T-50は、韓国の韓国航空宇宙産業(KAI)がロッキード・マーティンから技術的支援を受けて開発・製造した練習機。愛称は「ゴールデンイーグル(골든이글)」(イヌワシ)。
基本となる練習機型の他、高度なアビオニクスを備え軽攻撃機としての運用が可能なLIFT機型、さらに兵装面を強化した軽戦闘攻撃機型も存在する。
アメリカ合衆国のロッキード・マーティンからKF-16のオフセット取引として技術支援を受け、韓国の航空機メーカー、韓国航空宇宙産業(KAI)が製造した。
韓国にとってKT-1に次ぐ国産航空機として、当初はKTX-2の名称で1992年から開発が開始された。財政面の健全性やリスクシェアリングパートナーの不足により凍結していた時期もあったが、韓国政府から承認が下り、韓国政府70%、サムスン/KAI 17%、ロッキード・マーティン13%の共同出資で開発することとなる。F-CK-1(経国)の開発後に退職した漢翔航空工業出身の多くの職員が支援した。
2000年に韓国空軍創設50周年ということでKTX-2からT-50に改名。T-50は4機の試作機が製作されたが、うち2機は当初A-50と呼ばれていた軽攻撃およびLIFT機(兵器システムの訓練が可能な高等練習機)を目的とした型であり、試作機4号機(LIFT型)の機体にはA-50の表記が見られる。後にA-50は目的ごとにTA-50とFA-50の2種類の派生型に分けられた。試作機1号機の初飛行は2002年8月20日である。
ロッキード・マーティンとの技術提携の影響を受け、胴体末尾にエンジンノズルを有するブレンデッドウィングボディの機体形状など、F-16に似ている部分が各所に見られる。垂直尾翼と水平尾翼・エアブレーキがノズルにかかるように配置されている点も同様である。しかし、F-16が胴体下部に特徴的なエアインテークを設けている(そして首脚をインテーク部コックピット後方に持つ)のに対し、機体規模の小さい本機は控えめに胴体の左右に振り分け(そして首脚をコックピット前席下部に持つ)られている。これは本機のF404-GE-402 ターボファンエンジンの同系統製品を単発で搭載した超音速機であるグリペンやテジャスと同様である。練習機であるため胴体前部は縦列複座配置のコックピットに容積をとられており、搭載可能なレーダーも小型軽量のものに限られる。
GEとサムスン・テックウィンがエンジンの共同生産契約を結び、GEがエンジンキットをサムスン・テックウィンに提供し、サムスン・テックウィンが指定部品の生産と最終的なエンジンの組立・試験を行っている。
米国側の総作業量は、生産中に削減されることになっているが当初は55%であった。
調達価格は2000年時点で1機あたり1,800万から2,000万ドル、2020年2月時点で2,000万から2,500万ドル。単発とはいえ超音速飛行を実現するためにF/A-18 ホーネット向けのアフターバーナー付き高出力エンジンを搭載しているため、練習機としては極めて高価格である。
2003年12月19日に、韓国空軍より25機の発注を受け、量産が開始された。韓国空軍向けのT-50は練習用途の50機が2010年5月まで生産され、ほかに10機が韓国空軍の曲技飛行隊・ブラックイーグルス用に生産された。
韓国産業研究院資料の「T-50開発を通じて確保された資料及び仕様についての許諾内容」によれば、開発に伴うプログラムデータの権利関係については以下の通り。
米空軍の高等パイロット訓練(APT)に使用するT-38タロン後継機案として2016年2月に次世代練習機計画(T-X program)に提案されたT-50の派生型である。
原型機のT-50と比較して、ドーサルスパインによる追加の電子機材の搭載や空中給油用のプローブの追加、F-35へのよりシームレスな転換のための一体型ディスプレイの採用などの改良が行われたF-22やF-35と言った第5世代戦闘機パイロット養成により特化したモデルである。
試作機が開発され、100回の試験飛行を行って開発を進めていたものの、2018年9月27日にBoeing/SAAB共同開発のT-7A レッドホークが選定された事により落選した。
KAIのウェブサイトでは、ブラックイーグルス用の10機のT-50に対し、T-50Bの形式名が与えられている。同機はスモークオイルタンクやカメラなどのアクロバット用の装備を持つ。
LIFT機仕様はTA-50と呼ばれ、当初は米国製のAN/APG-67 レーダーの搭載も検討されたが、最終的にはイスラエル製のEL/M-2032 レーダーを搭載している。
同機はM197機関砲を胴体内に205発、AIM-9 サイドワインダー空対空ミサイル、AGM-65 マーベリック空対地ミサイル、各種爆弾、ロケット弾ポッドなどを運用可能であり、まず22機が生産された。
2020年6月30日、韓国空軍向けにTA-50 Block2の量産契約20機の締結を発表。2024年に納入予定で、TA-50と支援システム等を含め6,883億ウォンで契約。TA-50 Block2は初期製造タイプの改良型となる。
軽攻撃仕様のFA-50は、軽戦闘爆撃機としてEL/M-2032 レーダーやより強化された兵装等を搭載している。EL/M-2032 レーダーにはイスラエルのエルタ・システムズの支援を受け、LIG Nex1による独自改良が加えられた。
計画では4機のFA-50試作機を2012年までに製作し、2011年に初飛行した。同機は韓国空軍のA-37、F-5E/Fを代替することが期待されている。2013年-2016年までに60機が生産された。
2019年10月1日現在、2014年に戦力化してから5年間で7回機銃の故障が発生。射撃訓練を3回禁止にしており、5年間のうち331日は機銃なしで出動していたことになる。
FA-50に対し、スナイパーポッドを統合、レーザー誘導兵器を運用可能とするよう改良したモデル。 AN/AAQ-33の適合確認を終え、2020年末までに完全認証を完了予定
2021年 ソウル国際航空宇宙・防衛産業展示会(ADEX 2021)で発表されたFA-50のアップグレードモデルであり、容量300ガロンのCFT、マルチモードの新型火器管制レーダー、大型コックピット用ディスプレイ、電子戦システム、目標指示に対応したヘッドマウント・ディスプレイ、新型の戦術データリンク、三重の冗長性をもたせたフライトコントロールシステム、スナイパーポッドを装備するとともに、中距離空対地ミサイル、可視範囲外空対空ミサイル(BVRAAM)を統合し、2022年よりアップグレードを開始する予定であったが、2022年9月23日、米国レイセオン社製Phantom Strike AESAレーダー及びAIM-120C7 AMRAAMの統合を米国政府が承認、2025年にBlock20が完成予定とし、2025年に供給開始のFA-50PLの原型機としてポーランド空軍に採用された。
統合される中距離空対地ミサイルにはコングスベルグ製JSM対地対艦ミサイル、ロケットサン(トルコ)製SOM、タウルス製KEPD 350K-2及びKEPD350をベースに韓国ADD社が共同開発している天竜ALCMが、可視範囲外空対空ミサイル(BVRAAM)についてはAMRAAMが予定されている。
レイセオン・インテリジェンス&スペース子会社、Global Spectrum Dominanceの社長であるエリック・ディトマーズはポーランドメディアの取材に対し、FA-50 Block20が搭載するPhantom Strike AESAレーダーの性能は、F-16Vが搭載するAPG-83 AESAレーダー(ノースロップ・グラマン製)に匹敵すると発表した。APG-83がGaAs技術である一方、Phantom StrikeがGaN技術で開発されているため、重量とコストを半分以下とし、より小型で同等の性能を達成したとの事であり、またPhantomStrikeの設計はFA-50への搭載を前提に実施されたとも明かされた。
米国製Phantom Strike AESAレーダーとは別に、FA-50用の国産AESAレーダーをLIGネクスワンで開発しており、試作レーダーが発表されている。KF-21用に開発されたAESAレーダー技術のスピンオフとなり、韓国初の窒化ガリウム(GaN)技術で構成された空冷式AESAレーダーとなる
FA-50をベースとした単座式戦闘機であり、2028年までに開発完了予定となる。後席部分に燃料タンクを追加する事で戦闘行動半径を25%増大するとともに、コクピットの性能改善、航空電子飛行制御機能の改善、空対空・空対地ミサイルの性能改良、寿命延長を施す。F-50米国向けTF-50をロッキード・マーティンと共同で推進し、米空軍ATT(高度戦術訓練機)、米海軍TSA(戦術代替戦闘機)、UJTS(ゴスホーク後継艦載訓練機)の受注を目指すとしている。
計画が停滞している「韓国次世代戦闘機KFX」に変わる新コンセプトとして、KAIが提案したT-50をベースとする戦闘機。小型の単発機で、限定的なステルスを備え、F-16とF-35の中間的な性能を目指していた。
ベースとなるT-50が小型であることから、既存のKFXプランに対してステルス面で有利で、KF-16のほか、旧式化・老朽化が進むF-4D/EやF-5E/Fを置き換えて、北朝鮮の主力とするMiGシリーズを相手にするには十分な性能を発揮できるとされていた。また、T-50の開発経験を活かすことができ、一部部品を共有することでコスト削減にも繋がることから、メーカー側は有力視していた。
しかし、小型ゆえに航続距離や武装、発展性への懸念があり、日本や中国のような大国を相手にするには、不適当ではないかという防衛事業庁や国民からの批判があった。また、KFX共同開発に参加しているインドネシアから、KFXが何の成果も出していないのに別機体の開発へと切り替えることに対して批判が出たこともあり、最終的には元のKFXにおいて双発機プランを採用することが決定して、T-50の派生型としてのKFX-E案は立ち消えとなった。
2012年11月15日にブラックイーグルス所属のT-50B 1機が江原道原州市北東約9kmの山間部に墜落し、パイロットの少佐が死亡した。11月27日には事故機の整備班のK准尉が首を吊って自殺し、これを受けて同整備班のK中士(三曹相当)が事故原因を告白した。同月30日の発表によると「K中士が、操縦系統遮断線を点検した後に必ず抜かなければならない遮断線を抜かず、操縦系統が誤作動して事故に繋がった」とのこと。
2013年8月28日に光州の空軍基地で離陸中のT-50が墜落し、空軍第1戦闘飛行団所属の少領(少佐)と大尉の2人が死亡した。
2015年12月20日、インドネシア空軍のジョグジャカルタ空軍飛行学校創立70周年を祝う航空ショーで、インドネシア空軍の曲技飛行隊が運用するT-50練習機が墜落し、パイロット2人が死亡した。
2018年2月6日、シンガポール・チャンギ国際空港で行われていたシンガポール・エアショー2018にて、韓国空軍ブラックイーグルスのT-50一機が離陸中に出火。滑走路からそれて横転し、操縦者1人が負傷。
2022年7月19日、インドネシア空軍のT-50Iが夜間の迎撃訓練中に墜落し、パイロット1人が死亡した。
2017年7月12日、フィリピン空軍がミンダナオ島マラウィでの作戦中、FA-50が投下した爆弾が目標を大きく外れて治安部隊の居た建物を直撃。兵士2名が死亡、11名が負傷した。フィリピン空軍はこの誤爆の原因が判明するまでFA-50の飛行中止を命じた。2017年8月3日、フィリピン軍は、FA-50の再投入を決定した。フィリピン軍のエドガルド・アレバロ報道官は、調査の結果、機体、パイロット、武器システムに何も問題がなかったと発表した。また、同様の事件を防ぐために、技術、戦術、空爆の実行に関する手続きを新たに調整したと述べた。
練習機としては高額であるが、KAIは2030年までにこのクラスの練習機に3,300機の潜在的需要があるとしている。そして国内向け、各派生型も含め途上国を中心として最大600機の生産を見込めると分析している。また、T-50の海外輸出が見込める一つの要因としては、T-50とシステムの互換性が高いF-16を採用している国が多くあることが挙げられる。国際マーケッティング活動は、KAIとロッキード・マーティンが協同して行っている。
2014年、T-50を使用するブラックイーグルスは、同年11月に中国で開催される航空ショーに参加する予定であったが、直前になりアメリカ側から「使用するT-50の技術が中国に流出する恐れがある」として参加中止の申し入れを受けている。このことから、アメリカとの間に友好関係にない、将来的に軍事的に対立する可能性のある国には、輸出はおろか移動すら困難になる可能性を示している。
エンジンや電子装備など、中心技術は殆どがアメリカ製であるため、輸出にはアメリカの法律の影響を受ける。輸出するためには、アメリカの承認が必要である。
映像外部リンク | |
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on Ministry of National Defence Official YouTube Channel(ポーランド語) | |
『From "Lastochka" to "Fighting Eagle"』(邦訳:”燕"から”荒鷲"へ) - YouTube | |
『FA-50 aircraft will strengthen the capabilities of the Air Force』 - YouTube | |
“Solo in FA-50” on Polska Zbrojna Official YouTube Channel - YouTube | |
“The twelve newest planes” on Polska Zbrojna Official YouTube Channel - YouTube |
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