ダッソー ミラージュ2000(Dassault Mirage 2000)は、フランスのダッソー社製の軍用機。もとは迎撃戦闘機の要求に基づいて開発され、第4世代ジェット戦闘機としては小型・軽量な戦闘機であるが、改良が続けられた結果、世界的に有名なミラージュ・シリーズ初のマルチロール機となった。フランス空軍の他に、8か国の空軍に採用された。
無尾翼デルタ式の単発戦闘機。フランスの他、8か国に採用されている。
操縦システムにフライ・バイ・ワイヤを採用し、CCV設計が導入された。無尾翼機は主翼のみで機体の安定を図る設計にする必要があり設計上の制約になるが、CCV設計により静安定が緩和されたために主翼設計の自由度が高くなった。更に自然安定性不足が起因する操縦の困難さもフライ・バイ・ワイヤ制御によって補うようになったため、従来の無尾翼デルタ機よりも扱いやすい機体となっている。
機体は複合材の使用による軽量化と、当時としては革新的な技術であるブレンデッドウィングボディの採用による空気抵抗の低減が図られている。カナード翼によって無尾翼デルタの欠点を改善できるにもかかわらず、あえてカナード翼を採用しなかった(代わりに空気取入れ口付近に小型のストレーキを採用している)のもこのためである。それでも、CCV設計によりエレボンを下げたまま高い揚力を維持しつつ機首上げ姿勢をとれるようになったため、離陸滑走距離の短縮や着陸進入速度の低下に成功している。
こうした構造により、低速度域での操縦特性が極めて良好で、その空戦性能はパイロットの間でも評価が高い。
ダッソーは無尾翼デルタ機の開発を得意としてきたが、これは機体の小型軽量化、高速度性能の向上、飛行特性の安定性などにメリットがある一方で、STOL性能、低空飛行、機動性などが主・尾翼の組み合わせによる二翼式の航空機に劣るとされ、通常の二翼式・後退翼のミラージュF1が採用された。
またミラージュF1は基本的には50年代の超音速戦闘機の技術からあまり発展が見られない、保守的な設計であった。ダッソーとフランス空軍は、当初は対地上攻撃に重点をおいた双発可変翼戦闘機ミラージュG-4を、更にその派生型となる要撃機ミラージュG-8を次期戦闘機として開発していたが、費用・運用の両面から1975年に全プロジェクトは中止となった。その他にも各種の新機軸を取り入れた機体が構想・計画・設計されたものの、ことごとく行き詰まることになる。
その結果、1975年のNATO4か国の新型戦闘機導入商戦において、エンジンを当時の新型機種スネクマ M53に換装したほかに大きな改造をしなかったミラージュF1E/M53は、フライ・バイ・ワイヤ やCCV設計など革新的な技術を実用化したアメリカ合衆国製F-16に性能面でことごとく敗れ去った。
フランス空軍およびダッソー社の両者が必要としていた次期戦闘機計画(ACF)は、1976年の時点で実用化までの期限が1982年までという当時としても短期間での開発計画として再度開始された(現代の戦闘機開発は、さらに長期化している)。ダッソーにとっては短期間で十分な成果を残すことを求められた結果、1972年より『ミニ・ミラージュ(通称ミミ)』『シュペルミラージュIII』『デルタ1000』などの名称で検討されていたミラージュIIIの後継機案をこれに充てた。再び無尾翼デルタ形式に回帰したものの、F1において採用されなかった最新の技術を積極的に導入することでもってデメリットを回避し、大幅な性能向上を目指した。
機体はミラージュ2000と命名され、エンジンは当初ミラージュG-4/8用だったスネクマ M53を流用するなど、開発期間の短期化に注力した。そのため、設計開始から初飛行までわずか27か月と驚異的な速さで開発が進み(それでも初期の計画から9か月遅延していた)、1983年には量産型の軍への納入を開始し、翌年には実戦配備されている。ただし、新型レーダーの開発は間に合わず、最初期の37機は予定していたRDIレーダーの代わりにRDMレーダーを装備していた。
輸出面ではF-16やF/A-18のようなアメリカ機の躍進によって当初はあまり振るわなかったが、フランスではミラージュ2000B(複座型)をベースとして、核兵器の運用を担う戦略爆撃機型のミラージュ2000Nが開発され、1983年に初飛行を達成した。この成果を踏まえて1986年から戦闘能力向上の研究が始まり、ミラージュ2000Nにも採用された強化型エンジンを採用して各種改良を施したマルチロール型のミラージュ2000-5が開発された。当初は海外輸出用として生産され、フランス本国の空軍で採用する予定ではなかったものの、1992年には後継機ラファールの配備が遅れている間の繋ぎとして同仕様への改修を決定し、それに続く形で中華民国(台湾)とカタールが採用した。
1999年に発表されたミラージュ2000-5 Mk.2は輸出専用の発展型で、ラファールで採用された装備・技術の一部も取り入れているが、採用したのは既存の運用国であったギリシャとアラブ首長国連邦のみに終わった。ブラジルでは契約直前まで進んでいたが、当国の財政危機により新造の近代化改修機ではなく中古機の導入に切り替えられた。
こうしてミラージュ2000シリーズの生産は2007年に終了したが、ダッソーは既存のユーザーにHMD、画像識別ポッド、戦術データ・リンク、GPS、IRSTを実装する中間寿命改修を提案している。
前述のとおり、ミラージュ2000の外見はミラージュIII/5/50によく似ているが、中身は設計当時の最新技術を取り入れて、大きく変化している。
主翼は、ミラージュIII/5/50と同じく無尾翼のデルタ翼であり、胴体の下面部分に配置されている。
主な操縦翼面は主翼後縁に設置された2分割式のエレボンであり、ピッチ軸とロール軸を制御する。フライ・バイ・ワイヤとCCVによる操縦概念を取り入れた結果、エレボンを下げても機首上げができるようになったため、離着陸時の速度と滑走距離はミラージュIII/5/50よりもはるかに短くなった。また、主翼前縁には水平飛行時の空気抵抗を抑えつつ迎え角限界を向上させるため、コニカル・キャンバーに替えて2分割式のスラットが配置されている。
胴体と主翼の境界線を滑らかに成型するブレンデッドウィングボディの概念も取り入れられているが、F-16やMiG-29、Su-27などに比べると、LERXが無いこともあって一見しただけではわかりにくい。
垂直尾翼はミラージュIII/5/50よりも高くなっており、高迎え角時には空気取り入れ口の側面付近に取り付けたストレーキが発生させた乱気流を垂直尾翼に当てることで、ベントラルフィンを装着することなく垂直尾翼の利きを強化している。
降着装置も、前脚はミラージュF1と同様にダブルタイヤ・後方引き込み式であるが、主脚はミラージュIII/5/50と同様のシングルタイヤ・内側折り畳み式に戻されている。
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コックピットは、初期型のミラージュ2000C/Bでは計器盤正面にヘッドアップディスプレイが配置されており、計器盤中央下部のCRT式レーダーディスプレイ以外はアナログ式の計器類で構成されていた。
ただしミラージュ2000-5では3つの液晶式マルチファンクションディスプレイと、ヘッドアップディスプレイの下にHLDを装備したグラスコックピットとなっている。
また前部の風防は、キャノピーとの境界線以外の枠を廃止しており、それ以前のフランス製戦闘機よりも前方視界が良好になっている。
キャノピーはミラージュIII/5/50/F1と同様に胴体背面へほぼ一直線に繋がるファストバック形態となっており、同世代の米ソの戦闘機が採用したバブルキャノピー (Bubble canopy) に比べると空気抵抗が少ない利点がある代わりに、後方視界が悪い。複座型のミラージュ2000B/N/DではミラージュF1と同様に前後席それぞれに独立したキャノピーが設置されており、座席の間には射出座席作動時のロケット噴射炎を防ぐための透明アクリル板が設置されている。
射出座席は、イギリスのマーチン・ベイカー製Mk.10を、イスパノ・スイザにライセンス生産させたものを搭載する。
エンジンは、スネクマ製のアフターバーナー付き低バイパス比ターボファンエンジンであるM53を1基搭載する。
スネクマM53は、3段の低圧圧縮機(ファンを兼ねる)と5段の高圧圧縮機を装備しているが、戦闘機用のターボファンエンジンとしては極めて珍しい単軸式エンジンであるほか、軸流式圧縮機の静翼は全て同じ角度を維持する固定式である。
このため構造はシンプルであるが、総圧縮比は9.8:1程度と同世代のエンジンと比べれば低い方であり、ひいては推力重量比の低いエンジンとなってしまう弱点を有する。
推力は、最終発展型のM53-P2ではミリタリー推力14,388 lbf、アフターバーナー使用時最大推力21,357 lbfである。
インテークはミラージュシリーズの伝統を守り、胴体左右両側に半円型インテークが設置され、インテークには半円錐型のショックコーンが配置されている。このショックコーンは可変式で、速度に応じて最も効果的な場所で衝撃波を発生させるように、前後方向に位置を自動調節する機能がある。
ミラージュ2000は、コクピット前部右寄りに、固定式の空中給油用プローブを固定装備する。このプローブはボルト固定式であり、必要が無ければ外すことも可能である。
コックピット斜め前方に突き出した固定式の空中給油用プローブは空気抵抗を増し、視界を狭めることになり、かつステルス性を減ずることになり最新の戦闘機にしては奇異な装備のように思える。ただし空中給油をしない場合は取り外しが可能で重量軽減に資することになる。また引き込み機構のあるプローブよりも効率的に給油することができる。本来本機は空中給油を必要としない迎撃を目的に開発されており、その場合可動収納式の空中給油用プローブの採用はデッドウェイトとなってしまう。長距離爆撃も想定したマルチロール機として運用する場合は目的に応じて増槽やプローブを装着するといった合理的な設計思想といえる。
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火器管制レーダーは、ミラージュ2000Cの初期型ではRDM (Radar Doppler Multifunction) が搭載されており、インド(ミラージュ2000H/TH)やエジプト(ミラージュ2000EM/DM)、ペルー(ミラージュ2000EP/DP)、ギリシャ(ミラージュ2000EG/DG)、アラブ首長国連邦(EAD/DAD/RAD)向けの機体にも搭載された。
ミラージュ2000Cの後期型では、より対空戦闘能力を強化したRDIレーダーが搭載された(フランス空軍の中古機を購入したブラジル空軍機にも、RDIが搭載されている)。
ミラージュ2000-5では、MICAの運用能力等を付与したRDY (Radar Doppler Multitarget) レーダーを搭載した。これはフランス空軍機(ミラージュ2000-5F)のほか、台湾(ミラージュ2000-5Ei/-5Di)とカタール(ミラージュ2000-5EDA/-5DDA)の機体に搭載された。
さらに改良型のRDY-2がアラブ首長国連邦(ミラージュ2000-9/-9D)とギリシャ(ミラージュ2000-5EG/-5DG)に輸出された。
インド向けのミラージュ2000I/TI改修機には、RDY-3レーダーが搭載された。。
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ミラージュ2000の電子戦装備はICMS(Integrated CounterMeasure System)として高度に統合化されており、外装型の電子戦ポッドもICMSの一部として機能するように設計されている。
アラブ首長国連邦空軍のミラージュ2000-9では統合自己防御システムがIMEWSに更新されている。
固定式機関砲は、ミラージュシリーズの伝統に基づいて、前部胴体下面に2門のDEFA554 30mmリボルバーカノンを搭載するが、複座型では後席搭載スペースを確保するために搭載されていない。
ハードポイントは、左右主翼下に2つずつ、胴体中心線下に1つ、胴体の主翼付け根部分に4つ(左右の主翼付け根部分に、それぞれ前後に2つずつ配置)の合計9か所であり、このうち胴体中心線下と左右主翼下内側の3つが増槽を装備可能なウェットポイントである。また主翼外側のハードポイントは、R.550 マジックやMICA IR(ミラージュ2000-5以降のみ)などの空対空ミサイルの中でも比較的軽量な兵装しか搭載できない。
主な空対空兵装は、赤外線追尾式のR.550 マジックと、セミアクティブ・レーダー誘導式のシュペル530Dを、主翼下に2発ずつ(R.550マジックは主翼下外側、シュペル530Dは主翼下内側に搭載)、計4発搭載するほか、ミラージュ2000-5では新型のMICAを6発(胴体の主翼付け根部分4か所と、主翼下外側に2発)搭載できるため、増槽を3本搭載できる。ただし、核攻撃機型のミラージュ2000Nや戦闘爆撃機型のミラージュ2000Dでは自衛用のR.550 マジックかMICA IRのみを装備する。
フランス空軍ではミラージュ2000C/-5Fは空対空戦闘、ミラージュ2000Bは機種転換訓練に専念するものとされており、核攻撃を含めた対地攻撃や偵察はミラージュ2000N/DやSEPECAT ジャギュアやミラージュF1CT/CR、ラファールが担っているが、輸出先では対空戦闘と対地・対艦攻撃の双方を担うマルチロール機として運用されていることが多く、レーザー誘導爆弾やラファエル・スパイス誘導爆弾、SCALP-EG巡航ミサイル、AM39エグゾセ空対艦ミサイルなどの運用が可能となっている。
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フランス空軍機は1991年の湾岸戦争を筆頭とする多くの紛争に実戦投入された。アラブ首長国連邦空軍機は湾岸戦争に、カタール空軍機は2011年リビア内戦にフランス空軍機と共に参加している。
2022年6月23日をもって1984年から運用されたミラージュ2000Cは全機退役となった。
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エジプト空軍 (Egyptian Air Force) は1981年12月に20機(単座型のミラージュ2000EM 16機と、複座型のミラージュ2000BM 4機)を発注した。ミラージュ2000にとって最初の海外発注であったが、代金支払いの遅延から実際の引き渡しはインドよりも遅い1986年6月にずれ込んだ。
エジプト空軍の機体はレーダーはRDM、エンジンはスネクマM53-5と、フランス空軍の初期型に近い構成になっている。任務は全天候迎撃のほかに、ARMAT対レーダーミサイルやレーザー誘導爆弾などによる対地攻撃も行う。このため、ATLIS II照準ポッドの運用能力も付与されている。
インド空軍は、1984年にミラージュ2000H/THの導入契約を交わし、翌1985年から単座型のミラージュ2000H 42機と複座型ミラージュ2000TH 7機を導入した。また2004年には4機のミラージュ2000Hと6機のミラージュ2000THを追加導入しており、インド空軍がフランスから新規導入した機体は単座型46機、複座型13機の計59機となる。
インド空軍ではミラージュ2000は「ヴァジュラ」と呼ばれており、インド中央部のグワーリヤル近郊にある軍民共用のマハラージプール(Maharajpur)空軍基地に駐屯する第40航空団(No. 40 Wing IAF)隷下の第1/第7/第9の3個飛行隊に配備されているが、このうち実戦部隊は第1/第7の2個飛行隊である。
インド空軍のミラージュ2000は、対空戦闘だけでなく対地攻撃もこなせるようにRDM-7レーダーを装備しているほか、フランス空軍のミラージュ2000N/Dと同じアンテロープ5を装備しているという情報もある。エンジンについては、当初は旧式のM53-5を装備していたが、後には全機が新型のM53-P2に換装された。
兵装については、対空兵装はシュペル530DとマジックIIを装備する。対地攻撃兵装としてはAS.30LやARMAT対レーダーミサイル、ぺイヴウェイII レーザー誘導爆弾などの各種誘導兵器・無誘導兵器のほか、戦術核兵器の運用能力も付与されている。精密誘導兵器を運用するために、照準ポッドとしてフランス製のATLISや、イスラエル製のライトニングを運用可能となっている。
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ペルー空軍は、1982年12月に16機(単座のミラージュ2000P 14機と、複座のミラージュ2000DP 2機)のミラージュ2000を発注した。この契約にはさらに10機分(単座のミラージュ2000P 8機と、複座のミラージュ2000DP 2機)のオプションが付与されていた。
その後の経済危機により1984年7月に再交渉が行われた結果、最終的な導入機数は12機(単座のミラージュ2000P 10機と、複座のミラージュ2000DP 2機)に削減され、1986年12月から引き渡しが始まった。
ペルー空軍の機体は、エンジンはM53-P2であるが、レーダーはRDMである。また、対地攻撃用にATLIS II照準ポッドやBGLレーザー誘導爆弾、AS.30L空対地ミサイルなどの対地攻撃兵装も運用可能となっている。
1995年の1月から2月にかけてエクアドルとの間に勃発したセネパ紛争においては特筆に値する活躍はしていない。一説には経済危機による予備部品不足から、紛争勃発当時に稼働可能な機体は3機だったともいわれる。
ギリシャ政府は、1985年3月に単座型のミラージュ2000EG 36機と複座型のミラージュ2000BG 4機の計40機を導入することを発表した。
ギリシャ空軍は、1988年からミラージュ2000の受領を開始し、タナグラ空軍基地の第114戦闘航空団隷下の第331飛行隊と第332飛行隊に配備した。
また、エーゲ海に浮かぶスキロス島の第135戦闘航空群(135 Combat Group)に、2機の航空機と3~4名のパイロットをローテーションで展開させて、トルコ空軍機の領空侵犯に備えている。
1996年には、領空侵犯したトルコ空軍のF-16Dブロック40を格闘戦の末、マジック2短射程空対空ミサイルで撃墜している(パイロットは死亡、コパイロットはギリシャ軍により救出)。
ギリシャ政府は2000年に、単座型10機と複座型5機の、計15機のミラージュ2000-5 Mk.2を追加導入することを発表した。2007年3月1日にミラージュ2000-5 Mk.2の最初の機体がタナグラ空軍基地に到着し、同年11月23日に最後の機体を引き渡したのを最後に、ミラージュ2000の新規生産は終了した。
ミラージュ2000-5 Mk.2を配備されることになった第331飛行隊は、2007年3月3日から機種転換訓練を開始し、2008年5月には機種転換訓練を完了した。
2022年1月19日、第332飛行隊はフランスから6機のラファールを受領して機種転換訓練を開始したのに伴い、ミラージュ2000EGM/BGMは退役した。これに伴いギリシャ空軍に残るミラージュ2000は、第331飛行隊に配属された25機(単座型20機、複座型5機)のミラージュ2000-5 Mk.2のみになった。
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アラブ首長国連邦空軍 (United Arab Emirates Air Force) は、1986年に36機のミラージュ2000EAD/DAD/RADを発注した(単座型のEAD 22機、複座型のDAD 6機、単座偵察型のRAD 8機)。このうちRADはミラージュ2000シリーズ唯一の偵察型で、機体本体には偵察機器を搭載していないが偵察ポッドの運用能力を持っている。
自己防御装備は、イタリアのエレットロニカ(Elettronica Group)製ELT/158レーダー警戒受信機と、同社製ELT/558電子妨害装置を搭載している。
1998年には、改良型のミラージュ2000-9を62機導入することを決定。うち32機(単座型のミラージュ2000-9 20機と、複座型のミラージュ2000-9D 12機)はフランスから新造機を導入するが、残りの30機は既存のミラージュ2000EAD/DAD/RADをミラージュ2000-9仕様に改修する事とした。これによりアラブ首長国連邦空軍はフランス国外でのミラージュ2000新造機購入数では最多の68機を購入した。
ミラージュ2000-9の新造機は1999年4月から2004年までに納品され、既存の機体の改修も2007年までには完了した。また兵装システムも納品当初はSAD91と呼ばれる暫定的な兵装システムで納品されていたが、2005年にはSAD92と呼ばれる完成型の兵装システムの開発が完了し、既存の機体のシステムもすべて更新された。
ミラージュ2000-9は、基本的にはミラージュ2000-5 Mk.2と同じ機体であるが、一部の電子装備が異なっている。
1980年代の中華民国空軍は、主力制空戦闘機であったF-104 スターファイターの老朽化に直面していた。中華民国政府はF-104の後継機としてF-16の売却をアメリカに要請していたが、中華人民共和国との関係を重視していたアメリカはF-16の売却を拒否した。アメリカは代わりにF-20 タイガーシャークとF-16/79の売却を提案したが、中華民国はこれらの機体を導入する代わりに、独自にF-CK-1経国の開発を進めていった。
フランスは1992年に、中華民国にミラージュ2000-5の購入を打診した。当初は120機を導入するともいわれていたが、最終的には60機(単座型のミラージュ2000-5Ei 48機と、複座型のミラージュ2000-5Di 12機)の導入が決定された。
中華民国空軍がフランス製戦闘機を導入するのは、1937年にドボワチーヌD.510Cを購入して以来のことだったので、ミラージュ2000-5を導入する際には、兵装として960発のMICA EMと480発のマジックII、機関砲を内蔵していない複座型の射撃訓練に使うためのDEFA 554 30mm機関砲を2門搭載したガンポッドが複数引き渡されたほか、増槽やヘルメット、耐Gスーツなどの各種装備品も新たに導入した。
中華民国空軍のミラージュ2000-5は、新竹市の新竹空軍基地に配置された第2戦術戦闘機連隊隷下の第41/第42/第48飛行中隊に配備されている。このうち、第48飛行中隊は転換訓練部隊である。
第2連隊は民国86年(西暦1997年)5月に最初のミラージュ2000-5を受領してF-104からの転換訓練を開始し、同年12月に第41飛行中隊の転換訓練が完了。翌民国87年(西暦1998年)11月に60機全てのミラージュ2000を受領した。
カタール空軍は1994年にフランスから12機のミラージュ2000-5EDA/-5DDA(内訳は、単座型のミラージュ2000-5EDA 9機と、複座型のミラージュ2000-5DDA 3機)を16億ドルで購入契約を交わし、1997年からの引き渡しを受けた。
カタール空軍のミラージュ2000-5は、台湾の機体が防空戦闘を主任務とするのとは対照的に、アパシュ巡航ミサイルなどの運用能力を付与されたマルチロール機となっている。
カタール空軍のミラージュ2000-5は、短期間の運用後に保管状態に置かれ、売却が検討された。一時はインドへの売却交渉も行われたが、インドが提案した買取価格(3億7500万ドル)がカタールの売却希望価格の半額以下だったことから、2009年中ごろに交渉は打ち切られた。
2011年には、リビアでの内戦において、国際連合安全保障理事会決議1973に基づいて設定された飛行禁止空域の監視(オデッセイの夜明け作戦およびユニファイド・プロテクター作戦)のために、カタール空軍のミラージュ2000-5のうち6機がアメリカアフリカ軍の指揮下で作戦に従事した。
カタール空軍は2015年に24機のダッソー ラファール、2017年に24機のユーロファイター タイフーンを導入する契約を交わしており、ミラージュ2000-5の退役はそう遠くないものと思われる。
ブラジル空軍では、運用寿命が迫っていたミラージュIII(F-103)の暫定後継機として、2005年にフランス空軍から中古のミラージュ2000を12機(単座型のミラージュ2000Cを10機、複座型のミラージュ2000Bを2機)受領する契約を結んだ。売却価格は、パイロットや地上要員の訓練や運用支援を含めて、8,000万ユーロであった。
ブラジル空軍は、2006年から2008年にかけて、1年に4機ずつのミラージュ2000を受領した。
ブラジル空軍のミラージュ2000はアナポリス空軍基地の第1防空戦闘航空群(1.° Grupo de Defesa Aérea)に配備され、F-2000と呼称された。
ブラジル空軍のミラージュ2000はミラージュIIIと同様に防空戦闘を主任務としており、兵装はマジックIIとシュペル530Dであった。
しかし、2013年にブラジル空軍のミラージュ2000は退役した。第1防空戦闘航空群には暫定的にF-5EMが配備されており、FX-2選定において選定されたグリペンNG(F-39)の配備が始まる2021年まではF-5EMを運用する計画である。
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