放送倫理・番組向上機構(ほうそうりんり・ばんぐみこうじょうきこう、英: Broadcasting Ethics & Program Improvement Organization、BPO)は、日本放送協会(NHK)や日本民間放送連盟(民放連)とその加盟会員各社によって出資、組織された任意団体。理事会、評議員会、事務局と3つの委員会(放送倫理検証委員会、放送と人権等権利に関する委員会(放送人権委員会)、放送と青少年に関する委員会(青少年委員会))によって構成されている。
BPOが最上階に入居する千代田放送会館 | |
創立者 | 日本放送協会 日本民間放送連盟 など |
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団体種類 | 任意団体 |
設立 | 2003年7月1日 |
所在地 | 〒102-0094 東京都千代田区紀尾井町1-1 千代田放送会館 |
起源 | 放送番組向上協議会 放送と人権等権利に関する委員会機構(BRO) |
主要人物 | 大日向 雅美(理事長) |
活動地域 | 日本 |
ウェブサイト | https://www.bpo.gr.jp/ |
BPO規約第3条「目的」において「本機構は、放送事業の公共性と社会的影響の重大性に鑑み、言論と表現の自由を確保しつつ、視聴者の基本的人権を擁護するため、放送への苦情や放送倫理上の問題に対し、自主的に、独立した第三者の立場から迅速・的確に対応し、正確な放送と放送倫理の高揚に寄与することを目的とする」と掲げている。
2007年(平成19年)6月20日に、衆議院決算行政監視委員会において、日本民間放送連盟の会長・広瀬道貞は「放送事業者は、いわば、BPOの判断というのは最高裁の判断みたいなもので、ここが判断を出したら、いろいろ言いたいことはあっても、すべて守っていく、忠実に守っていく、そういう約束の合意書に、NHK及び民放各社がサインをしてBPOに提出しております」と述べている。審理にあたっては、当事者双方の意見聴取を行い、主張の正当性についての証拠確認、証人尋問、補充調査等は行わない。
2007年12月4日衆議院総務委員会において、BPOの飽戸弘理事長は「BPOの役割は、番組を監視して罰するところではないということも、やはり国民の皆さんにしっかりと、あくまでも放送事業者自身が自主的にさまざまな問題を解決していく、そのためにBPOは応援していく、視聴者と放送局の仲介をするところであるということを、国民の皆さんにも周知して知っていただくということが必要だと思います」と述べている。
郵政省に設置された『多チャンネル時代における視聴者と放送に関する懇談会』が1996年12月に出した報告書の中で、「視聴者の苦情に対応するための第三者機関を設けるべき」との意見が盛り込まれたことを受け、NHKと民放連が1997年5月に『放送と人権等権利に関する委員会機構』(略称:BRO)を設置した。BROのもとに第三者の有識者で構成される「放送と人権等権利に関する委員会」(略称:BRC)が置かれた。
後にBROは機能強化のため、「放送番組委員会」および「放送と青少年に関する委員会」を擁する放送番組向上協議会と2003年7月に統合することで、現在の放送倫理・番組向上機構(BPO)に改組された。
一方、2009年7月に佐藤勉元総務大臣は放送協議会総会で、BPOに対して独立性の高い機関ではなく、放送業界関係者による組織のため「お手盛りである」といった問題点を指摘している。
最高意思決定機関は「理事会」で、理事長と理事9名の計10名で構成される。理事長は、放送事業者の役職員およびその経験者以外から理事会で選任され、 理事は、同様に放送事業関係者以外から理事長が3名を選任、設立母体であるNHKと民放連がそれぞれ3名を選任している。なお、日本国政府から干渉されない独立性を理念のひとつとしているため、放送事業を所管する、総務省との人的・財政上の繋がりは無い。
放送事業者およびその関係者を除く7名以内で構成され、BPO内の『放送倫理検証委員会』、『放送と人権等権利に関する委員会』、『放送と青少年に関する委員会』の3つの委員会の委員を選任する権限を有する。
事務局は理事会の統轄下にあり、更に本事務局が下記の3つの委員会を統括、他に視聴者応対と総務を統括する。
2007年に設置された放送番組の倫理を高め、質の向上を図るための審議を行う委員会で視聴者から寄せられた意見(後述)を基に、放送番組の取材・制作のあり方や番組内容に関する諸問題について審議を行い、必要に応じて「意見」を公表してゆく。また、虚偽の内容により視聴者に著しい誤解を与えた番組が放送された際には当該番組について審理を行い、「勧告」や「見解」を公表、当該放送局に再発防止策の提出とその報告を求められる権限を有する。
ここでは委員会決定した事案を記載する。なお、委員会の提言として発表されたものは除外している。また、放送局名や番組名の表記は当時のもので、原則としてBPOのウェブサイトで記載されているもので表記している(NHKについては放送チャンネルが記載されている場合、放送チャンネルを併記した)。
委員会決定番号 | 日付 | 放送局名 | 番組名 | 対象事案 | 出典 |
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第1号 | 2007年8月6日 | TBS | みのもんたの朝ズバッ! | A | |
第2号 | 2008年1月21日 | フジテレビ | FNS27時間テレビ | A | |
第3号 | 2008年2月4日 | テレビ朝日 | 報道ステーション | A | |
第4号 | 2008年4月15日 | NHK キー局5社 | 特定の番組名なし | D | |
第5号 | 2009年4月28日 | NHK(教育テレビ) | ETV2001 | D | |
第6号 | 2009年7月30日 | 日本テレビ | 真相報道 バンキシャ! | B | |
第7号 | 2009年11月17日 | 特定の放送局名なし | 特定の番組名なし | A | |
第8号 | 2010年4月2日 | TBSテレビ | 報道特集NEXT | B | |
第9号 | 2010年12月2日 | 1. 信越放送 2. 長野朝日放送 3. TBSテレビ 4. BSジャパン | 1. SBCニュースワイド 2. abnステーション 3. 関口宏の東京フレンドパークII 4. 絶景に感動!思わず一句 初夏ぶらり旅 | C | |
第10号 | 2011年5月31日 | 日本テレビ | news every.サタデー | B | |
第11号 | 2011年6月30日 | BS11 | "自"論対論 参議院発 | A | |
第12号 | 2011年7月6日 | 1.テレビ東京 2. 毎日放送 | 1. 月曜プレミア!主治医が見つかる診療所 2. イチハチ | A | |
第13号 | 2011年9月27日 | テレビ東京 | ありえへん∞世界 | A | |
第14号 | 2012年7月31日 | 日本テレビ | news every. | A | |
第15号 | 2012年10月4日 | 日本テレビ | 芸能★BANG ザ・ゴールデン | A | |
第16号 | 2013年8月2日 | 関西テレビ | スーパーニュースアンカー | A | |
第17号 | 2014年1月8日 | 1. 関西テレビ 2. テレビ熊本 | 1. スーパーニュースアンカー 2. 百識王(フジテレビの遅れネット) | C | |
第18号 | 2014年2月10日 | 鹿児島テレビ | ゆうテレ チャンネル8 | B | |
第19号 | 2014年3月5日 | 日本テレビ | スッキリ!! | B | |
第20号 | 2014年4月1日 | フジテレビ | ほこ×たて | A | |
第21号 | 2015年2月9日 | テレビ朝日 | 報道ステーション | A | |
第22号 | 2015年3月6日 | 1. TBSテレビ 2. テレビ新広島 3. テレビ朝日 4. NHK 5. 日本テレビ | 1. NEWS23・中居正広の金曜日のスマたちへ 2. いま、ヒロシマが聴こえる…〜全聾作曲家・佐村河内守が紡ぐ闇からの音〜 3. ワイド!スクランブル 4. NHKスペシャル魂の旋律 音を失った作曲家・情報LIVE ただイマ! 5. news every. | A・B | |
第23号 | 2015年11月6日 | 1. NHK 2. NHK大阪放送局 | 1. クローズアップ現代 2. かんさい熱視線 | A | |
第24号 | 2016年12月6日 | TBSテレビ | 珍種目No.1は誰だ!? ピラミッド・ダービー | A | |
第25号 | 2017年2月7日 | 民放連 NHK | 特定の番組名なし | C | |
第26号 | 2017年10月5日 | TBSテレビ | 白熱ライブ ビビット | A・B | |
第27号 | 2017年12月14日 | TOKYO MX | ニュース女子 | A・B | |
第28号 | 2018年2月8日 | フジテレビ | 情報プレゼンター とくダネ! | A・B | |
第29号 | 2019年7月5日 | 日本テレビ | 世界の果てまでイッテQ! | A | |
第30号 | 2019年10月7日 | 長野放送 | 働き方改革から始まる未来 | A | |
第31号 | 2019年12月10日 | 読売テレビ | かんさい情報ネットten. | A | |
第32号 | 2020年1月24日 | 関西テレビ | 胸いっぱいサミット! | A・D | |
第33号 | 2020年2月13日 | TBSテレビ | 消えた天才 | A | |
第34号 | 2020年3月31日 | NHK(国際放送) | Inside Lens | A・B | |
第35号 | 2020年4月8日 | 北海道放送 | 今日ドキッ! | C | |
第36号 | 2020年6月30日 | 1. 琉球朝日放送 2. 北日本放送 | 1. 島に“セブン-イレブン”がやって来た〜沖縄進出の軌跡と挑戦〜 2. 人生100年時代を楽しもう!〜自分に合った資産形成を考える〜 | A | |
第37号 | 2020年8月4日 | TBSテレビ | クレイジージャーニー | A | |
第38号 | 2020年9月2日 | テレビ朝日 | スーパーJチャンネル | B | |
第39号 | 2021年1月18日 | フジテレビ | 超逆境クイズバトル!! 99人の壁 | A・D | |
第40号 | 2021年2月10日 | フジテレビ | 特定の番組名なし ※18のニュース番組で伝えた世論調査結果とそれに関連する放送 | B | |
第41号 | 2021年7月21日 | 日本テレビ | スッキリ | A | |
第42号 | 2022年3月9日 | テレビ朝日 | 大下容子ワイド!スクランブル | A | |
第43号 | 2022年9月9日 | NHK(BS1) | BS1スペシャル『河瀨直美が見つめた東京五輪』後編 | A・B |
1997年に設置。2008年まではBRCという略称が用いられ、主に放送人権委員会と呼ばれている。放送番組によって名誉やプライバシーなどの人格権を侵害された個人および団体を、無料で救済するための委員会。放送によって権利を侵害されたと考える当事者からの「申立て」に基づき審理、権利侵害の有無や放送倫理上の問題の有無を判断する。判断結果は、「見解」または「勧告」としてまとめられ、申立て人と当該放送局に通知された後に公表、委員会の「見解」「勧告」は広く一般に周知されるよう、当該放送局で放送することが義務付けられている。
また、苦情申立て人と当該放送局の間に立ち当事者間の話し合いを要請し問題の解決を図る「仲介・斡旋」も行っており、これによって「勧告」などの委員会決定に至ること無く解決した事例も多く存在している。
原則として申立てることが出来るのは、権利を侵害されたと考える個人またはその直接の利害関係人だけであり、その他にも現時点で係争中の事案や損害賠償請求を目的としたもの、BPO加盟社以外の放送局の番組などは審理の対象とならない。
この委員会決定には「勧告」、「見解(問題あり)」、「見解(問題なし)」の3つの判断がある。
2000年に設置された、放送が青少年に与える影響やかかわり方などを視聴者から寄せられた意見・苦情(後述)などに基づき審議することなどを通して、青少年が視聴する放送番組の向上を目指す委員会。主に青少年委員会と呼ばれている。委員会は審議結果を「見解」、「提言」、「声明」などにまとめて公表、放送局に対して回答を要請したり、改善を求める。
また、放送局関係者と青少年委員との意見交換会を東京を始め全国各地で開催したり、中学生と高校生のモニターに、月に1回、自分が見たテレビ番組に対する意見を送ってもらい、番組作りの参考として放送局にフィードバックがなされている。
なお、本委員会で議論の対象番組に指定されても、必ずしも委員会審議や見解・提言、放送局への回答要請などに発展する訳では無いことに注意を要する。
この節の加筆が望まれています。 |
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※放送局への回答を要請し、何らかの措置がとられた事例を記述
役員の選任について、放送事業者の役職員およびその経験者以外の者から理事長1名と理事3名を選任することにより、公平性や中立性を担保している。しかし、理事長は構成員が推薦し、理事長が理事3名を選任することになるので構成員の影響力を完全には排除できていない。また、各委員会のメンバーは評議員会により選任されるが、評議員会は理事会により選任されている。
各委員会の委員の中には、放送事業者に関わりのある人物がおり公平性や中立性を担保できる構成になっていない[誰によって?]。自由民主党の情報通信戦略調査会はBPO委員の人選に国会が関わる事が出来ないか検討していることが2022年3月に報じられている。
放送法遵守を求める視聴者の会事務局長の小川榮太郎は、「放送事業者自身のコントロール下にある任意団体であるBPOとテレビのマッチポンプによるチェックしかない。構成員の多くが左派、リベラル系であることは国民不在の機関だと言わざるを得ない」として、「国民に広く認知するように運動を始めたうえで、BPOの解散と、国民の声を反映した新たな独立規制機関の設立」をすべきであると主張している。
中立性に対する疑義や、審査基準の不透明さから存在意義に対する疑問の声も聞かれる。委員の選任方法にも不透明さを否めず、沖縄の反基地運動を批判的に報道したニュース女子を「放送してはいけない番組を放送した」、「重大な放送倫理違反があった」などと厳しく“断罪”する一方で、2017年の国会報道や衆院選番組の野党擁護報道について、視聴者から「偏りすぎている」などの意見が相次いだにもかかわらず、審査対象として取り上げずに黙認してきた姿勢はダブルスタンダードとも批判されている。潮匡人は「本来は国民が納得できる公平な放送環境づくりが役割であるはずなのに、一部の政治活動に“お墨付き”を与える存在になってしまっている」と批判し、上念司も「リベラルに甘く、それへの反論には厳しいダブルスタンダードがある。中立性を担保できず、国民不在の組織であり続けるのならば、新たに放送を監視する枠組みが必要となる」と述べている。
放送倫理・番組向上機構の放送倫理検証委員会の決定第一号に「欧米民主主義国には政府から独立した規制機関が設置されているが、日本の場合はロシアや中国、北朝鮮と同様に放送メディアが公権力によってじかに監理監督される状態」。
前述した通り、「放送倫理検証委員会」や「青少年委員会」では視聴者からの指摘を基に当該番組とその放送局への勧告などを行っているが、BPOが本来取り組む事案である放送倫理、権利侵害、名誉棄損などとはおおよそかけ離れた的外れな意見や強引なこじつけによるクレームも多数寄せられている。掲載している意見内容についてBPOは、「BPOの考え方を示すものではない」としている。実際にこれらのクレームによって、前述したようにいくつかの番組およびコーナーが打ち切られたり、内容変更を余儀なくされる事例も頻発していることから、別の視聴者からの「視聴者意見への反論」も併載されている。
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