自乗(じじょう)とは、ある数を自らと掛ける演算、あるいはその演算結果として得られる数を指す。二乗(にじょう)、平方(へいほう、英: square)とも呼ばれる。自乗は指数 2 の冪算に等しいため、自乗は冪算の特殊な場合と見なされる。
自乗が平方と呼ばれるのはその幾何学的な意味に由来する。数を辺の長さによって表現すれば、その数の自乗は自乗される数に等しい辺の長さを持つ正方形の面積を与える。
専用の記法はなく、乗算の記法や冪算の記法が用いられる。例えば、数 x の自乗は xx または x2 と表される。
自然数の自乗は平方数と呼ばれる。
行列に対しても、自乗は自らとの積として定義される。ただし、行列の乗算では左オペランドの列数と右オペランドの行数が一致しなければならないので、行列の自乗は正方行列に対してのみ定義できる。
自乗して 0 になるのは 0 のみであるのに対し、自乗して零行列 O になるのは零行列とは限らず、任意の x, y に対し
が成り立つ。なお、零行列に何をかけても零行列なので、この形の行列は自乗に限らず 2 以上の何乗しても零行列である。
ほとんどのプロセッサは自乗専用の命令を持たず、自乗は乗算命令で実現される。
数学的には、自乗を指数を 2 とする冪関数を用いて計算しても、単純に定義通り乗算を行っても得られる結果は同じである。しかしながら、前者は指数関数と対数関数を計算する必要があるのに対して(これらの計算はテイラー展開を基礎に行われる)、後者は 1 回の乗算をするだけで済む。計算速度を重視する上で、自乗の計算を行う機会は非常に多いため、冪の計算について自乗で置き換えられる部分については可能な限り単純な乗算をするように実装することが好ましい。このような事情から、計算速度の最適化を目的とする冪関数自身の実装や冪関数を含むプログラムのコンパイラの実装では、「数 x の指数 2 の冪乗」は「数 x と x 自身の乗算」に置き換えられるようになっていることが多い。
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