ひまわり油 植物油は採取方法で大きく三つに分けられる。まず圧力で絞る方法があり、この方法で作られたものを圧搾油と言う。次に、水などの別の液に溶かし込む方法があり、この方法で作られたものを抽出油と呼ぶ。圧搾と抽出を組み合わせることもある。圧搾油と抽出油をあわせて粗油と言う。粗油は吸着や濾過処理をして使用する。三つめは、粗油を水蒸気蒸留 などで精製する方法で、この方法で得られた油を精油 (エッセンシャルオイル)という(詳細は精油#抽出方法 参照)。精油にハーブ の香りなどの成分を抽出させたものを浸出油 と呼ぶ。
ほとんどの植物には油が含まれているが、食用に使えるものは少なく、余り知られていないものを含めてもそれほど多くない。
植物油の分類法はいくつかある。例えば:
原料による分類 : 「ナッツオイル」など、果実や種の種類などでわける方法。 用途による分類 : 料理用、燃料用、化粧用、医療用など、目的で分類する方法。 成分による分類 : グリセリン と脂肪酸 の化合物 で、一般にトリグリセリド (トリ-O -アシルグリセリン)の形態をとる、不揮発性の「油脂 」か、テルペノイド などを主成分とした揮発性 の「精油 」かでわける方法。 本記事では、主として用途で分類した。
食用油
主なもの 次に挙げる油は、いずれも世界各地で食用油として使われている。燃料油として使われることも多い。
ナッツ油 セイヨウハシバミ の種子ヘーゼルナッツ 。ヘーゼルナッツ油の原料となる。ナッツ油は料理の香り付けに使われることが多い。油の採取が難しいため、概ね高価である。
ウリ科植物の種 西アフリカではスイカの一種Citrullus vulgaris の種から油を取って調理に使う。 ウリ科 植物のヒョウタン 、メロン 、カボチャ の種には油が多く含まれる。しかし、抽出法が確立されていないため、あまり利用されていない。食用とする実の副産物として得られる場合が多い。
サプリメントに使われるもの 栄養価 が高く、サプリメント として使われる植物油もある。
その他の食用油 イナゴマメ の鞘。鞘(果肉)はキャロブ パウダーに、種からキャロブオイルを取れる。アマランサスオイル (en ) : ハゲイトウ の近隣種であるA. cruentus やA. hypochondriacus の種から取れる。スクアレン と不飽和脂肪酸 に富み、食用や化粧品に使われる。 あんず油 : アーモンド油と似ているが、安価である。ただし取れるのは栽培種に限られる。 リンゴ油 : リンゴの種から取れる。化粧品やシャンプーに使う食用にも使われる。 アルガンオイル : モロッコ 原産のアカテツ科 アルガンノキの種子から取れる。化粧品用としてヨーロッパなど各国で流通している。 アーティチョーク油 : アーティチョーク の近隣種であるカルドン の種から取れる。ベニバナ油 、ヒマワリ油 と成分が似ている。 アボカド油 (en ) : オリーブオイル の代わりに使われる。化粧品にも使われる。発煙点 が271℃と非常に高い。 ババスオイル : ヤシの木の一種ババス (en )から取れる。ココナッツオイルの代わりに使われる。 モリンガ油 (en ) : ワサビノキ の種から取れる。ベヘン酸 を多く含む。食用に使われる。バイオ燃料にも適している。 ボルネオ脂 (en ) : フタバガキ科 Shorea属の種であるBorneo tallow nutから取れる。ココアバター のように使われたり、石鹸、ロウソク、化粧品、医薬にも使われる。 ケープ栗油 : Yangu oilとも呼ばれる。ケープ栗(en )から取れ、アフリカでは化粧油としてよく使われている。 ココアバター : カカオ から取る。チョコレートの原料。化粧品に使われることもある。 キャロブオイル : イナゴマメ の種から取れる。医薬品として使われる。 コフネヤシ油 : コフネヤシの実から取れる。採取方法も使い方もココナッツオイルとほぼ同じである。 コリアンダー の種を絞るとコリアンダー種油が取れる。コリアンダー種油 : コリアンダー の種から取れる。医薬として使われる。薬や食品の香り付けにも使われる。 ディカ油 : 西アフリカのフェケの種から取れる。マーガリン、石鹸、医薬に使われる。固形油であり、西アフリカではよく使われる。 アマナズナ油 : アマナズナ(en )の種から取れる。ロシアではryjhikovoye maslo (рыжиковое масло)と呼ばれている。 アマニ油 : 乾性油 の一種。オメガ3脂肪酸とリグナン を多く含み、薬用に用いられる。酸敗(英語版 ) しやすい。 グレープシードオイル (en ) : 高温で調理しても劣化しにくい。サラダオイルや化粧油にも使われる。 ヘンプ・オイル : アサ から取れる。高品質の食用油。 カポック実油 (en ) : 食用油、石鹸に使われる。 ラッレマンチアオイル (en ) : シソ科 のLallemantia iberica の種から取る。北ギリシャの遺跡からも発見されている。 マルーラ油 (en ) : アフリカ では切手 に描かれることもあるマルーラの木の実から取る。酸化防止作用 と保湿効果があり、食用油、化粧油に使われる。 メドウフォーム油 (en ) : リムナンテス科 のLimnanthes alba から取る。変質しにくく、その98%以上が長鎖の脂肪酸でできている。菜種油と用途が似ている。 カラシ油 (en ) : インド では調理油に使われる。マッサージオイルに使われることもある。なお、化学物質アリルイソチオシアネート をカラシ油と呼ぶこともあるので注意必要である。 ナツメグバター (en ) : ナツメグ の一種から水蒸気蒸留を利用して取る。ナツメグバターはトリミリスチン を多く含む。 オクラ油 (en ) : オクラ の種から取れる。オレイン酸 やリノール酸 を多く含む。英語圏では昔は同属とされていたことからハイビスカス油とも呼ぶ。色は緑がかった黄色で、味と香りが良い。 パパイヤ油 : パパイヤ の種から取れる。 シソ油 (en ) : シソ の種から取れる。オメガ3脂肪酸 を多く含む。食用油、薬用、肌用や、乾性油 としても使われる。 ペクイ油 (en ) : バターナット科 のブラジルナッツ の種から取る。ブラジルでは高級調理油として使われる。 松の実油 (en ) : 松の実 から取れる。サラダ油や香料として使われる 。 ケシの実 ケシ油 (en ) : ケシ の種から取る。調理油や、肌の保湿油、塗料やワニス の溶剤、石鹸に使われる。 プルーン油 (en ) : プルーン の種から取れる。高級調理油として使われる。 キヌア油 (en ) : キヌア の種から取れる。成分や用途はコーン油 と似ている。 ニガー種子油 (en ) : アフリカ原産でインドやエチオピアで栽培が盛んな、キク科 のラムティル(en 、日本では帰化植物のキバナタカサブロウとして知られる)の種(ニガー種子)から取れる。調理油、照明油として使われる。 こめ油 : 米ぬか から取れる。熱に強く、高温調理に使える。アジア各地で使われている。 Royle油 : バラ科 のヘンカクボクの種から取れる。クセの強い食用油。ヒマラヤ高地の低木であり、ネパールでは薬用に用いられる。 サッチャインチオイル (en ) : ペルー の熱帯雨林 で取れる、トウダイグサ科 のインカインチから取れる。オメガ3脂肪酸 、オメガ6脂肪酸 に富む。 ツバキ油 : ツバキ科 ツバキ属 に属する様々な樹木の種子から作られる。カメリア油とも言う。中国南部の広い範囲で調理油や石鹸原料、髪油 として使われる。 アザミ油 : マリアアザミ の種から取れる。比較的変質しやすい。スキンケアに使われる。 トマト油 : トマト の種子から取れる。不飽和脂肪酸 とリシン を多く含む。サプリメント として利用されることもある。 コムギ油 (en ) : コムギ の胚芽 から取れる。サプリメントや薬用に用いられる。変質しやすい。 カブ油 : カブ の種から取れる。現在の利用は極めてまれである。 ブドウ油(グレープシードオイル) : ブドウ の種から取れる。ワイン 製造の副産物 としての製造が盛んである。植物油の脂肪酸組成 植物油 の脂肪酸組成種類 飽和脂肪酸 一価不飽和脂肪酸 多価不飽和脂肪酸 オレイン酸 (ω-9 ) 発煙点 多価合計 α-リノレン酸 (ω-3 ) リノール酸 (ω-6 ) 非水素添加 キャノーラ油 7.365 63.276 28.142 10 22 62 400 °F (204 °C) ココナッツ油 86.500 5.800 1.800 - 2 6 350 °F (177 °C) コーン油 12.948 27.576 54.677 1 58 28 450 °F (232 °C) 綿実油 25.900 17.800 51.900 1 54 19 420 °F (216 °C) オリーブ油 13.808 72.961 10.523 1 10 71 374 °F (190 °C) パーム油 49.300 37.000 9.300 - 10 40 455 °F (235 °C) ピーナッツオイル 16.900 46.200 32.000 - 32 48 437 °F (225 °C) ひまわり油 (中オレイン種) 9.009 57.334 28.962 0.037 28.705 57.029 510 °F (266 °C) 大豆油 15.650 22.783 57.740 7 54 24 460 °F (238 °C) ベニバナ油 (高オレイン種) 7.541 75.221 12.820 0.096 12.724 74.742 510 °F (266 °C) 米油 19.7 39.3 35 1.6 33.4 39.1 450 °F (232 °C) [要出典 ] グレープ シード オイル 9.6 16 69.9 0.1 69.6 15.8 421 °F (216 °C) [要出典 ] アマニ油 (フラックスシードオイル) 8.976 18.438 67.849 53.368 14.327 18.316 225 °F (107 °C) [要出典 ] ごま油 14.2 39.7 41.7 0.3 41.3 39.3 350 °F (177 °C) ~450 °F (232 °C) [要出典 ] 水素添加 済 綿実油 (水素添加) 93.600 1.529 0.587 0.2 0.287 0.957 パーム油 (水素添加) [要出典 ] 47.500 40.600 7.500 大豆油 (水素添加) [要出典 ] 21.100 73.700 0.400 0.096 値は重量パーセント
バイオ燃料としての利用
バイオ燃料 に使われる植物油もある。食用油が使われるものもあり、バイオ燃料のみに使われるものもある。なお、バイオ燃料にはエタノール やメタノール が使われることも多い。
ディーゼル燃料 としてはほとんどが石油系の燃料が使われていた。しかし2003年 頃から始まった原油価格 の上昇により、植物油がバイオ燃料として注目されている。バイオ燃料に適しているかどうかは次の点が重要である:
安定性:引火点 、カロリー、粘度 、可燃性 。 価格:収穫量(成長速度と単位面積あたりの収穫量)、収穫後の処理コスト。 バイオディーゼル の入ったフラスコここでは、エンジン油、照明油などに使われるものを挙げる。
食用油としても使われるもの 次のリストは、植物油としてもバイオ燃料としても使える植物油である。ただし桐油 はもっぱらバイオ燃料として使われる。以下は、主としてバイオ燃料としての特性を述べる。
ココナッツオイル (とりわけコプラ油 ) : 生産地で使うのであれば採算が合う。 コーン油 : 収穫高が多い。 綿実油 : バイオ燃料の研究で、性能の基準として使われることが多い。 アマナズナ油 : ヨーロッパでは18世紀以降、ランプ油として使われていた。 ヘンプ・オイル : 発火点が高い。ただし原材料の大麻 がマリファナ の原料ともなるため、いくつかの国で問題となっている。 カラシ油 : キャノーラ油と共にバイオ燃料として検討されている。 パーム油 : バイオ燃料として代表的なものの一つ。ただし、アブラヤシの栽培がかえって環境破壊の原因になっているとする意見もある。 ピーナッツオイル : 1900年 にディーゼルエンジン燃料として使われた、初期のバイオ燃料の一つである。 ラディッシュ油 : ハツカダイコン の種は48%以上の油脂を含むため、燃料としてよく使われる。 菜種油 : ヨーロッパではバイオディーゼル燃料としてよく使われている。 ニガー種子油 : インド では照明油としてよく使われる。 こめ油 : 安価なため、アジア ではよく使われる。 サフラワー油(紅花油) : アメリカ合衆国のモンタナ州 で、最近バイオ燃料として注目されている。 大豆油 : 燃料油を取るためだけに栽培するのはコストが合わないが、副産物として得られたものは燃料に使われる。 ヒマワリ油 : 物性は燃料に適しているが、採算性は悪い。 桐油 : 変質しにくいため、バイオ燃料としての利用が検討されている。食用には適さないもの 次に挙げる油は、バイオ燃料のためだけに栽培される植物から得られるものである。前述した#主なもの と合わせると、バイオ燃料のほとんど全てがここに含まれる。なお、バイオ燃料としてはユーカリ属 のようにエタノールを産するタイプがあるが、ここでは油脂以外は含めない。
乾性油
乾性油 は、室温で乾燥する植物油である。油絵具 、一般塗料、ワニス の溶剤として使われる。次に挙げるもの以外にも、クルミ油、ヒマワリ油を乾性油として扱うこともある。
食用、燃料、乾性油以外の用途に使われるもの
脚注
参考文献
関連項目
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