『ドラえもん のび太の魔界大冒険』(ドラえもん のびたのまかいだいぼうけん)は、藤子不二雄の藤本弘が執筆し、『月刊コロコロコミック』1983年9月号から1984年2月号にかけて連載した「大長編ドラえもんシリーズ」の漫画作品。および、この漫画を原作として1984年3月17日に公開したドラえもん映画作品。映画ドラえもん5周年記念作品。大長編、映画ともにシリーズ第5作。
ドラえもん のび太の魔界大冒険 (連載) | |
---|---|
漫画 | |
作者 | 藤子不二雄 |
出版社 | 小学館 |
掲載誌 | 月刊コロコロコミック |
発表期間 | 1983年8月 - 1984年1月 |
話数 | 6 |
その他 | 全179頁(扉6頁を含む) |
テンプレート - ノート |
ドラえもん のび太の魔界大冒険 | |
---|---|
Doraemon: Nobita's Great Adventure into the Underworld | |
監督 | 芝山努 |
脚本 | 藤子不二雄 |
原作 | 藤子不二雄 |
出演者 | レギュラー 大山のぶ代 小原乃梨子 野村道子 たてかべ和也 肝付兼太 ゲスト 小山茉美 中村正 若山弦蔵 |
音楽 | 菊池俊輔 |
主題歌 | 小泉今日子「風のマジカル」 |
撮影 | 高橋明彦 |
編集 | 井上和夫 |
制作会社 | シンエイ動画 |
製作会社 | シンエイ動画 テレビ朝日 小学館 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1984年3月17日 |
上映時間 | 97分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
配給収入 | 17億円 |
前作 | ドラえもん のび太の海底鬼岩城 |
次作 | ドラえもん のび太の宇宙小戦争 |
ドラえもん のび太の魔界大冒険 (大長編単行本) | |
---|---|
漫画 | |
作者 | 藤子不二雄 |
出版社 | 小学館 |
レーベル | てんとう虫コミックス |
発売日 | 1984年10月28日 |
その他 | 全189頁 |
テンプレート - ノート |
同時上映は『忍者ハットリくん+パーマン 超能力ウォーズ』。
2007年には本作のリメイク作品である、『映画ドラえもん のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜』が公開された。
短編でお馴染みの道具「もしもボックス」が登場する唯一の劇場版作品である。そして、それによって作られたIFの魔法世界(つまり現実世界のパラレルワールドに当たる世界)が、話の根幹となっている。
この作品における魔法は、科学文明に取って代わった文明の利器という存在という位置づけで登場する。したがって、魔法世界において科学は迷信だと伝わっている。また、宇宙で呼吸が可能など科学常識が否定されていることが前提であるため、現代社会で迷信とされている様々な事象が現実的となっている(後述)。
本作品の舞台となる魔法世界は「ドラえもんとのび太がもしもボックスにより訪れた世界」であるため、登場するレギュラーキャラクターの内、ジャイアン、スネ夫、しずか、先生、両親は魔法世界の住人である。ヒロインの満月美夜子は、劇場版ドラえもんで初の女性メインゲストキャラクターである。またドラミが初登場する劇場版作品でもあった。
魔界でデマオンに1度敗れた後、魔法世界にするために使用したもしもボックスの使用を止めようとドラえもんとのび太がタイムマシンで過去に戻る場面があるが、これは魔法世界から科学世界(つまりパラレルワールドから現実世界)にタイムマシンで行き来が可能である前提で描かれている。
原作・映画ともに、作中に嘘の終幕が登場し、最終ページだと騙されたアシスタントもいたという。
監督を務めた芝山によると前作の興行収入が前々作までよりも低かったことから本作の製作中に「つぎでお客さんが入らなかったら辞めてもらうよ」と上層部から釘を刺されていたという。結果今作は17億の興行的収入をあげ、成功を収めたことから芝山は引き続き映画ドラえもんの監督を担当することになった。
1979年に『テレビ朝日版ドラえもん』を立ち上げた同局編成開発部の高橋浩は、映画版の興行成績が落ちていたことから、この年が自然保護憲章制定10周年と知り、ドラえもんが「かけがいのない地球の自然を大切にしよう。緑を守ろう」と言えば、子供たちが自然に対する認識を高めてくれるのではないか、そのためにはドラえもんを緑にしたいと考えた。周りからは反対されたが、藤本に趣旨を説明し快諾されたことから、5周年記念および自然保護憲章制定10周年として、ドラえもんのカラーをグリーンにしたグリーンドラを前面に出した自然応援キャンペーン「僕たち地球人」が同時に行われることになった。来場者にグリーンドラ缶バッジを配った。後年の作品でも定番となる「入場者全員プレゼント」は、これが最初である。また当時上映された映画では、グリーンドラとのび太が出演した短編広告アニメが上映された。
映画はドラえもん (1979年のテレビアニメ)のスタッフによって作られた。シリーズにおいて初めてCGを使用した。本作で使われたCGの一部は、1984年4月6日からのアニメOPにも使われた。
1984年10月2日のテレビ放送時には主題歌「風のマジカル」を含め、劇場公開時に近い形での放送が行われたが、1996年からの再ビデオ(VHSカセット、LD、DVD)でステレオ音声に変換された際、曲の使用契約期限の関係でエンディング曲が『のび太の大魔境』の主題歌「だからみんなで」に差し替えられ、エンディング映像上のスタッフロールおよび巻頭に収録された予告編での「風のマジカル」のテロップも削除された。また、本編中の「風のマジカル」のインストゥルメンタルBGMが流れている場面2箇所についても『ポケットの中に』のBGMに差し替えられた。
これまで再上映での鑑賞や、1984年のテレビ放送の録画を入手する以外に長らく視聴する手段が無かったが、2016年以降のAmazonプライムビデオなどのオンデマンド配信おいてBD画質によるHDリマスターを施した劇場公開時のものが使われ、BGMや主題歌「風のマジカル」もモノラルマスター(モノラル収録のシネテープ)のデジタル化により修復された。後年、WOWOWでの再放送などではこの放送フォーマットが踏襲されている。
ここ数日の間ぼんやり空想に耽っていたのび太。その様子を見たドラえもんは「ゴミを捨てに行くぞ」と言い、のび太を連れてゴミ捨て場へ向かう。すると2人はドラえもんそっくりの奇妙な石像を見つけ、家に持ち帰る。その後、のび太はジャイアンに野球に誘われるもいつものように負けてしまい、全員に責め立てられ、その際、ドラえもんとしずかに魔法への憧れを打ち明ける。2人はまるで本気にせず、出木杉にも相談したものの、過去に魔法は学問として確立していたが、悪魔の力を借りる法として魔女狩りの対象にされたり、一方で科学が発達したことにより魔法が廃れたことを教えられ、誰一人理解されず、夢を諦めきれず落ち込むのび太は今度は自分とドラえもんそっくりの石像をゴミ捨て場で発見する。ドラえもんは自分たちの石像を見て不思議に思うが、のび太が「石に変えられた別の世界の自分達では」と推測した際、ドラえもんは相手にせずそのまま石像を庭に放置した。その真夜中、玄関から奇妙な声が聞こえた2人は玄関に向かうと、あの石像が違うポーズで立っていた。訝しがりながらも再び石像を外の物置に置き、部屋に戻るとのび太は、ふとドラえもんのひみつ道具「もしもボックス」を思い出す。のび太の提案を聞いたドラえもんはもしもボックスを取り出し、魔法の世界を実現させてあげることにした。
しかし実現した「魔法の世界」は、友達や家族は魔法が使えるがのび太の期待・想像の世界(ファンタジーな世界)とは程遠く、魔法を学ぶために学校教育を受けねばならず、魔法のじゅうたんを操るには免許と高額のじゅうたんが必要となるような、いわば文明の礎が科学から魔法にそっくりそのまますり替わっただけの代物だった。結局、現実世界と変わらず魔法世界でも誰からも見下され、落ちこぼれてしまったのび太は、すっかり落胆する。
だが、この世界でも担任の先生に叱られ、ジャイアンやスネ夫達に馬鹿にされたことで、せめて簡単な魔法の1つでも覚えてから元の世界に戻そうと意気込む。ドラえもんはそんなのび太の心意気を買って必死に応援するが、その矢先に地震が発生した。しずかによれば頻発する地震は魔界接近説という、ある魔学博士の仮説と関係しているという。
そんなある日、ドラえもんたちは山で満月博士というまさに魔界接近説を提唱していた張本人と出会う。博士の研究によれば、現在、魔界の悪魔たちが地球の侵略を企てており、このままでは想像を絶する魔力をもつ悪魔たちに人類は滅ぼされてしまう。そして、今世界に迫っている地震や巨大台風はその前兆だという。あまりに殺伐とした世界にドラえもんとのび太は元の世界に戻そうとしたが、もしもボックスはママによって粗大ごみとして捨てられてしまっており、回収を試みるも結局は手元に戻らず、2人は責任を押し付け合った末に仲違いをする。
その夜、和解した2人は再び満月博士の家を訪れて詳しく話を聞こうとする。だが、博士の家は跡形も無く消えており、1匹の野良猫だけが佇んでいた。実はその猫こそ博士の愛娘・美夜子であった。ほんやくこんにゃくを利用して話を聞いたところ、悪魔の軍勢が襲撃を仕掛け、屋敷を消滅させた上に自分をねこの姿に変えた挙句、父を連れ去ってしまったのだという。幸い、月の光を浴びている間はその魔法が解かれるといい、その間に美夜子は、2人に一緒に魔界に乗り込んで欲しいと懇願する。そして、水晶玉の占いによると魔王を倒す勇士はドラえもん、のび太、しずか、スネ夫、ジャイアンの5人なのだと告げた。5人は一度はためらうもやがて美夜子と共に魔界へ乗り込むことを決意し、美夜子と共に魔界へ乗り込んでいく。
人魚の島、帰らずの原、魔界の森など、様々な魔界の難所を乗り越え、ついに魔界にある大魔王デマオンの本城へとたどり着き、デマオンと対峙する。美夜子が満月博士から託された古書・魔界歴程の一部によると、デマオンの弱点は銀のダーツで心臓を撃つことであるという。それに従って銀のダーツを投げるが、なぜかデマオンには通用せず、強力な衝撃波で吹き飛ばされてしまう。石ころ帽子を利用して姿を隠し逃げ延びようとするも魔界の悪魔たちには通用せず、姿を見破られ、1人、また1人と悪魔に捕らえられて行く。転んだ拍子に石ころ帽子を破いてしまい悪魔に見つかったのび太が、間一髪のところで美夜子に助けられる。しかし、美夜子は自分の石ころ帽子をのび太に託すと、悪魔の気をそらせるために囮として再び悪魔たちへ向かっていってしまった。
必死で逃げ出し、命からがら逃げ伸びてきたドラえもんと落ち合ったのび太は仲間たちが全員捕まってしまったことを知り、このような世界を出してしまったことを深く後悔して泣きじゃくる。そんな時、ドラえもんはタイムマシンで過去に戻り、過去の自分たちがもしもボックスを使うことを辞めさせればいいと気づく。急いで自宅に戻り、タイムマシンに乗る2人だったが、デマオンの手下メジューサが後をつけてきて過去にさかのぼり、2人を追いかけまわした末に石化させてしまった。2人は石化の拍子にゴミ捨て場に落ち、過去の自分たちに拾われて自宅に持ち帰られる。そしてその夜、月の光が差したことで魔法が解けて石像から戻った2人は過去の自分たちに会おうと庭から玄関に向かうも、月が雲に隠れて再びそこで石化してしまう。しかし、再び気が付いた時には元通りに戻っており、更に目の前になぜかドラミがいた。虫の知らせアラームの警告を聞いてドラえもんたちが気がかりになったため様子を見にやってきたところ、2人が石になっていたのを知って助けてくれたのだった。事情を聴いたドラミにもしもボックスを借り、元の世界に戻したことでようやく安堵する2人だが、「魔法世界は消えてなくなるわけではなくパラレルワールドとして存続する」と教えられる。デマオンの脅威を消し去らない限り根本的解決にならないことを知った2人は、ドラミを伴って再び魔法世界へ戻る。
デマオンの城に戻った2人は中に潜入し、捕らえられた仲間たちと、美夜子、満月博士を無事に救い出す。美夜子からのび太に託されていた魔界歴程の未翻訳部分をドラミのアドバイスで秘密道具で解読すると、デマオンの弱点の心臓は体内になく星に擬装し宇宙に隠していることが判明。満月博士は「赤く脈打つ星」ことデモン座のα星がそれだと気付き、一行はα星に急行、追撃するデマオンの手によって降り注ぐ隕石の雨を必死でよけながらついに星の海の中にデマオンの弱点を見出す。ジャイアンの渾身の一投で投げられ、そしてドラミのビッグライトによって巨大化した銀のダーツがα星を射抜き粉々に破壊する。絶叫と共にデマオンは魔界とともに消滅し、ついに魔法世界に平和が取り戻された。全てが終わった後、のび太は自分が異なる世界の住人であったことを今更ながらに美夜子に教え、惜しみ合いながらも別れを告げた。
もしもボックスで今度こそ元の世界に戻ったのび太は空き地でジャイアンたちとしずかちゃんが遊んでいるのを見て冒険の余韻を感慨深げに感じ入った後、いたずらでしずかに向かってチンカラホイと魔法の呪文を唱えた。すると、魔法世界ではないはずなのになぜかしずかのスカートがふわっとめくれあがった。その様を見て、風のせいだよね、きっと……と、のび太は思うのであった。
『大長編ドラえもん「のび太の魔界大冒険」外伝 美夜子の魔法戦記(マジカルウォーズ)』のタイトルで、美夜子を主人公とした魔法世界での後日談が描かれている。本作のオリジナルキャラクターである朝倉魔魅矢(あさくら・まみや)に奪われた魔界歴程を取り戻すため、美夜子が立ち上がるというストーリー。雑誌『ドラえもんクラブ』第4号(1994年発行)に収録。文・笹木輦、画・芝山努。
This article uses material from the Wikipedia 日本語 article ドラえもん のび太の魔界大冒険, which is released under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 license ("CC BY-SA 3.0"); additional terms may apply (view authors). コンテンツは、特に記載されていない限り、CC BY-SA 4.0のもとで利用可能です。 Images, videos and audio are available under their respective licenses.
®Wikipedia is a registered trademark of the Wiki Foundation, Inc. Wiki 日本語 (DUHOCTRUNGQUOC.VN) is an independent company and has no affiliation with Wiki Foundation.