| この項目では、2020年1月から「株式会社電通」と称している広告代理店について説明しています。 - 1955年7月から2019年12月まで「株式会社電通」と称していた持株会社については「電通グループ」をご覧ください。
- 「電通大」と略される東京都の国立大学については「電気通信大学」をご覧ください。
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概要
日本最大の広告代理店であり「広告界のガリバー」の異名を持つ。
国内2位の博報堂DYホールディングスの売上高の約4倍と圧倒的なシェアにより、市場の寡占化が問題視され、 2005年(平成17年)には公正取引委員会(当時・竹島一彦委員長)が調査を開始し、調査報告書において電通の広告業界における寡占化の進行の事実を指摘したうえで「公平性、透明性の確保が必要」と結論づけた。
1987年(昭和62年)に制定された「CED」の5番目の社章は「Communications Excellence DENTSU -卓越したコミュニケーション活動を」を表しており、2002年(平成14年)12月まで使用された。現在使用されている「dentsu」の社章は2002年(平成14年)12月の汐留移転を機に制定された6代目である。
海外の広告会社に対する積極的なM&Aにより規模を拡大させ、近年では広告代理店グループとして世界6位の規模となっている。
沿革
創設
- 1901年7月1日 - 光永星郎により、日本広告株式会社創立。
- 1901年11月 - 電報通信社を設立。通信社としての業務開始。
- 1906年12月27日 - 日本電報通信社(初代)を設立。電報通信社を事実上統合。
- 1907年 - 日本電報通信社と日本広告が合併、日本電報通信社(2代。電通社)発足。
- 1914年 - 第一次世界大戦。電通社は大戦報道で成果をあげ、通信社としての声価を高めた。
- 1932年 - 満洲事変を受けて、政府は日本の情報通信機関を一元化し国家的通信社を作る必要があると判断。満洲国において当時、電通社とライバル関係にあった日本新聞聯合社の通信網を統合した国策会社として、満洲国通信社を創立。
- 1935年5月 - 電通社と日本新聞聯合社(統合推進派)は創立準備委員会を開き、新社名を「同盟通信社」に決定。
- 1935年11月 - 逓信大臣による許可をもとに、社団法人同盟通信社設立。
- 1936年6月1日 - 電通社通信部門が同盟通信社に合流。また日本新聞聯合社広告部を統合し、同盟通信社は広告代理店専業となる。
- 1947年 - GHQにより公職追放された第3代社長上田碩三の後任として吉田秀雄が第4代社長に就任し、広告取引システムの近代化に努めた。軍隊的な社則「鬼十則」を作るなど、電通発展の礎を築いた。
電通(初代)
電通(2代)
- 2019年2月12日 - 初代法人の事業承継準備会社として、株式会社電通承継準備会社設立。
- 2020年1月1日 - 初代法人の純粋持株会社体制への移行に伴い、株式会社電通(2代)へ商号変更。
- 2020年6月25日 - バンダイナムコエンターテインメントと協業し、インディーゲームのパブリッシング事業を展開するPhoenixxと業務提携契約を締結。
- 2021年2月15日 - 2020年度グループ全体の決算は、収益が前年を10.4%下回る9392億円、最終的な損益が1595億円の赤字となり、2年連続の最終赤字であり、赤字額は過去最大であることを発表した。
- 2021年6月29日 - 電通本社ビルの売却を検討することを決議したと発表。なお、電通はテナントとして入居を続ける。
- 2022年11月14日 - ロシア事業を現地企業へ譲渡すると発表した。
企業体質
社風
現場優先体質(管理部門からの管理の軽視・無視)、コンペ至上主義(コンペで勝つことを最優先し、そのために他を犠牲にする)であると指摘されている。
電通は、もともと通信社も抱えてはいたがそれを同盟通信社に譲渡、そして同盟通信社の広告事業を吸収して広告専業になった会社である。労働時間を考慮せず日夜ニュースを追いかける通信社(報道機関)的な悪い体質がDNAとして残り、労働時間などに関して残業規制を含めた会社からの細かい管理を現場が嫌い無視する気質が企業風土となった。逆に通信社ではなくなったため、行政からの監督もほとんど入らなくなってしまった。
鬼十則
4代目社長・吉田秀雄により1951年に作られた電通社員の行動規範。
1991年の男性社員の過労死(電通事件)の発生後、新入社員研修の教本などからは除外されたが、その後も社員手帳には記載が続けられ、特に第5則が電通の労働体質の背景になっているとされた。2015年12月に発生した新人女性社員の過労自殺を受け、2016年度限りで削除。
- 仕事は自ら創るべきで、与えられるべきでない。
- 仕事とは、先手先手と働き掛けていくことで、受け身でやるものではない。
- 大きな仕事と取り組め、小さな仕事はおのれを小さくする。
- 難しい仕事を狙え、そしてこれを成し遂げるところに進歩がある。
- 取り組んだら放すな、殺されても放すな、目的完遂までは……。
- 周囲を引きずり回せ、引きずるのと引きずられるのとでは、永い間に天地のひらきができる。
- 計画を持て、長期の計画を持っていれば、忍耐と工夫と、そして正しい努力と希望が生まれる。
- 自信を持て、自信がないから君の仕事には、迫力も粘りも、そして厚味すらがない。
- 頭は常に全回転、八方に気を配って、一分の隙もあってはならぬ、サービスとはそのようなものだ。
- 摩擦を怖れるな、摩擦は進歩の母、積極の肥料だ、でないと君は卑屈未練になる。
責任三カ条
鬼十則と同じく4代目社長・吉田秀雄により1953年に作られたが、1987年に社員手帳から記述が除外。
- 命令・復命・連絡・報告は、その結果を確認しその効果を把握するまではこれをなした者の責任である。その限度内に於ける責任は断じて回避出来ない。
- 一を聞いて十を知り、これを行う叡智と才能がないならば、一を聞いて一を完全に行う注意力と責任感を持たねばならぬ。一を聞いて十を誤る如き者は百害あって一利ない。正に組織活動の癌である。削除せらるべきである。
- 我々にとっては、形式的な責任論はもはや一片の価値もない。我々の仕事は突けば血を噴くのだ。我々はその日その日に生命をかけている。
戦略十訓
1960年代、ヴァンス・パッカード(en:Vance Packard)の『浪費をつくり出す人々』(en:The Waste Makers)の内容をもとに、電通PR(現:電通パブリックリレーションズ)社長だった永田久光により提唱されたとされる。ただし、電通の発行物内にはこの戦略に関する記載はなく資料による裏付けはない。
富士登山研修
「新入社員研修の一環」として、新入社員らに毎年富士登山を行わせている。同社ではこれを「電通富士登山」と称しており、もともと初代社長・光永が社員の敢闘精神を養う目的で開始したという。
経営者・役員等
歴代社長
電通(2代目法人) | 氏名 | 在任期間 | 出身大学等 |
14代 | 五十嵐博 | 2020年 - 2021年 | 新潟大学経済学部 |
15代 | 榑谷典洋 | 2022年 - 2023年 | 東京大学理学部 |
16代 | 佐野傑 | 2024年 - 現職 | 東京大学経済学部 |
歴代会長
| 氏名 | 在任期間 |
初代 | 木暮剛平 | 1993年 - 2002年 |
2代 | 成田豊 | 2002年 - 2007年 |
3代 | 俣木盾夫 | 2007年 - 2011年 |
4代 | 高嶋達佳 | 2011年 - 2014年 |
取締役等
- 〈代表取締役〉佐野傑
- 〈代表取締役〉永井聖士
- 〈取締役〉千野博
- 〈取締役 非常勤〉綿引義昌
- 〈監査役〉久島伸昭
執行役・執行役員等
- 〈社長執行役員〉佐野傑
- 〈執行役員〉髙田佳夫、松尾秀実、伊谷以知郎、中村将也、足達則史、高橋惣一、辰馬政夫、鈴木禎久、吉崎圭一、林信貴、前田真一、山口修治、鹿毛輝雅、福本勝彦、鈴木禎久、前田真一、千野博、永井聖士、佐々木康晴、中村光孝、山口修治、佐野傑、鈴木宏美、樋口景一、北原整
国内拠点
携わったプロジェクト・イベント
- ペレ・サヨナラ・ゲーム・イン・ジャパン(1977年9月14日)
- 電通とアディダスの共同出資企業ISL社の倒産を経た2005年、FIFAクラブ世界選手権(現在のFIFAクラブワールドカップ)に吸収され、2005年大会は「FIFA Club World Championship TOYOTA Cup Japan 2005」(「トヨタカップFIFAクラブ選手権」)、2006年大会から2014年大会まで「FIFA Club World Cup presented by TOYOTA」(「TOYOTAプレゼンツFIFAクラブワールドカップ」)が正式名称であった。
- 当時の成田豊電通社長が「アジア中心戦略」を社の経営方針としていたため、日本側が主張する「日本単独開催」案ではなく「日韓共催」案へと社として与した(高橋治之も参照)。
- 2007年、 当時スポーツ選手のマネージメント経験が浅かったIBスポーツに対してグランプリシリーズ韓国開催、中継権事業協力など破格の条件を提示してマネージメントを支援。キム・ヨナの可能性を見い出した電通(当時の電通会長は成田豊)の韓国市場開拓戦略だったとされる。
- 東京五輪・パラ開閉会式典演出チームの実質的な仕切り役は、山崎貴、野村萬斎、MIKIKOと目まぐるしく変遷し、2020年12月に佐々木宏(元電通のクリエイティブディレクター)が総合統括に就いたが、渡辺直美への容姿侮辱行為を報じられ2021年3月に引責辞任。この間、佐々木宏と電通同期入社組の髙田佳夫(電通代表取締役。日大法を経て1977年電通入社)により、MIKIKOが2020年12月に辞職に追い込まれる恰好で演出チームは解散する形となり、佐々木宏に一本化する新体制に変更されていた。また、同大会のオリ・パラ開閉4式典では大会組織委員会から電通に最終的に165億円が委託されたが、実際にオリ・パラ4式典に用いられた予算がおよそ10億円。155億円あまりが電通の守秘義務契約を理由に使途不明になっていることが明らかになっている。また、同大会運営業務委託に絡み東急エージェンシー、博報堂、ADK、電通など大手広告代理店数社やフジメディアHG系列の番組制作会社フジクリエイティブコーポレーション、人材派遣会社パソナによる、「日給35万」など人件費や管理費名目の多額にのぼる中抜き(中間搾取やピンハネ、丸投げ)が国会審議やテレビ番組上での告発などで問題化され、さまざまな推察や憶測を呼んだ。
企画・プロデューサー
- 渡辺哲也
- 東山敦
- 坂田雄馬
- 遠藤哲哉
- 梶原清文
- 古川慎
- 嵯峨隼人
- 山西太平
- 小掛慎太郎
- 今井陽介
- 岡田大将
- 李尚鎭
- 武田陽佑
- 斎藤朋之
- 柿崎真吾
- 滝野圭輔
- 守屋光春
- 川崎あやね
製作に関わった映画作品
製作に関わったテレビアニメ・特撮作品
テレビアニメ製作は、従来旭通信社→アサツーディ・ケイ→ADKエモーションズ(ADKホールディングス傘下)や読売広告社が強く、電通はあまり力を入れてこなかった。ただしテレビアニメへの参入自体は、テレビアニメ黎明期である1963年放送開始の『鉄人28号』とかなりの古参である。
2000年代に入ってからはテレビアニメ製作にも積極的になっており、パイオニアLDCを買収した(2008年にNBCユニバーサル傘下企業に売却、現:NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)。
現在関わっている作品
- ※☆はコピーライトに表記されていないが関わっている作品(OPまたは、EDにクレジットされている)
- ※◇はノンクレジット扱いでなおかつ、コピーライトに表記されていないが製作委員会方式あるいは広告代理店として関わっている作品
過去に関わった作品
過去に関わった作品
- ※☆はコピーライトに表記されていないが関わっている作品(オープニングまたは、エンディングにクレジットされている)
- ※◇はノンクレジット扱いでなおかつ、コピーライトに表記されていないが製作委員会方式あるいは広告代理店として関わっている作品
コピーライトに表記されていないが関わった作品
不祥事・諸問題
不祥事等
- CM撮影における迷惑行為
- 2010年、槍ヶ岳でのテレビCM撮影を巡り、ヘリコプターを使用し登山者に迷惑をかけたとして、環境省は電通、日清食品、葵プロモーションの3社に文書指導を行った。環境省はヘリによる撮影の自粛を事前に求めていたが、担当者が撮影を強行し、撮影中の約30分間、一般登山者への山頂への立ち入りを無断で拒むという迷惑行為を行っていた。
- この中で、東京2020五輪組織委員会に出向し、クリエイティブディレクターとエンブレム審査員を務めていた電通社員の高崎卓馬が、佐野が制作した原案を2度にわたり修正したうえで審査に推薦したことが明らかになり、選考の公平性に疑惑が生じた。さらに、電通マーケティング局長を務め、組織委員会に出向していた槙英俊、審査委員代表永井一正らの判断で、公募前に佐野を含む国内の8人のデザイナーに応募を要請していたことや、彼らの作品を2次審査に残すための不正が行われたことも明らかになった。
- こうした一連の騒動から、佐野によるエンブレムは白紙撤回され、高崎と槙も組織委員会からの出向を解かれ事実上更迭された。
- 2020年東京五輪大会開閉会式や運営業務にまつわる問題
- 日本オリンピック委員会(以下、JOC)の調査チームによると、ブラック・タイディングス社のコンサルタントから招致委員会に対して業務の売り込みがあり、電通からも同社のコンサルタントがラミーヌ・ディアックと繋がりがあるとの情報提供を受けたことから契約に至ったが、招致委員会はこの取引が贈与にあたると認識することができたとは認められないとし、違法性はないと結論づけた。電通は、「知る範囲内の実績を伝えただけであり、招致委員会とブラック・タイディングス社の契約について関与していない」と述べ、アスリートマネジメント・アンド・サービス社についても出資関係を否定した。
- 2018年12月、電通高橋治之らとIOCをめぐるロビー活動を続けていたJOC会長竹田恆和が、東京五輪招致をめぐる贈収賄容疑でフランス検察捜査当局による捜査過程で容疑者となったため、竹田は2019年6月の任期満了に伴い、JOC会長、IOC委員、東京2020五輪組織委員会副会長・理事のいずれも退任した。
フランス検察当局が収賄容疑で取り調べているラミン・ディアクと、その息子パパマッサタ・ディアク、その他主だったIOC委員への贈与を含めたロビー活動をしていた点は、高橋治之自身も認めた。しかし竹田は、JOCとIOCを辞職後に、高橋が主導するディアクに対するロビー活動を指示したこともなく、高橋がディアクに贈った「土産」についても認識していなかったと語った。
- 2022年9月、AOKIと同じオフィシャルサポーターであったKADOKAWAのスポンサー選定にも高橋が関与していた疑いが明らかになり、高橋の慶應義塾高校・大学の後輩にあたるKADOKAWA顧問らも逮捕され、さらに資金授受に関与していたとして、後輩にあたる元電通雑誌局長および元電通東日本常務でコンサルタント会社経営者も逮捕された。
- 以降も、大広ルート、ADKルート、サン・アロールートなどで特捜部による検挙が重なり、いわば「五輪疑獄」の様相を呈している。
- 2020年東京五輪テスト大会および本大会の入札談合事件
- 2022年11月25日、東京地検特捜部と公正取引委員会により、東京五輪・パラリンピック組織委員会が発注したテスト大会業務で入札談合をした疑いがあるとして、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)違反の疑いでイベント制作会社セレスポとともに電通本社ビルの家宅捜索を受けた。11月28日、博報堂、東急エージェンシー、イベント制作会社セイムトゥー、フジ・メディアHGの番組制作会社フジクリエイティブコーポレーションなどに家宅捜索が行われ、翌11月29日には、ADKホールディングス、電通ライブ、イベント制作会社シミズオクト及びトレスにも行われた。
- テスト大会に続いて五輪本大会では、主に電通からの出向者で占められる大会運営局が広告会社9社などに随意契約で割り振った額は、平均3割増しだったとのことである。
- 2023年2月8日、東京地検特捜部は、受注調整はテスト大会および本大会などで一体的に行われたとの見方を示し、テスト大会の計画立案支援業務をめぐる入札で受注調整をした独占禁止法違反(不当な取引制限)容疑で五輪組織委員会大会運営局元次長、受注側である電通元幹部(元スポーツ事業局長、あるいは元スポーツ局局長補)、セレスポおよびフジクリエイティブコーポレーションの幹部ら4人をそれぞれ逮捕し、各関係先の家宅捜索を行った。2月28日、特捜部は電通グループなど法人6社と電通元幹部など7人を独占禁止法違反の罪で起訴した。
- インターネット広告における不正詐欺
- 2016年7月、広告主であるトヨタ自動車からインターネット広告で効果が出ていないという指摘があり、社内調査で不正が発覚。電通は同年8月に外部の弁護士を含む内部調査委員会を発足し、電通とグループ会社18社がネット広告を提供した2,263社に聞き取りなどの調査を実施した。
- 同年9月に予備調査を公表し、インターネット上に掲載する広告について契約通りに掲載しなかったうえ、約111社に対し広告料を不当に請求していたことが明らかにされ、この時点で不正被害は計約2億3千万円に上ると想定された。過剰請求のみならず架空請求まで行っていたが、トヨタ自動車による指摘があったにもかかわらず、2000年に発覚した自動車メーカースズキへの3億円広告料不正請求・受領事件同様に、表沙汰にならない限りは電通社内内部で処理するつもりであったと指摘されている。しかし同年9月21日、英経済紙フィナンシャル・タイムズが不正問題をめぐって電通がトヨタのほか100社以上の企業と緊急の会談を行っていると報じ、米経済紙ウォール・ストリート・ジャーナルも報道。そのため電通は記者会見を開かざるを得なくなった。
- 不正は主にバナー広告や動画の中で、主に年齢や検索傾向などから興味のありそうな広告を表示する運用型広告で見つかった。2016年12月に調査結果を公表する予定としていたが、調査データが膨大だったこと、女性社員の過労死事件の後は残業時間が制限されたことを理由に、予定は遅れ2017年1月に公表された。不正被害に遭った企業は96社、作業件数は997件、被害金額は計1億1482万円分。実際に広告が掲載されず架空請求が行われたのは10社・40件・338万円分であった。不正請求ないし架空請求詐欺などの犯罪に該当するという認識が欠如していたとして、およそ100社にのぼる被害企業には過剰請求・架空請求など不正請求していた代金を返金するなど、各社の要望に沿う対応をとるとした。
- また、担当者が一人で出稿からレポート作成まで行うなど、ミスを隠蔽したり数字改竄が行われてもチェックする体制が整っておらず、組織全体として補う体制も不十分だったこと、ネット広告需要の急増に反して人員の補充や育成を怠った点に問題があり、国内デジタルグループ各社との連携も不足していたことが原因だとした。担当の執行役員ら17人を報酬減額処分(額面は不明)にし、これまで担当者による人力での広告掲載レポート作成から、今後は人手を介在しない自動生成システムを開発するなど再発防止に努めるとしたが、膨大な規模に上る不正請求事案に対しては見当違いな対応だと指摘されている。
- 子会社による医療報道記事への成功報酬支払い
- 2017年、子会社の電通パブリックリレーションズ(電通PR)が、医薬品を宣伝する記事を広告ではなく通常の記事として共同通信のグループ会社に配信させ、その記事の見返りに成功報酬を支払っていたことが明らかとなった。
- この丸投げの過程で電通本体だけでおよそ104億円あまり、電通グループ子会社6社を含めると少なくとも154億円あまりの、緊急支援のための多額の公金ないし税金が中抜きされていたことが報じられ、国会審議などで波紋を呼び起こした。
- 2020年6月、サービスデザイン推進協議会、電通が記者会見をする中で、梶山弘志経産相は、経産省が外部専門家を入れた第三者委員会で検査することを表明し、官民揃って火消しに追われた。同年10月12日、同委員会の中間審査では外部の公認会計士の意見も踏まえ、「不当とは言えない」とした。
- また、環境共創イニシアチブは2017年度からの3年間、政府から35件160億円の事業を受託して電通に再委託していたが、マイナンバーを使ってポイント還元する総務省のマイナポイント事業でも環境共創イニシアチブが受託していた。代表取締役に元総務次官桜井俊らが在籍する電通を再委託先として、電通ライブや電通国際情報サービスなど、さらにトランスコスモス、大日本印刷などに再々委託、再々々委託されていたことが明らかとなっている。
- コロナ禍により同業他社等が軒並み赤字決算に転落していくなか、電通は前年同期では12億円の赤字だったが、2020年6月中間連結決算発表では、コストカットが功をなしたとして純損益157億円で2年ぶりの黒字になった。2020年1-6月期業種別売上高では、「官公庁・団体」で前年同期比99.9%増の873億1400万円であった。
- 家賃支援給付金事業の受託をめぐる問題
- 上記持続化給付金事業の受託をめぐる問題に引き続き、2020年(令和2年)6月、経済産業省中小企業庁による家賃支援給付金事業をめぐり、サービスデザイン推進協議会、電通、そして電通ライブを通して持続化給付金事業の一部を再々々受託していた大手イベント会社テー・オー・ダブリュー(TOW)担当者の行為が問題となっている。同TOW担当者が、この家賃給付金事業について複数の下請け会社に、もし電通とは別の広告大手博報堂がこの事業を受託しそれに協力した場合、出入禁止相当の対応をとるなどと電通以外の広告会社に協力しないよう圧力をかけ、さらに電通社員がこの問題に関与していた疑いが判明した。これを受け、取引先企業が下請け会社に圧力をかける私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(独占禁止法)および下請代金支払遅延等防止法(下請法)に抵触する可能性のある行為に、電通が社員が関与したことを認めたものと報じられた。電通は同年6月17日に「社員が受発注関係にある協力会社の従業員に業務にまつわる不適切な発言を行った」として厳正に処分すると発表したが、当該社員の上司への厳重注意処分に留まった。
- 結果として、家賃給付金事業入札に参加していた2社のうち、博報堂は同事業を落札できずリクルートが落札し、電通の求めた通りとなった。さらにリクルートがともに事業を担う他5社には電通の下請けとして持続化給付金事業に関与している企業は入っていないため、この点も電通が求めた通りになった。このように、上述の持続化給付金事業でサービスデザイン推進協議会が落札した過程同様に、この家賃給付金事業においても委託先選びなど入札過程が不透明だと指摘されている。
- これに対し、経産省による渦中のサービスデザイン推進協議会への聞き取りで、当該担当電通社員が個人としてテー・オー・ダブリュー(TOW)担当社員に対し圧力をかけたものであり、電通が当該社員を処分し再発防止策等を示したとして、梶山弘志経産相は追加調査をしない考えを示した。一方で公正取引委員会山田弘審査局長は、独禁法の規定に基づいて適切に対処したいと述べた。しかし2020年12月17日、電通に対する行政調査に基づき公正取引委員会が行った措置は、独占禁止法の「注意」「警告」「排除措置命令」のうち、もっとも軽い「注意」措置に留まった。
労働問題
男性社員の自殺(1991年)
新入女性社員の自殺(2015年)
本件は「電通過労自殺」と呼称される。
時系列の経過
2015年
2016年
- 9月30日 - 三田労働基準監督署は、この社員が自殺したのは長時間労働によりうつ病を発症したのが原因と判断し、労働災害を認定した。これを受け、2016年10月14日、厚生労働省東京労働局過重労働撲滅特別対策班は労働基準法に基づき、電通本社に臨検監督と呼ばれる抜き打ち調査を実施し、名古屋・大阪・京都の各支社も、地元労働局がそれぞれ調査した。こうした中で、社員に違法な長時間労働をさせたり、労働時間を適切に把握していなかったとして、2010年には中部支社、2014年には関西支社、2015年には東京本社と子会社の電通九州が、それぞれ各地元労働基準監督署から是正勧告(行政指導)を受けていたことが分かった。また、本社に勤務していた男性社員が2013年に病死したのは長時間労働が原因だったとして、2016年に労働災害に認定されていたことも明らかになった。
- 11月7日 - 複数回にわたる是正勧告後も違法な時間外労働が全社的に常態化していた疑いが強まったことを受け、東京労働局過重労働撲滅特別対策班などは強制捜査に切り替え、電通本社と全国の3支社に労働基準法違反の疑いで家宅捜索を行った。
- 12月23日 - こうした一連の事実を受け、電通は2016年のブラック企業大賞「大賞」を受賞。
- 12月28日 - 社員に違法な長時間労働をさせたうえ、勤務時間を過小に申告させる犯罪行為をしたとして、東京労働局は、「法人としての電通」と「個人としての、女性社員の上司」を、労働基準法違反の疑いで東京地方検察庁(東京地検)に書類送検した。同日、電通社長の石井直は、2か月後の2017年1月に引責辞任すると表明した。
2017年
- 7月6日 - 自殺した女性社員に違法な残業をさせていたとして、東京地検が「法人としての電通」を東京簡易裁判所(東京簡裁)に略式起訴した。東京地検は「個人としての、女性社員の上司」については不起訴(起訴猶予処分)とし、刑事責任を問わないことを決定した。
- 7月12日 - 東京地検が東京簡裁に略式起訴した「法人としての電通」について、「略式命令では不相当」と判断した東京簡裁が公判に付す決定をしたことで、電通が公開法廷で刑事責任を問われることとなった。電通本社が労働組合と交わしていた、残業時間を月に50時間までなどと定めた労使協定(三六協定)が、組合員が従業員の50%を下回っており協定無効となっていたことも明らかになった。
- 9月22日 - 東京簡裁が初公判を行い、電通社長の山本敏博が出廷した。山本は、起訴内容について「間違いありません」と罪状を認めた。東京地検が「自社の利益を優先させ、違法な残業が常態化していた」として罰金50万円を求刑し、即日結審した。
- 10月6日 - 東京簡裁は「法人としての電通」に有罪判決(罰金50万円)を下し、「電通が『労働基準法に違反する長時間労働・サービス残業』を自殺した女性社員に強いていた」旨を指摘した。
- 10月20日 - 電通が控訴しなかったため、控訴期限の10月20日に東京簡裁の有罪判決が確定した。
新入女性社員の自殺(2015年)関連事項
2017年4月25日に、労使協定で定めた上限を超える残業を社員にさせていたとして、厚生労働省は、「法人としての株式会社電通」ならびに「個人としての、電通の中部支社・関西支社・京都支社の幹部」を、労働基準法違反の容疑で書類送検した。
2017年5月、電通の子会社である「電通東日本」「電通西日本」「電通九州」「電通北海道」「電通沖縄」の5社が、各々を管轄する労働基準監督署から是正勧告を受けた。
自由民主党との関係
電通の場合、政治家それも"自民党議員のボンボン"が多いと指摘されている。自民党の広報・宣伝は電通が長く担当している。2012年(平成24年)12月に発足した第2次安倍内閣以降、内閣官房内閣広報室の外部民間職員採用で博報堂が外された代わりに9年連続で事実上1~2人の電通職員枠が設けられていた。2019年新型コロナウイルス感染症の流行での持続化給付金事業をめぐる委託事業同様(#持続化給付金事業の受託をめぐる問題参照)、自民党政権と電通との親しき関係ないし蜜月関係が指摘されている(自由民主党 (日本)#問題にも同旨関連情報あり)。
民間職員採用は民主党政権下の2011年当時の内閣官房長官であった仙谷由人の発案であり、民主党政権下では中心的な存在を博報堂が、自民党政権下では電通単独で担っていたことがわかっている。
その他
- 1990年代には、複数社員が大麻取締法違反容疑等により逮捕され、2000年代に入ってからも複数の痴漢や性的暴行容疑で逮捕された事件や、複数の詐欺容疑での逮捕事件があった。また、元社員によるセクハラ告発がネット社会で注視されるなどした。ただし、実際に報道されているのは一部であり、報道されても、他の会社であれば社名や名前が記事に載るにもかかわらず、同社の場合には伏せられる場合が多い(報道におけるタブー#スポンサー・広告代理店タブーも参照)。
- 2019年、ラグビーワールドカップ2019日本大会のマーケティングも担当していた電通の新聞局長が暴行容疑で逮捕された。
- 映画アナと雪の女王2公開では、2019年12月のTwitterへの7人の漫画家による映画称賛イラスト投稿がステルスマーケティングではないかと指摘が相次いだ。最終的にウォルト・ディズニー・ジャパンは金銭対価による漫画で映画PRというマーケティング企画だったが、「PR」の表記が抜けていたとの謝罪文を出した。ウォール・ストリート・ジャーナルは「Disney Puts Some ‘Frozen 2’ Promotions on Ice After Twitter Flap」との記事で、電通が漫画家らに対して、ツイートに宣伝(PR)表記を付けないように指示していたと報道している。
- 2022年9月28日、『羽鳥慎一モーニングショー』(テレビ朝日系)で同局コメンテーターの玉川徹が、安倍晋三元首相の国葬の場で菅義偉元首相が読んだ弔辞に「これこそが国葬の政治的意図」「政治的意図がにおわないように、制作者としては考えますよ。当然これ、電通が入ってますからね」と論じた。その後、玉川は発言内容は事実誤認であったとして謝罪し、テレビ朝日から10日間の出勤停止処分を受けたが、その処分内容に賛否両論の声があがった。
関連書籍
出身や在籍著名人等
脚注
関連項目
外部リンク
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