ロシア・ウクライナ危機 (2021年-2022年)(ロシア・ウクライナきき、ロシア語: Российско-украинский кризис 2021—2022 годо、ウクライナ語: Російсько-українська криза 2021—2022 років、英語: 2021–2022 Russo-Ukrainian crisis)は、2021年3月から2022年にかけて、ロシアがロシア軍部隊を同国のウクライナ国境周辺に20万人規模で集結させ、ウクライナ北隣のベラルーシ国内で軍事演習を行なうなど、ウクライナへの侵略が懸念されてきた国際的危機で、2022年2月24日にウクライナへの全面侵攻へと発展した。
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ロシア・ウクライナ危機 | |
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米国の諜報機関による、2021年12月3日のウクライナとの国境地帯でのロシア軍の配備。この時点でロシア軍は、主にウクライナ国境から100〜200 kmの距離に、約70,000人の軍隊を配備したと推定されている。 | |
戦争:ウクライナ紛争 (2014年-) | |
年月日:2021年3月3日 – 2021年4月30日 2021年10月26日 – 2022年2月24日 | |
場所:ウクライナ | |
結果:ロシアによるウクライナへの全面侵攻に発展 | |
交戦勢力 | |
ウクライナ | 限定的支援: |
指導者・指揮官 | |
戦力 | |
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1991年、ソ連崩壊によりウクライナは独立国家となり、軍事的中立を維持してきた。2002年、ウクライナの政策に転換期が訪れた。前年の2001年9月11日にアメリカ同時多発テロ事件が発生してアメリカとロシアが互いに歩み寄ると、2002年、クチマ政権下のウクライナ政府は以前から関心を示していたEU(欧州連合)およびNATO(北大西洋条約機構)への加盟を目指す方針に大きく舵を切ったのである。このような経緯でウクライナは西側諸国の軍事同盟であるNATOへの加盟を希望していたが、フランス・ドイツなど一部のNATO加盟国がこれを拒否していた。理由は、ウクライナ国民からの加盟への支持の低さや民主化の遅れ、法の支配、経済状況により条件を満たしていないことが主因であるが、加盟国がNATOとロシアの関係悪化を懸念したことも影響したともされる。その後、ヤヌコーヴィチ政権によってNATO加盟をウクライナ自らが拒否した。2014年、ユーロマイダンに始まる尊厳の革命の政変を受け、ロシアはウクライナが領有する親露派の多いクリミア半島の併合を宣言した。一方ポロシェンコ政権下のウクライナ政府は再びNATO加盟を目指す方針を打ち出した。ウクライナ東部のドンバスでは戦闘が続いた。ウクライナはその後、親米欧的な政策を取り、2019年にEUとNATOへの加盟を目指すように憲法を改正した。この頃のNATOはロシアの影響力が強い東欧に影響力を拡大しており、NATOはロシアと新冷戦と呼ばれるほど対立していた。
ウクライナのNATO加盟に向けた動きに対してロシア大統領のウラジーミル・プーチンは、「ロシア人とウクライナ人は一つの民族である」と主張し、NATOの東方拡大に反対する態度を表明して、ウクライナ周辺に軍を展開させた。2022年2月にはロシアは並行して隣国ベラルーシと軍事演習を行っている。
同年2月11日、アメリカやその同盟国・友好国などは、自国民にウクライナからの退避を勧告した。2月18日には、アメリカ大統領のジョー・バイデンは、プーチンがウクライナに侵攻すると決断したと確信していると述べた。
2月24日、プーチンがウクライナ東部で「特殊な軍事作戦を行う」と発表した。バイデンは「プーチン大統領が戦争を選択した」「攻撃がもたらす死と破壊はロシアに責任がある」と非難した。
1991年のソ連崩壊後も、ロシアとウクライナは緊密な関係を維持し続けた。ウクライナはソ連軍が保有していた核兵器の一部を引き継ぎ、世界第3位の核保有国になった。1994年、ウクライナは核兵器を放棄することに同意し、米英露3ヶ国が領土保全または政治的独立に対する脅威または武力行使に対する保証を発行することを条件として、安全保障に関するブダペスト覚書に署名した。5年後、ロシアは欧州安全保障憲章(欧州安全保障協力機構)の署名当事国に加わり、全参加当事国のそれぞれが、進展に応じて同盟条約を含む安全保障合意を選択し、変更する自由があるという固有の権利を持っていることを再確認した。
ウクライナは1991年以来独立国家として認められていたが、旧ソ連構成共和国として、ロシアの指導部から勢力圏の一部であると認識されていた。ルーマニアのアナリスト、イウリアン・チフらは、2009年に、ウクライナに関して、ロシアはブレジネフ教義の更新版を追求し、それは1980年代後半から1990年代初頭にかけてのソビエトの勢力圏の崩壊以前のワルシャワ条約機構に加盟していた国々の主権程度にしかウクライナの主権を認めないものだと述べた。
1949年に設立されたアメリカ・フランス・イギリス・オランダなどのNATOに対し、1989年の東欧革命およびソ連崩壊後、社会主義陣営だった東側諸国(東欧諸国)が加盟していった。
さらにNATOは2008年、ジョージア・ウクライナを加盟希望国として認めた。このような旧東側諸国のNATO加盟、いわゆる「NATO加盟国の東方拡大」に対してロシアは反発を続けてきた。
1991年にソ連から独立したジョージア (グルジア)は2003年のバラ革命後は親米欧路線を採り、EUとNATOへの加盟を目標としてきた。南オセチアとアブハジアはジョージアからの分離独立を求めていたが、2008年の南オセチア紛争でジョージア軍と南オセチア軍が衝突すると、ロシアが軍事介入し、同時に南オセチア人民共和国及びアブハジア人民共和国の独立を承認した。プーチンは武力によってNATOの旧ソ連圏への影響力拡大に抵抗した。
ウクライナでは2004年に親米欧派によるオレンジ革命が起きた。バラ革命やオレンジ革命などの民主化運動はカラー革命と呼ばれた。プーチンはカラー革命をロシアの復活を望まない欧米諸国の陰謀であるとみなす。
ロシア国内でも、2011年から2012年にかけて民主化運動の波が押し寄せ、反プーチン運動が拡大したが弾圧した。2017年に政治運動家のアレクセイ・ナワリヌイが首相であるメドヴェージェフの蓄財を告発すると、7000人〜8000人が参加した抗議デモが発生したが、ナワリヌイらデモ参加者1000人が逮捕された。2020年にナワリヌイは毒を盛られたが一命をとりとめたが、2021年に収監された。収監直後、ナワリヌイグループは黒海リゾート地にある1400億円相当の豪邸を「プーチン宮殿」だとして暴露した。2021年1月23日のナワリヌイ釈放デモでは3000人以上が拘束され、プーチンは抗議デモは違法であり、抗議を通して「政治における自分たちの野心的な目標や目的」を推進しようとすべきではないとロシア国民に警告した。
2020年にはベラルーシでも大規模な抗議デモが発生し、女性が花をもって抗議した。プーチン政権にとってこうしたカラー革命などの民主化運動は、自身の権力基盤を崩壊させることにつながる危険を持つものとして政治的脅威とみなされている。
2013年からユーロマイダン運動の数週間にわたる抗議行動に続き、2014年にはマイダン革命 (尊厳革命・ウクライナ騒乱)が起きた。2014年2月21日、親露派大統領のヴィクトル・ヤヌコーヴィチと野党指導者たちは、早期選挙を求める和解合意に署名した。翌日、ヤヌコーヴィチは弾劾投票に先立って首都キーウからロシアへ逃亡した。ウクライナのロシア語を話す東部地域の指導者たちは、ヤヌコーヴィチへの忠誠を継続すると宣言し、ウクライナでの親露派騒乱を引き起こした。騒乱に続いて、2014年4月にドンバス戦争が始まり、ドネツク人民共和国とルガンスク人民共和国の建国が一方的に宣言され、どちらもロシアに強く支持され、2014年3月18日にロシアがクリミアを併合した。
2014年9月5日、ロシア・ウクライナ・ドネツク人民共和国・ルガンスク人民共和国がミンスク議定書に調印したが休戦に失敗した。
2015年2月11日にはミンスク2(ミンスク合意)が調印された。しかし、親露派武装勢力が占領するウクライナ東部のドネツク州とルハンスク州に幅広い自治権を認める「特別な地位」を与えるとの内容も含まれたこの合意は、ウクライナ国内で不満も出ていたことから、2019年に大統領になり、当初融和派だったウォロディミル・ゼレンスキーも翻意して履行せず、反故に動いた。一方、合意には「外国の武装組織の撤退」や「違法な組織の武装解除」も定められているが、親露派側は守ってこなかった。
2021年10月26日、ウクライナ軍は親露派との紛争地域で親露派武装勢力にドローン爆撃を実施した。ドローンによる攻撃は、ミンスク2から強化された2020年7月の協定で禁止された違反行為であったため、ロシアからの批判だけでなく、EU諸国からも異を唱えられた。その禁止行為はロシア軍が行動に移すための口実となった。
緊張は高まり続け、2022年2月21日にロシア大統領のプーチンが「もはや存在しない」として、破棄を宣言した。
2021年3月24日、ウクライナ大統領のゼレンスキーがクリミア奪還のために外交的・軍事的・経済的・情報的・人道的な措置を準備するという旨の政令を発する。 ゼレンスキー大統領は2021年4月にトルコから購入した軍事用ドローンをドンバス地方での偵察飛行に利用している。2021年7月6日、黒海とバルト海の間でNATOとの合同軍事演習が数回行われる。
2021年7月12日、ロシア大統領のウラジーミル・プーチンは、『ロシア人とウクライナ人の歴史的一体性について』という題名の論文を発表し、ロシア人とウクライナ人は「一つの人民(民族)」であるという彼の見解を再確認した。
ロシアは、ウクライナのNATO加盟の可能性とNATO拡大は一般的に国家安全保障上の脅威であると述べた。次に、ロシアとウクライナに隣接する他の欧州諸国は、プーチンがソビエト連邦を回復しようとし、積極的な軍国主義政策を追求したとして非難した。
ロシア政府は一貫して侵攻の計画はなく、軍隊の集結は演習によるものであり、部隊は帰還を始めていると述べてきた。一方で、NATOの東方不拡大などを含むロシア側の要求が満たされない場合は、「軍事的措置」「軍事技術的な措置」を取るとたびたび警告してきた。
ロシア国営メディアは以前からウクライナを親ナチス国家「ネオナチ」であると報道しており、またウクライナ軍によって虐殺が行われているという報道もしばしば行っている。また国営メディアではロシアが西側世論に支持されているという嘘の報道がしばしば行われ、それは西側諸国のニュースサイトにあるユーザーからのコメントを引用することで行われている。2022年1月下旬から2月にかけて、独立系世論調査機関レバダ・センターが行った世論調査によると、プーチン政権の支持率は2021年12月の調査より4ポイント増加して69%となり、50%の回答者が「ロシアの進んでいる方向は正しい」と回答している。
一方で全ロシア将校協会会長で元上級大将のレオニード・イヴァショフは1月31日に、プーチンに辞任を求める書簡を公開した。100人〜数千人の同協会関係者のインテリ層も侵攻に反対しているとされる。
ロシアのプロパガンダに対抗している団体、ミソス・ラブスは2021年11月ごろからインターネット上で、親露プロパガンダを行うアカウントの活動が急激に増加したとしている。
2022年3月4日 セルビア人とロシア人は永遠の同志として、セルビアの首都ベオグラードで、ロシアのウクライナ侵攻への支持を表明するデモが行われた。
2022年3月5日 フランス大統領のマクロンはロシア非難決議に賛成したセルビアを称賛した。
ロシア軍はウクライナ軍に比べ強大であるうえ、ロシアは不正規戦争やサイバー攻撃、世論・情報工作を併用するハイブリッド戦争を重視している。ウクライナ政府はロシアに対抗する情報安全保障戦略の策定、本土決戦に備えたレジスタンス活動や民兵による「領土防衛軍」(領土防衛隊)の組織化を進めている。
大統領のウォロディミル・ゼレンスキーは、侵攻の可能性があるとされていた2月16日を「団結の日」と制定してウクライナの団結を示した。
ベラルーシはロシア支持の態度を明確にしており、2021年11月30日に大統領のアレクサンドル・ルカシェンコはクリミアはロシア領であると表明している。また2022年2月18日にはプーチンと首脳会談を行い、連携を確認している。
カザフスタンはロシア主導のCSTO(集団安全保障条約機構)の加盟国であるが、2022年5月の対独戦勝記念日では同じく同機構の加盟国であるベラルーシなどと違い、毎年行われていた祝賀行事の開催を取り止めた。カザフスタン政府は予算上の都合と説明しているが、米欧メディアではロシアへの反発と受け止められている。またカザフスタン政府はウクライナに対して、医薬品や食料を輸送し人道支援を実施している。
2022年2月8日、ウクライナ情勢緊迫を受けたアメリカ軍増派を歓迎、世論も支持。まず100人以上が到着した。アメリカ国防総省は東欧諸国などに3000人規模の米軍派遣を表明。
2022年2月25日、フランスが、ルーマニアに500人派兵。
2022年2月26日、ロシアのウクライナ侵攻で東欧諸国に難民受け入れ体制。
2022年3月1日、NATOは、即応部隊をルーマニアに展開させた。
2022年3月4日、ウクライナ避難民、16.76万人がルーマニアに入国。
2022年3月6日、ロシア国防省報道官のコナシェンコフは、「ルーマニアなどにウクライナの軍用機が飛来しているのを知っている。軍用機を駐留させたり、ロシア攻撃のため空域を使用させたりすることは参戦と見なす」と警告した。
2022年2月22日、前大統領のドナルド・トランプは、ロシアがウクライナ東部に軍を派兵した行動は、「天才」(genius)だと評した。
同26日にアメリカ国務長官のアントニー・ブリンケンは、ウクライナに対し最大3億5000万ドルの軍事支援を実施すると発表した。この発表の中では、ウクライナに殺傷力のある防衛兵器を貸与するとしており、この中に対戦車ミサイルのジャベリンも含まれると明らかにした。
2022年1月18日には、ウクライナに対し対戦車ミサイルの供与を行っていることを発表している。2月17日、イギリス・ポーランド・ウクライナの3ヶ国外相は共同声明を発し、ウクライナの独立と主権・領土の一体性を確認し、戦略的協力関係をさらに強化する枠組みを成立させると発表した。
ウクライナへの武器供与は基本的に行っていない。ウクライナ政府からは要望があるものの、ドイツ政府は拒否を続けていた。1月21日に海軍総監のカイ=アヒム・シェーンバッハが講演において、ロシアがウクライナに侵攻することはありえないと述べ、「(プーチンが)本当に求めているのは敬意で、それを与えるのは簡単なことだ」「クリミアはもう二度と戻ってこない」などと発言し、22日に辞職に追い込まれている。1月27日にドイツはヘルメット5,000個の供与を行い、キーウ市長のビタリー・クリチコが「言葉を失った」と批判し、ドイツ国内からも批判が起こった。しかしながら、2月27日にドイツはこれまでの方針を一転し、ドイツ軍が保有する対戦車砲を1000基、及び地対空ミサイルの「スティンガー」500基をウクライナに提供すると発表した。
2021年12月24日、ロシア外務省報道官のザハロワは、フィンランドとスウェーデンがNATOの軍事演習に参加していることに触れ、両国がNATOに加盟した場合は「軍事的、政治的に深刻な結果をもたらし、ロシア側に適切な対応が求められるだろう」と述べた。これは両国への圧力ととらえられ、両国ではロシアに対する反発を招いた。2022年1月1日、大統領のサウリ・ニーニストは「フィンランドの戦略と選択の自由には、NATOへの加盟申請の可能性が含まれる」と発言している。1月19日、首相のサンナ・マリンは、ロシアがウクライナに侵攻した場合の対露制裁への参加を表明したが、NATO加盟については近い将来には起こらないと述べている。
リトアニア・ラトビア・エストニアは、ウクライナへの軍事支援を実施することで合意しており、アメリカ製の対戦車ミサイルや地対空ミサイルの供与を行っている。
中国外交部は2022年2月18日に「一部西側諸国の継続的なデマ発信」が行われているとし、アメリカが軍事的脅威を演出し、緊張を作出していると発表している。
2022年1月24日、ロシアとウクライナの間で軍事的緊張が高まるウクライナ情勢を受け、外務省は、海外安全ホームページのウクライナの「危険情報」を渡航中止を勧告するレベル3に引き上げた。さらに、2月11日、ウクライナの危険情報を、退避を勧告する最も高いレベル4に引き上げた。
2月8日と9日に、国会の衆参両院はそれぞれウクライナ情勢を深く憂慮するという決議をれいわ新選組を除く全会一致のもと行なったが、「ロシア」の国名については言及されない決議となった。
また2月13日にはアメリカや韓国と3ヶ国外相会談を行い、ウクライナ国境でのロシアの軍事活動拡大を阻止するための協力を行うことを表明している。
2月20日には、元防衛大臣の小野寺五典がテレビで「このままではロシアに口先だけだと思われる」とアメリカのウクライナに軍を派遣しない方針に懸念を表し、「もうすでにハイブリッド戦は始まっている」との見方を示した。さらに、「日本もウクライナと同じことになる可能性がある」として、自国のことは自国で守るというスタンスが大切だとした。
2月22日、外務大臣の林はG7の声明でロシアのドネツク人民共和国とルハーンシク人民共和国の独立承認を強く非難した。
さらに23日、内閣総理大臣の岸田文雄は「いわゆる2つの共和国の関係者の査証発給停止と資産凍結」「いわゆる2つの共和国との輸出入の禁止」「ロシア政府による新たなソブリン債の日本での発行・流通の禁止」の3つの対露制裁を発表した。
4月1日、政府は会議を開き、ウクライナからの避難民の受け入れを進めるための新たな支援策を決定した。4月5日には、ウクライナからの避難民20人を乗せた政府専用機が日本に到着した(「日本におけるウクライナ難民受け入れ」を参照)。
2022年2月25日、台湾では在台ウクライナ人によって、駐台ロシア代表機関前で抗議が行われた。「今日のウクライナ、明日の台湾」という言葉もネット上で広がりを見せた。これは、ひまわり学生運動で使われたスローガン、「今日の香港、明日の台湾」が語源となっている。
以下の近隣諸国は旧ソ連製の兵器をウクライナに数多く提供した。
ロシアは世界有数の天然ガス資源国であり、ヨーロッパの天然ガス需要の4割を占めている。侵攻が現実化した場合には、ロシアからのガス輸入が停止する事態が想定されている。ドイツとロシアの間に開通したガスのパイプライン「ノルド・ストリーム2」について、アメリカ大統領のバイデンは侵攻が開始された場合には停止させると声明し、ドイツもノルド・ストリーム2を制裁対象に指定するとしている。また、日本は輸入したLNGをヨーロッパに融通する異例の政策を取ると発表した。
2月22日、ドネツク・ルハーンシク両人民共和国をロシアが国家承認したことに対して、アブハジア共和国・アルツァフ共和国・南オセチア共和国の3ヶ国は相次いで歓迎する声明を発表した。いずれの国々も国際的に独立は認められておらず、ロシアが軍事支援をしているという共通点を持つ。
2月25日、ミクロネシア連邦はロシア軍によるウクライナ侵攻に抗議するため、ロシアとの断交を決定した。
ロシアはアメリカに行動をさせるための強要(compellence)戦術をとっていると指摘される。
また、ロシアにはマスキロフカという軍事欺瞞の伝統があり、プーチンも意図的に相手の印象を操作する訓練を受けて実践している。
2022年2月21日にプーチンが署名した「ルハーンシク人民共和国」と「ドネツク人民共和国」の独立国家承認文書は、2008年のジョージアにおける南オセチア紛争での南オセチアとアブハジアの独立承認文書と言葉遣いもほぼ同じであったと指摘されている。ジョージアは、ソ連から1991年に独立、2003年のバラ革命後は親米欧路線を採り、EUとNATOへの加盟を目標としてきた。南オセチアとアブハジアはジョージアからの分離独立を求めていたが、2008年の南オセチア紛争でジョージア軍と南オセチア軍が衝突すると、ロシアが軍事介入し、南オセチア及びアブハジアの独立を一方的に承認した。
常盤伸はプーチンについて、エカテリーナ女帝がウクライナを「小ロシア」として併合し同化させたロシア帝国のような「帝国復活」の願望を持っていると指摘した。2012年の民主化運動の大弾圧以降、プーチン政権内では、対米欧協調派が衰退し、旧KGB出身で安全保障会議書記のニコライ・パトルシェフら強硬派のチェキストが主導権を握り、米欧の自由主義的価値観がロシアの精神的基盤を破壊するという危機感を持ち、2021年に改訂された戦略文書「安全保障戦略」にも明記された。
2021年7月のプーチンの論文では「ウクライナとロシアは一つの民族」「ウクライナの真の主権はロシアとのパートナーシップによってのみ可能だ」と結論づけ、ウクライナの主権を否定した。アメリカの歴史家であるティモシー・スナイダーは、プーチンの論文の思想を帝国主義と表現し、イギリスのジャーナリスト、エドワード・ルーカスはそれを修正主義者と表現した。他のオブザーバーは、ロシアの指導部が現代ウクライナとその歴史について歪んだ見方をしていると指摘している。
ウクライナ侵攻直前の2月22日の演説で「ウクライナは真の国家として安定した伝統がない」とウクライナの国家としての正統性を否定した。
プーチンの側近には、安保会議書記のパトルシェフ、SVR長官のナルイシキン、FSB長官のボルトニコフ、国防相のショイグの4人がおり、ショイグを除く3人はKGBでプーチンの同僚だった。これらはシロビキのサンクトペテルブルク派ともいわれ、特にパトルシェフはプーチンが最も信頼する側近とされ、その権力は絶大だと政治学者のワレリー・ソロベイは指摘する。パトルシェフは2021年末にウクライナ指導部は「ヒトラー並みの悪人」「人間以下」だと語っており、これはウクライナ侵攻後のプーチンの非ナチ化発言と関連しているとみられている。ウクライナ国内には、ナチス・ドイツに加担したウクライナ民族主義者のステパーン・バンデーラを英雄視する風潮や、極右政党「スヴォボーダ」などネオナチ勢力の存在がある。その一方でウクライナ東部の紛争に影響を受け、2015年5月にポロシェンコ政権下で「脱共産主義法」(ウクライナ語: «Про засудження комуністичного та націонал-соціалістичного режимів»)が発効し、ナチスおよび共産主義のプロパガンダが禁止されている。
筑波大学教授の中村逸郎は、プーチンは自らによる政治を正当化するため、国家・国益・国家主権を重視して、「ロシアの神話」シリーズの著者かつ大統領補佐官であるウラジーミル・メジンスキーの思想を必要としていたと指摘する。
ロシア政治評論家のアンドレイ・コレスニコフは、ウクライナ侵略はロシアの帝国主義の結果であり、プーチン政権の目標はロシア帝国の復活にあると指摘した。
プーチンはカラー革命などの旧ソ連地域への民主化運動の浸透を政治的脅威とみなしており、ロシアで民主主義にもとづく政治運動が起こり、自らの政治体制が崩壊することを一番恐れているのではないか、ロシア周辺にはベラルーシのルカシェンコ政権のような傀儡政権を構築していくことで自分の政治生命を守っていきたいのではないか、と早稲田大学(国際公共政策)の中林美恵子は指摘する。
ジャーナリストの木村太郎や政治学者で拓殖大学の名越健郎らは、プーチンはKGB活動員だった時代に、1989年のベルリンの壁崩壊と1991年のソ連崩壊を体験しており、民衆による平和革命によって体制が倒されることがトラウマになっており、自分の尊厳が損なわれた経験によるPTSDなのではないか、プーチンにとってウクライナでの民主化運動は、東ドイツでKGBを襲った群衆に見えているのではないか、そしてその裏にはアメリカの陰謀があるとみていると語った。
また、コロナ禍の隔離生活や独裁体制によってプーチンが心理的に孤立感を深めたとの指摘もある。フランス大統領のマクロンは2月7日の会談後、「プーチンは3年前とは別人だ。頑固で、孤立している」と語った。元アメリカ国家安全保障会議欧州ロシア部長のフィオナ・ヒルや、元駐露アメリカ大使のマイケル・マクフォールらは、20年に及ぶ権力集中やコロナ禍の隔離生活によって、プーチンの精神状態は不安定になっており、側近としか話をしなくなったと指摘される。
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