ハンドボール(英: handball)は、7人ずつの2チームが1個のボールを手で扱い、相手のゴールになげ入れて得点を競うチームスポーツ。送球(そうきゅう)とも呼ばれる。公式競技は屋内で行われ、時間内に多くの得点を挙げたチームが勝利となる。
ハンドボール | |
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試合中の攻防。青チームの攻撃中。赤チームは防御側。奥の選手(黒)はゴールキーパー。 | |
統括団体 | 国際ハンドボール連盟(IHF) |
起源 | 20世紀初頭のヨーロッパ(諸説あり) |
特徴 | |
身体接触 | フルコンタクト |
選手数 | コート上7人以内 (登録人数14〜16人・交代無制限) |
カテゴリ | 屋内競技 |
ボール | ハンドボール |
実施状況 | |
オリンピック | 男子:1972年〜(11人制としては1936年実施) 女子:1976年〜 |
サッカー(フットボール)から派生した競技であるが、ボールを手で扱う競技特性から、バスケットボールと類似したルールが追加されてきた特徴を持つ。
19世紀末から20世紀初頭のヨーロッパに起源をもち、世界へと広がったスポーツである。1946年創設の国際ハンドボール連盟には、2017年時点で200を超える国と地域が加盟しており、ヨーロッパ以外でも普及が進んでいる。古くはドイツ発祥の11人制が主流であったが、スカンジナビアを中心に広がった7人制が次第に支持を得て現在に至っている。
近代ハンドボールの起源は、19世紀末のデンマークと20世紀初頭のドイツであると考えられている。双方とも、当時のサッカーをもとに競技が創案されており、初期の競技ではサッカーボールが使用されていた。
手でボールを投げる競技自体は、古代エジプトや古代ローマのほか、グリーンランドのイヌイットによるものなど、古代から世界各地で行われており、これらの競技をハンドボールの起源とする意見もある。
ハンドボールの初めての試合は、1897年ごろ、デンマークのフュン島東部・ニューボー(Nyborg)で行われたとする説が有力視されている。
イギリス留学でサッカーを学んだラスムス・エアンスト(Rasmus Ernst)は、デンマーク帰国後、教育実習生としてニューボーへと赴任し、生徒にサッカーを教えた。しかし、プレーしていた生徒が校舎の窓ガラスを割ったことで、校長からサッカーを禁止されてしまう。そこでエアンストは、「手でボールを扱えば、足よりも安全で正確にプレーできる」と提案し、校長の許可を得た。このできごとが、デンマークにおけるハンドボールの起源とされている。
1906年には、エアンストの指導教官であるホルガー・ニールセン(Holger Nielsen)により、競技規則が制定された。この競技規則では、1チーム16人、競技場は縦50m×横30m、ゴールエリアは縦4m×横7mの長方形で、ゴールの大きさは現在と同じ高さ2m×横3mであった。
この競技はデンマークの寒冷な気候条件から、屋内競技として普及した。さらに同様の寒冷気候であるスカンジナビア諸国を中心に広がっていき、現在行われている「7人制ハンドボール」へと発展していくこととなる。
一方、20世紀初頭のドイツでは、サッカーに代わる女性向けの球技が模索されていた。1896年から近代オリンピックが開始されたことや、1919年のワイマール憲法制定に代表される女性の権利保障の機運が背景として考えられている。
1915年ごろ、公式に残る記録では1919年、ドイツ人体育教師のカール・シュレンツ(Karl Schelenz)により競技規則が制定されている。この競技規則では、1チーム11人、競技場は縦40m×横30m、ゴールエリアは半径8mの半円状で、ゴールの大きさは高さ2.1m×横7mとされた。また、ボールを保持した状態での移動を、現在のハンドボールと同様に3歩までに制限している。シュレンツは、この競技を「人間の基本的な動作や本能と合致した自然な運動」と捉え、特に「走・跳・投の3要素による、身体形成への有用性」を強調している。
この競技は、シュレンツ自身が「サッカーの持つスポーツ性を取り入れ、男性にも女性にもできる球技」として普及や指導にあたり、ドイツを中心にヨーロッパ諸国へと広まっていった。のちに1960年代まで主流となった「11人制ハンドボール」へと発展していくこととなり、最終的な競技規則(のちに7人制に一本化・後述)では、サッカーと同じ大きさの競技場やゴールが使用されている。
ほぼ同時期に始まった、デンマークを起源とする7人制と、ドイツを起源とする11人制は、相互に影響しあいながら国際的に広がっていった。
ドイツを起源とする11人制は、ヨーロッパ諸国に広く受け入れられたため、国際的な競技団体や、競技規則の統一が必要とされた。これを受け、1928年に国際アマチュアハンドボール連盟が誕生し、1934年には国際競技規則が制定された。この11人制の競技規則では、現在のハンドボールと同規格までボールが小さくなり、同じくボール保持時間も3秒までに制限された。
デンマークを起源とする7人制も、11人制と同じく、1934年に国際競技規則を制定している。この7人制の競技規則では、競技場の大きさが縦30~50m×横15~25mとされたほか、ゴールエリアやフリースローラインなど、現在のハンドボール用コートの基礎となった規格も多い。
1936年には、11人制が盛んになっていたドイツでベルリンオリンピックが開催され、オリンピック種目に11人制ハンドボールが採用された。1938年には、国際アマチュアハンドボール連盟により、男子世界選手権が、11人制と7人制の2種目で併催された。この後、11人制と7人制の並立体制がしばらく続くこととなる。
11人制に比べ、少人数で競技場の小さい7人制は競技実施が容易であり、ハンドボールは徐々に7人制が主流となっていった。
1946年には、11人制を主流とするドイツが第二次世界大戦で敗れたことを背景に、7人制を主流とするスカンジナビア諸国が国際ハンドボール連盟を設立した。従来の国際アマチュアハンドボール連盟は発展的解消を遂げ、ハンドボールは7人制へと一本化されていくこととなる。
世界選手権では、女子大会は1962年、男子大会も1967年に7人制へと一本化された。オリンピックにおいては、1972年のミュンヘン・オリンピックで、7人制としては初めて実施種目に採用された。1976年のモントリオール・オリンピックでは、女子競技も実施種目に追加され、現在までオリンピックの実施種目に採用され続けている。
発祥地であるヨーロッパで最も盛んに行われている。ドイツのハンドボール・ブンデスリーガや、スペインのリーガ・アソバルといったプロリーグが開催されているほか、EHFチャンピオンズリーグやIHFスーパーグローブなど、上位チームによる国際大会も開催されている。FCバルセロナやパリ・サンジェルマンなど、強豪サッカークラブの他競技部門として活動するチームもみられる。
1946年創設の国際ハンドボール連盟には、2017年時点で200を超える国と地域が加盟しており、アジア、アフリカ、南米などでも普及が進んでいる。男女共にオリンピックの正式種目であるほか、2年間隔で世界選手権も開催されている。
男子世界ランキングでは、常にドイツやデンマーク、スウェーデン、ロシア、フランスなどのヨーロッパ勢が10位以内を占めている。中堅国には、エジプトやチュニジアといったアフリカ勢や中東勢、韓国が名を連ね、日本も中堅といえる位置に近づきつつある。南米では、アルゼンチンやブラジルが成長株とされる。
女子にもほぼ同様の傾向がみられるが、男子と比べて、やや地域的に広がりが見られる。特徴的な点として、韓国がオリンピックのメダル常連であることや、アンゴラが国際大会で存在感をみせていることが挙げられる。
日本での起源は1922年、東京師範学校の大谷武一が大日本体育協会(現:日本スポーツ協会)で11人制を紹介したこととされている。ヨーロッパ諸国に留学していた大谷は、ドイツ滞在中、女性チームが盛んに活動していた11人制ハンドボールに強い印象を受け、女性や児童向けの体育教材として日本に紹介した。大谷の働きかけもあり、1926年には「手球(ハンドボール)」として、学校体育教授要目に追加されている。
1928年の国際アマチュアハンドボール連盟の創設時には、日本陸上競技連盟が代表団体として加盟している。1940年の東京オリンピックでの競技実施が決まったことを受け(のちに日中戦争の影響で開催権返上)、1938年2月2日に日本送球協会(現:日本ハンドボール協会)が設立され、国際アマ連盟への代表権を日本陸連より譲り受ける。 初代協会長は平沼亮三。
国内では1937年10月23日、初の公式試合として関東送球選手権大会兼神宮大会関東予選が開催。日本体育会、慶應俱楽部、文理大倶楽部、青山師範倶楽部の4チームが戦い日本体育会が優勝した。同年には全日本選手権(現:日本ハンドボール選手権大会)が開催されている。
第二次世界大戦後、1946年に国民体育大会の実施競技に採用され、戦争の影響で中断されていた全日本選手権も1950年に再開された。1963年には国際情勢を受け、国内の全公式戦が7人制に統一された。また実業団チームの増加を受け、1976年には日本ハンドボールリーグが設立されている。
国際大会には、1961年に男子代表、1962年に女子代表が初めて世界選手権に出場している。国内では、1997年に男子世界選手権を、2019年には女子世界選手権をそれぞれ熊本県で開催した。
オリンピックには、男子代表は1972年大会から1988年大会までの4大会(1980年大会は予選突破したものの、冷戦の影響でボイコット)に出場し、女子代表も1976年大会に出場している。だが韓国や中東勢に阻まれ、オリンピック出場を逃し続けてきた。
2007年の北京オリンピック・アジア予選では「中東の笛」と呼ばれる中東勢に有利な判定や、アジアハンドボール連盟による杜撰な大会運営が問題視され、再予選が行われた。再予選に至る一連の騒動は大手メディアでも盛んに報道され、ハンドボールは当時大きな注目を浴びた。
日本国内のハンドボールの競技人口は、約10万人である。国内最高峰のリーグである日本ハンドボールリーグをはじめ、小学校から成年まで各年代ごとに大会が開催されており、アマチュアスポーツとして普及している。 近年では各都道府県でクラブチームが増加しており、高卒後や大卒後の選手にもプレー機会が生まれ、競技人口も微増傾向にある。
全国的に学校体育教材として採用されているほか、最も競技人口が多い愛知県をはじめ、沖縄県浦添市や富山県氷見市など、ハンドボールが盛んな地域も見られている。
2020年の東京オリンピックでは男子が8大会32年ぶり、女子も11大会44年ぶりにオリンピックへと出場した。
前述の通り、日本のハンドボールは「中東の笛」による北京オリンピック・アジア予選の再試合騒動や人気選手の活躍などにより一時的な盛り上がりこそ見られたものの、他競技と比較して恒常的なメディア露出が少ないのが現状である。
2023年現在でもインターネット環境の発達に伴い試合中継が公式配信される例や、競技解説などをSNSや動画サイト上で行う競技関係者が増えつつある。
出典及び詳細は、(公財)日本ハンドボール協会が公開する「ハンドボール競技規則」を参照のこと。
標準的な前後半30分制の試合では、両チームが約60回ずつの攻撃を行い、互いに20~30点の得点を挙げることが多い。
年齢や性別に関わらず、同一規格のコートを使用する。コートやゴールの大きさは、フットサルで使用されるものとほぼ同一である。バスケットボールやバレーボールといった、他の屋内競技と比べてコートが広いため、屋外にコートが設置される場合もみられる。
各ラインの幅は5cm。
「ファウル#ゴールエリア関連」や「各種スロー」の項も参照。
年齢・性別によって、使用されるボールの大きさ・重さは異なる(後記)。初期の競技では、サッカーボールが使用されていた。
競技規則では、天然皮革製もしくは合成素材製で光沢の無い球形のボールとされている。近年は五角形と六角形のパネルで構成された、合成素材製のボールが主流となっている。空気圧に競技規則上の規定値は無い。
特徴として、サッカーボールなどの他競技のボールと比較して小さく、大きさに対して重い。加えて、手指に粘着剤を使用するため、片手でも扱いやすくスピードが出やすいとされる(トップレベルの男子選手によるシュートは、130km/hに達する)。
日本国内の公式競技では、一般的にモルテン製やミカサ製のボールが使用される。
規格 | 外周[cm] | 重さ[g] | 対象 |
---|---|---|---|
3号球 | 58~60 | 425~475 | 成年男子・高校男子 |
2号球 | 54~56 | 325~375 | 成年女子・高校女子・中学校 |
1号球 | 49.5~50.5 | 255~280 | 小学校 |
0号球 | 46~47 | 200~220 | 小学校低学年導入用 |
参考:バレーボール | 外周65~67cm、重さ260~280g(5号球) | ||
参考:サッカーボール | 外周68~70cm、重さ410~450g(6号球) | ||
参考:バスケットボール | 外周74.9~78cm、重さ567~650g(7号球) |
国際ハンドボール連盟(IHF)は、2019年8月に3種類のボール新規格(松脂使用時、松脂不使用時、初心者向け)を発表した。従来の松脂使用を前提とした規格に加え、松脂の不使用を前提に大きさと重量を小さくした規格と、初心者向けボール(0号球・00号球)を明文化した3規格となっている。
これを受け、日本ハンドボール協会は2020年3月に「2021年4月以降より日本国内でも新規格のボールを採用する」と発表した。しかし新型コロナウイルス感染症の世界的流行により新規格ボールの採用は見送りを余儀なくされ、翌2022年4月へと採用延期となった。
規格 | 外周[cm] | 重さ[g] | 対象 |
---|---|---|---|
3号球 | 58~60 | 425~475 | 16歳以上の男子 |
2号球 | 54~56 | 325~375 | 12〜16歳の男子・14歳以上の女子 |
1号球 | 50~52 | 290~330 | 8〜12歳の男子・8〜14歳の女子 |
規格 | 外周[cm] | 重さ[g] | 対象 |
---|---|---|---|
3号球 | 55.5~57.5 | 400~425 | 16歳以上の男子 |
2号球 | 51.5~53.5 | 300~325 | 12〜16歳の男子・14歳以上の女子 |
1号球 | 49.5~50.5 | 290~315 | 8〜12歳の男子・8〜14歳の女子 |
規格 | 外周[cm] | 重さ[g] | 対象 |
---|---|---|---|
0号球 | 46~48 | 255~280 | 8歳以下 |
00号球 | 44~46 | 165~190 | - |
空気を入れない詰め物入りボール | 46~48 | 190~225 | - |
空気を入れないスポンジボール | 46~48 | 190~225 | - |
ボールを扱いやすくするため、公式競技では手指に粘着剤を使用する。
一般的に、サッカーのユニフォームによく似た半袖・半ズボンのユニフォームが着用される。
各チームは正副2種類のユニフォームを準備し、相手チームと判別ができるものを着用する。ソックスはチーム内で色や長さを揃える必要があるが、相手チームと同色でも問題は無く制服で同じものを着用するチームも多い。
ゴールキーパーは、コートプレーヤーとは別色のユニフォームを着用する。シュートから身体を保護するため、長袖・長ズボンのゴールキーパー用ユニフォームが多い。
ユニフォームのシャツには、背番号と胸番号の表示が義務付けられており、番号は1番から99番までが認められている。サッカーと同様、ゴールキーパーが1番や12番、16番を着用することが多いが、規則上の規定は特に無い。交代が自由であることもあり、主力ゴールキーパーが1番以外を着用するなどコートプレーヤーを含め大きな背番号を着用する主力選手も少なくない。
シューズは、スポーツ用であることや突起が無いこと以外に規定は無く、バスケットボール用シューズなど他の屋内競技用シューズを履く選手も見られる。シューズには、補充用の松脂を溜めておくことが許されている。
サポーターやヘアバンド、ゴーグルなどの装具は、柔らかい素材で危険性の無いのものであれば着用できる。ゴールキーパーを含め、グローブの着用はできない。
原則として、相手に「フリースロー」や「ゴールキーパースロー」が与えられ、相手ボールとなる。明らかな得点チャンスを妨害した場合や、自陣ゴールエリア内でディフェンスを行った場合には、サッカーのペナルティーキックに相当する「7mスロー」が相手に与えられる。
バスケットボールのファウルとは異なり、ファウル自体の内容や回数は記録されず、競技時間も原則として停止しない。ただし、サッカーなどの懲戒措置と同様、危険なプレーやスポーツマンシップに反する行為に対しては、罰則が与えられる。特筆される点として、防御側による軽度のファウル(危険性の低い身体接触)は、違反行為とはみなされず、効果的なディフェンス技術として公認されている点が挙げられる。
攻撃展開が速い競技であり、プレーの中断は防御側有利に働くため、サッカーと同様にアドバンテージの概念が存在する。ファウルの判定でプレーを中断すると、ファウルを受けた側がかえって不利になる場合、アドバンテージが適用され、プレーは続行される。ボールを所持している選手は、相手ボールと判定された時点でボールをその場に置く義務があり、相手のプレー再開を妨害した場合は罰則の対象となる。
ボール所持に関連するファウルについて記述する。バスケットボールのバイオレーションに相当する。
相手のフリースローとなる。
攻撃意思の無い、消極的な(英:passive)プレーで、一方のチームがボールを所持し続ける反則。
レフェリーが片手を挙げ予告をするが、消極的なプレーが更に続いたり、予告合図後に4回のパスを行ってもシュートに至らない場合、相手のフリースローとなる。
防御側に罰則が与えられた場合や、ボールが防御側のゴールキーパーか、ゴールに当たった場合に予告は解除される。防御側の罰則を伴わないファウルを攻撃側が受けたり、防御側のコートプレーヤーに当たったボールを攻撃側が再び所持しても、予告は解除されない。
ボール所持側による時間稼ぎを防ぐルールであり、 バスケットボールの24秒ルールに近いが、計時基準は無く、レフェリーがボール所持側の攻撃意思を判断する。
ゴールエリア(両ゴールから6mの半円状の地域)に関するファウルについて記述する(ゴールエリアの詳細は『コート』の項を参照)。
原則として相手にフリースローが与えられるが、明らかな得点チャンスを妨害した場合には、7mスローが与えられる。加えて、危険なプレーに対しては罰則が与えられる。
なお、以下の行為は認められている。
防御側のファウルで攻撃側にフリースローが与えられても、ボール所持チームは変わらず、事実上プレーが中断されるだけであるため、ディフェンス戦略として防御側のファウルが行われる(相手正面からのホールディングなど)。
ボールを所持している攻撃側にフリースローが与えられても、フリースローからの直接ゴールは難しく、攻撃側の利益にならないため。
防御側は、罰則を受けない限り目立った不利益は無く、相手の攻撃で崩されたディフェンス陣形を、プレーの中断で立て直すことができる。
サッカーのプロフェッショナルファウルとは異なり、相手選手に危険なプレーでなければ、この場合のファウルに違反行為としての意味合いは無く、一般的なディフェンス技術として認められている。相手の攻撃を切る、サッカーのクリアに近い趣旨のプレーであり、「ゲームストップ」などとも呼ばれている。
また、バスケットボールの試合終盤にみられる、ハック戦術(ファウルゲーム)とも異なり、ファウル自体の内容や回数は記録されず(罰則は記録される)、競技時間も原則として停止しないことから、試合終盤に限らず、試合全体を通して行われる。
防御側は、罰則を受けにくい相手正面からの接触で進路を阻み、ときには意図的なファウルでプレーを中断させながら、攻撃側のミスやパッシブプレー成立を狙っていく。そのため本競技では、ゴールエリア付近を中心とする激しい身体接触がみられる。
危険なプレーや、スポーツマンシップに反する行為に対しては、「警告」、「退場(2分間退場)」、「失格」のいずれかの罰則が与えられる。パッシブプレーの予告中に、防御側へと罰則が与えられた場合はパッシブプレーの予告は解除される。
相手の得点があった場合やハーフタイムなどを挟んだ場合でも、罰則は継続される。2人以上が退場や失格を受け、一時的にコート上が5人以下になる場合もある。
ボールではなく、明らかに相手の身体を狙ったプレーは、段階的な罰則(警告)の対象となる。更に激しい違反行為に対しては、罰則の累積が無くとも、即座に退場や失格となる(後記)。
罰則の重さは、「違反行為をしたプレーヤーの位置」、「対象とした身体の部位」、「違反行為の激しさの程度」、「違反行為の影響」、「試合中の状況」を複合して判断する。
競技規則に基づき行なわれる、「スローオフ」、「7mスロー」、「フリースロー」、「スローイン」、「ゴールキーパースロー」について記述する(シュートやパスについては、『競技技術』の項を参照)。
各スローを行う地点を「ポイント」と呼ぶ。スローを行う選手は、ポイントに一方の足を付けてスローを行う。相手選手はポイントから3m以上離れなければならない(ゴールキーパースローを除く)。ただし、ゴールエリアラインに沿って並ぶことは認められる。
スローを行う選手は、ボールが他の選手かゴールに触れるまで再度ボールに触れることはできない。ゴールキーパーが、ゴールキーパースロー以外のスローを行っても問題は無く、全てのスローで直接ゴールは認められる。
相手のスローを妨害した場合は、罰則の対象となる。
前後半開始時とゴール後に、センターライン中央を踏んで行うスロー。レフェリーの吹笛から3秒以内にスローを行う。サッカーのキックオフにあたる用語として、本競技の試合開始(前後半開始)を指す場合もある。
ゴール後は失点したチームによるスローオフで再開する。サッカーのキックオフとは異なり、失点したチームの選手が全員自陣にいれば、得点したチームの状況に関わらずスローオフを行える。ただし前後半開始時のスローオフは、両チームの選手全員が自陣にいなければならない。
失点後のスローオフを素早く行い、相手チームが自陣へと戻る前に攻撃を仕掛けることを「テンポ・シュピール(独:tempo spiel)」と呼ぶ(『クイックスタート』や『リスタート』と呼ばれることが多い)。双方がテンポ・シュピールを繰り返す、激しい試合展開もみられる。
明らかな得点チャンスを妨害した場合、あるいはゴールエリア内でのディフェンス(エリア内防御)に対して行われるスロー。レフェリーの吹笛から3秒以内にスローを行う。サッカーのペナルティーキックに近い状況となるため、「ペナルティースロー」とも呼ばれる(7mスローコンテストについては『主要ルール#競技時間』を参照)。
7mスローを行う選手は、7mラインから後方1mまでの範囲に基準となる足(右利きの場合は一般的に左足)を置く。ボールを離すまで7mラインを踏み越えたり、基準となる足を離してはならない。レフェリーの笛から3秒以内であれば、フェイントを行っても問題は無い。
ゴールキーパーはゴールキーパーラインまで前に出ることができる。ゴールキーパーラインを踏んだり踏み越えてはならない。ゴールキーパーの頭部に直接ボールが当たった場合、スローを行った選手は失格となる。
他の選手はフリースローラインから出る。加えて防御側は、7mラインから3m以上離れなければならない。攻撃側は、ボールが防御側のゴールキーパーかゴールに当たるまで、ボールに触れることはできない。
攻撃側に違反があった場合は相手のフリースロー、防御側に違反があった場合は7mスローのやり直しとなる。
相手の違反行為で得点チャンスを妨害された場合は、違反行為を受けた位置がゴールから離れていても7mスローが与えられる。
相手のファウルがあった地点から行われるスロー。基本的にレフェリーの吹笛無しでスローを行う。
ファウルがあった地点が敵陣フリースローライン内の場合は、フリースローラインの外に戻ってスローを行う。攻撃側は、スローを行う選手以外もフリースローライン内から出なければならない。
防御側はポイントから3m以上離れなければならないが、フリースローライン内から出る必要は無く、ゴールエリアラインに沿って並ぶことは認められる。防御側コートプレーヤーの頭部に直接ボールが当たった場合、スローを行った選手は失格となる。
サッカーのフリーキックに近いが、防御側はゴールとの間に入って守れるうえに、攻撃側はフリースローラインの外にまで戻されるため、即座に得点に繋がることは少ない。事実上、反則地点からのプレー再開に過ぎないため、相手にフリースローを意図的に与え、相手の攻撃を切るプレーがディフェンス戦略として行なわれる(『ディフェンス戦略としてのファウル』も参照)。
ボールがコートから出た地点のサイドラインを踏んで行うスロー。ボールに最後に触れた選手とは逆のチームが行う。基本的にレフェリーの吹笛無しでスローを行う。
ボール全体が完全にサイドライン上を越えた場合にスローインとなるが、ボールが一部でもサイドライン上にあればプレーは継続される。
防御側のコートプレーヤーが最後に触れたボールがアウターゴールラインから外に出た場合には、攻撃側がコーナーからスローインを行う(慣用的に『コーナースロー』とも呼ばれる)。
7mスローやフリースローとは異なり、攻撃側の選手がフリースローライン内に入っていても、問題は無い。
ゴールキーパーが自陣ゴールエリア内から行うスロー。基本的にレフェリーの吹笛無しでスローを行う。「ゴールスロー」や「キーパースロー」とも呼ばれる。
ゴールキーパーが自陣ゴールエリアに入ったボールを保持した場合、攻撃側や防御側のゴールキーパーが最後に触れたボールがアウターゴールラインから外に出た場合、攻撃側のラインクロスがあった場合に行われる。
他のスローと異なる点として、床面に足を着けている必要がないこと、相手選手が3m以上離れる必要はないこと、自陣ゴールに入ってもオウンゴールにならないことなどが挙げられる。
出典及び詳細は、(公財)日本ハンドボール協会が公開する「競技・審判ハンドブック」を参照のこと。
同等の権限を持つ、2人1組のレフェリーが試合を担当する。センターラインに近いレフェリーを「コートレフェリー」、ゴールに近いレフェリーを「ゴールレフェリー」と呼ぶ。両者は攻防のたびに役割が入れ替わり、コート両端の担当も適宜交代する。
コートレフェリーは攻撃側の背後に立ち、主にボールの扱い方や選手の動作に関する違反について判定する。ゴールレフェリーはアウターゴールラインの外側に立ち、主に得点の認定やゴールエリアへの侵入を判定する。
1つの反則に対する罰則について両者の判断が異なる場合には、罰則の重い判断を適用する。判定そのものが異なった場合は両者の協議により決定するが、見解が一致しない場合にはコートレフェリーの判定が優先される。
レフェリーによる、主な吹笛の例について記載する。吹笛と同時にどちらのボールになるかをジェスチャーで指示する。
吹笛 | 対象 | 使用例 |
---|---|---|
3回 |
|
|
2回 |
|
|
1回 (強) | ||
1回 |
|
レフェリーによる、主なジェスチャーについて記載する。吹笛と同時にどちらのボールになるか(どのスローを行うか)を指示した後、反則の内容を提示する。
フリースロー 7mスロー | スローイン | ゴールキーパースロー | 3mの距離を促す |
---|---|---|---|
ゴールエリアへの侵入 | ボールの扱い方に関する反則 | 身体接触に関する反則 | |||
---|---|---|---|---|---|
オーバーステップ オーバータイム | イリーガルドリブル ジャッグル | ホールディング プッシング | ハッキング | オフェンシブファウル | |
2007年の北京オリンピック・アジア予選では、中東勢が有利となる不可解な判定が頻発し、日本と韓国による再予選が行われた。
出典及び詳細は、(公財)日本ハンドボール協会が公開する「マッチオフィシャル並びにテクニカルデレゲートの任務と競技運営に関する事項 」を参照のこと。
本競技の記録員を「オフィシャル」と呼ぶ。オフィシャルはレフェリーを補佐し、協力して試合を運営する役割を持つ。オフィシャルの座席は両チームの交代ベンチ間に設置される。
オフィシャルには、タイムキーパーとスコアラーに加え、「テクニカルデレゲート」と呼ばれる競技役員が入る。タイムキーパーは競技時間やタイムアウト、退場時間といった試合中の時間を管理する。スコアラーはメンバー表を受領し、得点や罰則などを記録する。不正交代については、オフィシャル全員で監視する。
オフィシャルの得点記録ミスをきっかけとして、大きなトラブルに発展した事例もある。
粘着剤の使用が認められていることもあり、試合状況に応じた多彩なシュートがみられる。シュートは、ジャンプの有無やシュートを狙う地点、特徴的な技術などで分類されている。
ゴールキーパーを除く全員での攻撃が基本のため、コートプレーヤーには必須の技術とされる。トップレベルの男子選手によるシュートは、130km/hに達する。
バランスを崩す危険性があるため、シュート体勢を取っている選手への接触は、罰則の対象となる。
最も多用されるシュート。ジャンプを行うことで、ゴールに近い位置から、相手ゴールキーパーを観察する時間やゴール角度を稼いでシュートを打つことができる。
利き手と逆側の足(右利きの場合は左足)での踏み切りが一般的だが、状況に応じて利き手側の足や両足で踏み切る場合もみられる。
最も基本的なシュート。ジャンプをせずステップを踏んで打つ。床に足を着いているため重心が崩れにくく、威力のあるシュートが打てる。
また、様々なタイミングで打てるため、相手ディフェンスやゴールキーパーの不意をつきやすく、ブラインドシュートでも多用される。
シュートと同様、状況に応じて多彩なパスがみられる。
主に速攻で抜け出した場合や歩数をリセットする目的、ディフェンスを誘い出す目的などに使われる。
相手ディフェンスの接近時には、バスケットボールのドリブルほど多用されない。その理由として、「ルール上の制限が厳しいこと」、「比較的強い接触が認められるため、ドリブル中の接触でボールを失うリスクが高いこと」、「ボールが小さい上に粘着剤を使用するため、精度の高いドリブル自体が難しいこと」などが挙げられる。
ゴールキーパー以外の選手を「コートプレーヤー(略記:CP、英:court player)」と呼ぶ。コートプレーヤーは、攻撃時のポジションで表記されることが多い。
シュート時にゴール角度を広く取れることから、自陣から見て左側のポジションは右利き、右側のポジションには左利きの選手が有利とされている。
ゴールキーパーを除き、全員での攻撃と守備が基本となっている。交代が無制限であるため、攻守それぞれに特化した選手がいる場合、攻防が入れ替わるたびに交代を行うチームもみられる。
センターバック、レフトバック、ライトバックをまとめて「バックコートプレーヤー(英:backcourt player)」と呼ぶ。「フローター」や「上3枚」とも呼ばれ、互いにパスを回しつつ、ポジションを入れ替えてプレーすることも珍しくない。退場者が出ている時間帯や、ダブルポストなどの戦術では2人になる場合もある。
センタースリーが基本とされるが、相手ディフェンスを揺さぶるため、ポジションチェンジを繰り返しながら、オフェンスシステムを変化させることも多い。そのため、様々なポジションをこなす、オールラウンドな能力が求められつつある。
サッカーのフォーメーションと同様に、配置された人数を自陣ゴールから近い順に、ゴールキーパーを除いて表記する。
比較的コートが広く、ボールを手で扱う競技特性から、攻撃側のボールを奪うことは困難であるため、全員が自陣に引き相手の攻撃スペースを埋めるゾーンディフェンスが主流となっている。ボールを持った攻撃側の選手に対しては、近くの選手がプレスをかける。
各ディフェンス布陣には長短があり、両チーム個々の能力や防御側の優先目的によって採用される布陣は異なる。1試合で60回もの攻撃を受けるため、攻撃側に順応されないよう、複数の布陣を時間帯によって使い分けるチームも多い。
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