鎖(くさり、coil chain)とは、環状の部品を繋げて線状にしたもの。複数連結され鎖を形成している個々の素子を鎖素子という。
元来は同じ形状の部材を連続的に接続したものだが、ローラーチェーンやボールチェーンのように複数種の部材からなるものでもチェーンと総称される。
近代以後、安定した品質の長大鋼線が量産可能になると、これを縒り合わせた、重量あたりの引っ張り荷重がより大きいワイヤーロープに鎖の多くが取って代わられた。しかし細鋼線の束であるワイヤーロープに比べ、鎖は腐蝕に強い、太くとも可撓性が高い、切り口のほつれ防止や留め金を付ける処置が不要等の長所もあり、依然として多く使用される。
鎖は施錠や、タイヤチェーン、あるいはチェーンブロック、吊り具などの楊荷などに使われる(ワイヤーを使うものはクレーンやウインチを参照。)。小さなものにはネックレスなどの装身具用、大きなものには船の投錨用がある。
素材は用途にもよるが、主に古くからある鋼製の他、それを表面処理したもの、強度を高めた物、ステンレス鋼、プラスチックなどがある。
鎖は紀元前から存在した。少なくとも紀元前225年以降、金属製チェーンが使用されていたことがわかっている。紀元前に使われていた似た物として、籠や糸の織物などが存在していた。
地中海沿岸では港で鎖が使用されていた。当時の地中海沿岸の港は城壁の一部として防護壁の役割があり敵の侵入を防ぐために港口を鎖で封鎖できるようになっており、このような構造はピレウスの港で初めて採用されたといわれている。
鎖を初めて船舶の係留に使用したのは、8世紀から12世紀にかけてスカンジナビア半島を拠点にヨーロッパで活動したヴァイキングとされている。ヴァイキングは航海術だけでなく金属加工にも長けており、鉄を鍛え、焼入れする技術も持っていた。ところが、ヴァイキングの時代が終わると数世紀にわたりアンカーチェーンの使用例は見られなくなった。18世紀、大航海時代に入り、船舶の大型化とともに船体の強化のために鋼板が張られるようになり、従来の麻のロープでは擦り切れてしまうため再びアンカーチェーンが使用されるようになった。
1550年、ゲオルク・アグリコラによって書かれたラテン語の技術書『デ・レ・メタリカ』には、物を吊る道具、水を汲む道具、物を運ぶ道具を構成する部品として様々なチェーンの使用例が版画で表現されている。
※( )内は主な材料
その形状的な特徴から、「連続する様子」の喩えとして「鎖」が使われる。鎖素子のことをリンクといい、比喩として何かを「接続するもの」を指すようになった。この記事をお読みのあなたが辿ってきたであろうハイパーリンクもこの比喩に由来する。インターネット上で単にリンクといえばハイパーリンクを指す。
鎖は古くから縄紐より厳重な封印・拘束のために用いられ、「封鎖」のように制約・束縛の喩えにもなっている。
など。
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