮影 | 小池彰、高橋明彦 |
編集 | 井上和夫、森田清次 |
制作会社 | シンエイ動画 |
製作会社 | シンエイ動画 テレビ朝日 小学館 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1981年3月14日 |
上映時間 | 90分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 17億5000万円 |
前作 | ドラえもん のび太の恐竜 |
次作 | ドラえもん のび太の大魔境 |
1981年(昭和56年)3月14日に公開された。同時上映は、『怪物くん 怪物ランドへの招待』。
ドラえもん (1979年のテレビアニメ)のスタッフにより制作された。テレビシリーズのキャラクターデザイン(絵柄)第2期の最初の映画。テレビアニメの絵柄が変わるよりも半年早く、映画が先に絵柄が変わった[要出典]。前作『のび太の恐竜』は初期キャラデザで、絵柄が異なる。
2009年に本作のリメイク作品である『映画ドラえもん 新・のび太の宇宙開拓史』が公開された。
大長編ドラえもん のび太の宇宙開拓史 (単行本) | |
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漫画 | |
作者 | 藤子不二雄 |
出版社 | 小学館 |
レーベル | てんとう虫コミックス |
発売日 | 1984年2月28日 |
その他 | 全188頁 |
テンプレート - ノート |
1984年(昭和59年)2月28日に単行本(てんとう虫コミックス)が発売されたのに伴い、22頁が加筆された。
「大長編ドラえもん」は「映画の原作漫画」と呼ばれることも多いが、毎年映画の制作と重なるスケジュールで執筆されており、漫画が完結するのは映画制作の後半から終盤(作品によっては映画の完成後)である。さらに、本作は映画の公開から3年後に漫画に複数の場面が加筆されている。本作には「連載版」「映画版」「単行本版」の3種類の内容があることを理解しておく必要がある。
作中ではSF作品では頻出の超光速航行(ワープ航法)について説明をするシーンがある。本作では離れた2点間での移動を空間を曲げてその2点をくっつけることで一瞬の移動を可能にするという空間歪曲型のワープ方式を採用している。漫画ではその原理を「1枚の紙に書いた2点を紙を曲げることで接触させる」という方法で説明しているが、映画では「ベルトを使いのび太の部屋とロップルの宇宙船が偶然空間がねじれてくっついた」という方法で説明している。
漫画では丁寧に描かれたドラマのいくつかが、映画では省略されている。また、のび太とドラえもんがロップルの農作業を手伝うといったシーンが、映画では画面を4分割したダイジェストという形で描かれている(この中には漫画にない映画オリジナルのシーンも含まれる)。
漫画(連載版)では頁の半分以下の大きさの1コマで描かれているのび太達とロップル達が別れる超空間のシーンが映画では大幅にアレンジされ、主題歌「心をゆらして」が流れる中、手を振るコーヤコーヤ星の住民一同の映像、その後のび太達とロップル達との思い出を振り返る映像が流れ、最後に超空間の繋がりが外れる直前、クレムがのび太にあやとりを披露するという感動的なシーンとなっている。この別れのシーンについては宝島社のムックでも言及されている。
また、映画版では超空間の繋がりが消えた後、のび太の両親に怪しまれて畳を開けると多数のネズミが飛び出し野比一家を慌てさせるギャグオチになっている。
漫画(単行本版)の別れの場面では「泣きながらその場を離れるクレム」「『超空間の出入り口が開く事は二度となかった』という文章」などが追加された他、超空間の1コマは3/4頁に拡大され、『心をゆらして』の歌詞が掲載されている。
超空間での事故により、のび太の部屋の畳とロップルの宇宙船の倉庫の扉が繋がった。ロップルが住む惑星・コーヤコーヤは、ドラえもんでも存在を知らないほど地球から遠く離れている。ロップルたちの夢を何度も見ていたのび太はドラえもんと共にコーヤコーヤに赴き、ロップルやチャミーと仲良くなる。
コーヤコーヤを含めた島宇宙の各星に鉱脈を張る鉱石ガルタイトの独占を企むガルタイト鉱業は、コーヤコーヤ星に移住し始めたばかりの開拓住民たちを採掘の邪魔になると追い出そうとしていた。そのせいでロップルたちはガルタイト鉱業の攻撃の標的となってしまい、日々執拗な脅迫や嫌がらせに耐えながらの生活を強いられていたのだ。さらに運悪く、ジャイアン、スネ夫、しずかの3人をコーヤコーヤに招待した際、ガルタイト鉱業の襲撃を受けてしまい、それによって怒ったジャイアンたち3人は地球に帰ってしまった上、のび太との関係も悪化してしまう。
ドラえもんとのび太はロップルたちの生活を守るべく、コーヤコーヤ星での重力が地球より小さいことを利用して、スーパーマンのような力を発揮し、ガルタイト鉱業と戦っていく。採掘の遅れにしびれをきらしたガルタイト鉱業はコーヤコーヤ星を爆破してガルタイトを回収する強硬手段を発動し、ロップルの宇宙船の倉庫の扉も爆破されてしまった。
のび太は勉強が疎かになっていることをママに叱られ、外出禁止を命じられていたが駆け付けたチャミーからコーヤコーヤ星最大の危機を知らされ、ドラえもんと共にコーヤコーヤ星に向かう。
のび太のお目付け役を担っていたしずかはジャイアンとスネ夫に事情を説明し、3人で救援に向かう。のび太はガルタイト鉱業の本部から派遣されたギラーミンとの決戦に挑む。
地球が属する銀河系から遠く離れた別の銀河に存在する、“コーヤコーヤ星”と“トカイトカイ星”が舞台。どちらの星も地球などより重力が格段に小さいため、住人の体力や建材などの材質と強度も地球に比べて非常に低いので、逆に地球人は(たとえのび太でも)この星ではスーパーマンの如き力を発揮できる。それによりコーヤコーヤ周辺の人間・生物にとって地球の空気は汚くて重力が強く感じるため、結果的にのび太達より身体能力で劣ったり、呼吸が困難な体になるなどの悪影響がある。星は反重力エネルギーを発生させる“ガルタイト鉱”で出来ている。彼らの文明は、宇宙旅行でワープもできるなど、地球より進んだ面がある一方、石器時代からガルタイト鉱のエネルギーを基盤として発展して来たので、プロペラなどの地球にある一部の機械は発明されていない。22世紀生まれのドラえもんでもこの星域の存在は知らず、コーヤコーヤ星の住人であるロップルも銀河系、太陽系、地球の存在を知らない。のび太の部屋とは超空間を隔てて繋がっているためか時間の流れが地球と違い、1日が地球の1時間程度に当たる。
キャラクターは全て『ジャングル黒べえ』に登場する「ピリミー国」の動物の流用。
1994年刊行の雑誌「ドラえもんクラブ」の3号に本作以前のロップルたちの物語を描いた外伝小説『大長編ドラえもん「のび太の宇宙開拓史」外伝 コーヤコーヤ星物語』(文・笹木輦、画・芝山努)が掲載された。
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