健康の社会的決定要因(けんこうのしゃかいてきけっていよういん、Social determinants of health)とは、個人または集団の健康状態に違いをもたらす経済的、社会的状況のことである。健康の社会(的)規定因子や、健康の社会的決定因子とも。
20世紀後半以来、人びとの健康や病気が、社会的、経済的、政治的、環境的な条件に影響を受けることが広く認められるようになり、その研究が進んでいる。カナダ公衆衛生機関や世界保健機関といったいくつかの保健機関は、健康の社会的決定要因が集団や個人の快適な暮らしに大きな影響をもたらすことを表明しており、1980年代後半以降、集団の健康の改善や健康格差の緩和における情報キャンペーンなどの限界が明らかになるにつれ、公衆衛生の研究において医療社会学との連携が進み、ますます健康の社会的決定要因の調査に焦点が当てられるようになってきている。健康被害の経験は、不平等に分布している。これは、自然現象ではなく、不十分な社会政策、 (富と健康を持つものがより裕福となり、それらを持たぬものがより貧しくなるという)不公平な経済的再分配、そして政治的な問題である、と主張する筋もある。
健康の社会的決定要因を探る努力は、トマス・マキューンの考察した死亡率減少の4つの社会的要因、カナダ厚生大臣によるラロンド・レポートにおける4つの医療領域、アメリカのヘルシー・ピープルで追認した4つの寄与要因、イギリスのブラック・レポートの指摘した社会階層、世界保健機関による健康づくりのためのオタワ憲章における健康の前提条件、健康の支援環境についてのスンツバル声明における支援環境の4つの側面と、積み重ね上げられた。1997年健康づくりを21世紀へと誘うジャカルタ宣言にて健康の決定要因の重要性が強調されると、1998年マイケル・マーモットとリチャード・ウィルキンソンらによる知見の整理により、健康と社会とを結びつける現実的かつ政策的な概念として成熟した。
健康の社会的決定要因が示唆するものは、個人や集団の健康は、個人では管理できない状況に左右されている、ということである。これは以下のような寓話を介して解説されることがある。
「 | ――どうしてジェイソンは病院にいるの? ――どうしてジェイソンの足には悪い病気があるの? ――どうしてジェイソンは足を切ってしまったの? ――どうしてジェイソンは廃品置き場で遊んでたの ――どうしてそういうところに住んでいたの? ――それはどうしてもっと良いところに住む余裕がないの? ――お父さんにお仕事がないって、どうして? ――それはどうして?... | 」 |
カナダ公衆衛生機関では、このような寓話から、すべての人々の健康水準を決定している一連の要因や状況の存在に言及している。これは世界保健機関による健康の定義にも合致する理念である。
以下はカナダ公衆衛生機関により表明されている、健康の決定要因(いくつかは社会的決定要因)の一覧である。
世界保健機関欧州地域事務局は、健康の社会的決定要因に関する意識の向上を目的として、1998年よりソリッド・ファクツ(しっかりとした根拠のある事実)を公表している。2003年には第2版が公表されている。ソリッド・ファクツでは、社会的決定要因として以下の要因を説明している。
ソリッド・ファクツの各章は、分かっていること(What is known)、政策への示唆(Policy implications)、参考文献(KEY SOURCES)からなり、健康づくりにおける政策の重要性を強調している。
ソリッド・ファクツでは、それぞれの社会的決定要因とその重要性について解説を加えながらも、これらは先進国における資料に基づいており、決定要因と社会の発達度との関係から、開発途上国においては、そのことを考慮すべきであるとしている。
2004年、世界保健総会は食事と運動、健康についての世界戦略を採択し、健康的な食事と運動において国家の果たすべき役割と負うべき責任を確認、強調している。
2005年の健康づくりのためのバンコク憲章では、国際化した世界における健康の決定要因を管理するために必要な、活動と責務、誓約が確認されている。
2008年には、世界保健機関の健康の社会的決定要因委員会が、その最終報告書を発刊している。
米国でも連邦保健福祉省(NHS)の疾病予防健康増進局(ODPHP)では、Healthy People.gov2020のトピックスの1つとして健康の社会的決定要因に注目して、米国内のSDHに関するデータと2030年までの目標を明示して取り組みを強めている。
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