アイオロス(古希: Αἴολος, Aiolos, ラテン語: Aeolus)は、ギリシア神話における3人の人物の名前である。これらの3人の人物はしばしば混同されがちであり、古代神話の記録にすら、どのアイオロスがどの人物であるかについての混乱が見られる。シケリアのディオドーロスによりこの3人のアイオロスの定義が(ディオドーロスの定義にも明らかな混乱が見られるが)試みられており、以下ではディオドーロスによる見解を記述する。
これらの3人の正確な関係は多くの場合において曖昧であるが、3人には家系上の関係があると考えられている。ポセイドーンの子とアネモイの主は、特に混同されがちである。
ヘレーンとオルセーイスの長男で、アイオリス人の始祖。彼はヘレーンによりテッサリアを与えられ、領民をアイオリス人と呼んだ。
テッサリア王アイオロスは、ケイローンの娘テアー(またはオーキュロエーとも)を誘拐した。テアーはアルテミスの狩の仲間だったという。テアーは身重となったが、父親のケイローンがこれを知ったらひどい罰を受けるだろうと悩んだ。ポセイドーンはアイオロスの友人だったので、テアーをしばらくの間馬の姿に変え、子馬を生ませた。子馬はメラニッペーと名付けられた。ポセイドーンはテアーを空に上げてこうま座とし、メラニッペーを人間に戻すとアルネーと改名してデスモンテスという男に養育させた。
やがてアルネーが成人すると、ポセイドーンはこれをわが物とし、2人の子供を産ませた。1人は祖父テッサリア王に生き写しだったので同名のアイオロスと名付けられ (#2) 、テュレーニアの島々に住んで風の長となった。もう1人はボイオートスと名付けられ、彼はボイオーティア人の祖となった(ただし前述の通り、混同されがちである)。
デーイマコスの娘エナレテーと結婚し、男7人・女5人の計12人の子をもうける。
ホメーロスの長編叙事詩『オデュッセイア』においてギリシア神話におけるアネモイ(風の神)たちの主として言及される、ヒッポテースの息子。ゼウスの好意を得て風を支配する力を有し、浮き島であるアイオリアー島(アイオリエー島)に住む。男女6人ずつ計12人の子があり、子供たちはそれぞれが夫婦である。
漂着したオデュッセウスを歓待し、航海のためのゼピュロス(西風)を革袋に詰めて与えた。その他の逆風は別の革袋に封じ込めたので、順調に航海を進めることができたが、オデュッセウスの部下が逆風の袋を開けたため、再びアイオリアー島に漂着する。アイオロスは彼が神々の怒りを受けているとし、今度は冷酷に追い返した。
ウェルギリウスによる『アエネーイス』第1巻でも登場し、ユーノーからの命令を受けたアイオロスが洞窟の中に閉じ込めた風を解き放ち、テュレーヌム海を渡っているアエネーアースの船隊を海に沈めている。また、ユーノーからその報酬として美しいニンフであるデーイオペーアを与えられ、妻とした。
「エオルス音」という言葉の語源である。
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