トロンボーンは、金管楽器の一種である。語源はトランペットを意味するイタリア語trombaに、「大きい」を意味する接尾語 (-one) を付けたものであり、「大きなトランペット」という意味である。
トロンボーン | ||||||||||
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別称:神の楽器 | ||||||||||
各言語での名称 | ||||||||||
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テナートロンボーン | ||||||||||
分類 | ||||||||||
音域 | ||||||||||
通常、「トロンボーン」と呼称する場合はテナートロンボーンのことを指す。アルトトロンボーンはテナートロンボーン奏者が持ち替えて演奏する。バストロンボーンは同属楽器ではあるものの、明確に違う楽器として取り扱われる。
標準的には変ロ調 (B♭) の調性を持ち、スライドと呼ばれる伸縮管(音程を微調整するためのチューニングスライドとは異なる)を操作して音階を得る。スライドの他に1個ないしは2個のバルブと迂回管を持つもの(B管アタッチメント付きアルトトロンボーン、F管アタッチメント付きテナートロンボーン(テナーバストロンボーン)、バストロンボーン)もあり、今日ではこちらの方が主流である。追加のバルブと迂回管を持つことにより、スライドを伸ばすのが譜面上困難な場合、迂回管を使ったポジション(いわゆる変えポジション)を用いたり(奏者界では、7ポジションが限界だという)、管長が足りず構造上出すことのできない低音域を拡張することが出来る。いずれも、迂回管を使う際はロータリー式レバーを操作して切り替える。また、替えポジションによる効率的なスライドワークや、トリル奏法、ハーフバルブ奏法などにも利用される。バルブを持たないものは、前後の重量の均衡を取るための「バランサー」と呼ばれるおもりを、後方のU字管付近の支柱に取り付ける場合がある。
スライドは内管と外管を重ね合わせた構造なので、内外のスライドが重なっている長さが、近いポジションでは長く、遠いポジションでは短くなる。このため1900年代初頭までの楽器には、近いポジションの時には摩擦抵抗が大きいため微調整が難しく、遠いポジションでは抵抗が小さいため微調整時にずれやすいという問題があった。また、重なりが短くなる遠いポジションの時ほど息もれが激しくなるという問題もあった。これらは後に、内管の先端を微妙に太くした「ストッキング」という部分で外管内面と接するよう改良したことによっていずれも解決され、楽器としての性能が向上した。
収納の際はベル側のU字管とスライド側のU字管とに分割できる。まれに、ホルンに見られるようにベルにネジ山を切って分割できるようにしたデタッチャブル・ベルの楽器もある。
構造上、任意の周波数の音を出すことが可能であり、ピアノ等では出すことのできない微分音も出すことができる。
左手で楽器の重量を支える。中指・薬指・小指で楽器を握る。親指は支柱かバルブのレバーに掛ける。人差し指はスライド内管の支柱上部又はマウスピースレシーバーに添える。1個のバルブがある場合、そのレバーは左手親指で操作する。2個のバルブがある場合は、2個のレバーの一方を親指で操作し、他方を中指で操作するものが一般的であるが、20世紀の楽器には両方ともに親指で操作するものもある。自由な右手でスライドを軽く持って操作する。楽器に装着したマウスピースが口に当たる位置に構えて、舌を引く動きをきっかけ(タンギング)に息を吐きながら唇を振動させる。
スライドには、最も手前の第1ポジションから、最も遠くまで右手を伸ばしたところにある第7ポジションまでがある。ポジションが1つ遠ざかると半音下がる。この仕組みと各ポジションで得られる倍音の組み合わせで音階を作ることができる。そのため、バルブと迂回管を持たない楽器では第1倍音と第2倍音のEs~Hまでの音階(アルトトロンボーンではAs~E)が得られない。迂回管を1本持つ楽器では、第8~11ポジション相当の管長が得られる。第12ポジション相当の管長を得るためには、迂回管のチューニングスライドを限界まで伸ばすか、2本目の迂回管を利用する。
ギターのフレットに当たるような特別な目印はないため、奏者は自分の感覚でポジションを定めて音程を得る。そのため初心者にとっては正しい音程での演奏は難しいが、熟練すればスライドの微調整によって正確なハーモニーを得ることが出来る。またスライドはグリッサンド奏法の演奏を容易にしている。
スラーを演奏する際は、音の区分がはっきりしないスライドの性質を考慮して、ソフトタンギングをするか、リップスラーやバルブを利用して替えポジションを使用して行う。
広く使われる特殊奏法としては、隣り合った倍音同士を高速に移動するリップトリル、巻き舌で演奏するフラッタータンギング、演奏しながら声帯を振動させる重音などが挙げられる。
他の金管楽器と同様に、音色を変える目的で種々の弱音器(ミュート)が使われる。
非常に古い歴史を持つ楽器であり、起源はトランペットと共通である。ドイツのハンス・ノイシェルが現在の形に完成させ、それから約500年以上もの間、基本的な構造が変わっていない、古い種類の楽器である。地域によっては、古くはサックバットと呼ばれた。15世紀頃にスライド・トランペットの一種から発生したと考えられており、基本的な構造は昔の姿をそのまま留めている。ただし、細部のデザインは異なり、奏法も現代のトロンボーン奏法とはかなり異なる。
トロンボーンの音域は成人男性の声域に近い。またスライドによって音程をスムーズに調整できる事から得られるハーモニーの美しさなどから「神の楽器」といわれ、教会音楽に重用された。古くからカソリックのミサにおける聖歌の合唱等の伴奏楽器に使われ、オラトリオ(ハイドンの天地創造など)やレクイエム等にも多用されているが、世俗的な音楽においては使用を自重する風潮があり、さらにプロテスタント圏のドイツ地域では使用されない傾向があった(プロテスタント地域で活動したバッハやテレマンの宗教曲ではトロンボーンはほとんど使われていない)。
交響曲で最初にトロンボーンを使ったのはベートーヴェンで、交響曲第5番の第4楽章で用いた。これは当時「世俗」的と考えられていた交響曲に、教会で使われていた「神聖」な楽器を使ったという点で画期的なことであった。大編成のオーケストラに定席を得たのはロマン派の時代である。
19世紀、おそらく1820年代にはバルブ(ロータリー)の追加が行われた。これ以降各地のオーケストラでは、スライドを廃してトランペットのように3本のピストンによる操作をするバルブトロンボーンが盛んに使われたが、19世紀中葉から第一次世界大戦前後にかけて徐々にスライド式の楽器が復権していった。ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団では1880年頃までバルブ式だったと言われている。
バルブ(ロータリー)の改良はさらに進み、円錐形のセイヤー・バルブ、円柱を横倒しにした形のハグマン・ロータリー、ヤマハの細長いVバルブをはじめ、トラディショナルロータリーを各社が改良したものなど、様々な機構が開発されている。
楽器の調性は音域による分類に後述されるとおりB♭やE♭、Fなど様々だが、楽譜はピアノなどと同じく実音で書かれる。低音部譜表が一般的だが、高音のパートではテナー譜表・アルト譜表も使われる。オーケストラでは曲中で譜表が変わることは少なく、1番がアルトまたはテナー譜表、2番がテナー譜表、3番(バス)が低音部譜表というのが一般的である。吹奏楽においては基本的に低音部譜表に記され、高音部分に稀にテナー譜表が用いられる。英国式ブラスバンドではバストロンボーンのパート以外は移調楽器として扱われ、実音に対し長9度高いト音譜表で記譜される。ヨーロッパの吹奏楽譜においても移調楽器として扱われ、実音に対し長9度高いト音譜表、あるいは長2度高いヘ音譜表で記譜されていることも少なくない。
トロンボーンは、その音域・機能などによって以下の様に分けることができる。また、テナートロンボーンは管の内径(ボアサイズ)によって太管、中細管、細管と細かく呼び分けることもある。ドイツ式トロンボーンではWeiteという単位で区分する。スライドのマウスパイプ側とジョイント側で異なるボアサイズを組み合わせたものはデュアルボアと通称される。
スライドではなく、3個以上のバルブを備えたものである。ピストン式が多いが、ロータリー式のものも存在する。スライド式の楽器と同様に色々な音域のものがある。19世紀前半の金管楽器のバルブ機構の発明に合わせて誕生したため、19世紀から20世紀初頭にかけてはイタリアやフランス、中欧地域を中心に広く(一時はスライド式以上に)用いられた。ロッシーニの楽曲等にその名残を見出すことが出来る。
その後、スライド式が楽器や演奏技術の向上によって復権を果たすと廃れていったが、一方ではジャズなどポピュラー音楽の世界で使われるようになり(ファン・ティゾール、ボブ・ブルックマイヤーなどが著名な奏者としてあげられ)、クラシックの分野でも20世紀終盤以降はピリオド奏法の一環として、また現代曲で再び使用が試みられるようになった。
ドイツ管とも呼ばれる、やや大きめのベルを持つ楽器で、均一化が進んだ他の地域のトロンボーンとは一線を画している。やや細目のボアと響きを抑える為のクランツと呼ばれる金属片が縁についた比較的大きなベルを持ち、弱音時の円錐管に近い柔らかい響きと、強音時の鋭く割れた響きが特徴的である。現代ではほとんど使われないが、稀にクラシック音楽でドイツ系の楽曲を演奏する際に使われることがある。
日本人奏者については
ミュージックトレード社刊・管楽器価格一覧表の最新版を基に記載
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