『宇宙大戦争』(うちゅうだいせんそう)は、1959年(昭和34年)12月26日に公開された日本のSF特撮映画。地球侵略を狙う異星人と迎え撃つ地球人類による宇宙戦争を描く。製作、配給は東宝。カラー、東宝スコープ。同時上映は『サザエさんの脱線奥様』。
宇宙大戦争 | |
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BATTLE IN OUTER SPACE | |
監督 | |
脚本 | 関沢新一 |
製作 | 田中友幸 |
出演者 | |
音楽 | 伊福部昭 |
撮影 | |
編集 | 平一二 |
製作会社 | 東宝 |
配給 | 東宝 |
公開 | 1959年12月26日 |
上映時間 | 93分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 1億2,300万円 |
前作 | 地球防衛軍 |
東宝が『地球防衛軍』に近いコンセプトの姉妹編として製作したSF映画。原作の丘美丈二郎、コンセプトデザインの小松崎茂などが同作品から引き続き参加している。『地球防衛軍』に登場した安達博士、白石、リチャードソン博士、インメルマン博士という役名が本作品に再登場しているが、インメルマン博士以外は別の俳優が演じた。内容面では、極めてスピーディーな演出で地球人と遊星人ナタールの攻防戦が描かれ、『地球防衛軍』よりも画面の色彩が抑えられ、メカデザインも実在のものをモチーフにするなど、よりリアルなメカニック表現を追求したものとなっている。
本作品は、製作当時における「宇宙に関する最新の情報」が盛り込まれたSF映画でもある。また、宇宙戦闘シーンが作品の多くを占めているのも特徴である。海外上映を考慮し、外国人俳優が物語の中核に位置している。
特技監督の円谷英二はすでに世界的名声を得ており、彼の特撮映画は海外でも大評判となっていた。本作品ではついに、東宝が製作発表した段階でアメリカの映画バイヤーが買い付け契約を結ぶために来日し[要出典]、これは以後の恒例となった。
1967年の大晦日にフジテレビ系列で17:30 - 19:00の時間枠で放送された[要出典]。
零号版フィルムでは合成前のカットシーンや合成素材、光線のタイミング、シーンの尺の長さなどが異なったものが収録されており、長らく所在不明とされていたが、後年にはフィルムが発見されて総尺が96分となり、2014年11月24日に日本映画専門チャンネルで『宇宙大戦争<ロングバージョン>』と称して初放送された。
1965年、宇宙ステーションJSS3が謎の空飛ぶ円盤群に襲撃され、反撃するも敵わず宇宙の塵と化す。さらに、世界中で鉄橋や汽船が空中に舞い上がるといった怪事件が続発する。東京郊外の国際宇宙科学センターでは緊急の国際会議が開催され、何者かが意図的に冷却線による超低温状態を作り上げ、物質の核振動を停止して無重力状態にしているのでは、という結論を出す。だが、会議のメンバーであるアーメッド教授がすでに「ナタール」と名乗る異星人に洗脳され、宇宙科学センターで勝村一郎と安達博士によって新開発された熱線砲を盗もうとしていた。幸い、センターの技師・岩村の機転によって熱線砲は無事だったが、任務に失敗したアーメッドは突如飛来した円盤に光線を浴びせられ、小さな金属板を残して溶解する。
調査の結果、その金属板がアーメッドの脳内に埋め込まれて彼を操っていたことや、ナタールがすでに月面に潜伏していることが判明する。国連では、安達博士をはじめとしてリチャードソン博士、勝宮、白石、岩村など16名の科学者・技師から構成される調査隊を編成し、月面への派遣を決定する。だが、出発前夜にドライブを楽しんでいた岩村は不思議な声を聴いた途端、意識と記憶が飛んでしまう。翌日、全世界の人々が見守る中、調査隊を乗せた宇宙探査艇スピップ1号および2号は無事に発射され、月へ直行する。
その途上、ナタールの宇宙魚雷による攻撃に調査隊は迎撃するが、それを出発前夜のドライブ中にナタールに洗脳されていた岩村が妨害する。辛くも攻撃をかわした一同に、ナタールは「これ以上接近すると命の保証はない」と無線で警告する。だが、調査隊は目的を達成すべく月面に強行着陸すると、やむなく岩村を拘束して探査艇に残し、月面探検車でナタールの前線基地へ接近する。その前線基地には多数の円盤が待機し、すでに地球侵略の準備を整えていた。そのころ、ナタールの命令で拘束ベルトを解いていた岩村は、機関室の燃料弁と酸化剤タンクを全開してスピップ1号を爆破してしまう。
調査隊は安達博士と勝宮が操縦する月面探検車の熱線砲による攻撃を開始し、激しい光線の撃ち合いの末に前線基地の機能を一時停止させることに成功する。地球へ戻ろうとする調査隊をナタールの円盤群が追撃するが、それを迎撃したのは月面探検車と、前線基地の機能停止によってナタールの洗脳が解けた岩村だった。小型熱線銃1丁で円盤に立ち向かう岩村を残し、爆破をまぬがれたスピップ2号で一同は月面を脱出するが、岩村の犠牲的精神に涙しない者はなかった。
この事件は世界中に衝撃を与え、ナタールの基地復旧・総攻撃は時間の問題であり、全力をもって迎え撃つべきという世論が各国で高まる。かくして熱線兵器を搭載した宇宙戦闘機と地対空熱線砲が量産され、対ナタール戦の準備が進められる。そして、ついに地球へ襲来するナタールの円盤群に対し、人類は宇宙戦闘機を続々と打ち上げ、ここに決戦の火ぶたは切られた。
ナタール人 NATARL | |
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別名 | 遊星人 |
身長 | 1.8 m |
体重 | 100 kg |
出身地 | ナタール星 |
超低温の冷却線によって物質の核振動をゼロにする無重力攻撃を武器とする侵略宇宙人。月面では甲冑風の宇宙服を着込んでおり、素顔は不明。宇宙服の手足は3本指となっている。地球人の女性よりも小柄である。金属片をこめかみに埋め込むことにより、特定の人物をロボットにして脳波コントロールで操れる。主な戦力は円盤と宇宙魚雷。地球侵略の前線基地を月面に設営しており、最終決戦では小型円盤数機を従えた司令母艦で地球に来襲する。
参照
当初はゴールデンウィーク公開を予定していたが、万全の体制で制作するため、年末公開に延期された。監督の本多猪四郎は、本作品のころには会社側の考え方がイージーになっており、予算のことしか言わないデスクが威張りだしていたためにうまくいかなかったと、後年のインタビューで述懐している。
ナタール側と地球側のメカ類は、すべて小松崎茂のデザインを入江義雄が図面に起こし、井上泰幸らによって製作された。小松崎は、本作品を『地球防衛軍』のシリーズ作品と捉え、デザインでも同作品との統一性を図っている。
『地球防衛軍』同様、外国人俳優が多数出演しており、全地球規模の戦いを表現している。
音楽は伊福部昭が担当。クライマックスの戦闘シーンにおける5分間におよぶマーチ(アルバムなどでの曲名は「宇宙大戦争マーチ」)は、『ゴジラ』(1954年)でのフリゲートマーチや『大怪獣バラン』(1958年)でのバランと艦隊の攻防戦でのマーチを組み合わせており、オスティナートやアレグロなどを用いた伊福部を代表する楽曲に数えられる。後年、同曲は映画『シン・ゴジラ』(2016年)でも使用されている。
人間が地上から円盤に吸い上げられるシーンでは、ヘリコプターによる空撮を逆再生しているが、撮影に夢中となった結果、ヘリが民家の庭に着陸してしまったという。
国連宇宙科学センターのゲートの撮影には、開通前であった真鶴道路の料金所が用いられた。
地球側の迎撃ミサイル基地のセットを設営する際には、スタジオの高さが足りなかったため、美術スタッフの井上泰幸は独断でスタジオの地面を掘り下げてこれを行い、守衛に見つかって本社から大目玉を食らった。怒られている井上の後方で、特技監督の円谷は必死に笑いをこらえていたという。しかし、ロケット打ち上げのシーンで「天井も空けますか?」と提案したところ、円谷は「乱暴なことはやめろ!」と叫んだという。
ナタール人の攻撃で浮き上がる鉄橋は、国鉄御殿場線のものを模しており、同所は『地球防衛軍』でもロケに使用していた。
本作品で作られた石膏製の3尺サイズの月の表面のミニチュアは、のちにさまざまな特撮映画に流用されている。『地球攻撃命令 ゴジラ対ガイガン』では、M宇宙ハンター星雲人の司令官が座る椅子の背もたれとして使われた。また、月面探検隊の宇宙服は、後年に特撮テレビドラマ『ウルトラマン』第38話のQ星探検服に流用されている。[要出典]
本作品では「侵略者ナタール人の基地は月の裏側にある」という設定になっており、国際会議の場面で月の裏側の図解が登場する。これは映画公開より少し前の1959年10月4日、ソ連の無人探査機ルナ3号が世界で初めて撮影に成功した月面裏側の写真に基いて作図されたものである。原作の丘美丈二郎は、当時は月の裏側への関心が強い時代であったと述べている。
ナタール人の武器である「冷却線による浮遊現象」のSF考証の基礎となっている「重力の本質は核振動であり、物質が絶対零度に近づくほど、核振動が微細なものとなる。したがって、絶対零度近くにまで冷やされた物体は無重量状態となる」という理論は、丘美が朝日新聞の科学欄の記述をもとにしたといい、映画制作当時に唱えられていた仮説に基づいているが、実際は当時の物理学でもすでに否定されていた学説である。
月面のシーンは1950年に噴火した三原山の溶岩地帯で撮影された。重力の少ない月面でのフワフワとした歩行演技は土屋嘉男の発案によるものであり、共演者たちには半信半疑で抵抗する者もいたが、土屋はのちにアポロ宇宙船の月面着陸の中継映像を見て、我が意を得たりの思いだったと語っている。セットでの月面歩行は、スプリング入りのマットレスやピアノ線による吊りなどで表現している。円谷も月面着陸の描写にはこだわっていたといい、アポロ11号の着陸の際には自身の描写にそっくりであったことに喜んでいたという。
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