『ゴジラ×メガギラス G消滅作戦』(ゴジラたいメガギラス ジーしょうめつさくせん)は、2000年12月16日に公開された日本映画で、ゴジラシリーズの第24作である。カラー、シネマスコープ、ドルビーデジタル。略称は『×メガギラス』。
ゴジラ×メガギラス G消滅作戦 | |
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Godzilla vs. Megaguirus | |
監督 | |
脚本 | |
製作 | 富山省吾 |
ナレーター | 屋良有作 |
出演者 | |
音楽 | |
撮影 | |
編集 | 普嶋信一 |
製作会社 | 東宝映画 |
配給 | 東宝 |
公開 | 2000年12月16日 |
上映時間 | 105分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 12億円 |
前作 | ゴジラ2000 ミレニアム |
次作 | ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃 |
キャッチコピーは「地球最大の
観客動員は135万人。
ゴジラミレニアムシリーズの第2作。シリアスなドラマ性よりも、空想科学映画としての娯楽性が重視されている。また、ヒロインがゴジラと直接戦う戦士として描かれているのが特徴であり、シリーズで初めて人間がゴジラの背中に乗る姿が描かれる。
本作品に登場するゴジラは1954年公開のシリーズ第1作『ゴジラ』に登場した初代個体であり、同じ個体が倒されずに続いて登場しているという設定である。そのため、1954年の東京襲撃シーンは新ゴジラを用いてシリーズ第1作を再現している。本作品でのゴジラは、巨大なエネルギーを操る人類を許さず、あらゆる攻撃に耐えながら、メガギラスと闘う姿に焦点が当てられている。
主要襲撃地点は東京(渋谷、お台場)。本作品の世界観は、ゴジラの襲撃により大阪が首都になり、原子力発電が放棄されたパラレルワールドである。
作品の評価は高かったが、興行的には振るわずシリーズの存続も危ぶまれ、既に企画が進行していた次作『ゴジラ・モスラ・キングギドラ 大怪獣総攻撃』の内容や興行形態に影響を及ぼすこととなった。
1954年、ゴジラによる初の東京襲撃から2か月後、日本の首都が大阪に遷都した。1966年、東海村に上陸したゴジラにより国産初の東海村原子力発電所が破壊され、日本政府は原発の放射能を狙うゴジラの攻撃目標になるとして原子力発電の永久放棄を決定した。その後、日本政府は増加する電力需要に対処すべく、水力・火力・太陽光・風力に注力したが、原子力発電を代替するには至らなかった。そこで1996年、原子力発電の代替を目標として、科学技術庁中心の元、ゴジラに破壊されないプラズマエネルギーの研究開発を行う「クリーンエネルギーファクトリー」が大阪中之島に建設されるが、同年ゴジラが大阪を襲撃。陸上自衛隊の対ゴジラ特殊部隊の迎撃も空しく、クリーンエネルギーファクトリーはゴジラに破壊されてしまった。壊滅した対ゴジラ特殊部隊の一員で、奥村知治と共に生き残った辻森桐子は、ゴジラ迎撃作戦で隊長の宮川卓也を亡くしており、復讐としてもゴジラ打倒に生命を懸けていた。
2001年、桐子は防衛庁の対ゴジラ対策機関・特別G対策本部(特G対)が擁する対ゴジラ戦闘部隊で、奥村も所属する「Gグラスパー」の隊長となっていた。ある日、特G対に所属する物理学者の吉沢佳乃により、プラズマエネルギーを利用した究極の対ゴジラ兵器として開発されたブラックホール砲「ディメンション・タイド」の試験機による試射実験が山梨県の廃校を目標にして行われる。試射は無事成功するが、それによって時空の亀裂が発生し、そこから太古の巨大昆虫メガニューラが現れ、実験場付近の山林に卵を産み落としていく。偶然その様子を目撃した小学生の早坂淳は、産み落とされた卵を持ち帰るが、その不気味さに恐怖を感じ、引っ越し先の東京・渋谷で下水道へとその卵を捨てた。
一方、ディメンション・タイドは、桐子により秋葉原でスカウトされた吉沢の教え子でマイクロマシンの天才・工藤元の手によって人工衛星に搭載可能なサイズにまで小型化され、衛星軌道上に打ち上げられる。Gグラスパーは、奇岩島にゴジラを誘導しディメンション・タイドで葬り去る「G消滅作戦」を立案し、作戦決行に移した。
しかし、淳が捨てた卵から孵化したメガニューラの幼虫・メガヌロンが人間を襲い、渋谷の地下水脈を崩壊させて渋谷一帯を水没させてしまう。繁殖した無数のメガヌロンは羽化してメガニューラとなると、ゴジラの体内の高エネルギーを狙って大群でG消滅作戦が行われている最中の奇岩島に飛来、Gグラスパーと航空自衛隊によって誘導されていたゴジラに襲いかかる。あまりの数の多さに阻まれたことでディメンション・タイドの照準が定まらなくなってしまうが、ゴジラの熱線によってメガニューラの数が減少したことで照準が可能となり、ディメンション・タイドはゴジラに向け発射された。しかし、放たれたディメンション・タイドはメガニューラの大半を消滅させたものの、微調整が終了していなかったことによってゴジラに命中せず、G消滅作戦は失敗に終わる。一方、生き残ったメガニューラは水没した渋谷に舞い戻ると、湖底で眠る巨大なメガヌロンに命を引き換えとして吸収したゴジラの高エネルギーを注ぎ込む。そのエネルギーによって巨大メガヌロンは羽化し、メガギラスへと成長。メガギラスは周囲を破壊すると、その姿を消した。
その後、ゴジラはお台場に上陸するが、その前にメガギラスが飛来。特G対はディメンション・タイドにより両者の消滅を図るが、メガギラスの超高周波によりディメンション・タイドの制御システムが破壊されてしまう。メガギラスを倒して東京中心部に向けて進行するゴジラに対して、ディメンション・タイドの必死の復旧作業が続き、大気圏へと落下する中で再起動し、ゴジラに向けてその一撃が放たれる。
グリフォン | |
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形式番号 | GX-813 |
全長 | 18 m |
重量 | 15 t |
飛行速度 | マッハ3 |
武装 |
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乗員 | 3名 |
SGS | |
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全長 | 2 m(オリジナル) |
速度 | 40ノット |
製作の富山省吾は、シリーズを再開した前作『ゴジラ2000 ミレニアム』の時点で1作品ごとに内容をリセットして世界観を変えることを決めていたといい、シリアスなゴジラの恐怖を描いた前作に対し、本作品では映画の自由さや楽しさを重視した空想科学をテーマとした。
監督は本作品がデビューとなる手塚昌明が務めた。富山は、手塚を起用した理由について東宝映画の中で一番可能性を感じられる人物であったからと述べている。手塚は、監督を引き受ける条件として「女性を主人公とすること」と「超兵器を出すこと」、「肉弾戦をやりたい」と「最後まで戦いたい」を挙げたという。特殊技術は前作に引き続き鈴木健二が担当。鈴木は、楽しいゴジラ映画を志向し、漫画的な演出を大胆に取り入れ、怖いだけでないゴジラのキャラクター性を出すことを心がけたと述べている。また、前作のダークなイメージとの差別化から、ゴジラの出現シーンは冒頭の回想以外すべて昼間となっている。また、シリアス一辺倒であった前作に対し、楽しいエキスを上手く入れられればいいと思い、楽しくみられる映画にしたいというのを基本に、全編チャンピオンまつりの作品のように、遊びの部分を劇中にうまく取り込みたかったという。
手塚は、本作品を『ゴジラ×メガギラス』の名を借りた人間ドラマであると述べている。手塚は、通常、ラスト30分間は人間側が見ているだけの存在になってしまうため、クライマックスは最後まで戦うというものにしたかったといい、怪獣に超兵器で肉薄するというシークエンスが薄れてきていると思ったことから、超兵器を出せば、人間と怪獣が最後まで戦えるという考えもあったという。メインタイトルもゴジラの咆哮ではなく、桐子の砲撃のあとに出るかたちとした。
手塚は、検討稿の段階では桐子がゴジラの背に乗るシーンについてモスラやガメラを連想させるものであり、リアル志向のためやりたくないと考えていたが、放射能防護機能を兼ね備えた服装に設定し、自ら絵コンテを手掛けて合成も工夫するなどし、田中やスタッフの尽力もありやってよかったと述懐している。
富山は、渋谷を水没させたことについて、同じく渋谷での破壊描写を行った『ガメラ3 邪神覚醒』への対抗意識があったことも認めつつ、映像的な面白さを第一に考えた結果であると述べている。柏原や三村は、渋谷が谷になっていたため選ばれたと証言している。当初の脚本では、水没した渋谷が無法地帯になっており、メガヌロンに食べられるアベックはボートで窃盗を働いていた際に襲われるという想定であったが、撮影が大変になるため不採用となった。
フルCGで描写された泳ぐゴジラやメガニューラの大群など、3DCGやデジタル合成が多用されている。制作にはデジタルプロダクションが10社以上参加し、合成カット数は548カットに及んだ。
モニター画面の映像には、「LIVE FROM GRIFFON」など発信元の情報が明記されている。手塚は、『ゴジラvsモスラ』からモニター映像を手掛けていたが、どこの映像か説明がつかないことを気に留めていた。
パラレルワールドを舞台としているため、架空の建造物が多く登場するのも特徴である。鈴木は、大胆な発想で建物をどんどん増やしていったといい、現地を知らない人に実在すると錯覚してもらえれば面白いと語っている。手塚は、後年のインタビューで大阪を首都にする設定には反対であったと語っている。
本作品では、自衛隊は撮影に協力していない。
主演には東宝「シンデレラ」オーディション出身の田中美里を起用。富山は、シンデレラオーディションの時からゴジラでアクションをやってもらいたいと思っていたと語っている。手塚は、自身も初監督であったため無名の俳優を1から育てる自身はなかったといい、東宝で既に名のあるちゃんとした芝居のできる人物を要望したところ、富山から田中を推薦されたと述懐している。田中は幼少期から水が恐いため泳ぐことができなかったが、本作品の撮影のために特訓し克服するに至った。
工藤役の谷原章介について、富山は谷原が出演した映画『極道戦国志 不動』(1996年)を観て魅力を感じていたといい、本作品での起用となった。
宮川役の永島敏行は、手塚からの要望により起用された。手塚は、永島を日本で一番制服が似合う俳優だと評しており、永島が出演した映画『ガメラ2 レギオン襲来』と被るのを覚悟の上であったと述べている。
吉沢役には東宝特撮の常連であった星由里子を起用。富山は、吉沢をGグラスパーの母親的存在として考えたときに、星の名が挙がったという。手塚は、自身が星と仕事をしたいという意向もあったと述べている。
生物学者の山口剛は、脚本では40歳と設定されていたが、手塚は昔の怪獣映画のような老科学者の方が説得力が出ると考え、その雰囲気を表現できる俳優として中村嘉葎雄が起用された。
特G対受付役の加藤茂雄は、昭和の東宝特撮の常連俳優であり、『ゴジラ』(1984年版)以来のゴジラシリーズへの出演であった。加藤は役柄について手塚に尋ねたところ、「番人です」と告げられたという。
撮影には、遠隔操作で回転や上下左右といった動きも可能な特殊カメラが使用された。
水没する渋谷の描写は、実際に水を張ったセットと実景にCGを合成したものが併用された。水際の街並のセットはグリーンバックで処理することも検討されたが、条件に見合わなかったため、東宝スタジオの大プールの一角に設けられた。同セットは宮益坂をモデルとしているが、渋谷の象徴として実際には見えない109を入れている。飾り替えにより2パターン作成しており、ロケハン写真を参考にビラやスプレーによる落書きなども再現している。
メガヌロンが渋谷を襲撃するシーンでは、本編班が撮影を行った。
桐子が渋谷のプールに着水する場面では、クレーンを使用してパラシュートを落下させたが、あまりにもプールの水が汚かったため、スタッフ総出で掃除が行われた。
ゴムボートが落下するシーンは、合成用プールの中にビルの足場を用いてスロープが設けられ、10本ほどのホースで水を流して撮影された。ボートが揺れるシーンでは、スタジオ内で「オカマ」と呼ばれる半球状の台にグリーンバックを張り、その上にボートを乗せて揺らしている。
大阪・中之島のシーンは、東京・兜町で撮影された。
工藤のジャンクショップは、近隣3、4軒分までセットが制作された。電気街から外れた昔ながらの店という想定で、狭く天井も低くしている。
ディメンション・タイド実験シーンの撮影は、本栖湖付近のグラウンドで行われた。ブラックホールに吸い込まれる校舎は、素材となる写真をもとにしたフルCGで処理された。
工藤がビルの破片で負傷するシーンは、プール脇のオープンセットで撮影された。実際にコンクリートで制作した瓦礫をクレーンで吊り、本物の車を潰している。
自衛隊員の合成カットは、グリーンバックではなくブルーバックで撮影している。
お台場上空は、羽田空港の管制空域内であるため高度や時間などに制限があり、空撮は旅客機の離着陸が始まる前の早朝に行われた。撮影の江口憲一は、撮影時は陽が昇って間もないためかなり斜光になっており、セットのデイシーンとは光源がつながらない部分もあったと述べている。
冒頭の1954年に出現したゴジラの描写は、第1作『ゴジラ』を再現したものとなっている。基本的には本作品でのゴジラのスーツを用いた新規撮影だが、一部のシーンでは第1作の映像にゴジラのみ合成している。色彩は完全なモノクロではなく、モノクロに近いカラーとしている。国会議事堂のシーンには東武ワールドスクウェアの展示模型を用いており、ロケ撮影の映像にオープンセットで撮影したゴジラと炎を合成している。
鈴木は、スピーディーなバトルにしたかったといい、メリハリをつけるためにコマ落としやスローを用いて極端な緩急を演出している。そのために撮影速度をどうするか鈴木は悩んだが、ノーマルではコマ落としを行った際には画が荒れてしまうため、ハイスピードでの撮影とした。
大阪のセットでは、前作で検討されていたゴジラの足で地面が陥没する仕掛けが用いられた。このギミックでは、道路にゴムを用いている。特殊美術の高橋勲は、大坂城や通天閣のような特徴的な建物がなかったため、東京と変わらないオフィス街であったと述べている。
渋谷のミニチュアセットは、水中のものと水面上のものが別に制作された。渋谷のどこを舞台にするかは漠然としており、スタッフ内でもイメージが分かれていたため、家族連れの観客が一般的にイメージするであろう109と渋谷センター街を中心としたものとなった。SGSが渋谷駅構内へ入るという案も存在した。セットの制作には、特美助手の三池敏夫が参加していた『ガメラ3』の図面を流用している。高橋は、本来の明るい部分が水没しているため、夜のシーンで上から見てもなんだかわからなくなったと述べている。
お台場のミニチュアセットは、『ゴジラvsデストロイア』以来2度目であったが、同作品では1/50スケールで3キロメートル四方の範囲を組んでいたのに対し、本作品では1/25スケールのため狭い範囲での制作となった。高橋は、前回との縮尺感の違いを周囲に理解してもらうのに苦労したことを語っている。三池は、建物が少なくあまり凝ることができなかったと述べている。メガギラスのラストシーンなどでは、ホリゾントをグリーンバックにして背景に実景を合成している。
音楽は大島ミチルが担当し、シリーズで女性作曲家が登板するのは初めてである。大島は、本作品の後も手塚が監督を務めた2作品で音楽を担当した。
伊福部昭の作曲した「ゴジラのテーマ」が冒頭のニュースフィルムの場面と後半のゴジラがお台場に出現した場面で使用されている。手塚は、伊福部の音楽から離れた方がいいというファンの意見を否定するために使用したといい、大島もゴジラが伊福部音楽から離れられないことを肯定しつつ、自身もそれに負けないことを宣言していたという。
大島は、「Gグラスパー(グリフォン)」「ゴジラ」「メガギラス」の3つのテーマモチーフを設定し、それを基に約10日間で48曲の音楽を作曲した。大島は、本作品の前に手掛けた映画『長崎ぶらぶら節』が精神的に大変であったのに対し、本作品は量が多く体力勝負であったと述懐している。
最初の打ち合わせでは、大島は土着性のある大陸的なイメージが似合うと考えロシア風のシンフォニーとすることを考えていたが、手塚から大島が手掛けたテレビドラマ『ショムニ』のBGMをスタッフで聞いていることを告げられ、同作品のような元気でわかりやすい音楽に改めた。ただし、大島は当初のイメージも捨てられず、隠し味として随所に散りばめている。
ゴジラのテーマは、手塚の要望により「大きさと怖さ」を表現するため、テンポを上げず重低音をで構成している。チューバ、コントラバス、パーカッションはダビングして音を厚くしており、特にチューバは奏者の提案により通常出ない譜面よりもオクターブ下の音域も用いている。
メガギラスのテーマは、共通の要素も持たせつつ、形態ごとに表現を変えている。卵では不気味さを表現し、メガギラスではバトルシーンを意図してアップテンポとしている。メガニューラでは、弦楽器を鳴き声の効果音のように用いることで、ヒッチコック映画のような雰囲気を出している。
Gグラスパーは、手塚は『サンダーバード』を、大島は『スタートレック』をイメージし、ヒロイックで明快な音楽としている。
後年のインタビューで大島は、本作品のダビング作業にはあまり参加しなかったが、劇場で完成作品を観ると音楽が効果音に押されて聞こえなくなっていたといい、次に参加した『ゴジラ×メカゴジラ』ではダビング作業にすべて参加し、作曲においても効果音との兼ね合いを意識したと述べている。
いずれも東宝ビデオより発売。
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