ナマケモノ亜目 ノドチャミユビナマケモノ Bradypus variegatus
分類 学名 FolivoraDelsuc, Catzeflis, Stanhope, and Douzery, 2001 シノニム Phyllophaga Owen, 1842
和名 ナマケモノ亜目 英名 Sloth 科
概要
木にしがみついているナマケモノ 名前・身体 そのゆっくりとした動作から「怠け者」という呼び名がついた。英語名の Sloth も同じく、怠惰やものぐさを意味する。体長は約41-74センチメートル。四肢は長く、前肢のほうが後肢より長く発達している。長い鉤爪を持ち、これを木の枝に引っ掛けてぶら下がっている。 生態 南アメリカ 、中央アメリカ の熱帯林に生息する。生涯のほとんどを樹にぶら下がって過ごす。食事や睡眠から交尾、出産までも樹にぶら下がったままで行う。主食は葉や新芽など。また自毛に生えた苔 も食用とする。週に1回程度、樹上から降り、地上で排便、排尿を行う。 地上に降りて排泄を行うのは、ナマケモノの被毛の中に棲むナマケモノガと呼ばれるメイガ 科クリプトセス属の蛾 が排泄物を産卵場所かつ幼虫の餌として利用しやすいようにするためで、ナマケモノガはその見返りとしてナマケモノの被毛に食料となる苔が生えやすいように環境を整える相利共生 関係にある可能性が高い、との研究結果がウィスコンシン大学マディソン校 の生物学者ジョナサン・パウリ氏により発表されている。 擬態 日中は頭を前脚の間に入れ、枝に張り付くようにして丸くなって眠るため、遠目には樹の一部のように見える。これがジャガー 、ピューマ などの捕食者から身を守る擬態 となっている。また、年齢を重ねた個体の被毛には藻類が生えることもあり、これも樹皮への擬態の一部となる。 捕食者 機敏に動くことができない上、非社会性動物であることから、オウギワシ には簡単に捕食されてしまう。パナマ のバロ・コロラド島での観察では、オウギワシの獲物の内、重量にして50%以上がナマケモノであった。 泳ぎ 地上での動作は遅いが、泳ぎは上手である。これは生息地のアマゾン近辺では雨季と乾季があり、雨季には生息地が洪水にさらされることもしばしばあるため、泳ぐ技術を身につけていない個体は生存できないからである。 食事 16世紀 にヨーロッパ に初めて紹介された当初は、餌を全く摂らず、風から栄養を摂取する動物だと考えられていた。しかし実際には1日に10gほどの植物を摂取している。 外気に合わせて体温を変化させることにより代謝を抑えている。つまり、現生哺乳類 では珍しい変温動物 である。このことや前述のように行動も遅いため基礎代謝 量が非常に低く、ごく少量の食物摂取でも生命活動が可能となっている。なおよく似た生態・体重であるコアラ は恒温動物 であり、その日当たり摂食量は500g以上とナマケモノより多い。 人間との関係
非常にストレスに弱い上に変温動物である性質上、温度変化に非常に敏感で、飼育環境を高温多湿に保つ必要があるため、一般家庭で飼育することは困難。 分類
上を向いているナマケモノ 以前は分類名を食葉亜目Phyllophagaなどとすることもあったが、「Phyllophaga」や「Tardigrada」は前口動物 で使用されていたため、2001年に置換名としてFolivora(「葉食」の意で、Phyllophagaと同義)が提唱された。
現生ナマケモノはミユビナマケモノ科とフタユビナマケモノ科の2科に分類され、以下の6種がいる。和名は川田ら (2018) に、英名はGardner (2005) に従う。双方の科の生息域は重なっていることが多いが、同属の種間では同所的に分布しない。
ミユビナマケモノ科 Bradypodidae - 前後両足の指が3本であり、小さな尾をもつ。通常哺乳類の頸椎 は7個であるが、ミユビナマケモノ科の頸椎は9個ある。首を270度回転させることができるため、体を動かさずに周りの葉を食べることができる。体長50-60センチメートル。中央・南アメリカの森林 地帯に生息している。長く太い鉤爪 を持ち、セクロピア の木の葉などを食べる。 フタユビナマケモノ科 Megalonychidae - 前足の指が2本、後足の指が3本であり、尾は全くないか、わずかな痕跡があるのみである。頸椎はホフマンナマケモノで6個、フタユビナマケモノで7個である。双方を外見で判別することは困難であり、しばしば、X線撮影 で頸椎の数を調べることで判別している。ミユビナマケモノ科に比べ、気性が荒く動作もすばやい。体長60-64センチメートル。中央・南アメリカの森林地帯に生息する。鋭い鉤爪を使い木の葉 や木の実 を食べる。地上には滅多に下りない。 形態に基づく分類体系では、ナマケモノ類はミロドン下目Mylodontaとメガテリウム下目Megatheriaに大別され、現生科はメガテリウム下目に含まれるとされていた。上述するようにフタユビナマケモノ属は絶滅したメガロニクスを模式属とするMegalonychidae科に分類されていた。以下の分類は、McKenna & Bell (1997) に従う。
一方で、2019年にはミトコンドリアDNAとコラーゲン配列を利用した系統解析からフタユビナマケモノ属をメガロニクス属ではなくミロドン科の姉妹群とする説が提唱されている。以下の分類は、Presslee et al. (2019) に従う。上科・科和名は定義の変更されたMegalonychidae科を除いて遠藤・佐々木 (2001) に従った。
脚注
関連項目
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コアラ - 生態がよく似ている。 ナマケグマ - 湾曲した爪を使い木にぶら下がる姿がナマケモノを連想させる。
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