萩原 慎一郎(はぎはら しんいちろう、1984年9月16日 - 2017年6月8日)は、日本の歌人、詩人。平成時代に短歌の書籍としてベストセラーとなった『歌集 滑走路』の作者。同書は2020年に映画化もされた。
萩原 慎一郎 (はぎはら しんいちろう) | |
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角川全国短歌大会授賞式にて(2017年1月) | |
誕生 | 1984年9月16日 日本・東京都杉並区荻窪 |
死没 | 2017年6月8日(32歳没) 日本・東京都 |
職業 | 歌人 |
言語 | 日本語 |
国籍 | 日本 |
最終学歴 | 早稲田大学人間科学部卒業 |
ジャンル | 短歌、俳句、詩 |
代表作 | 歌集 滑走路(2017年) |
主な受賞歴 | 全国短歌大会 選者賞(2003年) 角川全国短歌大賞 日本歌人クラブ賞(2005年) 与謝野晶子短歌賞 姉妹賞(2013年) 第1回近藤芳美賞 選者賞(2014年) 角川全国短歌大賞 準賞(2014年) 第31回朝日歌壇賞(2015年) 全日本短歌大会 毎日新聞社賞(2015年) NHK全国短歌大会 特選(2016年) 角川全国短歌大賞 日本歌人クラブ賞(2016年) 第4回近藤芳美賞 選者賞(2017年) 角川全国短歌大賞 題詠準賞(2017年) キノベス!2019 8位(2018年) 楽天ブックス 文学部門 第1位(2020年) |
活動期間 | 2002年 - 2017年 |
親族 | 萩原健也(弟) |
所属 | りとむ短歌会 |
影響を受けたもの | |
公式サイト | 歌人 萩原慎一郎 |
ウィキポータル 文学 |
1984年、東京都杉並区荻窪にて生まれる。父親の仕事で京都府長岡京市や英国統治時代の香港などを転々とした後、東京都小平市に移り住んだ。1997年、男子中学御三家としても知られる東京都練馬区の私立男子中高一貫校の武蔵中学校に入学し、野球部へと入部した。その野球部顧問教諭に怒鳴られ萎縮する様子をきっかけに、同級生からからかわれ始め、暴言や暴力が伴う苛烈ないじめへと発展し、そのいじめは中学校から高校と長期間に渡って行われ続けた。
その経験の中で、17歳の時、偶然近所の書店に立松和平との共著本の出版イベントで来ていた歌人の俵万智に触発され、短歌の創作を始めた。『朝日新聞』の歌壇欄で、歌人の近藤芳美によって取り上げられた「屑籠に入れられていし鞄があればすぐにわかりき僕のものだと」や「ローランドゴリラが胸を叩きたり動物園の檻の絶叫」といった当時のいじめの経験を詠った短歌も残っている。
2002年から永田和宏が主宰していた短歌結社『塔』に参加し、様々なコンクールに応募を開始すると同時に頭角を表すようになり、まもなく現代歌人協会主催の全国短歌大会の選者賞や全日本短歌大会日本歌人クラブ賞を始めとする多くの賞を受賞した。当時、参加していた『塔』の2002年の結社誌「十代・二十代歌人特集」では17歳の注目の歌人として短歌と共に紹介されている。2004年には同志社女子大学主催の高校生短歌コンクールのSEITO百人一首の入選作品をまとめた『ピクルスの気持ち』に掲載され晃洋書房から出版された。
19歳の時、岡井隆が主宰していた未来短歌会や、様々な歌人が開催する歌会への参加を経て、今野寿美の誘いで三枝昂之主宰のりとむ短歌会に所属した。
武蔵高校卒業後もいじめによって負わされた後遺症に苦しまされたが、入院や通院をしながら早稲田大学人間科学部の通信制に通い卒業した。大学生時代は短歌についての研究を行い、卒業論文も前衛短歌で知られる寺山修司についてであった。2010年には現代短歌評論賞の最終候補に選ばれている。
大学卒業後は、書店のアルバイトや研究機関の事務の契約社員など非正規雇用で働きながら短歌の創作を続けていた。2014年に第5回角川全国短歌大賞準賞とNHK全国短歌大会の第1回近藤芳美賞の選者賞(岡井隆選)を受賞。2015年、朝日歌壇賞や全日本短歌大会毎日新聞社賞を受賞。翌年、2016年にはNHK全国短歌大会にて作品が特選に選ばれ、また全日本短歌大会で2回目の日本歌人クラブ賞を受賞した。2017年に2度目となる近藤芳美賞選者賞を受賞。2017年1月18日の『朝日新聞』夕刊連載の『あるきだす言葉たち』にて『模索の果て』が掲載される。
2017年に『歌集 滑走路』の出版が決まり、5月には執筆が終わりあとがきの原稿を角川文化振興財団の編集部に提出した。本のタイトルや表紙、構成は自ら全て決めていたとされる。しかし、長期間いじめを受けてきたことに起因する精神的な不調が続いており、2017年6月8日に自死した。享年32。角川短歌誌では三枝昂之による追悼短歌が掲載され、SNS上では生前に交友があった奥村晃作などの歌人から惜しむ声が寄せられた。また、りとむ短歌会の短歌結社誌『りとむ』2017年9月号では、今野寿美の追悼文が載せられた。
出版間近であった歌集は遺族によって引き継がれ、弟でギタリストである萩原健也がSNS等で全面的に広報活動が行うなど刊行に向けて準備が行われ、12月13日には正式な日程がTwitter上で発表され、2017年12月25日に『歌集 滑走路』が角川文化振興財団より発行、角川書店レーベルで12月26日に発売された。
短歌の分野では、一般的な書籍の出版方法とは異なり、受賞歴や知名度に関わらず作者による自費出版が通例であり、発行部数が多くとも100部から500部程度であるが、短歌や俳句の支援事業を行う公益財団法人の角川文化振興財団による流通面などの支援の元、遺族による自費出版で初版1500部が発行された。歌集には萩原慎一郎が師事していた歌人の三枝昂之による解説文と、本の帯には萩原慎一郎が短歌を始めるきっかけとなった俵万智の推薦文、知人に宛てたメールから引用された「僕は歌う。誰からも否定できない生き様を提示するために。」という一文が記載された。
『歌集 滑走路』は、数多くの受賞歴や雑誌などへの寄稿で、元々短歌業界では知名度の高い萩原慎一郎による第一歌集であったのと、弟の健也によるSNS等での多方面へのプロモーション活動もあり、発売まもなく話題となり、2018年2月19日に『朝日新聞』夕刊社会面で紹介されたのを皮切りに、一気に人気を博し1年弱で8回の増刷を重ね、発行部数が3万部となり、『ニュースウオッチ9』(NHK G)や角川短歌、『ダ・ヴィンチ』(KADOKAWA)、毎日新聞などの主要な新聞、テレビ、ラジオ、雑誌の複数メディアに取り上げられた。また、10月16日には『クローズアップ現代+』(NHK G)で発行部数が通常の短歌集の200倍に達している異例のヒット作として特集された。また同時に『歌集 滑走路』に未収録の短歌が2000首以上存在している事が公表された。
12月26日に『歌集 滑走路』が紀伊國屋書店が毎年発表しているお勧め書籍ベスト30「キノベス!2019」の8位に選出された。アメリカでは、翻訳がされていない原本の販売が開始し、韓国の『KBSニュース9』などの海外メディアからも日本で話題の本として多く紹介され、サンフランシスコ公共図書館やオーストラリアのニューサウスウェールズ州立図書館にも蔵書されるなどした。2019年5月1日には、平成時代を振り返る短歌のドキュメンタリー番組『平成万葉集』(NHK BSプレミアム)で特集が組まれ、俳優の生田斗真と共に弟の萩原健也が歌人としての萩原慎一郎や歌集を紹介した。
2020年3月25日に『歌集 滑走路』が角川大映スタジオと埼玉県やNHK、NTTコミュニケーションズなどが共同出資しているSKIPシティの共作の元で、映画『滑走路』の題名で映画化される事が発表された。監督は大庭功睦が務め、浅香航大や水川あさみ、寄川歌太、染谷将太、坂井真紀、吉村界人、水橋研二、木下渓、池田優斗らが出演することが決まった。
2020年9月24日に角川文庫より『歌集 滑走路』の文庫本と、映画『滑走路』をノベライズした『小説 滑走路』(角川書店)が発売された。文庫のあとがきの解説は新たに芥川賞作家の又吉直樹が執筆した。短歌のみで構成された個人歌集が角川文庫より発行されるのは、寺山修司『寺山修司青春歌集』などの1970年代以来の事となる。『朝日新聞』の一面や『産経新聞』、映画関連のメディアなどでも取り上げられ、文庫は発売1ヶ月足らずで重版される事が決まった。
11月3日に原作とした映画『滑走路』は東京国際映画祭の特別招待作品に選出された。11月20日に映画が一般公開され、キネマ旬報ベストテンとヨコハマ映画祭にて主演女優賞受賞、報知映画賞作品賞や毎日映画コンクール新人賞にノミネートされるなどした。11月23日には朝日新聞の天声人語に『歌集 滑走路』が紹介され、楽天ブックス文学部門で第1位を獲得するなど、人気が再燃し単行本も文庫と共に度々増刷が行われている。
2021年6月に映画が上海国際映画祭の上映作品として招待され、海外進出することとなった。また、同月の角川文庫のフェア「カドフェス2021」では感動する本に選出された。
2022年1月より文英堂が発行する高校国語の副教材『リテラ 速読レッスン 文学 Vol.3』に『歌集 滑走路』が採用された事が発表された。また、芝浦工業大学附属中学校などの中学校入試試験の国語の問題でも採用され始めている。10代~30代で空前の短歌ブームを巻き起こしているとして2022年には産経新聞、2023年3月にはNHKクローズアップ現代で特集される。
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