カトリック教会のカテキズム(カトリックきょうかいのカテキズム、イタリア語: Catechismo della Chiesa Cattolica、英: Catechism of the Catholic Church、略称:CCC)は、教皇ヨハネ・パウロ2世によって公布された、ローマ・カトリック教会とローマに連なる21の東方典礼カトリック教会の教理(教え)の、公式な説明である。1992年にフランス語版が発行され (その分量は優に900ページを超えていた)、 英語を含む他の多くの言語に訳されている。最初のフランス語版が幾つかの点で修正されて、1997年にラテン語規範版が発行され 、これが日本語に翻訳されて2002年7月31日にカトリック中央協議会から出版されている。
その後2005年には、『カトリック教会のカテキズム』の「忠実かつ確実な要約」として『カトリック教会のカテキズム 要約(コンペンディウム)』が教皇ベネディクト16世によって公布され、日本語版も2010年に出版されている。
カテキズム(要理教育)は、教父たちの時代から書かれてきた「ときに問答形式で示される教義の要約」と定義されてきた。初めは口伝だったものが、次第に書物(「要理書」)として書かれるようになり、16世紀の宗教改革以降に全世界のカトリック教会に広まっていった。第2バチカン公会議以前まで日本のカトリック教会で使われていた『公教要理』も、これらの教理問答書をもとにしたものであった。
その後、第2バチカン公会議で要理教育についての考え方が新たになり、それまで子供と洗礼志願者だけを対象としていたものが、大人の信者も要理の勉強をしなければならないと考えられるようになった。その動きの中で1985年に開催された臨時シノドス(司教会議)において、「信仰と道徳に関するカトリックのすべての教えについてのカテキズム(概説書)」が要望され、これに応えて教皇ヨハネ・パウロ2世は翌1986年に教皇庁教理省長官であるヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿(のちの教皇ベネディクト16世)を責任者とする12名の枢機卿と司教を任命し、カテキズムの草案作成を委託した。こうして作られた草案は、全世界の司教協議会などから意見を求めて修正が加えられ、7年後の1992年にフランス語版の『カトリック教会のカテキズム』(略称:"CCC")が発行された。教皇は、これを「信仰の生きた源泉によって要理教育(カテキズム)を刷新するための参考書」と呼んだ。
CCCは四つの主要な要素で構成されている:
これらは「四つの柱」とも呼ばれ、密接に関連し合っている。その内容は詳細に脚注がつけられており、関連する教えの参照先や聖書、聖伝、教父の著作、聖人伝、公会議および近年の教皇たちによる教令などが示されている。
CCCの聖書についての章(101番-141番)は、教父たちの伝統である「霊的解釈」を「四つの意味」の学問的教義の発達につれて復活させた。この霊的解釈への回帰は、第2バチカン公会議の「神聖な教義に関する教義的憲章」による「聖書は書いた者と同じ聖霊の光の下で読まれ解釈されねばならない」という教えを下敷きにしたものである。そのために必要な霊的解釈は、聖書の四つの意味(逐語的意味と三つの霊的意味(寓意的、倫理的、神秘的)を含む)から追求されるべきとしている。
逐語的意味(116番) は言葉の意味そのものに関係するものであり、言葉の綾を含むものである。霊的な意味(117番)は、事柄(人々、場所、物象あるいは出来事)の重要性に関係し、言葉によって示されるものである。三つの霊的意味のうち、寓意的意味は最も基礎的であり、人物、出来事、 初期の(神との)契りから後期の(神との)契りの成立、なかんずく「新約」に関係する。この寓意的意味に基づいて、倫理的意味は、行動に付いて指示し、神秘的意味は人の最終的な運命を示している。CCCの聖書に関するこの教えは、近年の、四つの霊的意味を適用して、救済の歴史を、聖書的契りを通じて構成するという「契りに関する神学」の追求を大いに勇気付けた。
『カトリック教会のカテキズム 要約(コンペンディウム)』(イタリア語: Compendio del Catechismo della Chiesa Cattolica)は、『カトリック教会のカテキズム』の「忠実かつ確実な要約」として、2005年6月28日に公布された。公布に先立ち、同年3月20日に編纂特別委員会委員長のヨゼフ・ラッツィンガー枢機卿(のちの教皇ベネディクト16世)が要約の序文を発表している。(なお、当初はカトリック中央協議会では「要約」ではなく「綱要」と訳していた)
『要約(コンペンディウム)』は、古代からの伝統である問答形式の要理教育書を反映して、598のQ&Aにより構成された問答形式を取っており、「教会の信仰の本質的かつ根本的な要素」を「簡潔な形で」提示している。また、節目ごとにカラーの聖画図版とその解説が挿入されており、それらも教理理解のために主要な役割を果している。
『要約(コンペンディウム)』の日本語版は、2010年(平成22年)2月1日に、カトリック中央協議会から発行された。但し第3刷(2010年3月15日)より、以下の訂正が施された。
教皇ヨハネ・パウロ2世は、以下の事を厳かに宣言した。
(CCCは)信仰の教えの標準であり、従って、教会の一致のための有効かつ正統な手段である。 — ヨハネ・パウロ2世
CCCが惹起した教会の教えへの興味が、カトリック教会の輪の外にさえ及ぶことは、前教皇ベネディクト16世が、教皇になる前に記されている。
要理教育(カテキズム)は、人間として何をなすべきかという問題、私達の人生を如何に生きるべきか、その事によって私達と私達の世界が正されるように、そうした今日の、基本的に全ての世代にとっての基礎的な問題を明確に示しています。
イデオロギーの没落の後、人間の問題と倫理の問題は、かつてない形で今日私達の前に姿を現しています。私達は何を成すべきか。どのように人と生活は正されるのか。何が私達とこの世界に、生きるに値する将来を与え得るのか。カテキズムがこれらの問いを扱う以上、この本が純粋な教会教義の輪を超えて、多くの人達の興味をひく筈です。
私達が人間としてしなければならないことに関する問題が、私達と世界が正しくあるようにすることができるように、どう生活を送るべきであるか、という全ての時代において基本であるこの問題が、私達の日常の主要問題であることが明確に示されているのです。 — ベネディクト16世
現実に、現代のカトリック教会においては、『カトリック教会のカテキズム』(CCC)の基本的な目的を「教会が自ら日々の生活の中で宣言し、祝い、生き、祈っていることを一人ひとりが知ることを可能にする、カトリックの教えの全般的かつ包括的な説明である」とし、CCCとその『要約』が要理教育の規範として用いられている。CCCを批判して第2バチカン公会議以前に戻ろうとする保守的動きについては、「歴史において新しい段階に入っている教会の歩みを逆行させるのは、原則的には意味がない」と否定している。
『カトリック教会のカテキズム』は、9ヶ国語の版が下記のサイトで参照可能である。『要約(コンペンディウム)』については、14ヶ国語が以下のサイトで参照可能である。
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