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『地球防衛軍』(ちきゅうぼうえいぐん、英題:The Mysterians)は、1957年(昭和32年)に公開された、東宝制作の特撮SF映画。カラー、東宝スコープ。監督は本多猪四郎、特技監督は円谷英二、主演は佐原健二。
地球防衛軍 | |
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THE MYSTERIANS | |
監督 | |
脚本 | 木村武 |
原案 | 丘見丈二郎 |
製作 | 田中友幸 |
出演者 | |
音楽 | 伊福部昭 |
撮影 | |
編集 | 岩下広一 |
製作会社 | 東宝 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1957年12月28日 |
上映時間 | 88分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
製作費 | 2億円 |
配給収入 | 1億9,300万円 |
次作 | 宇宙大戦争 |
同時上映は『サザエさんの青春』。
本作品の公開年には世界初の人工衛星であるスプートニク1号が打ち上げられるなど、公開当時は宇宙開発競争が激化しており、国内外でも宇宙に関連した映画が多数制作されていたが、本作品はその中でもスケールの大きな作品であり、「空想科学映画の決定版」と銘打たれ、監督の本多猪四郎と特技監督の円谷英二による初めてのカラー東宝スコープ映画となっている。
巨大ロボットが登場する日本初の映画でもある。そのほか、東宝特撮として初めて、本格的な宇宙空間や空飛ぶ円盤、光線兵器などが描写された。また、戦車のミニチュアには初めてラジコンを用いている。地球側の攻撃は「自衛のための行動」であることが劇中でも明言されており、自衛隊の理念に則したものとなっている。
原作の丘美丈二郎やデザインの小松崎茂など、その後の東宝SF作品を支えるスタッフが初参加した。円谷は、本作品で第11回日本映画技術賞(特殊技術賞)を受賞した。
1959年にはMGM系で全米公開もされた。
のどかな富士山麓の村祭りの夜、地面から発火するという奇怪な山火事が発生し、天体物理学者の白石亮一が失踪する。白石の同僚で親しい友人であった渥美譲治は残された白石の論文「ミステロイドの研究」を安達賢治郎博士に届けるが、その内容は途中で終わっていた。まもなく、白石が住んでいた村に放射能を伴う山崩れが起こったとの報告を受け、調査に向かった渥美の前に巨大な怪ロボット・モゲラが出現する。火炎放射器や機関銃、ロケット砲の攻撃すらものともせず村落を次々に破壊するモゲラを、出動した防衛隊は鉄橋ごと爆破するという手段で、ようやくその進行を止める。
ここに至り、モゲラが白石の報告書にある異星文明の仕業と推測した安達博士は報告書を公表し、富士五湖で円盤状の飛行物体が頻繁に目撃されていたことから富士山麓へ調査団が派遣されるが、そこに突如として巨大なドーム状の物体が出現した。巨大ドームの主はミステリアンと名乗り、調査団の代表5名をドーム内に招き入れた。ミステリアンは調査団に対し、ドームを中心に半径3キロメートルの土地の割譲と地球人女性との結婚の自由を要求する。5千年前に母星のミステロイドを核戦争による原子兵器で失ったミステリアンは、宇宙を放浪した末、地球を訪れたのだった。
すでに数人の女性を拉致し、地球側の出方次第では攻撃も辞さないというミステリアンの要求に疑惑を感じ、これを拒否した防衛隊は通常兵器を中核とした戦力、野戦砲・戦車隊・ジェット戦闘機で猛攻を浴びせるが、要塞と化したミステリアンドームにはまったく効かず、ドームから発せられた熱光線の反撃で防衛軍は壊滅的な打撃を受け、撃退される。惨敗に頭を痛める一同のもとへ、科学戦闘班から新兵器・電子砲の設計図が持ち込まれる。
一方、緒戦の勝利を境にミステリアンの活動は目立っていき、東京上空に円盤を飛ばして「我々は戦いを好まない」と市民に呼びかける。そのころ、渥美の見ていたテレビ画面に行方不明となっていた白石が突如現れる。ミステリアンに寝返っていた白石は、対話を試みるリチャードソン博士やインメルマン博士に「勝つのは、地球人でもミステリアンでもなく科学だ」と言い放ち、リチャードソン博士は「それでも我々は戦わなければならない」と言い返す。諸外国の政治家および軍人は東京でミステリアン対策会議を開催し、決戦を富士山麓にて行うことを決意する。
通常兵器ではまったく歯が立たないミステリアンに対し、諸外国からの援助で、空中戦艦α号、β号、そして長距離からのオネストジョンによる攻撃が決定される。後方のα号の指揮下で前線に出たβ号はナパーム弾による高熱攻撃をドームに試みるが、熱光線で粉砕される。さらに、ミステリアンは土地の要求を半径120キロメートルに拡大したうえ、女性たちを次々と誘拐し始め、白石の妹・江津子と恋人の広子も誘拐されてしまう。
焦燥に満ちた危機の中、熱光線に耐えるマーカライトと、それを応用した超巨大パラボラ戦車・マーカライトファープやマーカライト塗装を施したα号といった対抗手段が、防衛軍側にようやく登場する。機動力に欠けるマーカライトファープの欠点を補うため、専用輸送ロケットマーカライトジャイロが投入配備され、決戦の準備が着々と整えられるが、マーカライトの効力は75分までと限界があるうえ、ドームへ決定的な打撃を与えられる性能を持つ電子砲は未完成であった。
地球軍の3度目の総攻撃が始まった。ジャイロから投下されたマーカライトファープは期待通りの性能を発揮し、熱光線に耐えながら距離を詰め、ドームにダメージを与えていく。ミステリアン統領は攻撃を中止せよと警告するが、防衛軍側は条件として地球からの撤退を要求し、激怒したミステリアンは報復手段として湖から濁流を発生させ、マーカライトの一部や付近の町を飲み込むという反撃に出る。だがその直後、ドームは一部機能が停止してしまう。実は渥美が江津子と広子を救うべく単独でドームに潜入し、ミステリアンから銃を奪ってドームの装置を破壊していたのだ。
渥美はすぐさまミステリアンに捕らえられ、その中の1人に連行される。だがその先は脱出路であり、そこには江津子や広子らミステリアンに連行された女性たちが待っていた。連行したミステリアンが仮面を外すと、その正体は白石だった。白石は「俺は奴らにだまされていた。地球はミステリアンの悲劇を繰り返すな!」と告げると、渥美に安達博士宛の報告書の続きを渡し、再びドーム内へ消えて行った。
マーカライトの効力切れの間近、ついに完成した電子砲を搭載した第二β号が発進する。ミステリアンは地中からモゲラを出動させるが、倒れてきたマーカライトに押し潰されて撃破された。戦場に到着した第二β号の電子砲攻撃が始まり、ついにドームは大爆発を起こす。その寸前に脱出した渥美たちの上空で、第二β号の砲撃はまだ続いていた。
電子砲の熱線が逃げるミステリアンの円盤を一部を撃墜するが、残りの円盤は彼らが上空に建造していた宇宙ステーションへ帰還する。まもなく地球圏から離れていくステーションを見た安達博士は、「彼らは、永遠に宇宙の放浪者です。我々は決して彼らの轍を踏んではならない……」と呟くのだった。
ミステリアン THE MYSTERIANS | |
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別名 | 怪遊星人 |
身長 | 1.8 m |
体重 | 80 kg |
出身地 | ミステロイド |
出現地 | 富士山麓のドーム内 |
かつて火星と木星の間に存在していたとされる第5遊星ミステロイドから、地球を訪れた異星人。身を覆うマントとヘルメット、ベルト、長靴が階級により色違いのものを着用しているのが特徴。その色は最高指揮官が赤、中級指揮官が黄、一般戦闘員が青となっている。高温に弱いため、冷涼な環境でないと生きていけない。
10万年前に母星を大原子兵器戦争による核兵器で滅ぼしてしまい、わずかに生き残った一団が火星へ移住して細々と生活してきたが、元の文明を復興・繁栄させることは困難だったため、恵まれた環境と豊富な資源を有する地球への移住を決意し、実力行使による侵略に乗り出すと、ステーションを宇宙、基地のドームを富士山麓地下にそれぞれ建設し、女性との結婚や半径3キロメートルの土地を要求する。
原子兵器戦の後遺症で肉体は異常を来たしており、生殖行動もままならず、素顔はケロイドが浮き出している。また、地球より重力の軽い火星で幾世代にもわたって生活してきたため、地球上では人類よりもやや動きが鈍い。
α号 | |
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所属 | 地球防衛軍 |
全長 | 200 m |
武装 | 熱線砲 |
乗員 | 500名 |
β号 | |
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所属 | 地球防衛軍 |
全長 | 200 m |
重量 | 不明 |
武装 |
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マーカライト・ジャイロ | |
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全長 | 1,000 m |
重量 | 不明 |
参照
監督の本多猪四郎は、本作品の狙いとして冷戦下で東西の対立が深まる世界情勢を受け、地球外からの侵攻があれば地球全体が結束するのではないかという逆説的な考えであったといい、第二次世界大戦を経験した自身の戦争に対する1つの答えであったと述べている。一方で、敵対するミステリアンも地球での善悪の概念に収めず、やむを得ない事情のある存在として位置づけることで、今後の人類の課題としてコミュニケーションがとれないもどかしさをどう解決していくかという疑問も描きたかったと語っている。
原作の丘見丈二郎は、製作の田中友幸が雑誌『増刊宝石』に掲載された丘美の小説「鉛の小函」を読んだことで起用された。丘見は当時自衛隊に所属しており、航空機関係の企業に勤めていた田中の弟と知人でもあった。田中は、当時丘見が勤務していた仙台基地まで赴いて執筆を依頼し、丘見は防衛というテーマが自衛隊に合致したことからこれを引き受けた。
丘見による原作は、田中の要請により雑誌掲載を前提に小説形式で執筆されたが、400字詰原稿用紙200枚におよぶこの原作は長すぎるとして、出版には至らなかった。丘見は、以後の作品では小説形式ではなくストーリーのみの原案形式で執筆した。
原作ではモゲラが登場しないうえ、白石が人類を裏切るという展開や、ミステリアンが地球人女性との結婚を求めるといった設定も存在していなかった。丘見は、脚色の香山滋から「もっとロマンを」と意見されていたという。
特撮ものとしては初めてワイドスクリーン版東宝スコープを採用した作品である。富士の裾野での戦闘シーンでは、ワイド画面を活用した攻撃の応酬が繰り広げられる。カラー化により光量が増えていたところにシネスコに合わせてさらなる光量が必要となったため、特撮のスタジオセットでは80度近い熱気となっていた。特撮班カメラマンの富岡素敬によれば、光量の増加に伴い電力使用量も大幅に増え、他のスタジオで電気が使えなくなってしまうため、円谷班は他の組が定時に撮影を終えた後の午後6時から撮影を始めなければならなかったという。
人物カットと特撮カットを合成や編集で組み合わせる手法が多用されており、本編と特撮の一体化が図られている。富岡は、シネスコは横に長いことから人物を真ん中に置くと左右が空いてしまい、人物の位置取りが難しかったと述懐している。
自衛隊の攻撃シーンでは、陸上自衛隊富士学校の全面協力により、実際の演習風景を撮影している。本多によれば、最大で3個中隊が参加しており、自身が監督した時代の東宝特撮では最高動員数であったという。実在の兵器が多数登場するこのシーンは、後の作品にも数多く流用されている。
冒頭の山火事のシーンでは、オープンセットで人間と火を扱った撮影を行った後、スタジオに同じ形状のミニチュアを作り、ロングショットや溶岩のシーンなどを撮影した。オープンセットの撮影では、スタートが遅れたことから着火に使用するガソリンが揮発して周囲に充満してしまい、予定よりも広範囲に燃え広がった。そのため、このシーンでの出演者の表情は本当に恐怖で驚いたものであったという。本多は、当時はオープンセットでもガソリンが多く使えたと後年のインタビューで述べている。
村祭りのシーンは東京都内の氷川神社で撮影された。民謡は、民謡研究会が担当した。
村の遠景を撮影した西湖北側の集落は、撮影の数年後に土砂災害で壊滅を経て移転したために現存しておらず、本作品は当時の様子を映した貴重資料となっている。
会議室のセットは、産経新聞の国際会議場をモデルとしている。
ドーム攻撃の場面では実物大の戦車も用いられた。特殊美術の入江義夫は、予算のない中、円谷から製作を依頼されたという。脱出する乗員は人形で表現しているが、操演の中代文雄はタイミングがうまく合わず勝手に飛び出したものだが、それが却って良かったと述懐している。入江は、『モスラ』で使用した実物大模型は本作品のものと同一であると推測している。
ミサイル着弾時の爆発はそれまでスタッフが目視と手作業で行っていたが、特機の鈴木昶がミサイルが届いた瞬間に電気着火して爆発する着発信管という仕組みを考案した。しかし、鈴木はこのギミックの準備作業中に誤って通電させた結果、ナパームの爆発を浴びて火傷してしまい、休養することとなった。
モゲラが襲撃する鉄橋のミニチュアは、戸井田製作所が手掛けた。この鉄橋は円谷の要望により、撮影後に作り直されて再撮影された。井上は、円谷から「出来が今ひとつ」という理由で作り直しを指示されて癪に障ったというが、実際には撮影助手がフィルムを噛み込ませてしまったため、爆破シーンが撮影できていなかったことが原因であった。
1978年3月18日公開の「東宝チャンピオンまつり」(最終興行)でリバイバル上映された。上映時間は71分。
「東宝チャンピオンまつり」のリバイバルメイン作品では、本作品がもっとも古い。企画に協力していたデザイナーの米谷佳晃は、東宝から提示された『地球防衛軍』『宇宙大戦争』『世界大戦争』の中から子供がストレートに楽しめる本作品を選んだと述べている。また、『スター・ウォーズ』や『未知との遭遇』などの公開によるSF映画ブームの影響もあるとされる。当時の東宝映像で撮影助手を務めていた桜井景一は、本興行での再編集は監督の本多が行っていたことを証言している。
2008年7月にはキネカ大森の円谷英二特集で複数回リバイバル上映された。
2023年8月には特集上映企画「午前十時の映画祭13 デジタルで蘇る永遠の名作」にて4Kデジタルリマスター版が上映された。
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