『北の国から』(きたのくにから)は、フジテレビ系で放送された日本のテレビドラマのシリーズ。原作・脚本は倉本聰。主演は田中邦衛。
北の国から | |
---|---|
ジャンル | テレビドラマ |
原作 | 倉本聰 |
脚本 | 倉本聰 |
演出 | 富永卓二 杉田成道 山田良明(連続ドラマ) 杉田成道(SPドラマ) |
出演者 | 田中邦衛 吉岡秀隆 中嶋朋子 原田美枝子 岩城滉一 地井武男 いしだあゆみ 大友柳太郎 大滝秀治 竹下景子 他 |
製作 | |
制作 | フジテレビ |
放送 | |
放送国・地域 | 日本 |
北の国から | |
プロデューサー | 中村敏夫 富永卓二 |
オープニング | さだまさし 「北の国から〜遥かなる大地より〜」 |
放送期間 | 1981年10月9日 - 1982年3月26日 |
放送時間 | 金曜 22:00 - 22:54 |
放送枠 | 金曜劇場 |
放送分 | 54分 |
回数 | 24 |
BSフジ | |
北の国から'83冬 | |
プロデューサー | 中村敏夫 |
放送期間 | 1983年3月24日 |
放送時間 | 木曜 20:02 - 21:48 |
放送分 | 106分 |
回数 | 1 |
BSフジ | |
北の国から'84夏 | |
プロデューサー | 中村敏夫 |
放送期間 | 1984年9月27日 |
放送時間 | 木曜 20:02 - 21:48 |
放送分 | 106分 |
回数 | 1 |
BSフジ | |
北の国から'87初恋 | |
プロデューサー | 山田良明 |
出演者 | 横山めぐみ |
放送期間 | 1987年3月27日 |
放送時間 | 金曜 21:03 - 23:22 |
放送分 | 139分 |
回数 | 1 |
BSフジ | |
北の国から'89帰郷 | |
プロデューサー | 山田良明 |
出演者 | 緒形直人 |
放送期間 | 1989年3月31日 |
放送時間 | 金曜 21:04 - 23:37 |
放送分 | 153分 |
回数 | 1 |
BSフジ | |
北の国から'92巣立ち | |
プロデューサー | 山田良明 清野豊 |
出演者 | 裕木奈江 |
放送期間 | 1992年5月22日 - 5月23日 |
放送時間 | 金曜・土曜 21:04 - 23:22 |
放送分 | 138分 |
回数 | 2 |
BSフジ | |
北の国から'95秘密 | |
プロデューサー | 山田良明 清野豊 笹本泉 |
出演者 | 宮沢りえ |
放送期間 | 1995年6月9日 |
放送時間 | 金曜 20:04 - 23:22 |
放送分 | 198分 |
回数 | 1 |
BSフジ | |
北の国から'98時代 | |
プロデューサー | 山田良明 笹本泉 |
放送期間 | 1998年7月10日 - 7月11日 |
放送時間 | 金曜・土曜 20:04 - 22:52 |
放送分 | 168分 |
回数 | 2 |
BSフジ | |
北の国から 2002遺言 | |
プロデューサー | 中村敏夫 杉田成道 |
出演者 | 内田有紀 |
放送期間 | 2002年9月6日 - 9月7日 |
放送時間 | 金曜・土曜 21:04 - 23:37 |
放送分 | 153分 |
回数 | 2 |
BSフジ |
連続ドラマとして「金曜劇場」枠で1981年10月9日から1982年3月26日まで毎週金曜日22:00 - 22:54に放送された後、ドラマスペシャルとしてシリーズ化され、8編のドラマスペシャルが1983年から2002年まで放送された。北海道富良野市(主に麓郷地区)を舞台に、北海道の雄大な自然の中で田中演じる主人公・黒板五郎と2人の子どもの成長を21年間にわたって描く。
東京から故郷の北海道に戻り、大自然の中で暮らす一家の姿を描く。脚本は倉本聰で、北海道の雄大な自然の中で繰り広げられる。連続ドラマ放送後、8編に及ぶドラマスペシャルが放映され、フジテレビのイメージアップに貢献した。主題歌の作曲・スキャットは、さだまさし。
全24話。テレビ大賞受賞作品。異例の1年2か月間に及ぶ長期ロケを敢行。スタート当初は視聴率も一時は1桁台に落ちたものの尻上がりに上昇し最終回には20%を突破、平均視聴率は14.8%を記録した。また最終回放送日には各新聞朝刊にお礼広告を出稿。視聴者から寄せられた投書も1万通を超えた。24本の放送終了後には1億数千万の赤字を計上したが、ビデオ販売などで20数億円の利益を上げた。
連続ドラマの好評を受け、10年単位で子役の成長を追う大河ドラマというコンセプトで、当初から長期シリーズとする予定で開始。ドラマスペシャルでは常時視聴率20%超えを記録した。全ての作品がビデオ化されている。
第1話
妻の令子が家を出て半年。東京が嫌になった五郎は、幼い純と螢を連れ、故郷の北海道は富良野で暮らし始める。以前住んでいた麓郷の廃屋を家族で補修し、電気も水道もない大自然の中での、三人だけの暮らしが始まった。田舎になじもうとする螢、どうしてもなじめない純。ある朝、螢は五郎に対し、自分たちがいなくてもここで暮らしたいか、と問いかけるのだった。
第2話
秋、北海道での暮らしの準備が進む。しかし、不便な生活に馴染めない純は、東京に残る母・令子へと手紙を書き、投函を螢に託す。ところが螢は町への道すがら、手紙を川に落としてしまう。その日、麓郷の五郎を訪ねてきたのは、令子の妹・雪子だった。しかし都会の空気をまとう彼女を、五郎は快く迎えられないでいた。一方、夜になっても戻らない螢を探す男衆。騒ぎの中で、純は五郎に思いをぶつける。
第3話
冬を間近に控え開拓が進むある日の夜、雪子は身の上話とともに、改めて純の気持ちを五郎に伝えた。五郎は苛立ちに似た感情を抑えられぬまま、純を東京の令子に託す決心をする。三日後、駅を発つ純に、麓郷の主とも言える清吉は「負けて逃げ出す人たちを何人も見送ってきた」とつぶやいた。その声は純の心を静かに揺さぶる。夜、五郎と螢だけになった家の前に響く車のエンジン音。扉の向こうに立っていたのは……。
第4話
冬を迎えたある日、東京から弁護士・本田好子がやって来た。彼女は親権について五郎に詰め寄る。さらに本田は純たちに接触し、母からの手紙の存在を伝えた。翌日、純は一人で本田を訪ねる。五郎と共に令子の浮気現場を目撃した螢は、頑として父の側を離れなかった。本田と対面した純は会話の中で、半年前、夜中に電話で誰かと話し込む母の姿を思い出していた。本田は令子と電話を繋ぐ。受話器から漏れる母の声。狼狽した純はホテルを飛び出す。その先には、雪に埋もれるように、見慣れた一台の車が止まっていた。
第5話
弁護士との一件以来、父に疎まれていると感じている純。一方の五郎は、偏屈者の笠松杵次から「(お前たちが住む)あの土地は自分のものだ」と告げられる。その杵次は黒板家を訪ね、火起こしの練習をする純に開拓の苦労話をこぼす。夜、酒の席。笠松老を悪く言う大人たちに耐えきれず感情を爆発させる純に、五郎はつい手を上げてしまう。落とした帽子を踏みつけ逃げ出す純は、その後、草太にたしなめられるのだった。子供たちが寝床に入った深夜、五郎は一人、酒に酔う。頭には純の帽子が乗っていた。
第6話
マフラーを編む雪子。純は草太へのプレゼントだと考え、草太につい漏らしてしまう。雪子に惚れている草太は意を決し、雪子にキスをする。しかしある夜、草太に想いを寄せるつららが雪子を訪ね、静かな口調で「覚悟がないなら、ここにいてほしくない」と本音をぶつける。その言葉にかつての苦い恋を思い出した雪子は、一人、煙草に火を付けるのだった。加えて五郎からも農家に嫁ぐことの重みを聞かされた彼女は、麓郷の人々の想いを抱えきれなくなり、一度東京へと戻って行った。
第7話
学校帰りは中畑家で父の帰りを待つ純と螢。ある日、純は衝動的に令子に電話を掛ける。令子は涙ながらに純との会話を喜ぶ。母への思慕が募る一方、父との距離は開いていく。見かねた中畑はクリスマスイブの夜、純を諭すのだった。父の優しさや苦労を初めて知る純。夜、家に帰り着くと、そこには二人分のスキーセットが置かれ、靴下が履かされていた。夜、螢は五郎に、黙って母に電話したことを詫びる。タイミングを逃し、黙ったまままどろむ純。その頬には、涙が一筋流れていた。
第8話
年末。五郎は沢から水を引く作業を進めている。その夜、つららは草太に、旭川へ出ると告げる。しかし草太は「雪子を諦めた。一緒になろう」と返した。そして大晦日。黒板家に水が来る。抱き合って喜ぶ五郎と純、螢。教師の凉子も手伝い、初めての団欒の準備。夜、五郎は凉子を車で送るが、彼女から純との間にある溝のようなものを指摘される。一人、帰宅する五郎。そこに、正吉の家で紅白を見るというあてが外れ、落ち込む純と螢が帰ってくる。そんな二人を五郎は夜景の見える場所に連れ出し、感謝の言葉を述べる。そして純に、互いに遠慮を捨てようと呼びかけるのだった。帰宅すると、そこにはなぜか明かりが。雪子が戻ってきたのだ。
第9話
1月5日。スキーに出掛けた純、螢たちと入れ違うように、令子が黒板家を訪ねてきた。五郎は動揺しつつも彼女を招き入れる。子供部屋で螢のパジャマに顔を埋め、子供たちを懸命に感じようとする令子。夜、純、螢たちが帰宅。片付いた部屋、新しいラジオなどに、螢だけは来客の気配を感じ取る。そしてパジャマに残る匂いに、母の来訪を確信するのだった。翌日、車の中から子供たちの姿を見て、令子は空港へ。その後、黒板家を訪ねてきたのは五郎の幼馴染である正吉の母、そして草太だった。大人たちの会話から、何かを悟る純。夜の団欒で、五郎は、ラジオは母からのプレゼントだと明かす。しかし純と螢は努めて明るく振る舞うのだった。外は、風が強く吹き始めていた。
第10話
「風力発電の部品が届いた」という知らせを受け、雪子と純は車で受け取りに向かう。しかしその帰り道、富良野一帯は急な吹雪に襲われ、雪子の車はスタックしてしまう。その頃、杵次が馬そりで黒板家を訪ねてくる。開拓の苦労を知る杵次は「電力会社に電気を通してもらえ」と言うが、五郎はやんわりと拒絶するのだった。日が沈み、町は停電によって機能を失う。行方不明の純と雪子を探す術が失われ、途方に暮れる男たち。中畑の下で働くクマがつぶやいた「馬なら」の言葉に、五郎は杵次宅へと走る。やがて車の中で遠のく意識の中、雪子と純が聞いたのは、馬に付けられた鈴の音だった。老馬は風雪をついて進み、ついに雪子たちの元へと五郎を連れてきたのだった。
第11話
遭難事故後、五郎は酒と謝礼金を持って杵次を訪ねるも、すげなく追い返されてしまった。草太は自分の牧場で雪子を働かせるが、そのためつららとの距離は開いてしまう。一方、金の件で「五郎が杵次を侮辱した」と思い込んだ正吉は、純にけんかを吹き掛けてくる。五郎と雪子の仲を冷やかされた純は、草太にけんかの仕方を習う。また、草太自身も周囲に雪子との仲をたしなめられ、それが元で乱闘騒ぎを起こす。警察で事情聴取を受けている時に、草太はつららの家出を知らされ……。純は、雪子や草太の行動に憤りを感じ、ついに雪子に冷たく当たるのだった。その夜、静寂を破り悲鳴が聞こえた。再び螢に懐き始めたキツネが誰かの罠に掛かったのだ。絶句する純、慟哭する螢。しかし北の国のさまざまな騒ぎを飲み込むように、雪はまた強くなり始めた。
第12話
つららの行方はようとして知れず、罠に掛かったキツネも姿を見せない。学校では正吉がキツネの餌付けを非難するが、その後「祖父がトラバサミを仕掛けた」と凉子に告白する。事情を察した凉子は、純と螢に「北海道と都会では、人と動物の距離感は違う」と語りかける。その日、帰宅した純たちの目に映ったのは風力発電用の風車。ついに灯った電球に歓声が上がる。夜、牧場で清吉につらく当たられ帰宅した雪子も、その明かりに救われるのだった。そんな時、笠松杵次が黒板家にやって来た。罠のことを詫びに来たのだ。純たちは、素直にその言葉を受け入れる。そして「そうか。もう四カ月ここで暮らしたか」という笠松老の言葉を噛み締める。北の国で生きることに慣れていく純と螢。こうして一家は初めての冬をしのいだ。春は、すぐそこまで来ていた。
第13話
5月。本格的な春を迎え、人も動物たちも活気を取り戻す。純と雪子は入院した令子を見舞うため、東京にいた。思わぬ息子の来訪に喜ぶ令子。しかし純は母との距離を計りかねていた。病床の令子は強がるものの、回復の兆しを見せない。翌日、純はほのかな思いを寄せていた恵子たち旧友に会いに行く。皆で集まるものの、いつしか北海道の暮らしに慣れていた純は、洗練された友人たちの会話に入れず疎外感を感じるのだった。その日、見舞いに来たのは、令子の恋人・吉野だった。ただならぬ空気を察知する純。三日目、日曜。吉野の誘いで出掛けることになった純は、吉野から母と東京で暮らすように迫られる。さらに恵子からも無邪気に「母子でうちに来ればいい」と誘われ……。北海道と東京、父と母。純は分岐する自身の未来について悩み始める。
第14話
令子の痛みの原因は不明のまま、入院は続く。吉野は神経性のものだとして、純を東京に残らせてはどうかと雪子に迫る。そして純は母に対し「北海道に来たんでしょ」とこぼす。螢が気付いたのだ、と。令子は涙をこらえきれず、ついに純に「東京にいてくれる?」と問うのだった。純は東京に残ること、北海道に戻ることの間で揺れる。しかし北海道で暮らした半年は、純の気持ちを変化させていた。東京での最終日、純は母に会わずに北海道へと戻る。富良野では五郎と螢がUFOを見たと盛り上がっていた。純は正吉と、話の流れから、夜に遊びに出ることに。そして後を追ってきた螢と三人で、森の中で見たもの……まばゆい光、それはUFOか。慌てふためき隠れる三人の前を通り過ぎたのは……まさかの凉子先生。これは一体……?
第15話
UFOから降りてきたのは凉子先生なのか……純たちは混乱したまま学校へ。凉子を観察する純だが、思春期を迎えていた彼は凉子の胸ばかりが気になる。そんな中、父兄たちに匿名の封書が届いた。それはかつて凉子が起こした児童の自殺事件についての新聞記事だった。「匿名で卑劣だ」と五郎は取り合わないが、笠松杵次は少々過剰に反応する。そして小学校での保護者会の日。酔って現れた杵次は凉子に「記事は事実か」と詰め寄る。全てを包み隠さず話す凉子。保護者会は混乱の中で幕を閉じた。夜、酔った杵次が五郎を訪ねてくる。そして「女房同然」の馬を手放したことを、涙ながらに語るのだった。大雨の中、杵次は自転車で帰っていく。翌朝、純と螢が学校に向かっていると、川に大人が集まっていた。そこには、杵次が倒れていた。
第16話
杵次の通夜の準備が進む。しかし正吉は現実を受け止めきれず、姿を消した。彼の行方を捜し当てたのは螢だった。そこは、純が東京に行っている間に杵次に教えられた「木の上の家」だった。そして笠松家では通夜、葬式が行われた。酔った清吉は、同じ時代を生き抜いた杵次への思いを語る。北海道開拓の記憶……その言葉はあまりにも重いものだった。翌日、黒板家を訪ねてきたみどりと正吉。酒を酌み交わす中で五郎が杵次の材木を引き取ったことを知ったみどりは、心から喜ぶ。その数日後、純たちは「正吉が町を離れた」と聞かされる。笠松家の前に立つ清吉は「また廃屋が増えた」とつぶやくのだった。厳しい現実にさらされながらも、黒板家の三人はたくましく生きていく。ついに、新しい丸太小屋を建てる計画が持ち上がったのだ。
第17話
丸太小屋作りに没頭している五郎。そんなある日、雪子が東京から戻り、令子が北海道に来ていると告げる。ついに令子との離婚の交渉が始まった。令子は最後に子供たちに会いたいと望み、五郎はそれを認める。令子と純、螢はラベンダー畑へと出掛けるが、螢は令子と口を利こうとしない。そんな螢に純は「お前は冷血動物だ」という言葉をぶつけるのだった。夜、令子が病院に担ぎ込まれたと聞き、五郎は急いで見舞いに行く。別れるとはいえ、令子の回復を願う五郎だった。翌日、東京へ帰る母を見送る駅。その場に来なかった螢。走り出す列車。線路に沿うように流れる川、その向こうに走る小さな一人の少女の姿……それは、螢だった。夜、涙の跡を付けて眠る螢に、純は……。そして、短い夏が始まる。
第18話
富良野の夏の風物詩、イカダ下り。皆、グループに分かれ思い思いのイカダを作っているが、純と螢は中畑たちの「四畳半」号に乗ると言い、五郎は不機嫌に。それでも7月26日の本番を迎え、大会は大いに盛り上がる。川を下るイカダの群れ。途中、五郎はこごみと名乗る女性と知り合う。そんな賑わいの中、雪子は川岸に一人立つつららの姿に気付く。祭りの後、つららを探す五郎や雪子、草太たち。しかし混乱する草太は思わず雪子に冷たく当たり、ついに自身の複雑な想いを吐露するのだった。結局つららの姿は見当たらず、五郎たちは帰宅する。ところが凉子とUFOを見に行くと言って出かけた螢が、夜9時を回っても戻らない。胸に広がる不安を振り払うように、思わず外に出て夜空を見上げる純と五郎。そこには降るような星空が広がっていた。
第19話
警官や中畑らの協力もあって、螢が無事に戻ったのは夜中のことだった。螢は寝床で純にUFOのことを興奮気味に語るが……。そして7月の末、富良野名物のへそ祭りが行われる。その日、ボクシングジムで取材を受けるという草太を見に行った純は、記者たちに「担任の教師と妹がUFOを見に行き、夜中まで帰らず騒ぎになった」と漏らしてしまう。祭り会場にいた五郎はこごみと再会。東京を引き上げてきた経験を持つ二人が親しくなるのに、さほど時間は必要なかった。そんな五郎の元に届けられた離婚届。落ち込む五郎は再びこごみのもとへ向かい、彼女の部屋で一夜を過ごす。明け方、家に戻った五郎だが、螢は五郎の服にラベンダーの匂いを嗅ぎ取り……。新聞の地方版に「小学校教員が遭難をかくす」の見出しが踊ったのは、そんな朝のことだった。
第20話
こごみに夢中になる五郎と、それに気付き始めた螢。ある日、ついに螢は五郎が女性と親しげにしているところに出くわしてしまい……。翌日、テレビ局の男がUFO目撃の件で螢を訪ねてきた。迷いながらも取材を受ける螢だが、番組内での大人たちの心ない言葉に深く傷付けられるのだった。螢を励まそうとピクニックを提案する五郎。そこでこごみを紹介される純と螢だが、螢はその場を逃げ出してしまう。二日後、ついに凉子の転勤が決まった。責任を感じる純は凉子に詫び、自分もUFOを見せてほしいと頼み込む。体調不良の中、約束の場所に行った純は一人、森へと入っていく。薄れゆく意識の中で目撃したものは、果たして……。こうして富良野の短かい夏が終わる頃、五郎はある噂を耳にする。すすきのの風俗店に雪子と名乗る麓郷出身の女がいた、というのだ。
第21話
試合に向けて汗を流す草太。しかし会長の成田新吉は、草太のどこかうわついた思いを見抜いていた。五郎はこごみと親しくしているが、それを知った中畑は、五郎にあまり深入りしないよう忠告する。そしてつららが札幌の風俗店で働いているという噂を確認に行った清吉だが、すっかり垢抜けたつららの姿に戸惑いを隠せないでいた。いよいよ草太の試合が始まる。しかし新吉の予想は的中、草太はリング上で打ちのめされ……。試合後、会場で雪子の肩を叩くのは、つららだった。喫茶店で楽しげに語るつららだが、純は雪子の涙に気付く。一方、家では螢が五郎に語りかけていた。「お父さんに好きな人ができても平気だよ」。五郎はただ、黙っていた。こうして夏休みが終わり、純たちの本校への登校が始まった。富良野は、秋が始まりかけていた。
第22話
10月、丸太小屋の建設が始まった。賑やかに作業が進む中、純と螢は山に入り、五郎への内緒の誕生日プレゼントにと山ぶどうを集めていた。そんな中、こごみが作業場を訪ねてくる。螢はこごみと打ち解けるが、男たちは気まずさを隠せない。夜、螢が彼女を五郎の誕生日パーティーに誘ったことなどについて、純は激しく反発するのだった。五郎は純に「職業の格なんてない」と注意しながらも中畑や純の思いを汲み取り、駒草に向かうため車に乗り込む。追ってきた雪子は、令子が吉野と一緒になると知らせてきた便りを五郎に見せる。五郎の答えは「良かったじゃないか」だった。駒草でパーティーのことについて語る五郎、全てを察して笑顔を見せるこごみ。そこに一報が入る。手を震わせながら店内に戻った五郎は力なくつぶやいた。「女房が死んだって」。
第23話
葬儀のため空路、東京へ向かう純と螢、雪子。吉野も顔を見せる一方で、五郎がなかなか来ないことに憤懣やる方ない表情を見せる純。そこに清吉がやって来た。その優しい笑顔に雪子は慰められる。翌朝到着した五郎に冷たい表情を見せる大人たち。その頃、純と螢は吉野に誘われ、新しい靴を買ってもらっていた。傷んだ今の靴……父が買ってくれたその靴は処分されてしまう。そして葬式が終わる。皆に翌朝一番に帰ると告げ「薄情だ」と言われる五郎だが、一人泣いている螢には本心を吐露する。その晩、純は大粒の涙を流し泣いている五郎を目撃する。言葉通り早朝に帰った五郎を「来るのも遅かった」と蔑む大人たちに、清吉は静かに言う。「あいつ、一昼夜かかって汽車で来たんですよ」。その言葉に、純と螢は処分されたはずの靴を探すため、夜の街を駆け出すのだった。
第24話
母の葬儀から数日、列島を北上した台風は北海道に達していた。雪子は草太に便りを書く。そして互いの成長を期し「いつかまた富良野で会えるといいですね」と締めくくるのだった。純は短い東京滞在の中で、自然の中で生きることの意味に気付き始める。夜、螢が母の書きかけの手紙を発見した。夏、北海道を訪ねた後に書かれたもので、富良野の雲に触れ「あんなに雲がきれいだったってこと」で止まっていた。翌日、純と螢が富良野に帰ってくる。一家は新しい丸太小屋で夜まで過ごし、台風で損壊したという「最初の家」を見に行く。そこで螢はキツネを見つける。罠で足を一本なくしたあのキツネが帰ってきたのだ。その晩、初めて丸太小屋で眠る純と螢。純は夢の中で母に手紙を書いていた。それは、麓郷で過ごした一年の記憶。「母さん、寂しいよ、とってもつらいよ。でも僕や螢のことは心配しなくてもいいよ。僕、少しこの一年で強くなったんだ」「僕らの生活が見たかったら、いつでも富良野に来てごらん。何もない町だけど、僕ら、いつもいるよ。父さんもいるよ」「母さん。雲が今日もきれいです。母さんが見たという雲は分かりません。だけどその雲、僕と螢は、どれだったんだろうと時々話しており……」。
令子の葬儀から一年半、季節はクリスマス。東京に出稼ぎに行っていた五郎が12月30日、麓郷に戻ってくる。賑やかな年の瀬を迎える中で入ったのは「正吉が家出した」という一報だった。夜、正吉を発見した純たちは彼を丸太小屋に連れ帰る。翌朝、黒板家を訪ねてきた正吉の母・みどりは「しばらく正吉を預かってほしい」と頼むのだった。しばらく後、もう一人の来客があった。五郎の父や杵次たちとともに麓郷開拓の祖とも言われる沢田松吉だった。東京で成功し隠居したという松吉の帰郷に宴席が設けられるなど、町は活気づく。そんな中、五郎を訪ねてきたのは、借金取りの男たちだった。五郎はみどりが作った借金700万円の連帯保証人になっていたのだ。金を払うか土地を手放すか、五郎は追い込まれていく。そうとも知らず「家出中の自分に螢が年賀状をくれた」と浮かれる正吉。しかしひょんなことから借金問題が純たちの耳に入り、五郎と純、正吉の関係に軋みが生じる。そして正吉はまたも黒板家を飛び出してしまった。その夜、再びみどりが姿を現した。みどりは「もうどうにもならん」と呻めき、汽車で富良野を出ていくという。そんなみどりに、五郎は松吉や自分の半生を引き合いに出し故郷の良さを説く。そして「正吉を預からせてくれ」と申し出るのだった。朝、丸太小屋の雪おろしが進んでいた。正吉だと三人は直感するが、その姿は見えない。正吉は屋根から落下し、雪の中に埋まっていた。一命を取り留めた正吉が眠る病院。仲間たちが五郎を訪ねてきた。皆が少しずつ金を工面したという。ただただ頭を下げる五郎。そんな話に松吉は援助を申し出るが、松吉の孫娘、妙子は涙ながらに言う。「都合のいいことばかり思い出さないでよ」。郷里を出奔した松吉の記憶はもはや曖昧で、財力など持ち合わせていなかったのだ。しかし五郎は松吉の言葉に真摯に向き合い、礼を述べるのだった。夕刻、松吉は、雪の中で豆を蒔いていた。その目に映るのは、かつての開拓の同志たち。松吉の心は、自身が豆大臣と言われたあの頃へ、村が豆で豊かになったあの頃へと旅していた。そして1月10日、再び五郎は出稼ぎのため、東京へ向かう。純、螢、正吉の三人の暮らしが始まろうとしていた。
夏、また少したくましくなった純と正吉。夏休みのある日、純と正吉は、東京から来た少年・努にパソコンのことなどを自慢される。さらに五郎のことを悪く言われた純と正吉は、努のパソコン雑誌を盗んでしまう。どちらが先に盗ろうとしたか言い合う中で、正吉は「やっぱりお前は汚い奴だ」と言い放つ。純は、まだまだ雪が残る春のことを思い出していた。その日、純と正吉は濡れた衣類をストーブの上に掛けるが、それがきっかけで丸太小屋が全焼してしまったのだ。純が言い訳を重ねる中、正吉は自分のせいだと警察に言い……。そうした夏休みのある日、純と五郎は、五郎が風力発電を諦めていることについて、言い合いをしてしまう。つい、純に強く言い返す五郎。草太を捨てるように東京に帰る雪子にも納得できないでいた彼は、感情を持て余し、こごみの店へと向かう。翌日、純と正吉は努と川で遊ぶもけんかを始めてしまい、雨の中、置き去りにされた勉は軽い肺炎を起こす。その責任について衝突する正吉と純。正吉は再び純に「相変わらずお前は汚い野郎だ」と言うのだった。その頃、五郎たちは東京へ戻る雪子を駅で見送っていた。目ざとく駅の外にいる草太を見つける螢。二人は駅から離れ、川べりから雪子を見送る。雨に打たれる努を見つけたのは、その帰り道の草太と螢だった。夜、純は五郎に詰問される。しかしそこでも純は五郎の言葉を受け止めきれず、全てを正吉のせいにしてしまう。そして翌日、ついに正吉が去る。みどりが迎えに来たのだ。すれ違いのまま最後の時が来る。それでも二人は、背中越しにぎこちなく仲直りを果たす。その帰り、黒板家の三人はラーメン屋へ。食事に箸を付けない純、何かを察する父と妹。駅で親友とエールの交換をしていた純は、春から夏のいろいろな出来事について、五郎に「僕が卑怯で弱虫だった」と吐き出すのだった。涙ながらに語る息子に「自分もいつの間にか人に頼ろうとしていた。だらけてた」と本音をこぼす父。家族の語らいを遮ろうとするラーメン店の店員に、思わず「子供が、まだ食ってる途中でしょうが」と言葉を荒らげる五郎だった。三人は手を繋ぎ、肩を組み、町を後にする。富良野名物の筏下りが終わり、早い秋がすぐそこまで来ていた。純の薪を割る音が、森に響いていた。
中学三年生になった純は機械いじりが好きで「ペンチ」というあだ名で呼ばれていた。ある日、純は朽ちた風力発電機の前を通りかかり、そこで出会った大里れいに一目惚れする。その頃、草太は純の友人である広介の姉・アイコに会っていた。つららが結婚し、幸せに暮らしていることを聞き、安堵する草太。翌日、純は風力発電のことで電気屋・シンジュクを訪ねていた。その帰り、純とれいは偶然再会するが急な雨に降られ、平原に立つ大里家の納屋へ逃げ込む。濡れた服を脱ぎ、乾かしながられいと交わした会話の中で、純は東京の定時制高校進学という選択肢を知る。やがて大里家に出入りするようになった純は、れいの父・政吉の計らいで、風力発電機の修理に取り組み始め……。そんなある日、大雨で純の友人・チンタの家の畑が大きな被害を受ける。政吉は「化学肥料に頼ったからだ」と冷たく突き放し、純も同調する。そんな純に対し、五郎はつい、れいとの関係を咎めるような物言いをするのだった。純は、父に黙って少しずつ巣立ちの意志を固めていく。ところが五郎は純と東京の雪子の間で交わされた手紙を見つけ、純の気持ちを知ってしまう。そして五郎の誕生日、純はついに完成させた風力発電を披露する。草太やアイコたちも駆けつけている中、しかし五郎は自分に何の相談もしなかった純に「俺はそんなに頼りにならないか」と激しい感情をぶつける。思わず家を飛び出す純。追ってきた草太は「男は見栄で生きてるもんだ」と諭し、純も父に詫びるのだった。その夜、麓郷に霜が降りる。対策に追われる大里一家だが、政吉は誤って妻をコンテナの下敷きにしてしまい……。これが、秋の出来事だった。
冬。久々に再会した純とれいは「クリスマス、24日の晩、あの納屋で会おう」と約束する。さらに「卒業式が終わったら、札幌で見つけた天窓のある喫茶店に行こう」と。ところがその日、大里家は人知れず、町を去っていた。思い出の納屋へ向かった純が見つけたのは、一通の手紙と、カセットプレイヤーだった。再生ボタンを押すと、二人の思い出の曲、尾崎豊の「I LOVE YOU」が流れる。帰ろうとする純は、足跡に気付いた。愛おしそうに納屋を一度振り返った、れいの足跡。立ち尽くす純は東京へ行く意義を見失いかけていた。そんな純を一喝したのは迎えにきた螢だった。しかし螢はその後、優しく純の頭の雪を払う。家で待っていた五郎も不器用ながら、巣立とうとする純を応援するのだった。いよいよ出発の日。頼んでいた東京への長距離トラックがやって来る。父は息子の手をしっかりと握る。妹は兄の手を優しく握った。トラックの助手席に乗り込んだ純は、ヘッドホンで音楽を聞き始める。れいのことばかりが思い出されていた。と、不意にその回想が妨げられる。運転手の男が顎で差した先に、封筒があった。「しまっとけ」と男は言う。「 ピン札に泥がついてる。オマエの親父の手に付いていた泥だろう。おら受け取れん。お前の宝にしろ」。一万円札の泥に蘇る開拓の記憶。幼い日の思い出。純の目から大粒の涙がこぼれ落ちる。トラックは、雪残る北海道を、東京へとひた走る――。
1988年、秋。始発で旭川の定時制看護学校に通い、日中は病院で甲斐甲斐しく働く螢。悩み多き日々の中で、螢に初恋が訪れた。相手は同じく始発に乗っている浪人生の勇次だった。ささやかなデートの日々。しかし互いの進学・就職によって、別れが来ることは分かっていた。二人は勇次の故郷を訪れ、悲しい現実に抗うかのように、キスをする。勇次は木に二人のイニシャルを刻む。こらえきれず涙を流す螢。さまざまな現実と向き合いつつ戴帽式を迎えた螢は、純に手紙を送るのだった。
純は、東京に飲み込まれるような暮らしをしていた。髪を赤く染め、夜はバイクを乗り回す。同世代の友人たちに追いつこうともがいていたのだ。昼間の仕事も長続きせず、今は工場で働いていた。ある日、純は職場の友人・アカマンから、工場の先輩・水谷への借金、沖縄の家族の病気のことを打ち明けられる。家族を思う言葉が純の胸を刺す。富良野を出る時のあの泥のついた一万円札二枚は、純のお守りになっていた。そんな純は、友人・エリの兄のつてで400ccのバイクを手に入れる。ところがそのバイクが盗難車だったことから警察の聴取を受ける。同じく事情聴取された水谷は、純への怒りを隠さない。気まずい工場の更衣室。純は、お守りの一万円札がなくなっていることに気付き激しく動揺する。アカマンが「少し借りて水谷に渡した」と告白するが、皆のロッカーを漁った純を水谷は純を殴打する。一方的に殴られた純は、バールのようなものを手に、水谷を殴り倒すのだった。警察から戻った純を、雪子の夫・利彦が責める。「理由は聞いてくれないの?」と繰り返す純は家を飛び出し、己の拳を激しく電柱に打ち付けるのだった。翌日、純は工場をクビになった。訪ねてきたのはエリだった。事情を聞き、水谷から一万円札を取り返して来たのだ。使われたもう一枚を探すため、店から店へと歩き回るエリの姿に、純は心を打たれる。暗い部屋に戻り、故郷を思う純。その富良野では、五郎に純の傷害事件の報が入っていた。五郎は動揺を抑え、いつものように螢を駅で迎え帰宅するが、誰もいないはずの小屋に向かい、足跡が。玄関に入った五郎の目に飛び込んでくる脱ぎ捨てられたジャンパー。階段を駆け上る五郎。そこには、拳を怪我した純が丸まって眠っていた。
目覚めた時、階下には歴代の番長たちが揃っていた。純はたちまち捕まり頭を黒く染められる。嵐のように去っていく番長連を見送り、黒い髪をうれしそうに触る純。そして五郎が再び丸太小屋作りに挑戦していることを知り、作業現場へと向かう。何度も頭を下げる純を、五郎は笑顔で迎え入れるのだった。不意に五郎が「螢が恋をしているらしい」とうれしそうに言う。その後「あいつも来年、ウチを出て行く」とも。しかし、それでも優しい父の表情。二人は夜の列車に螢の恋人を見に行くが、螢は一人だった。勇次との別れが決まったのだ。気丈に振る舞う螢だが、父からの温泉の誘いに「行けない。あの人が行っちゃうの」と答えるのが精いっぱいだった。その夜、純は螢に父の丸太小屋に全員の部屋があることを言う。そこでも螢は「その話されると私泣いちゃうから」と押し殺すように答えるのだった。勇次の出発の日。螢がプレゼントをそっとベンチに置く。浪人生の勇次は家族の手前、一人でベンチに駆け寄り、包みを拾う。そして代わりに手紙を残す。こうして勇次は去っていった。彼からの手紙には、故郷でのデートを思い返すように見たという夢の話が書かれていた。帰宅した螢は二階に駆け上がり、声を殺して泣くのだった。その夜、純は五郎の風呂に薪をくべながら、事件のことを告白していた。理由を問われ「大事なものをそいつに取られたから」と答える。「それは人を怪我さすほど、大事な物だったのか。なら、仕方がないじゃないか。男は誰だって、何と言われても闘わなきゃいかんときがある」。それが父の答えだった。そして富良野に戻りたいとこぼす純に、五郎は巣立ちを促すかのように優しくエールを送る。螢が飛び出してきたのは、その時だった。螢が持つラジオから流れてきたのは、札幌にいるれいからのリクエスト曲、二人の思い出の曲だった。純は急ぎ、札幌に向かう。ついに二人は再会し、かつてれいが語った天窓のある喫茶店へと行くのだった。会話の中で、幼い頃を思い出す。だらしないと思っていた父の強さを、父が一人で背負ってきたものを、思い返す。ふと、れいの手が純の傷に触れる。やがて二人はだまって駅へと向かう。それが、正月の出来事だった。
――思い出を酒場で語る五郎は、ひどく酔っていた。隣り合わせた観光客に絡んでいく。東京にいる純のこと、死に別れた令子、旭川へ移っていった螢のこと。その言葉に自慢と寂しさが交錯する。そんな五郎の姿に中畑は涙を堪えきれず、五郎を担ぐようにして店を出る。二人は、雪に煙る路地を、もつれるように歩いて行った。
五郎は富良野の町中で医師の財津を待ち伏せする。翌年旭川の看護学校を卒業する蛍を財津の医院に就職させてもらいたいからだ。雪子が息子の大介を連れて富良野にやってくる。五郎は前の家が雪でつぶれて中畑木材の資材置き場の小屋で愛犬のアキナと暮らしている。前から続けている丸太小屋作りはすべて自力でやるために大工の金治に弟子入りしていた。山の上に畑から出た石を運び、家の基礎と大きな風呂が完成していた。
蛍は休みになると帯広の大学にいる勇次の所に通っていた。帯広に行くには富良野で列車を乗り換えるが、蛍は柱の陰に身を潜めて人に見られないようにしていた。後ろめたかったが、帯広に着き、勇次やその仲間に会うと忘れ去ってしまう。勇次は蛍に卒業後は札幌の病院に勤めながら正看護師の資格を取るよう勧めているが、五郎のことを思うと決心できないでいる。旭川に戻る途中、列車内で自衛官となった正吉に再会する。懐かしむ2人であったが、蛍は正吉にここで会ったことを内緒にしてくれと頼む。
へそ祭りの日、蛍は富良野に戻るが、札幌の病院に勤める勇次の伯父に会うのが目的だった。人ごみの中、勇次と手ぶりで合図を送る蛍の肩を正吉が叩く。雪子を見送った蛍は旭川に帰ると嘘をついてプリンスホテルに向かう。正吉は蛍と前に会ったことを隠して五郎の家に向かう。正吉は茶封筒に入れた現金を差し出し、自分も息子だと五郎に言う。感謝して受け取る五郎はもう一人の息子を思う。
純は東京でなんとなく生きていた。毎週土曜日札幌にいるれいと同じ映画のビデオを見て電話で感想を言い合う遠距離デートが楽しみではあったが、マンネリも感じていた。純はピザの配達員をしているタマコと知り合い、距離を縮める。タマコはビデオ見放題のラブホテルで一緒に映画を見ようと提案する。渋谷のラブホテルに来た純とタマコ、タマコは映画鑑賞会に浸るが、きっかけが分からないまま純は強引にキスをする。我に返ったタマコが悲鳴を上げて純を押しのけるが、気まずい空気に耐えられなくなったタマコが純に抱き着き、二人はそこで初体験をする。それから二人は映画観賞会と称した逢瀬にはまってしまう。
秋になり、富良野では草太とアイコの結婚式が草原の中で行われようとしていた。嫁不足に悩む青年会が主催し、テレビの取材も呼んだイベントであったが、妊娠していたアイコはトラクターに乗せられ流産してしまう。同じ頃、純はタマコから妊娠したかもしれないと告げられる。
不安な日々を過ごす純はタマコを避ける。タマコは一人で堕胎手術を受ける。純はタマコの叔父に殴られ、父親の連絡先を聞かれる。数日後大きなカバンを抱えた五郎がやってくる。土下座を続ける五郎に叔父は蛍がそこらの不良にはらまされたと想像してみろと言い放つ。落ち込む五郎はふと流れてきた長渕剛の「西新宿の親父の唄」という曲に勇気づけられる。富良野に戻った五郎はタマコの叔父の「誠意とは何か?」と問う言葉を反芻する。そして丸太小屋用の材木を売って金を工面する。建築現場の山に戻った五郎は石だけで家を作ることを思いつく。呆れる中畑だったが、五郎は「西新宿の親父の唄」を歌って井戸も自力で掘ると言う。「やるなら今しかねえ。」
11月の終わり、タマコが純の前に現れる。タマコは五郎から送られた100万円の現金書留を純に渡すと東京はもう卒業すると言い残して鹿児島に帰っていく。五郎が井戸を掘っているところにこごみが訪ねてくる。大晦日に石で作った風呂に子供たちと一緒に入ることを楽しみにしていると語る五郎にこごみは思わず涙ぐむ。
大晦日五郎は風呂の準備をしてから、純と蛍を迎えに行く。蛍を待つ間、純は100万円の現金書留を五郎に返す。タマコの言葉を借りて自分はもう大人だから自分のしたことの責任は自分で背負うと言う純に五郎は余計なことをしたと言いながらも出した以上は見栄があると強引にお金を純に押し付ける。蛍は勇次と一緒に駅から出てくる。そして正看護師の資格を取るために札幌の病院に就職を決めたと言い放つ。五郎は純と家に戻ると悄然と座りこんでしまう。暗くなっても戻らない蛍を純は五郎の車で迎えに行く。五郎は石の家に向かい、凍ってしまった風呂を炊き、屋根の雪下ろしをしながら蛍のことを思う。ふと足を滑らせた五郎は落下して丸太の下敷きになる。吹雪はどんどん激しくなる。五郎は雪に埋もれたシートを針金で引き寄せて屋根にするとたばこの包みや手ぬぐいに火をつけて暖をとろうとする。純は中畑や金治の家を訪ね回る。そのすきにアキナがどこかに駆け出して行く。五郎の意識が薄れゆく中、玲子が現れる。五郎に対し玲子は子供たちは巣立ったばかりだから巣を守れと言う。玲子の姿が消えるとアキナが駆けてくる。午前3時を過ぎ、金治が純と蛍を連れて石の家の山に向かう。吹雪は止み、雪に埋もれたシートをめくると五郎が倒れている。パニックになって叫ぶ蛍に金治は平手打ちをし、お前は看護婦の卵だろうと気合を入れる。純は中畑に助けを求めに走る。
2日後、金治は石の家に行っていた。落ちている針金や燃やそうとして柄を削ったスコップなどを指さし、これは運じゃない、あいつは自分で生きたんだと純と蛍に言って聞かせる。富良野に残ると言う蛍にそんなことをしても父さんは傷つくだけだと純は蛍を札幌に送り出す。そして純が富良野に戻ると言う。「東京はもう卒業したんだ。」
1994年富良野に戻った純は市の臨時職員としてごみ収集車に乗っている。純は自衛隊を退官した正吉と町中のアパートで同居し、3年前の事故で足を傷めた五郎にも一緒に暮らすよう言っているが、五郎は自分で作り上げた石の家に風車で井戸水をくみ上げる装置を作ることや有機農業に夢中である。純は粗大ごみの集積場を山部山麓デパートと名付け、家具や家電を修理しては自宅で使ったり、知り合いにあげたりするのを趣味にしていた。そこに間違って粗大ごみに出された柱時計を探すシュウが来る。その時計は純が修理して五郎の家にかけていた。時計をシュウに返して北時計(カフェ)で二人は昔話をする。シュウもまた東京にいたが、語りたくない過去を持っている。純は札幌にいるれいと遠距離恋愛を続けていたが、れいは他の男から結婚を申し込まれている。純は石の家にシュウを連れて行き、五郎を紹介する。五郎の生きざまにすっかり惚れ込んだシュウは時々一人で石の家に行くようになる。ある日札幌で勇次に会った純は、蛍が勤務先の医師・黒木と不倫に陥り、駆け落ちしたと聞かされる。純はシュウと楽しそうに作業をする五郎を見て蛍のことを話すことができない。そんなある日幼馴染の広介がシュウのことで意味深な言葉をかける。純は正吉に問い正すが、その時2人の前に蛍が現れる。純は黒木の息子に連絡しようとするが、落ち着き先が決まったら必ず連絡させるという蛍に金を渡し、根室に向かう駅まで送って行く。純はその後ろ姿に強い女になった妹を見ていた。
正月休み純は広介にシュウがAV女優だったことを知らされる。荒れる純に草太は優しく諭すが、吹っ切れない純はシュウに辛く当たってしまう。一方五郎の家に蛍の上司である婦長が訪ねてくる。歓待する五郎だったが、彼女の夫が蛍と不倫の末、駆け落ちしたことを聞かされ愕然とする。五郎は一緒に蛍に会いに行ってくれと純に頼む。根室の落石に着いた五郎は蛍にかける言葉が見つけられずに酒を飲むしかできない。責めることなく、優しく言葉をかける五郎に蛍は自分で自分を責めていると激しく泣く。
ある日シュウは五郎を山奥の野天風呂に誘い、純が自分の過去の秘密を知ったらしいこと、それがひっかかって二人の関係がダメになりそうだと話す。結婚式を翌日に控えたれいから電話を受けた純はいつか二人で見た映画のように花嫁をさらいに行くと言う。翌朝車に置かれたシュウのメモをポケットにしまうと純は札幌に向かう。れいの幸せな姿を見届けた純は蛍に思いをはせる。部屋に戻ると五郎が来ており、シュウが待つ北時計に行くように勧める。ごみの車に乗るようになってよく手を洗うようになった純に五郎は人を長くやっていると誰でも汚れの一つは付くものだと諭すと、北時計に連れて行く。シュウは手紙を書いていた。シュウは東京でどうしてもCDデッキが欲しくてAVの誘いに乗せられた経緯を読み上げようとする。純はその手紙を破り捨てると山部山麓デパートにCDデッキを取りに行こうと誘う。
1997年初夏、仕事で根室を訪れた正吉は蛍と会って富良野の人々の近況を話す。純は鏡台を完次の新婚宅に届ける。完次はチンタの兄で嫁のツヤ子はチンタの元彼女だった。完次は草太に勧められて農地を広げる一方、五郎の助けを借りて有機農業に取り組んでいる。清吉の死後、牧場を継いだ草太は近代的な牧場経営と大規模農業に傾倒しており、完次と五郎を否定していた。純は上砂川のシュウの実家にあいさつに行く。そこには無口なシュウの継父とシュウの兄姉らが揃っており、純はすっかり委縮してしまう。シュウは兄によって上砂川に連れ戻される。シュウは2人の関係を認めてもらうための試練だと受け入れるが、純には不安しかなかった。雪子が井関と離婚して富良野に戻ってくる。雪子のアパートに家具を運んだ純は代わりに大介に電話をかけてほしいと頼まれる。息子の大介は父親の元に残っていた。
ヘソ祭りの朝、中畑が純を呼び止め蛍が金を借りに来たことを告げる。夕方になり、純が正吉に呼び出されて喫茶店に行くと蛍がいた。純は厳しい口調で問い詰めるが、蛍は事情を話さない。そして2人の隙をついて行方をくらましてしまう。深夜牛の出産作業をする草太の所に蛍が現れる。草太は理由も聞かずに蛍に金を貸し、札幌まで送っていくと言う。蛍は黒木の子を妊娠しており、札幌で一人で生み育てるつもりであることを話す。
8月になって異常気象による豪雨が続き、完次の農地に疫病が見つかる。五郎の助けを借りて苗を処分するが、五郎は草太には内緒にするように言う。草太は正吉を呼び出し、蛍と結婚しろと命じる。蛍が一人で子供を産もうとしている、黒板家はお前の家族だと説得する。正吉は札幌に蛍を訪ねプロポーズするが、蛍はそれを受けられない。正吉は母親のみどりから加藤登紀子の歌「百万本のバラ」を聞かされ、どこにでも咲くオオハンゴウソウを百万本摘んで蛍に贈る。純や完次はその姿をいぶかしむ。盆休みの後、純は正吉から蛍を妊娠させてしまったこと、結婚したいことを打ち明けられる。動揺して怒鳴りつける純だったが、正吉は車で待つ蛍の所に純を引きずって行く。二人の意思に圧倒された純は二人を富良野プリンスホテルに泊める。翌朝みどりが純の部屋に現れるといきなり正吉を殴り始め、純には土下座して詫びる。3人は五郎の家に行き、正吉が蛍をくださいと五郎に言う。五郎は泣き笑い顔で3人の手を握りしめると令子の遺影の前で声を上げて泣く。そしてみどりに雪子と中畑を呼んで宴会を始め、騒いでいるところにツヤ子が駆け込んでくる。完次の奥の畑に疫病が出て、隣接する草太に伝えたところいきなり大型トラクターで乗り込んで来て農薬をまき始めたのだった。5年かけて生き返った土がまた死んだと完次は泣き崩れる。
秋になり、蛍は結婚式まで五郎の家で暮らすことにする。その頃、麓郷では蛍の子が正吉の子ではないという噂が流れていた。もやもやした五郎は上砂川にシュウを訪ねる。そして純は自分の気持ちに素直になれないから、シュウのほうから純に会いに来てやってほしいと頼む。収穫を終えた頃、完次は借金で行き詰まる。草太は農業をやめて出ていけと言い放つ。純と正吉が駆け付け、深夜になっても戻らない完次を探し回る。完次は廃屋で農薬を飲もうとしているところをチンタに保護されていた。純は草太のことが許せない思いを五郎に訴えるが、五郎は草太をかばう。その一方で完次が自分の畑にミミズが戻ったと感謝されたことが嬉しかったと語る。
シュウが純に会いに来る。シュウは純への気持ちを書き綴った革のノートを贈る。純が蛍の噂のことを話すとシュウは正吉ならあり得ると言う。草太は純を呼び出し、臨時職員を辞めて牧場を手伝えと迫る。手始めに借金のカタに取った完次のトラクターを運ぶのを手伝えと言う草太に純は完次からすべて取り上げたと激しく反発する。翌日純が雪子の店を訪れている時、草太が事故で死んだという電話がかかってくる。草太は一人でトラクターを運ぶ途中、誤ってその下敷きになっていた。手伝いを断ったせいだと自分を責める純をなだめる言葉がない五郎はシュウにそばにいてやってほしいと電話をかける。草太の遺体が荼毘に付される煙を見ながら純は蛍の正吉への気持ちを確かめる。
四十九日の後、純と正吉は新吉とシンジュクに呼び止められ、牧場を継がないかと勧められる。一方、時夫と広介に呼び出された純は草太が準備していた正吉と蛍の盛大な結婚式の計画を聞かされる。蛍も正吉も嫌がるが、麓郷の人たちは盛り上がる。正吉は牧場を継ぐ方向に気持ちが傾く。純は蛍の噂を気にかけるが、正吉は蛍のことは任せておけと言い切る。結婚式の朝、花嫁衣装に身を包んだ蛍はかしこまって五郎、純、雪子に挨拶をして石の家を後にする。中畑が五郎を迎えに来ると花火が上がり、キャデラックのリムジンが停まっているのを目にした五郎は怒りだし、結婚式には出ないと炭焼きを始めてしまう。中畑と純が何とか式場に五郎を連れて行くも五郎はひたすら酒をあおるばかり。やがて愛子がスピーチに立つとカセットテープに残されていた草太のスピーチ練習の声が再生される。純と蛍が布部駅に降り立った日からの様々な思い出を語る草太の声に参列者は皆これまで通り過ぎてきた時代に思いをはせる。すっかり酔いつぶれた五郎を抱えて石の家にたどり着いた時、五郎の懐に固いものが入れられていることに純が気付く。それは令子の遺影であった。
蛍は総合病院で看護師として働きながら一人息子の快を育てていた。草太の牧場を継いだ純と正吉だったが、2年前に破綻し、借金を分担して別々に富良野を出て行っていた。五郎は快を保育園に迎えに行き、石の家に連れて行って遊ぶのを楽しみしていたが、勝手に連れて行くなと蛍は怒る。雪子の元に大介がやってくる。雪子の家は五郎が廃棄物を資材にして建てたものだった。しかし大介は関心を示さず、雪子や五郎と話もしないで携帯電話のチャットを続けるばかり。中畑の娘すみえが婚約者を連れて帰ってくる。婚約者の清水は北大卒のエリートだが、五郎が廃棄物で家を建てていることに感銘し、すみえとの新居を五郎に建ててほしいと言い出す。五郎が清水の提案した糞で発電する装置の設計をしているとシュウが現れる。純が一番苦しい時にそばにいてやれなかったことを悔いるシュウだったが、神戸に嫁ぐことが決まり、純への別れの手紙を五郎に託して帰っていく。それを見送った五郎は腹痛で倒れこんでしまう。
純は羅臼で廃棄物処理の仕事に就いている。同僚の寅ちゃんと漁師のタクちゃんに親切にされ、浜の番屋にただで住まわせてもらっている。タクちゃんが時々家に呼んでくれることが却って純に孤独を感じさせ、家族が欲しいと思うようになっていた。鮭の遡上を見に行った純はそこで麓郷の分校で習った涼子先生に再会する。次の日曜日、涼子先生を訪ねるともう一人の教え子が招かれている。それは数日前漁港で顔を合わせたことのある結だった。その日をきっかけに純は結と付き合い始めるが、寅ちゃんとタクちゃんに結は人妻であり、夫の父の高村がトド撃ちの名人で気性の荒い人なので付き合いをやめるように言われる。
五郎は病院の検査予約をすっぽかす。蛍に検査を受けるまで快に会わせないと言われ、五郎はしぶしぶ病院に行くが、検査を重ねるにつれて自分が不治の病なのではないかと不安に襲われるようになる。病院には純の借金を肩代わりした三沢の爺さんが入院している。その家族から蛍は純が借金を返済していないことを責められ、ひたすら詫びるしかない。疲れ切って家に戻ると快がいない。パニックになった蛍は110番に電話するが、快は空の浴槽に隠れて眠ってしまっていた。五郎が教えたせいだと蛍は責め、純が借金を返済していないことで怒りを五郎にぶつけてしまう。五郎から手紙をもらった純だが、毎月の返済額と同じぐらい携帯の通信代にかけている自分を情けなく思う。純は結と会うのを避けていたが、早朝に結が番屋を訪ね、身の上を話して聞かせる。両親を亡くした結の父親代わりの高村は結にふさわしい男ができたら籍を抜くと言っており、純に結婚するつもりで付き合ってくれているかと聞く。翌日海岸に湧き出した野天温泉に呼び出された純は高村に身辺を問いただされる。中畑の妻のみずえが検査のため入院し、蛍に夢で見た五郎の廃棄物で作った家が並ぶ「拾ってきた町」の話をする。すみえの家の建設現場では携帯の出会い系サイトで知り合った女性を待つという大介とそれが理解できない五郎が言い合いになっていた。激高した中畑は大介を殴り飛ばし、携帯電話を川に投げ込んでしまう。五郎が声をかけると中畑はみずえのガンが再発し、余命が長くなく、急いですみえの家を建ててほしいと涙ながらに頼むのだった。
10月蛍の夜勤の日、救急車でみずえが運ばれてくる。主治医はがんが再発して深刻であることを蛍に告げる。新吉から遺言状を書くことを勧められた五郎は中学校の元校長である山下先生に入門する。謝礼を免除する代わりに自分を廃棄物の家作りの仲間に入れてほしいと山下は頼む。麓郷の人たちは1日でも早くすみえの家を完成させるべく協力してくれる。ある日、現場に高村が現れるが、中畑の知り合いだと勘違いした五郎は作業を手伝わせてしまう。夕方になり、高村が観光客だと知ると五郎は恐縮して詫びるが、高村は五郎を凄い人だと賞賛する。五郎は高村を石の家に泊め、酒を酌み交わしながら、純の不運を嘆く。羅臼に戻った高村は純に五郎を呼んで流氷を見せてやれと命令する。羅臼の港が流氷に覆われる頃、結の夫・弘が番屋に現れ、不良仲間と共に純を袋叩きにする。駆け付けた高村は弘を殴り飛ばし、純には他人の嫁を奪いたければ少しは戦えとはっぱをかける。番屋に駆け付けた結に純はもう逃げ回ってばかりの自分を終わりにするため弘に会いに行くと言い、結は猟銃を手に付いていく。不良仲間の家で結が銃口を向ける中、純は土下座して結と結婚させてくれと弘に頼み込む。
数日後、五郎が羅臼にやってきた。五郎は三沢の爺さんが寝たきりになったことを知らせる。純はこれまで借金の返済をさぼっていたことを恥じ、これからは逃げずにやっていくことを誓う。そして結と結婚したいと話すが、結が人妻だと聞いて五郎は態度をかたくなにする。翌朝、結が番屋に駆け込んでくる。高村がトドを狩りに行ったまま戻らないという。高村の遭難はテレビでも報じられ、港では迎え火の焚火が夜通し焚かれる。駆け付けた涼子先生は五郎に結は離婚しているのと同じだと説明する。純と弘は2人で夜通し迎え火の番をしながら語り合い、結を純に譲ると言う。翌朝純と弘は港を埋め尽くした流氷の上を歩く高村の姿を見つける。歓喜して迎える港の人々を押し分けて高村は五郎に歩み寄り、よく参られたと歓迎する。高村の無事を祝う宴会に純と五郎も呼ばれるが、その最中富良野からみずえの訃報を伝える電話がかかる。
純は2年ぶりに富良野に戻る。純は五郎が廃棄物で作った雪子の家に感嘆する。中畑は隣に完成したすみえの家で一人泣いていた。死の直前中畑は病院からみずえを連れ出し家を見に来たことを話し、五郎に感謝する。蛍の家に泊まった純は富良野に戻って借金のことをきちんとすること、結とのことを話す。仕事もないのに結婚すると言う純に蛍は呆れるが、五郎流にやって行けば生きていけると言う。翌日純は三沢の爺さんを訪ねて土下座するが、爺さんはよく帰ってきたと喜ぶ。純は爺さんの下の世話をし、その後も時々三沢家を訪れて爺さんの世話をすることにする。純は市内を歩く結を見かける。結は富良野の生活環境を確認していた。神社で再会した2人は身を寄せ合って五郎の家に向かう。蛍の所に正吉からの手紙が届く。手紙には住所が書かれていた。五郎の家に駆け付けた蛍は純と結と共に賑やかに夜を過ごす。皆が寝静まった真夜中、蛍は五郎に正吉の所に行くことを告げる。五郎は理解しながらも快との別れを悲しみ、遺言状の下書きを涙で濡らしてしまう。3月下旬、蛍は富良野駅から列車に乗り込んだ。扉が閉まると五郎は快の名前を呼びながら列車を追いかけて走り出す。駅員の静止を振り切って線路沿いを走る五郎はいつしか蛍の名を呼んでいた。
五郎は遺言状を書きあげる。「遺せるものは何もない。自然から頂戴しろ」
あくまでもドラマが続いた場合の倉本聰の構想であり、映像化並びに書籍として活字出版化されている訳ではないので注意が必要。
黒板家と叔母 / 純と螢の関係者 / 北村家 / 中畑家 / 吉本家 / 笠松家 / その他 / テレビ連続シリーズ / '83冬〜 / '84夏〜 / '87初恋〜 / '89帰郷〜 / '92巣立ち〜 / '95秘密〜 / '98時代〜 / 2002遺言
通称名 | 使われた作品(出典DVD) | ドラマでの展開 | 備考 | 現存・復元地 | |
---|---|---|---|---|---|
1 | 最初の家 | TVシリーズ1話~最終話 | 台風で屋根が半分飛ぶ | かつて五郎が両親と住んでいた家。石の家に近くの農道脇に建てられていた。 | 五郎の石の家(復元) |
2 | 丸太小屋 | TVシリーズ最終話・83冬・84夏 | 火事で焼失 | 現在の石の家近くでロケが行われておりドラマで燃やした家は別の場所でセットを作り火事にした。劇中使用された家はドラマ終了後麓郷の森へ移築。 | 麓郷の森(移築) |
3 | 廃屋 | 84夏・初恋・帰郷 | 雪で倒壊 | 純の風力発電 | 麓郷の森(復元) |
4 | 仮の家 | 巣立ち | 新丸太小屋建設までの仮住 | 純の妊娠騒動で丸太売却、中畑の土地。ドラマ中では言及されていないが麓郷木材のおがくず小屋という設定。 | 拾って来た家の街 |
5 | 石の家 | 時代・秘密・遺言 | 五郎が住んでいる | 拾ってきた石 | 五郎の石の家 |
6 | 雪子の家 | 遺言 | 雪子が住んでいる | アトリエ兼用 | 拾って来た家の街 |
7 | すみえ夫婦の家 | 遺言 | 住んでいるか不明 | 完成途中でドラマ終了 | 拾って来た家の街 |
8 | 純と結の新居 | (シリーズ中には登場せず) | 二人が住んでいる設定 | ドラマ終了後に完成 | 拾って来た家の街 |
曲名 | 作曲 | 編曲 | 歌 | 補足 |
---|---|---|---|---|
北の国から〜遥かなる大地より〜 | さだまさし | この主題歌や劇中BGM『純のテーマ』等のサウンドトラックは、バラエティ番組等で北海道でのシーンのBGMや北海道日本ハムファイターズの応援団に使用されるなど、北海道を象徴する楽曲となっている。 当初さだはこの曲に歌詞をつけようとしたが、倉本からこの曲には言葉はいらないと言われたことをうけて、スキャットに変更してほぼ即興で完成に至った。 |
第1話は喫茶店の中で流れる、スメタナ『我が祖国』の第2曲『ヴルタヴァ(モルダウ)』の旋律で始まる。
メインテーマ以外にもドラマで使用されたギターサウンドは、当時さだまさしツアーのメンバーだったギタリストの坂元昭二が手掛けている。 さだ担当のサウンドトラックとは別に多数の楽曲が使用された。ジャンルは、クラシック音楽やフュージョン、J-POP、演歌と幅広く、連続ドラマ時代には比較的中島みゆきの楽曲が多く使用されていた。
話 | 曲名 | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 歌唱者および演奏者 |
---|---|---|---|---|---|
1話 | 青い珊瑚礁 | 三浦徳子 | 小田裕一郎 | 大村雅朗 | 松田聖子 |
ハッとして!Good | 宮下智 | 船山基紀 | 田原俊彦 | ||
ROBOT | 松本隆 | 筒美京平 | 船山基紀 | 榊原郁恵 | |
3話 | ホームにて | 中島みゆき | 福井峻 | 中島みゆき | |
4話 | いとしのエリー | 桑田佳祐 | サザンオールスターズ 弦編曲:新田一郎 | サザンオールスターズ | |
フィーリング | Morris Albert 日本語詞:なかにし礼 | Morris Albert | 田辺信一 | ハイ・ファイ・セット | |
雨のステイション | 荒井由実 | 瀬尾一三 | ハイ・ファイ・セット | ||
5話 | 想い出のフィジー | スウィート・ピープル | |||
6話 | 雪が降る | サルヴァトール・アダモ | サルヴァトール・アダモ | ||
スターティング・オーヴァー | ジョン・レノン | ジョン・レノン | |||
フール・サッチ・アズ・アイ | ビル・トレイダー | ハンク・スノー | |||
8話 | 恋人よ | 五輪真弓 | 船山基紀 | 五輪真弓 | |
倖せさがして | たかたかし | 木村好夫 | 京建輔 | 五木ひろし | |
ふたりの夜明け | 吉田旺 | 岡千秋 | 竹村次郎 | 五木ひろし | |
雨の慕情 | 阿久悠 | 浜圭介 | 竜崎孝路 | 八代亜紀 | |
哀愁でいと | Andrew Joseph DiTaranto, Guy Hemric 日本語詞:小林和子 | Andrew Joseph DiTaranto, Guy Hemric | 飛澤宏元 | 田原俊彦 | |
9話 | 白銀のテーマ | バリー・ホワイト | バリー・ホワイト | ||
10話 | 愛のサンバ | バリー・ホワイト | バリー・ホワイト | ||
11話 | とまり木 | たきのえいじ | 薗広昭 | 小林幸子 | |
大阪しぐれ | 吉岡治 | 市川昭介 | 斉藤恒夫 | 都はるみ | |
愛のセレナード | マントヴァーニ・オーケストラ | ||||
涙のレター | ゲイリー・リッチラス | REOスピードワゴン | |||
13話 | ライディーン | 高橋ユキヒロ | イエロー・マジック・オーケストラ | ||
フィーリング | Morris Albert 日本語詞:なかにし礼 | Morris Albert | 田辺信一 | ハイ・ファイ・セット | |
14話 | 残照 | 松山千春 | 青木望 | 松山千春 | |
UFO | 阿久悠 | 都倉俊一 | ピンク・レディー | ||
15話 | 浮草ぐらし | 吉岡治 | 市川昭介 | 斎藤恒夫 | 都はるみ |
17話 | 愛はきらめきの中に | ビージーズ | ビージーズ | ||
ラッパとおじさん (Dear M.Y's Boogie) | 桑田佳祐 | サザンオールスターズ 弦管編曲:八木正生 | サザンオールスターズ | ||
18話 | 空ド白ソ | 高中正義 | |||
愛のセレナード | マントヴァーニ・オーケストラ | ||||
19話 | 髪 | 中島みゆき | 福井峻 | 中島みゆき | |
PROLOGUE | 高中正義 | 高中正義 ストリングスアレンジ:星勝 | 高中正義 | ||
20話 | PROLOGUE | 高中正義 | 高中正義 ストリングスアレンジ:星勝 | 高中正義 | |
21話 | とまり木 | たきのえいじ | 薗広昭 | 小林幸子 | |
22話 | PROLOGUE | 高中正義 | 高中正義 ストリングスアレンジ:星勝 | 高中正義 | |
世迷い言 | 阿久悠 | 中島みゆき | 戸塚修 | 中島みゆき | |
雨… | 中島みゆき | 後藤次利 | 中島みゆき | ||
23話 | ツッパリHigh School Rock'n Roll (試験編) | 翔 | タミヤヨシユキ | 横浜銀蝿 | 横浜銀蝿+嶋大輔 |
哀愁の高山 | 竜鉄也 | 京建輔 | 竜鉄也 | ||
むかし子供達は | さだまさし | 渡辺俊幸 | 渡辺俊幸 | ||
24話 | エレーン | 中島みゆき | 後藤次利 | 中島みゆき |
タイトル | 曲名 | 作詞 | 作曲 | 編曲 | 歌唱者および演奏者 |
---|---|---|---|---|---|
北の国から'83冬 | 野ばらのエチュード | 松本隆 | 財津和夫 | 大村雅朗 | 松田聖子 |
雨の慕情 | 阿久悠 | 浜圭介 | 竜崎孝路 | 八代亜紀 | |
北酒場 | なかにし礼 | 中村泰士 | 馬飼野俊一 | 細川たかし | |
待つわ | 岡村孝子 | 萩田光雄 | あみん | ||
異国 | 中島みゆき | 後藤次利 中島みゆき | 中島みゆき | ||
北の国から'84 夏 | そして煙草 (春夏秋冬) | 阿久悠 | 浜口庫之助 | 薗広昭 | 森進一 |
世捨人唄 | 岡本おさみ | 吉田拓郎 | 馬飼野俊一 | 森進一 | |
SQUALL | 三浦徳子 | 小田裕一郎 | 大村雅朗 | 松田聖子 | |
この空を飛べたら | 中島みゆき | 鈴木茂 | 中島みゆき | ||
PROLOGUE | 高中正義 | 高中正義 ストリングスアレンジ:星勝 | 高中正義 | ||
ラヴ・イズ・オーヴァー | 伊藤薫 | 小谷充 | 森進一 | ||
SWEET MEMORIES | 松本隆 | 大村雅朗 | 松田聖子 | ||
北の国から'87初恋 | シェリー | 尾崎豊 | 西本明 | 尾崎豊 | |
パパ・ドント・プリーチ | ブライアン・エリオット マドンナ | マドンナ | |||
哀しみ本線日本海 | 荒木とよひさ | 浜圭介 | 竜崎孝路 | 森昌子 | |
I LOVE YOU | 尾崎豊 | 西本明 | 尾崎豊 | ||
北の国から'89帰郷 | 愛傷歌 | 石本美由紀 | 三木たかし | 森昌子 | |
乾杯 | 長渕剛 | 青木望 | 長渕剛 | ||
テリーのテーマ | チャールズ・チャップリン | フランク・チャックスフィールド | |||
愛の島シラキューズ | アンテナ | ||||
シー | G. Cadiere | ヴィクター・ラズロ | |||
Crazy Love | LASLEY DAVID, LERNER ROBIN B, MALAMET MARSHA, RICH ALLAN | 麻倉未稀 | |||
I LOVE YOU | 尾崎豊 | 西本明 | 尾崎豊 | ||
サム・チルドレン・シー・ヒム | Alfred Burt | ジョージ・ウィンストン | |||
北の国から'92巣立ち | 待ちわびて哀愁 | たきのえいじ | 猪俣公章 | 竜崎孝路 | マルシア |
万里の河 | 飛鳥涼 | 瀬尾一三 | チャゲ&飛鳥 | ||
ロール・オブ・ザ・ダイス | Springsteen, Roy Bittan | ブルース・スプリングスティーン | |||
BLUE TWILIGHT | 森山進治 | 小田裕一郎 | 笹路正徳 | TUBE | |
4年目の秋 | 浜田省吾 | 水谷公生 | 浜田省吾 | ||
テリーのテーマ | チャールズ・チャップリン | フランク・チャックスフィールド | |||
ニュー・シネマ・パラダイス メインテーマ | エンニオ・モリコーネ | エンニオ・モリコーネ | |||
ニュー・シネマ・パラダイス トトとアルフレッド | エンニオ・モリコーネ | エンニオ・モリコーネ | |||
「南極物語」メイン・テーマ | ヴァンゲリス | ヴァンゲリス | |||
女よ、GOMEN | 長渕剛 | 矢島賢 | 長渕剛 | ||
東京HOLD ME TIGHT | 大津あきら | 浜圭介 | 若草恵 | 桂銀淑 | |
想い出の九十九里浜 | 長戸大幸 | 織田哲郎 | Mi-Ke | ||
西新宿の親父の歌 | 長渕剛 | 瀬尾一三 | 長渕剛 | ||
SAY YES | 飛鳥涼 | 十川知司 | CHAGE&ASKA | ||
ETERNAL WIND〜ほほえみは光る風の中〜 | 西脇唯 | 西脇唯 緒里原洋子 | 門倉聡 | 森口博子 | |
北の国から'95秘密 | アンアブレビエイテッド・ラブ | Cyndi Lauper, Tom Kelly, Billy Steinberg | シンディ・ローパー | ||
ミスティ | ローラ・フィジィ | ローラ・フィジィ | |||
四月の恋 | Sammy Fain, Paul Francis Webster | パット・ブーン | |||
I LOVE YOU | 尾崎豊 | 西本明 | 尾崎豊 | ||
Just Another Honky | Lane Ronald 日本語詞:浅川マキ | Lane Ronald | 浅川マキ | ||
かもめ | 寺山修司 | 山木幸三郎 | 浅川マキ | ||
わが恋人の黒髪 | NILES, John Jacob | ヘレン・メリル | |||
北の国から'98時代 | 時化酒場 | 峰梓 | 関野幾生 | 南郷達也 | 鳥羽一郎 |
ハーフ・イン・ラブ,ハーフ・イン・ヘイト | Ole Sverre Olsen, Harket | モートン・ハルケット | |||
リナウンスメント | ミュリエル・ハーバート | マイケル・ホップ&マーティン・ティルマン | |||
君へのバラード | 前田亘輝 | 春畑道哉 | TUBE | ||
想い出ぼろぼろ | 阿木燿子 | 宇崎竜童 | 馬飼野康二 | 内藤やす子 | |
百万本のバラ | レオンス・ブリアディス 日本語詞:加藤登紀子 | ライモンズ・パウルス | 川村栄二 | 加藤登紀子 | |
ウーマン | ジョン・レノン | ジョン・レノン | |||
恋のかけら | 奥田民生 | ||||
丘の上の愛 | 浜田省吾 | 佐藤準 | 浜田省吾 | ||
アズ・タイム・ゴーズ・バイ | ハーマン・フップフェルド | ドーリー・ウィルソン | |||
時代 | 中島みゆき | 船山基紀 | 中島みゆき | ||
北の国から 2002遺言 | 秋桜 | さだまさし | 萩田光雄 | 山口百恵 | |
ほととぎす | なかにし礼 | 三木たかし | 石川さゆり | ||
人生しみじみ… | 仁井谷俊也 | 曽根幸明 | 若草恵 | 天童よしみ |
倉本によると映画『キタキツネ物語』と『アドベンチャー・ファミリー』の大ヒットにより、似たようなものが出来ないかと、フジテレビから倉本に話が持ち込まれたことから企画が始まったとしている。1973年の『ぶらり信兵衛 道場破り』以来の倉本との付き合いであるフジの編成担当・白川文造によれば、フジ構内の喫茶店(ラポルト)で倉本と雑談した際、白川が「富士の裾野に丸木小屋を建ててホームドラマを作る話」を提案したところ、倉本が「それ、富良野でやらせてくれ!」と頼み込み、倉本の案内で白川とプロデューサーの中村敏夫とで富良野を視察。そこで二人とも予算オーバーになっても「ここを舞台にしよう」と決め、倉本が人物相関図を作り、白川が企画意図を追記して企画書を作成した。当初のタイトルは「灯(ともしび)」であったが地味過ぎるという事で「腕白宣言」に変えたがこれも却下。結局白川が名付けた現タイトルになった。
しかし作成した企画書は編成には渡らず、フジプロダクション(当時。フジテレビ分社化時代の制作会社の一つ)の片岡政則社長が「面白い、しかしこれは編成には提出するな。じきにわかるから」と話し温存させた。その直後に当時のフジテレビ会長であった鹿内信隆は、フジ低迷の切り札として「副社長を息子の鹿内春雄、専務を村上七郎(後の関西テレビ社長)にする」と発表、フジプロダクションなどに分社化していた制作部門をフジテレビ本体に合流させるという大胆人事を断行した。これによりプロデューサーの中村はフジ本体に合流し、編成の白川は編成部副部長に就任。そのため企画書をプレゼンすることなく白川自らが中村に企画のゴーサインを出し、ドラマ「北の国から」の制作が動き出した。
主役の黒板五郎役は大御所俳優からは高倉健・田中邦衛・仲代達矢・菅原文太・北島三郎、演技派のベテラン俳優からは緒形拳、二枚目の銀幕スターからは藤竜也、その他中村雅俊、西田敏行などが候補に挙がったが、最終的には情けなさそうな人物の父親像ということで田中を抜擢した。なお菅原は『92巣立ち』に特別出演し、高倉は同『巣立ち』の中で純たちが見ていた『南極物語』の中で間接的に画面に出ている。当初は雪子が五郎に惚れるという設定だったが、主役が田中になったため恋愛対象相手が変わった。またドラマ制作前の企画段階では八千草薫と淡島千景が出演者として予定されメディアに広報されていた。
倉本によると、田中以外の役は主にオーデションで決定した。吉岡は映画『遙かなる山の呼び声』を見て、かつオーデションでずば抜けていたのですぐに決まった。中嶋はみんなが遊んでいる時、一人で機材を押す台車で遊んでいた独特の雰囲気で決まり、それ以外の残った子が中澤佳仁(正吉役)、塩沢徳子(すみれちゃん)になった。古本新之助(広介)、永堀剛敏(チンタ)は連続シリーズ主役オーデションで落ちたものの「初恋」での純の友達オーデションで合格している。れい役は、オーデションで決まった子がマネージャーと喧嘩して事務所を辞め再オーデションをしても決まらず、モデル会社から進められて横山めぐみに決定。シュウ役の宮沢りえは、倉本は反対だったが杉田がほれ込んでキャスティング。タマコ役の裕木奈江はオーデションで杉田が決め、結役の内田有紀は倉本の一押しで決めた。
純による東京のガールフレンドに語りかけるナレーションが、物語の語り手となっている。「今日僕は…なわけで」「…しており」「…と思われ」などの特徴的な口調は、同じ倉本脚本のドラマ『前略おふくろ様』で主役を演じる萩原健一によるナレーション手法を転用したものである。倉本は『前略おふくろ様』で初めてこの手法を使用した際に口調は山下清から流用したが、本作でもそのまま使われる形になった。後のスペシャル化後はガールフレンドに語りかける設定はなくなったが、このスタイルは踏襲された。また倉本は富良野に来た頃の僕(倉本)の目線で書きたかったため。とも語っている。
日枝久編成局長は、富良野で長期ロケをやると言う話を聞き、中村プロデューサーを呼んだ。日枝は「君は、富良野で1年がかりでのロケをやるそうだが、フィルムロケでは価値がない。私は2、3日前にソニーの方と会ったが、新しい技術が開発されて、VTRでもスイッチを入れると瞬時に回せるものができたそうだ。すぐに聞いてこいよ」と話した。中村は、技術陣と一緒に早速ソニーへ行き、テストを行ったところ、結果は上々だった。中村は「是非使わせて下さい」と申し入れた。するとソニー側は、「当社としては試作品だから、無料でお使い下さい」とのことで、中村は直ちに1980年10月からのロケで使うことを決めた。国内初のVTRロケの始まりである。制作費予算は総額約6億円で1話あたり約2,500万円だった。ただし、倉本によると実際には1話あたり5,000万円近くかかり、放送前の時点で赤字が積み上がったため中村プロデューサーが心痛から急病で入院することになったという。連続ドラマでは東京の場面が多いが、これは東京と地方の対比を描きたかったことと前述の番組予算問題のためである。また連続時代のテレビ放送は、最終話までの全ての撮影が終了してから第一話が放映された。
フジの系列局である北海道文化放送が連続ドラマ版を開局10周年記念番組として位置付けて番組制作に協力し、その後のドラマスペシャル版でも制作を協力。毎回長期に渡る北海道ロケが敢行された。スペシャル版は初期のころは1年置きで制作されていたが、子役(純と螢)の学校の関係と長期撮影のため思うように撮影時間が取れず、季節が2回シリーズに入ってしまい、3年くらいの間隔が開くようになった、と杉田は語っている。
SPの最後に毎回回想シーンがあるのは、これが最後という気持ちで制作していたからである。最初の放送からドラマスペシャルが21年間に渡って放送されたが、制作スタッフの高齢化による定年退職や、長期ロケによる高額な制作費により、続編の制作が困難になったことから、『2002遺言』をもってシリーズの歴史に幕を下ろした。倉本は著作の中で「演出の杉田はスタッフの高齢化をやめる理由に挙げていたが、五郎さんや純や螢がいなくては無理だが、スタッフは新しい人に変えられる。杉田自身がやる気をなくしていた。邦さんはやる気があったが、吉岡は続ける気がなかった。地井が亡くなったことも大きく、大滝さんも亡くなった。岩城の草太を殺したのは大きなミスだった」と述べている。また倉本は終了について「スタッフが高齢化した」とするフジテレビの説明を、「おかしな理由だ。スタッフを替えればいい」と批判している。
舞台を麓郷とする着想は、富良野に移住した倉本が麓郷で林業を営んでいた人物と出会ったことがその始まりであった。ドラマに登場する中畑和夫はこの人物をモチーフとしたキャラクターである。この人物は妻とともにロケ地の提供や撮影への協力を献身的におこないドラマを支えた。倉本は彼を「『北の国から』の全作品を通しての最大の功労者」「彼がいなかったら出来ていない」と記している。また、彼をはじめとする富良野で出会った人々についてはエッセイ『北の人名録』(新潮文庫)に詳しく記されている。
話数 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 視聴率 |
---|---|---|---|---|
第1話 | 1981年10月 | 9日廃屋 | 富永卓二 | 16.4% |
第2話 | 10月16日 | 手紙 | 11.2% | |
第3話 | 10月23日 | 決意 | 9.3% | |
第4話 | 10月30日 | 女弁護士 | 杉田成道 | 11.1% |
第5話 | 11月 | 6日キツネ | 10.3% | |
第6話 | 11月13日 | マフラー | 山田良明 | 13.5% |
第7話 | 11月20日 | 電話 | 富永卓二 | 13.2% |
第8話 | 11月27日 | 水道 | 山田良明 | 14.3% |
第9話 | 12月 | 4日来訪 | 富永卓二 | 13.5% |
第10話 | 12月11日 | 奇跡 | 杉田成道 | 16.0% |
第11話 | 12月18日 | 家出 | 13.8% | |
第12話 | 12月25日 | 罠 | 富永卓二 | 13.2% |
第13話 | 1982年 | 1月 8日帰京 | 13.5% | |
第14話 | 1月15日 | UFO | 杉田成道 | 13.2% |
第15話 | 1月22日 | 事件 | 山田良明 | 15.1% |
第16話 | 1月29日 | 転校 | 富永卓二 | 14.4% |
第17話 | 2月 | 5日別離 | 18.6% | |
第18話 | 2月12日 | イカダ下り | 16.2% | |
第19話 | 2月19日 | 後悔 | 杉田成道 | 17.0% |
第20話 | 2月26日 | 転勤 | 17.5% | |
第21話 | 3月 | 5日再会 | 山田良明 | 15.7% |
第22話 | 3月12日 | 誕生日 | 杉田成道 | 17.8% |
第23話 | 3月19日 | 破れた靴 | 山田良明 | 19.6% |
最終話 | 3月26日 | 丸太小屋 | 富永卓二 | 21.0% |
話数 | 放送日 | サブタイトル | 演出 | 視聴率 |
---|---|---|---|---|
1 | 1983年3月24日 | 北の国から'83冬 | 杉田成道 | 26.4% |
2 | 1984年9月27日 | 北の国から'84夏 | 24.3% | |
3 | 1987年3月27日 | 北の国から'87初恋 | 20.5% | |
4 | 1989年3月31日 | 北の国から'89帰郷 | 33.3% | |
5 | 1992年5月22日 | 北の国から'92巣立ち 前編 | 32.2% | |
5月23日 | 北の国から'92巣立ち 後編 | 31.7% | ||
6 | 1995年6月 | 9日北の国から'95秘密 | 30.8% | |
7 | 1998年7月10日 | 北の国から'98時代 前編 | 25.9% | |
7月11日 | 北の国から'98時代 後編 | 24.8% | ||
8 | 2002年9月 | 6日北の国から 2002遺言 前編 | 38.4% | |
9月 | 7日北の国から 2002遺言 後編 | 33.6% |
この節の加筆が望まれています。 |
美しい自然や祭りなど、富良野市は日本中に知られるようになり、過疎の村だった麓郷地区には第1作放送直後から、休日になると数百人の観光客が見物に訪れることとなった。最終作が放送された2002年度には249万人が訪れている。富良野は北海道の観光名所となり、ドラマに使われた丸太小屋が再現された他、富良野市農業協同組合駅前4号倉庫を改造した「北の国から資料館」が設けられた。連続ドラマ第1話、黒板親子が降り立った布部駅の入口脇には、倉本の筆による「北の国 此処に始る」と書かれた碑が建てられるなどした。
この節の加筆が望まれています。 |
フジテレビ系 金曜劇場 | ||
---|---|---|
前番組 | 番組名 | 次番組 |
夫婦は夫婦 | 北の国から (1981年10月9日 - 1982年3月26日) | 女優シリーズ・妻たちは…。 |
This article uses material from the Wikipedia 日本語 article 北の国から, which is released under the Creative Commons Attribution-ShareAlike 3.0 license ("CC BY-SA 3.0"); additional terms may apply (view authors). コンテンツは、特に記載されていない限り、CC BY-SA 4.0のもとで利用可能です。 Images, videos and audio are available under their respective licenses.
®Wikipedia is a registered trademark of the Wiki Foundation, Inc. Wiki 日本語 (DUHOCTRUNGQUOC.VN) is an independent company and has no affiliation with Wiki Foundation.