『下妻物語』(しもつまものがたり、作品英称: Kamikaze Girls)は、嶽本野ばらによる小説、およびその小説を原作とした映画などの諸作品。物語は茨城県下妻市を舞台にしている。
ロリータ少女とヤンキー少女という意外な組み合わせで、仲良くなった2人の女子高生が主人公。この2人の間に芽生えていく友情をストーリーとして描いている。
小説の初巻については、深田恭子と、土屋アンナというキャストで映画化され、2004年(平成16年)5月29日より公開された。当初はシャンテ シネ(現:TOHOシネマズシャンテ)を筆頭とした40館規模での公開予定であったが、評判を呼び156館での公開に拡大された。また、2004年(平成16年)5月にカンヌ国際映画祭に併設されたフィルム・マーケットで、『Kamikaze Girls』(神風ガールズ)と題して上映されると評判になり、7か国で上映が決定し、公開された。この後、多くの映画祭に招待され、2006年にはカンヌ国際映画祭と平行して行われたカンヌJr.フェスティバル(青少年向け映画のコンペ)にて邦画初となるグランプリを獲得。フランスで邦画としては過去最大となる約100館での上映が決定した。なお、主役の2人は多くの映画賞を受賞した。この映画ではロリータ・ファッションで来館した者には、特別割引になる特典があった。
また、映画版では、メーカー名のベルサーチを「ベル○ーチ」などと音声を加工しているシーンがいくつか散見されるが、これは権利関係の問題によりこのような修正がされている。許可を得ているジャスコ(現・イオン)などはそのままジャスコとして放映されている。原色を強調、パステルカラーのトーンを多用し、人物へのサイドからのライティングや、コミックのアニメーションを挿入するなどの新奇手法によって、アン・リアルでオリジナルな映画空間を創出している。
DVDには、映画を見ながら撮影秘話を語る音声コメンタリートラックが用意されており、主演の深田恭子・土屋アンナをはじめ、監督・スタッフなどにより、多くの撮影エピソードが語られている。
他の嶽本作品にしばしば現れる怪奇趣味や過激な性描写が一切なく、軽快なコメディタッチの展開が人気を博した。また、映画化に先駆け、かねさだ雪緒により漫画化、続編が製作されている。
下妻物語 | |
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Kamikaze Girls | |
監督 | 中島哲也 |
脚本 | 中島哲也 |
原作 | 嶽本野ばら『下妻物語』 |
製作 | 石田雄治 平野隆 小椋悟 |
製作総指揮 | 大里洋吉 近藤邦勝 |
出演者 | 深田恭子 土屋アンナ 宮迫博之 篠原涼子 阿部サダヲ 岡田義徳 小池栄子 矢沢心 荒川良々 生瀬勝久 本田博太郎 樹木希林 |
音楽 | 菅野よう子 |
主題歌 | Tommy heavenly6 |
撮影 | 阿藤正一 |
編集 | 遠山千秋 |
制作会社 | 小椋事務所 |
製作会社 | 「下妻物語」製作委員会 |
配給 | 東宝 |
公開 | 2004年5月13日(カンヌ) 2004年5月29日 2005年9月2日 2006年6月14日 2006年7月28日 2008年6月6日 |
上映時間 | 102分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
興行収入 | 6.2億円 |
中島哲也監督により映画化され、2004年5月29日に全国東宝系にて公開された。主演は深田恭子。
茨城県の下妻市に住む竜ヶ崎桃子は、ロリータ・ファッションをこよなく愛する孤高の高校生である。もう一人の主人公・白百合イチゴは、レディース(暴走族)の一員であり、桃子の父親の作ったベルサーチの偽物を買いに来たことをきっかけに、桃子の家に出入りするようになる。イチゴは、世話になった暴走族の総長・亜樹美の引退の際、代官山にいるらしい有名な伝説の刺繍家に「亜樹美さんありがとう」と書かれた特攻服を着て送り出したいと思い、資金を稼ぐために桃子を引き連れパチンコ屋に繰り出す。桃子は初めてのパチンコであったが、偶然連チャンし、易々と自分の服代とイチゴの刺繍のための資金を稼ぎ出す。イチゴは代官山に詳しい桃子を伴い伝説の刺繍家を探しに行くが、その刺繍家を見つけることはできず、イチゴは深く落ち込む。見かねた桃子は自分が刺繍を請け負うと約束。不眠不休で刺繍をし、見事な刺繍入りの特攻服が仕上がった。その出来栄えの素晴らしさにイチゴは感動を覚え、感謝を伝えた。その言葉を聞いて桃子は今までに感じたことのない不思議な感覚を覚え、これをきっかけに、二人の間に友情が芽生え始める。
ある日、桃子は、お気に入りのボンネットをネズミにかじられてしまい、その穴を誤魔化すために刺繍を入れる。そのボンネットをつけて、代官山にある行きつけのロリータ・ファッションのショップである「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」を訪れたことが桃子に幸運をもたらす。そこで社長の磯部に刺繍の腕を認められ、やがて次の新作ワンピースの試作品の刺繍をすることになった。天にも昇る気持ちで刺繍を入れるが、緊張と迷いがありなかなか仕上げられない。迷いの中、桃子はどうしてもイチゴに会いたくなりイチゴを呼び出す。イチゴは、暴走族のレディースの集会に行く予定であったが、友達として必要としてくれた桃子と会うことを優先する。集会に穴をあけたイチゴはレディース仲間集団と対立、族をやめると打ち明けたことで「ケジメ」をつけるために呼び出される。家に帰り、「ケジメ」が何であるかを知った桃子は意を決し、乗ったこともない 原チャリで暴走し、途中、八百屋のトラックに衝突するが奇跡的に無傷で済み、牛久大仏のイチゴの元へ駆けつける。そこには“ボコボコ”にされているイチゴがいた。助けたい一心の、桃子の暴走によりレディース集団たちは怖気づき、イチゴを救い出す。イチゴはBABY, THE STARS SHINE BRIGHT新作ワンピースの撮影現場で変態チックなカメラマンに気に入られモデルとしてデビューする。なお、その撮影の際に暴れて、カメラ2台を破損、撮影スタッフ5名に青あざを作ってしまう。しかし予想外にイチゴのポスターは出来栄えがよく、評判になりモデルの仕事が舞い込むようになったが、イチゴにはモデル業を本職にする気はなく、土浦市のモータースで相変わらずバイク整備のアルバイトを続けながら、一人で町中を爆走している。
映画は、嶽本野ばらの原作の内容ほぼ踏襲しているが、少し違いがある。大きな違いは、イチゴがレディース仲間と対立するきっかけである。原作では、桃子が刺繍を入れた新作ワンピースの撮影のためのモデルが使えなくなって、イチゴが代わりにモデルを務めたことにより、集会に行けなかった出来事が対立のきっかけになっている。このエピソードを省略していることで、エンディングでのイチゴのモデルデビューが唐突で不自然なものになってしまっている。映画版に付け加わったこととしては、刺繍をいれた新作ワンピースを「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」に届けに行く日に、桃子がイチゴの窮地に駆けつけなくてはならなくなり、磯部社長に電話をかけるシーンがある。クライマックスで桃子がレディースたちに凄むシーンでは、原作では(関西弁の中でも柄が悪いとされている)尼崎弁であるが、映画では当該シーンの最初のセリフを除いて標準語である。
このイチゴの救出シーンにおいて、映画では桃子が「自分は伝説のレディース、ヒミコの実の娘だ」と大ボラを吹くことで敵の戦意を喪失させているが、原作ではたまたま原チャリのカゴに入っていた父のテキ屋用のヨーヨーを(尼崎弁で凄みながら)桃子が投げつけたことで、それをガソリンの詰まった殺人的な「ヨーヨー爆弾」であると敵が勘違いし恐れをなしてイチゴを解放している。
2004年度の日本の映画賞において以下の賞を受賞した。
この年度の主な映画祭(報知映画賞、日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞、ヨコハマ映画祭、キネマ旬報ベスト・テン、毎日映画コンクール、東京スポーツ映画大賞、ブルーリボン賞、日本アカデミー賞)において、各分野の賞を受賞した数を足し合わせた時に、主演女優賞においては深田恭子の3賞(2位は、宮沢りえの2賞)、新人賞においては土屋アンナの5賞(2位は、柳楽優弥の4賞)が最大であった。
作品賞
監督賞(中島哲也)
主演女優賞(深田恭子)
助演女優賞(土屋アンナ)
新人賞(土屋アンナ)
レンタルの発売元は小学館、販売元はアミューズソフトエンタテインメント。セルの発売元は小学館、販売元は東宝。
2005年6月10日から12日にかけて一心寺シアター倶楽 美少女歌劇団の公演として、ミュージカル「下妻物語~ヤンキーちゃんとロリータちゃん~」が一心寺シアター倶楽を会場に公演された。原作は嶽本野ばら、脚本・演出は吉峯暁子、総合演出は秋山シュン太郎が担当。
この物語は、下妻と代官山、桃子の生まれ故郷としての尼崎が舞台となっている。全編を通し、かなりデフォルメ気味な桃子視点の描写がなされている。以下に、桃子視点での舞台を説明する。現実の町の様子については、各リンク先を参照。
桃子の祖母が住んでおり、桃子の父親が桃子とともに移り住んだ街。「東京から電車で2時間半もかかる田舎」であると描写されている。なお、映画公開後の2005年8月につくばエクスプレスが開業し、下妻 - 東京(秋葉原)間は守谷駅でつくばエクスプレスに乗り換える経路で1時間20分と所要時間が短縮されている。また、下妻市を走る関東鉄道常総線は非電化のため電車ではなく気動車で運行されている。しかし原作小説、映画ともに常総線の列車は「電車」と表現されている。
桃子の家は横根という所にあり、下妻駅からさらに歩いて30分かかる。この街に移ってきた桃子は、下妻にもヤンキーは沢山いることに気がつく。しかし、下妻のヤンキーは尼崎にいたような現代風のヤンキーではなく、やや時代遅れのヤンキーであった。また、下妻には尼崎のような活気のある商店街はないが、郊外に巨大なジャスコ(現・イオンモール下妻)があり、安い値段で買い物をすることができる。人々は桃子のように東京に買い物に行くことなど思いもよらず、品揃えのよいこのジャスコを誇りに思い、そこで買い物をする。そして、安いものを手に入れられたことを喜ぶ。なお、ジャスコ下妻店に特攻服は売っていない。
尼崎市は桃子の生まれ故郷であると同時に、父親の生まれ育った街である。なお、尼崎市民の気持ちを考慮して、映画版では尼崎のすぐそばの街とされたが、阪神出屋敷駅付近の映像が映る。桃子の父はこの街でヤンキーとなり、高等学校を中途退学し、ヤクザになり、チンピラとして働くうちに桃子の母親と出会って結婚。娘の桃子が生まれたが、後に離婚。この街の住民のほとんどはヤンキーか元ヤンキーと記述されている。また、商店街は活気があるがコピー商品の店が多く、どの店も価格破壊で頑張っており、消費者は安いこと以外には関心がないとされている。桃子の父もヴェルサーチのコピー商品を企画し、製作を工場に依頼し、それを販売することを生業にしていた。
桃子が着ているロリータ・ファッションの服のショップである「BABY, THE STARS SHINE BRIGHT」の本店がある街である。このブランドは実在し、映画制作にも協力している。桃子が代官山に詳しいことを知ったイチゴは、桃子を伴い代官山へ行く。代官山には特攻服に素晴らしい刺繍を刺すことで評判の伝説の刺繍家がいるとされており、イチゴはレディースの総長が引退する際に着ていく特攻服に刺繍をして欲しいと思っていたからである。2人でともに代官山に行った出来事が、この2人を結びつける契機になった。
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