QRコード(キューアールコード)は、1994年(平成6年)に日本・愛知県の自動車部品メーカーであるデンソーの開発部門(現在は分社化してデンソーウェーブ)が発明したマトリックス型二次元コードである。データ読み取りや店頭決済用コードとして世界中で多用されている。
「QR」は Quick Response の頭字語であり、高速読み取りを目的の一つとしている名称である。「QRコード」はデンソーウェーブの登録商標(日本第4075066号)である。
トヨタ生産方式「カンバン」(ジャストインタイム生産システム)において、自動車部品工場や配送センター等での利用を念頭に開発された。しかし、誤り検出訂正の能力が高く、また、オープンソースとされたことから、トヨタ自動車のサプライチェーンの範囲から飛び出して独り歩きを始め、現在[いつ?]では日本に限らず世界に広く普及している。例えば、発明時には民間においてインターネットおよびスマートフォンが普及していなかったが、それらを用いる「QR決済」が現在[いつ?]、国によっては主要な電子決済の地位を占めるようになっており、発明から四半世紀経ってフィンテックを支える技術の1つとなっている。
日本国内では、テレビ局が放送画面上にQRコードを提示して、自らのメディアであるテレビ放送とは異なるメディアのインターネットに誘う手法、あるいは、雑誌などの紙媒体にQRコードを提示してインターネットに誘う手法もしばしば見られ、旧来のメディアと新しいメディアのインターネットとの融合に用いられる例も多い。
QRコードがない時代、デンソーの製造工場の現場では部品をバーコードで管理していた。だが、部品管理のためにバーコードを10個ほど並べて読ませていたことから、非常に作業効率が悪かったことと、現場の作業員から「疲れる」との不平不満が挙がり、併せて「バーコードより多くの情報を盛り込めるコードを作って欲しい」という要望が出た。それに応えるため、デンソーウェーブ(開発当時はデンソー)開発部門に所属していた原昌宏により1992年から新たなコードの開発がスタートした。
原が昼休憩の時間中に社内で打っていた囲碁をヒントに、開発目標としてコードの情報量を増やすだけでなく「正確に速く読み取れること」、また、油などの汚れがつく自動車関連工場で使われることを想定し汚れや破損への強さにもこだわり、2年の開発期間を経て1994年に完成した。
バーコードは横方向にしか情報を持たないのに対し、QRコードは縦横に情報を持つ。そのため、格納できる情報量が多く、数字だけでなく英字や漢字など多言語のデータも格納できる。また、推奨はされていないが、濃淡の判別が可能な色合いであれば、色を付けた状態でも読み込むことが可能である。
QRコードには、最初に作られたモデル1と、大型化に対応したモデル2がある。大きさはバージョン1の21×21セルからバージョン40の177×177セルまで、4セル刻みで決められている。
3隅の四角い切り出しシンボル(位置検出パターン、ファインダパターン)が特徴的である。加えて、7列目と7行目などのタイミングパターン、随所に入れられた小さい四角のアラインメントパターン(モデル2のみ)が固定で、それ以外の部分に符号が記録される。
JIS X 0510ではQRコードの白黒を反転させることも認められているが、ISO/IEC 18004では白黒を反転させる行為は許されていない。
日本で販売されているカメラ付き携帯電話・スマートフォンがQRコードの読み取りに対応している。また、Googleの携帯電話用OSであるAndroidでも、一次元・二次元バーコード処理ライブラリ「zxing」がオープンソースとして提供されている。zxingは、AndroidのQRコード読み取りアプリはもちろんのこと、他OSのアプリや業務用機器のQRコード読み取り機能でも使用されている。 また、iOS 11からはAVFoundationにバーコード・二次元コードの読み取り機能が追加され、iPhoneやiPadでも標準でQRコードの読み取りに対応した。
数字のみ | 最大7,089文字 |
---|---|
英数 (US-ASCII) | 最大4,296文字 |
バイナリ(8ビット) | 最大2,953バイト |
漢字・かな (Shift_JIS) | 最大1,817文字 |
最大容量は、バージョンを最大 (40)、誤り訂正レベルを最低 (L) にした場合の値。
1997年10月、AIM International規格になり、1998年3月にはJEIDA規格、1999年1月にはJISのJIS X 0510、さらに2000年6月にはISO規格のISO/IEC 18004となった。普及状況は近年[いつ?]まで日本国内にとどまってきたが、イギリスなど海外でもQRペディアが使用されるようになったり、中国などでQRコード決済が広まるなどその範囲は広まっている。またデンソーウェーブはシンガポールを拠点に東南アジアへの展開を進めている。
特許権者のデンソーウェーブは、まずはQRコードが普及するよう敢えて特許をオープンにすることとし、規格化された技術に対して特許権を行使しないと宣言している。なお、近年QRコードの中に文字や画像を組み込んだものが一部で使われるようになっているが、これらの多くはQRコードの上に単に文字や画像を載せたものに過ぎず厳密にはQRコードの規格に準拠していないため、QRコードのエラー訂正のレベルや読み取り機器の性能によってはコードが正常に読み取れない場合がある。このためデンソーウェーブでは、規格に準拠していないコードについて「QRコード」と呼ぶことはできないとしている。規格外のコードの使用に対しては特許権を行使することもあり得るとしていたが、特許権の存続期間満了により非推奨というスタンスに変更された。
QRコードの開発チームは2014年に、欧州特許庁が付与する欧州発明家賞を日本で初めて受賞している。
ほか
次のものがよく使われている。なお値の中でコロン、セミコロン、コンマ、バックスラッシュ、二重引用符を使用する場合は、バックスラッシュでエスケープするよう定められている。
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最新(2004年11月20日改定)のJIS規格書 (JIS X 0510) の「適合条件」の中では、新規用途またはオープンシステム用途にあってはQRコードシンボルのモデル1は推奨されないシンボル形式となっている。よってここではQRコードシンボルのモデル2について記述する。
11×11セル - 17×17セルの、QRコードの小型版である。切り出しシンボルは1つしかない。データ量は数字の場合5 - 35桁と、従来のバーコードと同程度だが、同じ桁数で比べて10 - 100分の1の面積に印字できる。
マイクロQRコードは、2004年11月、JIS X 0510として規格化された。
この節の加筆が望まれています。 |
iQRコードは、デンソーが開発したQRコードの新規格である。内容はQRコードと変わらないが、形を横方向に伸縮させて長方形にすることができるようになったことで、より多くの情報を入れられるようになっている。
iQRコードは、従来のQRコードや他社の物より読み取り部分を小さくすることができる。これにより、サイズ量を従来のQRコードから約60%小さくすることに成功した。
また、従来のQRコードの最小セル構成は11*11セルだが、iQRコードは9*9セルと、最小セル構成の面でもQRコードよりサイズが小さくなっている。
細長く狭い場所に印字することを目的とした規格。Rectangular Micro QR Code (rMQR、長方形マイクロQRコード)として、2022年にISO/IEC 23941で規格化されている。
QRコードの中心部にデータが記録されていないキャンバス領域を設け、そこに絵や文字などを乗せたQRコード。単にQRコードに絵を乗せ、誤り訂正に期待して本来のデータを読み取らせるといったものではない。
バンダイナムコエンターテインメントが特許を、デンソーウェーブが商標を所有している。
車両によりホームドアの開閉位置が異なることを判別することを目的とした、鉄道専用のQRコード。tQRのtは、toughnessの略である。外枠がついており、また最大50%の欠損に対応しているのが大きな特徴。デンソーウェーブと東京都交通局が共同開発した。車両の扉の外側に貼り付けられたtQRには編成番号・号車番号が記録されている。またプラットホームに設置した専用の読み取り装置ではtQRの位置検出を行っており、これによりドアの開閉や車両の移動を検出することができる。なお従来のQRコードとの互換性はない。
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