日本国旅券(にほんこくりょけん)は、日本のパスポート。日本の法令は、諸外国のパスポートに該当する渡航文書を旅券(りょけん)と呼ぶ。
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
日本国旅券 (JAPAN PASSPORT) | |
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10年用の日本国政府発行の一般旅券 (年齢が18歳以上で成年に達している日本国民が所持可能) | |
名義人の身分事項ページ | |
種類 | パスポート |
交付者 | 日本 外務省 |
交付開始 | 1866年5月21日 (慶応2年4月7日) (海外渡航文書) 1926年(大正15年)1月1日 (手帳型) 1992年(平成4年)11月1日 (機械読取式旅券) 2006年(平成18年)3月20日 (バイオメトリック・パスポート) 2013年(平成25年)8月31日 2020年(令和2年)2月4日 (現在の版) |
目的 | 身分証明 |
受給資格要件 | 日本国籍 |
有効期間 | 成年は10年間か5年間 未成年(17歳以下)は5年間 |
手数料 | 10年用(18歳以上): 16,000円 5年用(12歳以上): 11,000円 5年用(12歳未満): 6,000円 |
詳細は、旅券法(昭和26年法律第267号)、旅券法施行令(平成元年政令第122号)、旅券法施行規則(令和4年外務省令第10号)により定められている。
2018年から5年連続で、日本国旅券はパスポートランキングにおいて、所持者がビザなしで渡航できる国や地域の数が193であり、世界1位だった。2024年1月現在は日本は1位に戻り、同率でフランス・ドイツ・イタリア・シンガポール・スペインがいる。
日本には、「(一般)旅券」、「公用旅券」、「外交旅券」及び「緊急旅券」の4種類のパスポートがある。ただし旅券法上は、「一般旅券」と「公用旅券」となっており、「外交旅券」は公用旅券、「緊急旅券」は一般旅券に含まれる。
旅券の寸法は、国際民間航空機関の勧告を受け、平成4年(1992年)にB7サイズ(ISO規格に準じており、JIS規格には準じていない)に改められた。
表面に記載されている「日本国旅券」の文字は、篆書体で印刷されている。
いずれの旅券にも、皇室の紋章でもあり、日本の在外公館において国章に代わり慣例的に使用されている十六八重表菊(じゅうろくやえおもてきく)と同類の菊花紋章の一つである十六一重表菊(じゅうろくひとえおもてきく)が表紙中央に印刷されている。
また、身分事項ページの顔写真上部には、首相、政府(内閣)、皇室の慣例的な紋章である五七桐花紋(ごしちぎりかもん)が印刷されている。
なお、天皇と皇后は国際慣習における君主国への元首待遇により、海外渡航する際に旅券の所持・携行は不要となっている。
この他に、渡航先で旅券を紛失して、旅客機が航行するなど再発給を待機する時間がない理由がある者に対し、在外公館で日本へ帰国する渡航中に使用するため、1回(片道)限り使用可能な渡航文書として「帰国のための渡航書」が交付される。この場合は、当該渡航書の発給と同時、日本の外務省の記録上で、それまで所持していた旅券番号が失効するため、元の旅券が後日発見されても使用することはできず、新たに旅券取得の手続きをする必要がある。
また、旅券を所持していない(または自分の旅券が失効してしまっている)が「親族が外国で急な事故に巻き込まれ救援等に出向く必要がある」「外国で開催される発表展示会や研究・開発の発表や署名式に出席しないと、日本の国益を損ねる」などという事態が発生した際には、即日または翌日発行の「緊急発行」という処理方法がある(通常は申請から交付通知が届くまで1週間ほどかかる)。
日本に到着後の入国審査官による帰国手続きの際、船員手帳しか持っていない、旅券(パスポート)の期限が失効していた等々の理由で帰国確認の証印を押せない場合は、「帰国証明書」が交付される。こちらは「帰国のための渡航書」のように外務省が発行する文書でなく、法務省の地方出入国在留管理局に属する入国審査官の判断・都合により交付されるもの(渡航文書の代替でなく証印の代替)に過ぎないため、法令上直ちに元の旅券が失効とはならない。
また、かつては日本で唯一の「住所が本人による手書きで、住民票と異なる住所の記載が許容される、証明写真付きの公的な本人確認書類」であった(住所欄は2020年(令和2年)で廃止)。
なお、アメリカ合衆国による沖縄統治時、沖縄県以外の46都道府県のいずれかに戸籍を置く日本国籍者が、アメリカ合衆国施政権下の沖縄県に渡航する際には、旅券ではなく、日本国政府が発行する「身分証明書」という特殊な書類を要し、逆に沖縄県に戸籍を置く日本国民(「琉球住民」)が46都道府県の日本本土へ渡航する際には、琉球列島米国民政府が発行する「日本渡航証明書」が必要であった。(出入管理庁#渡航手続・アメリカ合衆国による沖縄統治#交通)
また、北方四島交流事業において、日本政府が自国領有を主張しているもののロシア連邦により実効支配(日本政府の立場としては、不法占拠)されている歯舞群島、色丹島、国後島、択捉島(いわゆる北方地域)への訪問団の各個人に向けて、外務省において身分証明書が交付されるが、これも旅券ではない。
これらは、いずれも沖縄県(米国施政下からの復帰前)、小笠原諸島(東京都の一部、米国施政下からの復帰前)、北方領土(北海道の一部、ロシアによる実効支配下)、竹島(島根県の一部、韓国による実効支配下)は『日本固有の領土である』という日本国政府の国是から、これらの地域への渡航のために、旅券を発給できないからである。
一般旅券の身分事項のページには、以下の事項が記載されている。なお、身分事項は「非ICパスポート」は表紙裏、「ICパスポート」は後述の外務大臣要請文ページの次々ページに記載されている。
機械読み取りに対応するMRP(機械読取式旅券、英:Machine-readable passport)が、上記の内容で文字化されている。空港免税店で買い物するときなどに必要である。
偽造防止のため、英語の『JAPAN PASSPORT』が、マイクロ文字で全ページに記載されており、また紫外線発光インクが塗られている。
また、次のような外務大臣要請文(日本語及び英語)が、表紙裏面(非IC旅券は身分事項ページの次葉)に記載されている。
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外務省(領事局旅券課)は2006年(平成18年)3月以降、アメリカ合衆国連邦政府の要請により、一般・公用・外交全種の旅券において、IC旅券(バイオメトリック・パスポート)を導入し、交付を開始した。旅券の表紙には、IC旅券を示す世界共通のピクトグラムが表示されており、中間の厚めのページに集積回路が埋め込まれている。
2017年(平成29年)現在は、証明写真のみが電磁的記録されているが、将来的には、生体認証(虹彩認識、指紋認識、顔認識など)を利用した出入国管理を行う計画があり、現在関係省庁において実験(e-Passport 連携実証実験)及び検討が行なわれている。
単にIC旅券と言った場合は、氏名、生年月日、性別、国籍、有効期限、旅券番号など、いわゆる文字情報が旅券内部に電子的に記録されているのみだが、バイオメトリック・パスポートとして知られているものは、証明写真画像をICチップに記録して、入国審査時に所持人の実画像と電子的に比較したり、さらには指紋データまで含まれているものもあり、世界においてはeパスポート (e-Passport/e-passport) と呼ばれることもある。既に世界で50カ国を超える国家がバイオメトリック・パスポート(eパスポート)を導入している。またIC旅券やICを搭載したIDカードを導入した地域では、自動出入国システムの設置も順次進んでいる。
日本では、2007年(平成19年)11月より、成田国際空港に訪日外国人用のJ-BIS、日本国籍や在留カード用に自動化ゲートが設置された。アジアにおいても、シンガポールのチャンギ国際空港や、シンガポールとマレーシアとの国境における自動出入国システム、香港と中国深圳の出入境に設置された、香港居民のための「e-channel/e-道」などがすでに運用されている。
なお、一部にある誤解とは異なり、IC旅券に電子的に査証が書き込まれる事はない。IC旅券に記録されている情報は、改竄を防止するためからも機構的に読み出し専用である。目に見えるスタンプやシールのない査証は、査証を発行した国の入国管理当局のコンピュータネットワークに、査証情報がサーバに保存されているだけである。
旅券は、原則として住民票を有する都道府県の旅券窓口(パスポートセンター)で申請する。
2006年(平成18年)以降は、旅券発給業務の市町村への移譲に伴い、地域の市役所・町村役場等が窓口になっている自治体もある(茨城県、栃木県、群馬県、埼玉県、新潟県、岐阜県、静岡県、岡山県、広島県、愛媛県、佐賀県、熊本県など)。在外日本人が海外から一時帰国中など、日本国内に住所のない者については、一時滞在地での申請が認められるなどの例外がある。申請手続の正確な情報については、当該窓口に問い合わせるか、外務省の公式サイトや各自治体のパスポート関係の情報を確認のこと。
一般に、国内窓口での初申請において必要とされる書類等としては以下のものがある。
なお、2009年(平成21年)3月1日以降の申請から、それまで必要だったはがきは不要となった。以前は、未使用のはがきに、宛先として住民票記載の住所及び氏名を記載したものが必要だった(家族が同時申請する場合ははがきは1枚で良かった)。発給準備が整うとこのはがきが通知として使われ、申請者はそのはがきを持参・提出して受け取る事になっていた。
申請については、本人以外でも、同居親族等本人が指定する者が代行できる。ただし、前もって申請書を入手し、指定箇所にパスポートに転写する本人の署名が必要。文字の記載が不可能な乳児の場合は、代筆者の署名も必要である。なお、受け取りは代行が不可能で、本人が必ず出向かなければならない。なお、申請時において未成年者(18歳未満)の申請については、親権者の同意が必要となる。
以下のようなケースでは、必要書類が異なるために確認する必要がある。
なお、旅券の申請についても、インターネットにおける電子申請制度が導入されたことがあった。しかし、2005年(平成17年)度の利用が103件に留まり、財務省の予算執行調査で1件あたりの経費が1,600万円程度かかっていることなどが指摘され、2006年(平成18年)に廃止された。2022年(令和4年)4月20日、旅券の電子申請の実施を内容とする「旅券法の一部を改正する法律」が成立し、2023年(令和5年)3月27日から、旅券の残りの有効期間が1年未満で、旅券の記載事項を変更しない、いわゆる切替申請の場合には、電子申請も再び可能となる。
旅券法改正により、2006年(平成18年)以降、旅券発給業務が市町村でも可能になり、関係条例および準備が整った自治体では、住民票のある市町村役場で申請・受領を行う。指定された市町村の住民については、都道府県による窓口が廃止され、市町村役場の窓口での手続きとなる。
土曜日及び日曜日も開放している窓口があるが、ほとんどは受領のみで、申請はできない。ただし、和歌山県では2010年(平成22年)より都道府県レベルでは初めて日曜日の申請を受け付けている。なお、前記した旅券発給業務の市町村委譲によって、一部の市町村の住民は、土曜日・日曜日の旅券受領が出来無くなり、サービス低下につながっている側面もある。
申請は親族・旅行業者などによる代行申請が広く認められているが、受領に関しては(なりすましによる不正受領防止などの観点から)例え乳児や幼児など0歳児であっても、申請者本人が直接窓口に出向き、対面で手交・受領することが必要である。
旅券の受取りに必要な書類は次の通り。
10年有効の旅券に対する申請手数料費用である『16,000円』について、収入印紙4,000円及び都道府県収入証紙2,000円の『6,000円』を含めた、1年間1,000円、10年で1万円(5年有効で5,000円)が掛かる、諸外国・地域での在外日本人保護に掛かる費用の算定方法や妥当性について、2016年(平成28年)秋の行政事業レビューにて、11月12日に外務省へ「どんな費用が掛かっているのか、国民に情報公開する様」説明を求める有識者の意見が相次いだ。
旅券は、発行の日から6か月以内に受領しないと失効する(民法140条の規定により発行当日不算入、例:3月1日発行→8月31日まで、4月19日発行→10月18日まで)。その後、改めて発行を希望する場合は、再び新規発給申請の手続きをとる。前回受け取った申請受領書の提出を要求されることがあるが、必ずしも必要ではない。
旅券名義人が何らかの理由で死亡した場合は、死亡した事実が分かる書類と共に早急にパスポートセンターへ提出及び日本国政府へ旅券を速やかに返納しなければならない。なお、日本国外の場合は、在外公館または日本総領事館へ持参すればよい。
但し、実務上では本人確認が厳格であり有効期限があるので「他人に渡らないようにした上で、形見として保管して下さい」として、返納を強制しない運用が図られている。
渡航の便宜等のため、戸籍上の氏(姓)と名の英字表記の後に、所定の要件を満たすことで別の姓または名を括弧書きで併記することができる。これを別名表記制度と呼んでいる。
別名併記ができる例:
特に、2021年(令和3年)4月1日から、旅券の申請者が以前入っていた本邦の戸籍の氏、すなわち申請者の旧姓を、特段事情を説明することなく、パスポートに併記することが可能になった。
併記される姓名は、顔写真・身分事項のページに括弧書きで記載されるが、ICAO文書には規定されていない例外的な措置であるため、ICチップ及び機械読取領域(MRZ)には記録されない。
なお、都道府県発行の報告書に歴史が詳しく記載されている場合もある。
かつて日本国内において「日本国旅券」は、ほぼ無条件に本人確認書類として用いられていたが、2020年(令和2年)2月4日以降に申請した新デザインパスポートは住所等を記入する本人記入欄が廃止され本人現住所の証明能力を失ったため、金融機関の口座開設といった本人現住所の証明が必要な場合は、日本国旅券単独では本人確認が認められない事態が発生している(本人が存在するという証明にしかならない)。
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