イヴァン・フランコ

イヴァン・フランコ(ウクライナ語: Іва́н Я́кович Франко́;1856年8月27日‐1916年5月28日)は、ウクライナの文化人。作家、思想家、評論家、言語学者、翻訳者などとして活躍した。オーストリア・ハンガリー帝国におけるウクライナ民族解放運動やウクライナ文化振興運動の第一人者。ウクライナの国民的作家として知られる。

イヴァン・フランコ
Іван Франко
イヴァン・フランコ
イヴァン・フランコ(1886年)
誕生 1856年8月27日
ナグイエーヴィチ、ウクライナ
死没 リヴイウ、ウクライナ
1916年5月28日
職業 詩人、作家、思想家、文学者
国籍 オーストリア・ハンガリー帝国
活動期間 1880年1916年
代表作 『山より谷より』・『モーゼ』
イヴァン・フランコ ウィキポータル 文学
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概要

イヴァン・フランコは1856年8月27日に、オーストリア・ハンガリー帝国が支配する西ウクライナ、ガリツィア地方ナグイエーヴィチ村の、ウクライナ人鍛冶屋の家で生まれた。1875年リヴィウ大学哲学学部に入学したが、学生が行った社会主義の普及活動に携わったことにより、何度も警察に逮捕され、1880年に退学させられた。1891年にチェルニウツィー大学に入学し、中世ウクライナの思想家イヴァン・ヴィーシェンシクィーについて博士論文を書き、ウィーン大学文学博士号を獲得した。

1890年代からガリツィア地方におけるウクライナ文化振興の活動に参加しはじめた。1898年にウクライナ人の学術組織であるタラス・シェフチェンコ記念学術会の民俗学委員会の会長として「民俗学雑誌」の編成をおこない、ウクライナ研究を中心とした数冊の学術定期刊行物を出版した。同時に自らの叙情詩、詩劇などを集めた詩集や小説を著したり、古代ギリシャ語ラテン語アラビア語バビロニア語で書かれた古典や、フランス語ドイツ語英語ロシア語ポーランド語チェコ語セルビア語クロアチア語などで書かれた文学作品や歴史・美術・政治に関する学術論文の翻訳を行ったりした。

フランコは言語学、特にウクライナ語の研究に大きな関心を寄せていて、言語学に関する150の論文を著した。アウグスト・シュライヒャーの影響を受けて、言語を常に発展を目指す生物有機体であると考えた。フランコは、ウクライナ語の標準語は文語体より口語たる民衆の言葉に基づくべきものであると考え、その標準語の基準はイヴァン・コトリャレーヴシクィーやタラス・シェフチェンコが使用したドニプロ・ウクライナの言葉を用いるべきと主張した。そのために、文語体を重視してウクライナ語をロシア語に近づけようとする親ロシア派の知識人と対立した。また、ウクライナ語のローマ字化に強く反対した。なお、フランコは言語学のほかに、哲学、歴史、人類学、経済学、文学論など、様々な分野で研究を行った。

フランコは研究の傍らに政治運動にも関わった。1890年に彼はムイハーロ・ドラホマーノフと共にウクライナ・ルーシ急進党を創立して党員となった。その後、1899年にウクライナの民衆主義者とウクライナ人民民衆党を創立し、1904年までその党に協力していた。両党の目的はオーストリア・ハンガリーにおけるウクライナ人の権利を守ることと、ロシア帝国内に住むウクライナ人との交流を深めることにあった。また、フランコや両党の活躍によりガリツィア地方における従来の「ルーシ人」という民族名は「ウクライナ人」という新たな民族名に入れ替わり始めた。

イヴァン・フランコ 
20フリヴニャ紙幣。フランコの画像

ウクライナ文学においても、フランコは代表的な人物である。彼の作品はレアリズム派に分類されることが多い。フランコの影響がある作品には、民衆主義の思想に基づく詩集『山より谷より』(1878年)、恋愛詩集の『落ち葉』(1896年)、哲学的な詩集の『私のエメラルド』(1897年)、民族解放運動の必要性を訴える叙情詩『モーゼ』(1905年)、社会小説『笑うボルイスラーウ』(1882年)と歴史小説『ザハール・ベールクト』(1882年)がある。

1916年5月28日、フランコは「西ウクライナの都」と呼ばれるリヴィウで死去した。現在のウクライナには、フランコを記念する石像が多数建てられ、施設や学校などの名称にはフランコの名前にちなんでつけられたものが多い(例:リヴィウ大学)。また、ウクライナのイヴァーノ=フランキーウシク州とその州庁所在地イヴァーノ=フランキーウシクもフランコの名前にちなんで名づけられたものである。さらに、フランコの肖像は20フリヴニャ紙幣にも描かれている。

脚注

参考文献

  • (ウクライナ語) Зібрання творів: В 50 т./ Іван Якович Франко; Іван Франко,; Редкол.: Є.П. Кирилюк (голова) та ін.. -К.: Наук. думка, 1976 −1986

関連文献

外部リンク

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