レッサーパンダ(学名:Ailurus fulgens、中国語:小熊貓)は、食肉目レッサーパンダ科に分類される哺乳綱。本種のみでレッサーパンダ属を構成する。
レッサーパンダ Ailurus fulgens | |||||||||||||||||||||||||||
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保全状況評価 | |||||||||||||||||||||||||||
ENDANGERED (IUCN Red List Ver.3.1 (2001)) ワシントン条約附属書I | |||||||||||||||||||||||||||
分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Ailurus fulgens F. Cuvier, 1825 | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
レッサーパンダ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
Lesser panda Red panda | |||||||||||||||||||||||||||
インド北東部、中華人民共和国(四川省西部)、ネパール、ブータン、ミャンマー北部。ラオスでの報告例はあるが、確実性に乏しいとされる。甘粛省、貴州省、青海省、陝西省では絶滅したと考えられている。
頭胴長(体長)50 - 63.5センチメートル。尾長28 - 48.5センチメートル。体重3 - 6キログラム。全身は長く柔らかい体毛で被われ、足裏も体毛で被われる。背面は赤褐色で、腹面や四肢・耳介外側は黒い。鼻面や唇、頬、耳介の外縁は白い。尾には淡褐色の帯模様が入る。
耳介はやや大型で三角形。指趾の数は5本。爪はやや引っ込めることができる。前肢の種子骨が指状の突起に変化し、指と向かい合っているため物をつかむことができ、頭を下向きにして樹を降りることが出来る。肛門の周辺ならびに足の裏に臭腺(肛門腺)がある。
後破裂孔内に頸動脈が開く。後口蓋孔は上顎口蓋縫合よりも後方にある。歯列は門歯が上下6本、犬歯が上下2本、小臼歯が上顎6本、下顎8本、大臼歯が上下4本で計38本。裂肉歯内側に咬頭(錐)が2つあり、歯根が3本。胸椎の数は13 - 14個、腰椎の数は4 - 6個、仙椎の数は3個。盲腸がない。
出産直後の幼獣は体長15センチメートル、体重100 - 130グラム。全身は体毛で被われている。眼は開いていない。生後1ヶ月程度で毛色は茶色くなり、尻尾も縞模様になる。乳頭の数は8個。
寿命は約15年程。レッサーパンダの2歳はヒトの20歳前後に相当し、その頃から子を産めるようになる。以後、1年ごとにヒトの4歳分の歳を取る。
標高1500 - 4800メートルにある温帯・亜熱帯の森林や竹林に生息する。インド・メーガーラヤ州の高原では標高700 - 1400メートル(200メートルでの報告例もあり)の亜熱帯・熱帯の森林にも生息する。樹上棲と考えられている。夜行性もしくは薄明薄暮性で昼間は休むが、夏季には昼間も活動する。縄張りを形成して生活すると考えられ、オスは臭腺による臭い付けや一定の場所に排便すること(溜め糞)で縄張りを主張する。
鳴き声は1月から3月にかけての発情期に最もよく見られ、それ以外でも遊んでいるときや空腹時に見られる。
タケやタケノコを食べるが小型哺乳類、鳥類の卵、昆虫、動物の死骸、果実、地衣類なども食べる。
繁殖様式は胎生。
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Sato et al.(2009)より核DNAの5遺伝子座の塩基配列を決定し最大節約法・最尤法・ベイズ法全てで支持されたイタチ上科内の系統図 |
属名Ailurusは「ネコ」、種小名fulgensは「光輝く」の意。
形態の比較ではクマ科に近縁、アライグマ科に近縁、クマ科と鰭脚類からなる系統に近縁、イタチ上科 Musteloidea 内でも原始的とする説などがあった。1980年代にはジャイアントパンダがクマ科に近縁とする説が主流だったこともあり、アイソザイムや染色体の解析からジャイアントパンダとの類縁性は否定される説が有力となった。1980年代後半以降はミトコンドリアDNAの分子系統解析も行われることも増えたが、2000年代にかけても解析手法により結果は一定しなかった。1990年代後半にはイタチ科とアライグマ科からなる単系統群に近縁であることが示唆され、2000年にはアライグマ科・イタチ科・スカンク科と本科でイタチ上科 Musteloidea を形成する説が提唱されたが上科内の系統は不明なままであった。複数の核DNAの分子系統解析では上科内ではスカンク科に次いで分岐した系統だと推定されている。
イタチ上科のレッサーパンダ科に分類されることとなった[要検証 ]。
形態から以下の2亜種に分ける説があり、亜種を独立種とする説もある。一方で分子系統学的解析では、亜種間で遺伝的差異はないとされる。
亜種の産地を曖昧な状態で、長年分類学的研究が進められてきていたが、ヤルンツァンポ川を境界とすることで、ニシレッサーパンダAilurus fulgens F. Cuvier 1825とシセンレッサーパンダAilurus styani Thomas 1902に分けられることが明らかとなり、哺乳類学が専門のドン・E・ウィルソン(Don E. Wilson)も、2種に分けることを支持している。
宅地開発や農地開発・薪採集のための森林伐採・単一種の植林・焼畑・放牧などによる生息地の破壊、毛皮・ペット目的の密猟や狩猟による混獲などにより生息数は減少している。生息地に侵入した犬からの、犬ジステンパーでの感染死も懸念されている。1975年のワシントン条約発効時には附属書IIに、1995年からはワシントン条約附属書Iに掲載されている。そのため、個人で飼育することはできない。
1994年における中華人民共和国での生息数は2500頭、ネパールでの生息数は300頭、ミャンマーでは確認されていない。1999年における、シッキム州での生息数は2500頭以上と推定されている。日本では1976年に、釧路市動物園で飼育下繁殖例がある。以降、国内外問わず繁殖のための個体交換が盛んに行われている。
パンダの名前は1825年に西洋人がヒマラヤで発見したレッサーパンダの名前を現地人に尋ねたところ、「竹を食べる者」と言う意味の「ネガリャポンヤ」だと答え、「ポンヤ」が「パンダ」に変わったとされる。
初めはレッサーパンダは単に「パンダ」と呼ばれていたが、後にジャイアントパンダが発見されて有名になると、単に「パンダ」といった場合はジャイアントパンダの方を指すようになってしまい、英語においては、従来のパンダの方に「小さい方の」という意味の英語「レッサー」(lesser)や毛色から赤「レッド」(red)を付けて、レッサーパンダまたはレッドパンダと呼ぶようになった。いわゆるレトロニムの例である。
このため古い日本語の図鑑などでは「Ailurus fulgens」の和名をパンダとしている場合がある。また、漢字表記をそのまま読んだクマネコが別名とされていることもあるが、ビントロング、別名クマネコ(熊猫)と区別がつかないことになる。
英語ではLesser PandaやRed Panda以外にも、Wah(チベット語でキツネを意味するwaに由来)やファイヤーフォックス(Firefox)など多数の別名がある。
中国語では、ジャイアントパンダのことを「大熊猫」(大熊貓 / 大熊猫、dàxióngmāo; ダー シィォン マオ)と記すのに対し、レッサーパンダは「小熊猫」(小熊貓 / 小熊猫、xiăoxióngmāo; シァォ シィォン マオ)と呼ばれる。「パンダ」同様本来「熊猫」はレッサーパンダを指す。台湾ではジャイアントパンダの方は「猫熊」と呼ばれる。
別名・愛称 | 風太くん |
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生物 | レッサーパンダ |
品種 | シセンレッサーパンダ |
性別 | 雄 |
生誕 | 2003年7月5日 日本平動物園 |
著名な要素 | 直立する姿がテレビで話題となり、日本中にレッサーパンダブームを巻き起こした。 |
飼い主 | 千葉市動物公園(2004年3月から) |
親 | 風々(2003年6月死去) 楢(2012年3月死去) |
子 | チィチィ(2015年7月死去)との間に雄5頭・雌3頭 |
名の由来 | 父親から一文字取った。 |
2005年(平成17年)5月、千葉市動物公園で飼育されている雄の「風太」(ふうた、報道などでは「風太くん」とも称される)が、30秒程度の間、後肢2本で直立する、と内外のマスコミで取り上げられた。
レッサーパンダは元来、周囲の様子をうかがうときに直立することがあるが、当時の『朝日新聞』紙面にて紹介された風太の写真は人間のような立ち姿に見え話題となった。園の担当者によると、風太は生後まもなく母親に誤って尻尾を噛みちぎられたが、おかげで尻尾が邪魔にならず美しく背骨を反らすことができたという。その後、風太の祖父や母も直立することがわかった。また、よこはま動物園ズーラシアの「デール」や佐世保市亜熱帯動植物園の「海」のように、後肢だけで数歩歩く個体もいる。
これを機に、各地の動物園で、後肢で直立するレッサーパンダが取り上げられ、風太がJTの缶コーヒーCMに起用されるなど、話題が過熱したため、旭山動物園(北海道旭川市)や世界自然保護基金などから、商用目的でレッサーパンダへ過剰な負担をかけることへの疑問や懸念が表明された。また、ブームの発端となった千葉市動物公園では、ラジオ番組の電話インタビュー[どこ?]において、「当初地方紙のみの記事であったはずが、いきなり全国的に取り上げられたため、その過熱ぶりに困惑した。」と語っている。後肢だけで歩くズーラシアのデールに対しても「無理やり芸を仕込んでいる」という誤解に基づく誹謗中傷が一部で起こっていた。ブーム下においては、直立したレッサーパンダのぬいぐるみなどのグッズが多数商品化され、ハピネットの『動物大百科』のソフビ人形は直立形態を前提に造形され、エポック社からは『レッサーパンダが立ちました』という名のフィギュア(カプセルトイ)が商品化された。
2015年(平成27年)7月21日、風太(12歳)は番になった8頭の子を儲けた同い年の「チィチィ」を亡くす。
風太は2018年(平成30年)7月に15歳を迎え、人間の年齢でいうと70歳の高齢となり、眠っている時間が増え、ほとんど自分から立ち上がることはないが、餌の時間には立ち姿を見せることがあるという。2019年(平成31年/令和元年)3月には、右眼を白内障を患っていることが報じられており、その眼は失明していると推定される。2022年(令和4年)4月16日頃から食欲がなくなり、展示を2か月間休止したが、19歳(人間相当年齢 85歳以上)の誕生日を迎えた同年7月にはファンの前に姿を現し、かなり長い間歩き回った(■映像あり)。眼を患ってからは木に登らなくなったという。
風太はチィチィとの間に、雌の「風花(ふうか)」と雄の「ユウタ」(両親とは3歳差)、雄の「クウタ」(両親と5歳差)など、8頭の子(雄5頭・雌3頭)を儲けており(早世した幼獣を含めると10頭)、2022年の時点で、孫20頭(早世した幼獣を含めると31頭)のほか、曾孫と玄孫までいる。
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