概要
ドルビーエンコードの映画
映画の音響再生で、臨場感を高めるため聞き手の周囲を包む音場を再生する技術で主導的な地位を占める。ドルビーサラウンド 、ドルビーデジタル 、ドルビープロロジック 、ドルビーアトモス など各種の方式がある。これらの再生にはそれぞれ専用の再生機(デコーダー )が必要になる。
主な技術・製品
音響用雑音低減方式 業務用 20~20,000Hzを4分割して、各帯域で圧縮、伸張を行う。これにより、約10~15dBのS/N比の改善が得られる。
ドルビーSR NR
Dolby A NR、Dolby B NR、Dolby C NRの欠点を解消した。現在も映画上映用フィルムのアナログトラックに用いられている。
民生用 民生用の普及機種向け
Dolby A NRの簡略版で、民生用の標準的なノイズリダクションシステムとして普及した。
民生用の上位機種向け
Dolby B NRの2倍の効果を持ち、対象音域は中音域にまで拡張された。
民生用の最上位機種向け
Dolby C NRを改良したノイズリダクションシステム
Dolby B NRを用いた簡易再生が可能だが、1990年 という音楽メディアのデジタル化が加速した時代に発表されたため、採用例は稀少である。
録音時の高域特性を改善する技術 Dolby HX 後述するDolby HX PROの前身となる技術で、コンパクトカセットにおける高域周波数のダイナミックレンジを向上させるもので、10kHz付近の高域周波数が改善される(ノーマルポジション 用テープを使用した場合)。 Dolby HX PRO 磁気テープに音声をアナログ録音する際は、「交流バイアス方式」が用いられる。これは音声信号に105kHz~210kHzの「バイアス電流」を重畳させて録音するもので、これにより周波数特性とS/N比が大幅に改善される。ところが音声信号に含まれる高域成分は自らバイアス電流として働き、周波数特性を微妙に変化させてしまう。Dolby HX PRO は、音声信号の高域成分の量に合わせてバイアス電流の量を常に変化させ、実効上のバイアス電流を一定に保つものである。Dolby HX PRO はノイズリダクションと異なり原理的に録音時にのみ働く機能である。したがってこの機能をONにして録音されたテープはどのプレーヤーでも再生でき、かつ Dolby HX PRO の効果は現れる。 音響高効率符号化方式 音響の高効率符号化 (圧縮)方式として、1980年代 から研究を行う。
ドルビーデジタル 、ドルビーTrueHD 、ドルビーデジタルプラスの総称。2018年ごろから再生機種でもこの名称を従来の三者に替わって統一して使うようになっている。
ドルビーアトモスをHDMI端子から直接出力できる規格の名称。
映画のアナログサラウンド記録再生方式 ドルビーステレオ(アナログ) センター、左、右、リアの4.0chサラウンドをフィルムにアナログで2.0chステレオ記録する技術。つまり技術的にはドルビーサラウンド (ドルビープロロジックII)と同じである。一部の規格の70mmフィルムではドルビーデジタルと同じ5.1chの直アナログ出力が可能となっていた。 ドルビーステレオSR、ドルビースペクトラルレコーディング(Spectral Recording 略:ドルビーSR)(アナログ) ドルビーステレオで行われていたノイズリダクション効果を強力にし、記録音域もさらに広げて音響のクオリティを向上させている。 映画のデジタルサラウンド記録再生方式 DOLBY DIGITAL ドルビー社の音声高効率符号化 方式であるAC-3を使った記録方式。AC-3とドルビーデジタルは同じ意味である。ドルビーSRD とも呼ばれる。1chモノラルからマルチチャンネルまで幅広いチャンネルに対応している(ドルビーデジタルは5.1chを指していると思われることがあるが、これは誤りである)。映画フィルムの場合、音声のデジタル情報を二次元コード 化し、フィルムのパーフォレーション とパーフォレーションの間に光学的に記録する。DVD の容量上の都合から、DVDの2ch音源はほとんどがドルビーデジタルになっている傾向にある。 ドルビーデジタルサラウンドEX 家庭用機器ではドルビーデジタルEX と呼ばれる。5.1chトラックの中に、真後ろの方向にあたるサラウンドバック(リアセンターとも言う)チャンネルの音声情報を追加して6.1chサラウンド再生を可能とした方式である。サラウンドバックチャンネルの音声は左右サラウンドトラックにマトリックス エンコード 処理することによって記録する。再生時はマトリックスデコード 処理でサラウンドバックチャンネルを取り出し、サラウンドバックスピーカーで再生する。上位互換 性があるのが特徴で、ドルビーデジタルEX非対応で5.1ch再生環境の場合は5.1chサラウンドとして再生される。この場合サラウンドバック音声は左右サラウンドスピーカーから再生される事になるため、音声情報の欠落は発生しない。 DTS にも「DTS:ES Discrete」と「DTS:ES Matrix」と呼ばれる同等の規格が存在するが、こちらは音声信号の自動識別に対応し、Discreteは音声信号を直接6.1chのまま伝送できる。 DOLBY SURROUND 5.1 劇場向けのドルビーデジタル5.1ch。
映画のデジタル上映方式 ドルビーデジタルシネマ 従来のフィルムプリントをデジタルデータに置き換え、色彩表現の向上、ディテール再現、デジタルサラウンドを可能とした上映技術。 ドルビー3Dデジタルシネマ DLP デジタルシネマ上映館で3D映画 の上映を可能とする上映技術。プロジェクタ内部のフィルタホイールで分光した映像を、対応メガネを通して視聴することで、映像が立体化して見える。高価なシルバースクリーンではなく、一般的なホワイトスクリーンを使用可能。また一回の投資で済む上に年間ライセンス料が不要で、コスト削減が可能。 DOLBY VISION for Theater 2015年に発表された4K映画の上映を可能とする上映技術。 ドルビー・アトモスとドルビー・ビジョン、2種類の技術を搭載した上映システム。現在までに改装型、新築型、PLF複合型の3種類が存在する。 マトリックスデコード再生技術 一般的な環境でも再生できるステレオ音声にサラウンド音声を重畳する技術である。エンコーダ側で左と右のチャンネルに位相を変化させたサラウンド音声を埋め込んでおき、デコーダで位相に着目してサラウンド音声を復元する方法である。
ドルビーサラウンド (アナログ/デジタル) ドルビーステレオを一般家庭用にした技術。ビデオやレーザーディスク 、カセットテープなどの2.0chステレオのみ記録できる媒体に、アナログの3.0chサラウンド(フロント2chとリア1ch)を記録させることができる。専用のデコーダーや機材の無い場合は通常の2.0chステレオ、機材のある場合は3.0chサラウンドを再生させることができる。'90年代に入ってからはTVゲーム にも採用された。民生用でドルビーサラウンドが主流の時代には家庭にサラウンド環境が整っていなかったため、ごく一部のユーザのみが体験できたフォーマットであった。 代表作は『スーパーダライアス 』(PCエンジン )、『ジュラシックパーク 』(スーパーファミコン )、『パラサイト・イヴ 』(PlayStation )、『スターツインズ 』(NINTENDO64 )など。 ドルビープロロジック(アナログ/デジタル) ドルビーサラウンドの3.0chサラウンドを、4.0chサラウンド(フロント3chとリア1ch)に変換する技術。ドルビーサラウンドとの違いは、「2.0chステレオから位相的に3.0chサラウンド信号成分を抽出するだけの簡易型技術」がドルビーサラウンド、「ロジック(方向性強調)回路により、隣接チャンネルの分離度を高めるよう4.0chサラウンドに変換する技術」がドルビープロロジックである。 ドルビープロロジックII/IIx/IIz さらに技術を向上させたプロロジックII(2.0chステレオを5.1chサラウンドに拡張)、プロロジックIIx(2.0chステレオや5.1chサラウンドを7.1chサラウンドに拡張)、プロロジックIIz(2.0chステレオや5.1ch~7.1chまでのサラウンドを9.1chサラウンドに拡張)が順次追加されている。 ドルビープロロジックIIは当初はデコード(再生)側だけで5.0ch/5.1ch/6.1ch化する再生オンリーの技術であったが、ドルビープロロジックIIにおいて、ゲーム用に音声を最適化するドルビープロロジックIIインタラクティブエンコード技術が開発された。このエンコード技術を用いて、マルチチャンネル音声を2ch音声としても再生できる音声の一部としてマトリックスエンコードし、それをドルビープロロジックII(又はドルビープロロジックIIx/IIz)でデコードする事で、エンコード無しの場合に比べて制作者の意図をより大きく反映する事が可能となった。 なお、このエンコード技術を用いて制作されたゲームソフト(PS2 、PSP 、Wii 、GC )にはドルビープロロジックIIのロゴが表記されている。 ドルビーサラウンド(DOLBY ATMOS for Home版) 2.0chや5.1ch、7.1chのコンテンツをホームシアター機器のサラウンド環境に合わせてアップミックスし再生する次世代のサラウンドテクノロジー。ドルビーサラウンドはドルビーアトモスを再生できるシステムだけではなく、従来のスピーカーレイアウトにも互換性がある。 バーチャル技術 ドルビーバーチャルスピーカー 2本のスピーカー(2chステレオ)で5.1chサラウンド を体験することができる技術。 ドルビーヘッドフォン 部屋でのスピーカー再生をシミュレートし、ヘッドフォン (2chステレオ)で5.1chサラウンドを体験することができる技術。ヘッドフォンに起こりがちな頭内定位が解消される利点があり、一部のMD プレーヤーやAVアンプ 、PC用DVD/Blu-ray Disc再生ソフト、ほとんどのコードレスサラウンドヘッドフォンに搭載されている。 DOLBY ATMOS for Headphone 携帯機器向けサラウンド技術 パソコン向けサラウンド技術 ドルビーホームシアター PCの内蔵スピーカーやヘッドフォンでのサラウンドサウンド、音声周波数特性の補整、圧縮音源の音質向上、低音効果の向上、ドルビープロロジックIIx、音声をリアルタイムでドルビーデジタルに変換する機能を搭載。 ドルビーアドバンストオーディオ ヘッドフォンでのサラウンドサウンド、音声周波数特性の補整、圧縮音源の音質向上、低音効果の向上機能を搭載。ドルビーホームシアターの機能削減版。 2017年現在、ドルビーオーディオという名称が用いられている。 ドルビーサウンドルーム 5.1chスピーカーシステムがないような場合での2chステレオサウンド変換再生、強力で高度なデジタル信号処理テクノロジを搭載。ネットブックにも採用されている。 ドルビーアトモス 2017年春のWindows 10 の大型アップデート『Creaters Update』から備わったヘッドフォン、対応するスピーカー専用の立体音響機能の1つ。別途アクセスするためのアプリから購入、または体験版を導入する事で使用が可能。ただし上記とは仕様が異なり、Xboxを用いたゲームアプリやNetflix等対応するアプリでのみ使用可能(音量調整画面にて「Dolby Atmos for Headphone」の文字が表示される) 記録用音声技術 ドルビーデジタルレコーディング DVDレコーダー やHDD 内蔵ビデオカメラ で、2.0chステレオを「ドルビーデジタル」の圧縮信号で記録出来るフォーマット。 ドルビーデジタルステレオクリエーター 2.0chステレオを圧縮信号で記録できるフォーマットで、音声トラックを編集可能。 ドルビーデジタル5.1クリエーター 5.1chサラウンドを比較的容易に記録できるフォーマット。DVDオーサリングソフト、DVDレコーダー、5.1chサラウンド記録対応ビデオカメラ等に採用されている。 脚注
関連項目
外部リンク
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