フーリガン

フーリガン(英語: hooligan)とは、サッカーの試合会場の内外で暴力的な言動をする暴徒化した集団のことを指す。

フーリガン
ロシアで発生した暴動の様子

語源

語源には、明確ではないがいくつかの説がある。

  • 「流行歌引用」説
      19世紀のイギリスで流行していた歌の中で揶揄される、アイルランド系住民の名がフーリガンであった。
  • 「集団名称」説
      19世紀後半にフーリガンボーイズと称するギャング集団が、イギリスで新聞記事となって広まった。

いずれかが語源となり、「乱暴者」を意味する一般的な英語として定着した。本来の意味の「フーリガン」とは公共物を破損させたり、悪戯をする者のことを指すが、いつしかサッカースタジアム内外での暴力行為と破壊活動を行う者の総称として「フーリガン」と呼ばれるようになったという。また、「フーリガン」という用語が国際的に認知される以前は、英語で「乱暴者」を意味する「ロウディーズ」(Rouwdies)、「悪漢」を意味する「ルフィアン」(Ruffian)などが使用されることもあった。

特徴

フーリガンの目的とは、労働者階級の者たちが鬱屈した生活のウサ晴らしとして、大声を立て暴力を行使するのだとされる。その際、試合結果に興奮した者が感情を爆発させ偶発的に暴動を発生させるのではなく、暴力行為を目的とする者が試合内容に関係なく意図的に暴動を引き起こすのだという。特徴としては以下の物が挙げられる。

  1. アルコールを飲用し酩酊状態にある
  2. 10代から20代の男性により構成される
  3. いくつかの小集団が示し合わせたかのように集団行動を採り暴徒化する
  4. 試合日時の如何、試合内容の如何を問わない
  5. スタジアム、近隣都市、交通機関など場所を問わない
  6. 煉瓦ガラス瓶木材ナイフなどを武器として携帯し乱闘や破壊活動を行う
  7. 外国人排斥を掲げ、宗教差別的態度を採り仲間同士で団結する。

またはその国や地域などが持つ民族対立、宗教対立、経済格差などの社会問題や政府に対する不満、国民戦線ネオナチなどの極右勢力との結びつき、一部の者が起こす反社会的行為に対する集団心理的同調などが挙げられ、具体的にフーリガンには大きく3つの種類に分類される。

  1. 試合の観戦ではなく、暴れることそのものが目的となっている者。
  2. 自ら暴動に加わらず、騒ぎを起こすことだけを目的とする扇動者
  3. 自ら騒ぎを引き起こすことはないが、他人が騒ぎ始めればその場の空気で加わる者。

特に1と2のタイプは、警察当局から厳重に監視されており、要注意人物についての情報交換は、国際大会の参加チームなどの状況に応じて、各国警察の間で随時広く行われている。

罰則

FIFAなどは、試合自体の禁止や延期処置だけでなく、このような行為を行ったサポーターに対し、試合会場内への入場禁止処置、更にはチームに対しても罰金や無観客試合、一定期間の国際大会などへの出場禁止といった罰則を科している。

各国の事例

スポーツ競技場における観客の暴動は古代からの問題であり、59年ローマ帝国ポンペイで行われた剣闘士の試合において暴動が発生し死傷者が出た事件や、532年東ローマ帝国の首都コンスタンティノープルチャリオット(戦車)を使ったレース競技がきっかけとなり勃発したニカの乱などが記録として残されているが、現代社会に通ずる「フーリガニズム」と類似した事例は1899年スコットランドで発生している。

    1985年5月29日にベルギーのブリュッセルで行われたUEFAチャンピオンズカップ 1984-85決勝において39人が死亡した事件(ヘイゼルの悲劇)を契機に抜本的なフーリガン対策が行われるようになり、監視法の制定や関係機関による取り組みが行われた結果、1996年前後にはスタジアム内でのフーリガンによるトラブルは過去の出来事と考えられるようになった。
    フーリガン  オランダ
    オランダでは1970年代にイングランドから「フーリガニズム」が伝播し、1974年5月29日にロッテルダムで行われたUEFAカップ決勝第2戦・フェイエノールト対トッテナム・ホットスパー戦が、国内でフーリガニズムが確認された初の事例とされている。その後、国内では多くのクラブで暴力的な集団が登場し、ある調査によると1970年代に国内で行われた3060試合のうち、6.6%にあたる201試合で何らかのトラブルが発生した。トラブル件数の17%はフェイエノールト、15%はFCユトレヒトの集団によって引き起こされたことから、両者は最も危険な存在として知られた。
    1985年に隣国のベルギーで発生したいわゆる「ヘイゼルの悲劇」以降、1987年10月に行われたUEFA欧州選手権1988予選オランダキプロス戦での爆発物事件などトラブルが頻発した。これらの問題に対処する為に「サッカーにおけるバンダリズムに関する全国協議会」(LOV)や、「サッカーにおけるバンダリズムに関する中央情報機関」(CIV) による研究と対策が採られ、LOVやCIVと連携した警察当局による取締りの強化が行われている。
    2014年3月8日埼玉スタジアム2002で行われた浦和対サガン鳥栖戦において浦和サポーターにより人種差別的横断幕が掲出された問題に対して国内外で様々な反応が起こった。この問題に関してJリーグは浦和への譴責処分と併せ、3月23日に行われる第4節の清水エスパルス戦を無観客試合として開催することを発表した(詳細参照)。
    浦和はこれに飽き足らず何度も暴動行為を行い、2023年8月3日、名古屋市港サッカー場で開催された天皇杯4回戦名古屋グランパス戦後に名古屋サポーターに挑発を受けたとし、芝生スタンドからピッチを経由し名古屋サポータースタンドへ乱入。
    その様子はメインスタンド側の観客からもyoutubeに多数投稿され、名古屋の横断幕の毀損、略奪、さらにパニック状態と化したバックスタンド側観客が逃げ惑う中、最終的に名古屋ゴール裏まで到達。その間に警備員への暴行も多数行い最終的には70人以上の入場禁止者を出し、数名はJFA初の全カテゴリーでの観戦禁止処分と、浦和に対しての2024年大会の天皇杯出場禁止処分が下された。
    他にも2023年は仙台サポーター団体によるジュビロ磐田選手バス取り囲み事件などが起きている他、前述の名古屋戦後に行われたリーグ戦での浦和対名古屋では2年連続で試合前に名古屋サポーターへの殺害予告をXで行う、選手への誹謗中傷など、ネット上でのフーリガン行為が深刻化している。
    クラブ側はその都度、選手に対しての誹謗中傷は許さない、訴訟も辞さないなどと声明を出しているが何も解決策は行っていない。
    また、2002 FIFAワールドカップの際には国外からのフーリガンの大量流入が懸念されていたが、フーリガンの入国阻止を目的として2001年11月13日に出入国管理及び難民認定法が、フーリガン条項(第5条第1項第5号の2、24条4号の3)の規定を加えて改正され、2002年3月1日より施行された。入国管理局警視庁の連携により、同年5月26日から決勝戦終了までに、65名に及ぶフーリガンの上陸拒否を実施した。

脚注

関連項目

  • ヴァンダリズム
  • 暴動
  • サッカー文化
  • ミルウォールFC - “フーリガンの代名詞”といわれるほどサポーターの気性の激しさで悪名が高い。チーム発足以来、過去には幾度となくサポーターの暴動により逮捕者を出したり、暴動の結果として試合が中止、延期になることがあった。
  • ミルウォール・ブリック - 持ち込み規制を逃れるために考案された新聞紙で作る武器。
  • ローリガン - フーリガンの反対語。主にデンマークの様な紳士的で穏やかなサポーターを指す。
  • A.C.A.B. - フーリガンがよく掲げる反警察の標語。「1312」とも。

参考文献

  • 安藤正純、石田英恒『ワールドカップを100倍楽しむための フーリガン完全対策読本』ビジネス社、2001年。ISBN 978-4828409085 
  • 小林章夫『東は東、西は西--イギリスの田舎町からみたグローバリズム』日本放送出版協会NHKブックス〉、2005年。ISBN 978-4140910214 
  • 東本貢司『フットボールと英語のはなし--Saturday in the Park』三省堂、2002年。ISBN 978-4385361048 
  • ミッキー・フランシス、ピーター・ウォルシュ 著、小林章夫 訳『フーリガン 最悪の自叙伝』飛鳥新社、2001年。ISBN 978-4870314740 
  • ドミニック・ボダン 著、陣野俊史、相田淑子 訳『フーリガンの社会学』白水社〈文庫クセジュ〉、2005年。ISBN 4560508941 
  • パトリック・ミニョン 著、堀田一陽 訳『サッカーの情念--サポーターとフーリガン』社会評論社、2002年。ISBN 978-4784503988 
  • トニー・メイソン 著、松村高夫、山内文明 訳『英国スポーツの文化』同文館、1991年。ISBN 978-4163581804 
  • テオ・ライゼナール 著、佐藤克彦、野間けい子 訳『フーリガン解体新書』ビクターブックス〈ワールドサッカーグラフィックライブラリーシリーズ〉、2002年。ISBN 978-4893891723 

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