宇宙工学(うちゅうこうがく、(英: astronautics、cosmonautics)は、宇宙開発を行うことに関連した工学の一分野である。地球の大気の外側を飛行するための理論および技術であり、言うなれば、宇宙飛行の科学技術である。
最近では宇宙工学は、航空工学とともに航空宇宙工学という領域をなしている。航空工学と宇宙工学は実際上重なっている領域が非常に多く、それらを分けて考えるのも作為的で不適切な面もあるので、航空宇宙工学として統合されており、学会や大学の学部なども「航空宇宙工学会」や「航空・宇宙工学科」などという名称になっていて、その中で2大柱のひとつとして宇宙工学が扱われる形になっていることが一般化してきているのである。
宇宙工学は多くの専門的分野からなり、技術者や科学者らはこれらの異なる多くの専門的知識を生かしながら働いている。
初期の宇宙航法の研究は理論的考察から始まった。宇宙旅行に必要な数学的基礎はアイザック・ニュートンが1687年に出版した『自然哲学の数学的諸原理』にて確立された。
スイスのレオンハルト・オイラーやイタリアのジョゼフ=ルイ・ラグランジュといった数学者たちは、18世紀から19世紀にかけて古典力学の数学的基礎づけに寄与した。しかし、これらの理論的可能性にもかかわらず、宇宙旅行が実際に実現できるようになるのは20世紀半ばまで待たねばならなかった。その一方で、宇宙飛行の興味はジュール・ヴェルヌ(1828年- 1905年)やH・G・ウェルズ(1866年 - 1946年)らによって小説の世界で描かれていたのだった。
20世紀初頭、ロシアのコンスタンチン・ツィオルコフスキーによってツィオルコフスキーの公式が導きだされた。この方程式のおかげでロケットの推進の理論的考察ができるようになった。この方程式は宇宙船の質量( )、推進剤と宇宙船の質量の和( )、推進剤の排出速度( )、から宇宙船の最終速度を計算することができる。
より詳細な宇宙旅行の数学理論については、軌道力学を参照のこと。
1920年代初頭にアメリカ合衆国のロバート・ゴダードが液体燃料ロケットを開発し、それは後のV2ロケットやサターンVの設計思想にきわめて大きな影響を与えることになった。
宇宙工学において質量、温度、外部の力への制約は過酷な宇宙の環境で生き延びるために非常に重要である。とくに地上では再現できないような高レベルな真空、惑星間空間やヴァン・アレン帯の強力な放射線などに耐えなければならない。
打ち上げには大きな速度が必要なため巨大な力がかかり、軌道上は温度変化も激しいため人工衛星はこれらに耐えられるように設計しなければならない。宇宙に持っていける質量にはペイロードにより厳しい制約が課せられるため、宇宙工学の技術者は設計にあたって、ペイロード限界を踏まえできる限り軽量な宇宙機を設計しなければならない。
宇宙工学により実現される各種の分野
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