どら焼き(銅鑼焼き、ドラ焼き、どらやき)は、通常、やや膨らんだ円盤状のカステラ風生地2枚に、小豆餡を挟み込んだ膨化食品・和菓子。蜂蜜を入れて焼き上げることでしっとりとしたカステラ生地にしたもの。
蜂蜜やみりん等で保湿や香りづけの工夫をしたものが多いが、他にも、醤油、塩、麹、日本酒、抹茶、黒糖等、加える配合のバリエーションは広く、現代和菓子の定義的には「三同割(さんどうわり)(小麦粉、卵、砂糖が同量の配合の総称)」をどら焼きの基本配合としているのが一般的である。和菓子屋においては、三同割の配合比率を多少の加減調整したり、前述のような独自の工夫を加えた皮生地で差別化を図っている。逆に、三同割に用いられる原料(小麦粉、卵、砂糖)のみにもかかわらず、配合比率を大きく変えた上に特殊技法を用いて独自の特色を出して製造している店舗(亀十、本気の猿)もある。
どら焼きの名は、菓子の形状を打楽器の銅鑼(どら)に見立てたという説が有力である。しかし生地を焼く銅製の鍋が銅鑼に似ていたこと、あるいは実際に銅鑼を流用したことに由来するという異説もある。
かの武蔵坊弁慶が手傷を負った際にとある民家で治療を受けた。そのお礼に小麦粉を水で溶いて薄く伸ばしたものを熱した銅鑼に引き丸く焼いた生地であんこを包んだものを振舞ったことが起源であるという。ただしこの説は鎌倉時代に小豆餡が出来たと言われることから1189年に死んだとされる武蔵坊弁慶との関わりは矛盾する。
この他にも様々な異説俗説があり現在どれが正解かは一概に言えない状況にある。ただいずれの説にしても銅鑼に関係している物が多いようである。
日本における粉物料理の元祖は、安土桃山時代の「麩の焼き」であるとされる。 麩の焼きとは、巻いた形が巻物経典を彷彿とさせる事から、仏事用の菓子として使われていたもので、茶会の茶菓子として千利休が作らせていたという。 その「麩の焼き」が江戸に伝わり、寛永年間に、麩の焼きに使われていた味噌に替えて餡を巻く「助惣焼」ができた。 助惣焼はあんこ巻きと名を変えて、現在も東京のお好み焼き屋やもんじゃ焼き屋で提供されている。
江戸時代のどら焼きは一枚の皮を端の部分から折りたたんでいたため、形は四角く片面の中央はあんこがむき出しであり、現在のきんつばに良く似たものであった。現代における「どら焼き」は東京上野の「うさぎ屋」で販売された編笠焼が始まりとされる。
現代の日本で売られているどら焼きの生地は、欧米から伝わったホットケーキの強い影響を受けており、江戸時代以前のものからはかけ離れている。そのため昭和20年代頃まで現代のどら焼きとホットケーキは混同されがちであった。
近畿方面では、今日どら焼きと呼ばれているものを「三笠」、「三笠焼き」、「三笠まんじゅう」、「三笠山」などと呼ぶことが多い。菓子の外見が奈良県の三笠山に似た形であることに由来する名称で、古くから「三笠」にちなんだ名称が用いられてきたようである。
ただし、「どら焼き」と「三笠(山)」の違いに関しては地域性は無関係であるとされ、二枚の皮の縁を軽くおさえたものが「どら焼き」で互いにくっつくようにつくったものが「三笠(山)」、元々皮が片面焼きだったのが「どら焼き」で両面焼きにしたのが「三笠(山)」、「どら焼き」よりも皮を厚く焼いたのが「三笠(山)」など、皮の形状や製法に違いを求める説が一般的である。また、形状は異なる「銅鑼焼き」や「三笠山」は、梅花亭がはじまりとも言われている。
奈良市の近鉄奈良駅近くのひがしむき商店街にある菓子店などでは、通常のサイズのものの他に直径20cm弱の大きな「三笠」を売っている。市内の老舗和菓子店湖月は、毎年4月19日に林神社で行われる饅頭まつりに、直径が32cmと、大きいサイズのさらに2倍、餡が1.9kgも入った巨大な「みかさ」を奉納している。一方で、大阪市など関西でもどら焼きの呼称を使った商品もある。
一般的には餡を円盤型の生地2枚ではさむ形だが、それとは違う形でどら焼きと称する例もある。
京都市の東寺の「弘法市」の際、「笹屋伊織」が販売するものは、 熱した鉄板の上に薄く生地を流し、棒状にしたこし餡をのせてバームクーヘン状に包んだものである。
富山県では、薄めの皮で餡をぐるっと包んだ長方形のどら焼きを、ななめにカットし三角形にした「三角どらやき」というのがある。
また、生地を半分に折りたたんで餡をはさむ(形状は餃子に似る)といったものもある。
波型の「千寿せんべい」で有名な京都市に本社を置く和菓子の製造販売をする鼓月では、皮を波型にしたどら焼きがある。
他にも、どら焼きの皮が「ハート型」や「ねこ型」のものもある。
基本的に小豆餡が使われているが、栗・餅などが入っている事もある。甘納豆入りのどら焼きもある。
変わり種として、大分県湯布院の名物でプリンを挟んだ「ぷりんどら」や、フルーツがメインの「フルーツどら焼き」や、パフェがそのままどら焼きの中に入ったようなボリュームのあるどら焼き「ぱふぇどら」、惣菜どら焼きなどがある。
焼成機に紙を敷いたところに生地種を流して焼き、焼きあがった後に紙側から霧吹き等をして焼き皮を剥がすと「虎模様」になる手法。模様に趣きがあり、焦げが全面でない分通常のどら焼とは異なる風味になる。同様の手法は、他の菓子製造においても応用されている。
1985年(昭和60年)に宮城県宮城郡利府町のカトーマロニエが生クリームと小豆餡をホイップして挟んだどら焼きを生どらと命名して販売開始した(現在は「元祖なまどら」として販売)。続いて、同町と隣接する塩竈市にある榮太楼も生どらの販売を開始した。榮太楼は様々な種類の生どらを販売し、一躍仙台銘菓の地位を得た。
これ以降、日本各地で生どらが生産されるようになり、小豆餡の代わりに生クリームやカスタードクリーム、チョコレートクリームを入れたもの、あるいは、ジャム類やカットフルーツが入っているものも見られ、ワッフルを彷彿とさせる。新鮮さを保つために冷凍もしくは冷蔵で販売されていることもある。冷凍の場合は解凍または半解凍して食べる。また、アイスクリーム類を挟んだものも登場している。これは冷凍のまま食べる。
イタリアの伝統菓子「マリトッツォ」人気により、マリトッツオに似せたどら焼きがコンビニなどでも販売されている。
「生どら」のように生クリームや小豆餡が入っているのだが、生クリームの分量が多い。それに加えて苺など入っているものもある。「どらトッツォ」などとも呼ばれている。
スポンジケーキ状に蒸し上げたどら焼き型の生地に、小豆餡やカスタードクリームなどを挟んだ和菓子を蒸しどらと呼ぶ。生地には小麦粉のほかに黒砂糖や抹茶、桜ペーストが使われることもある。正確にはどら焼きではないが、生どらと並びどら焼きから派生した菓子として全国で生産されている。
京都橘大学は、2022年6月12日のオープンキャンパスで、高校生に数量限定でどら焼き型の大学パンフレット『食べられる“大学餡内”』を配布。京都下京区の老舗和菓子店である幸福堂とのコラボレーションによるフードプリントの技術を活用したもの。どら焼きに印刷されたQRコードを読み取ると、京都橘大学2023大学案内デジタル版が閲覧出来るようになっている。
鳥取県米子市に本社工場を置く丸京製菓は、日本記念日協会に4月4日を『どらやきの日』として申請し、2008年8月30日に正式登録された。
同社が生産量世界一の「どら焼き」を米子市の新しい名物にしようと『どらやきのまち米子』を2008年6月に宣言し、そのプロジェクトの一環として地域の活性化を目指したことによるものである。
また、プロジェクトにより、2008年11月に命名権も取得し、米子市東山運動公園を『どらやきドラマチックパーク米子』(どらドラパーク米子)と命名した(米子市営東山陸上競技場#施設命名権および米子市民球場#施設命名権も参照)。
漫画・アニメ『ドラえもん』(藤子・F・不二雄作)の主人公であるネコ型ロボット、ドラえもんの大好物としても知られる。作者の出身地の富山県では身近な和菓子であり、お祝いごとや法事の際に、どら焼きを贈る習慣がある。
タイアップ商品として、かつては山崎製パンなどからドラえもんにちなんだどら焼きが製造・販売されていた。2020年現在では文明堂よりドラえもんの焼印を付けたどら焼き、『ドラえもん どら焼き』が毎年販売されている。3月の劇場版の時期及び、ドラえもんの誕生月とされる9月に販売される。なお、『ドラえもん』作中では「ドラ焼き」、「ドラヤキ」、「どらやき」などと表記される。
2014年に放送開始された『米国版ドラえもん』では、どら焼きは「ヤミー・バン(yummy bun)」(おいしいパン)という名称に変更される。
派生作品であるタイムトラベルものの『ドラえもんなぜなに探検隊』では、12世紀の日本にタイムトラベルしたドラえもんが前記の弁慶がどら焼きを発明する場面に遭遇するシーンがある。「どら焼き伝説を追え!」(2009年12月31日放送)の回でもどら焼きの歴史について語られている。
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