通信機能抑止装置(つうしんきのうよくしそうち)は、無線通信を通信妨害するための無線設備である。通信抑止装置、電波抑止装置などとも呼ばれる。特に携帯電話の通信をジャミングするための無線設備を指してこう呼ぶことが、ほとんどである。電波法令では特別業務の局の一種である携帯無線通信等を抑止する無線局という。
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劇場、コンサートホール、演芸場などでの興行において開演中に携帯電話の着信音等が鳴り響くと、観客が演劇や演奏などを鑑賞する邪魔になり不快感をあたえたり、公演進行の妨げになることもあるので、場内では携帯電話の電源を切ることが呼びかけられている。しかし、意図してこれを守らないことや、悪意がなくても電源を切り忘れることもあり、場内の携帯電話すべてについて着信音が鳴らないようにすることは困難である。
携帯電話が使用する周波数の妨害電波を発射できれば、携帯電話の通信を妨害するので、場内にある全ての携帯電話の着信音が鳴ることを、確実に防止することができる(ただし、通信を要しない携帯電話のアラームについては防止出来ない)。一方で映画館などのように視覚障害者向けの音声ガイドサービスやスマートフォンと連動した企画に支障が出るとして、導入していない興行場も存在する。
その他、患者の安静のため静粛を必要とする病院の集中治療室においても同様であり、データセンターなど機密情報・個人情報の厳重な保護を必要とする場合、外部との通信を遮断し、情報漏洩を防止することができる。
しばしば、「通信機能抑止装置は一定の範囲の場所で携帯電話を圏外にする」とメーカーや報道などで表現されることが多いが、基地局からの電波を遮蔽して圏外を作り出すのではなく、抑止装置が「位置情報や制御情報を含まない『偽の携帯電話基地局電波』を発射する」ことで通話不能にしているのである。このような場合でも携帯電話は圏外を表示する。
1998年(平成10年)4月に郵政省(現・総務省)は、携帯電話及びPHSの急速な普及に伴い劇場等の公衆が集まる場所での携帯電話等の利用が頻繁に行われる場所での着信音や話し声に不快感を訴える人が多くなり、秩序ある電波利用の促進を図るために「発着信による迷惑防止のための電波利用の在り方に関する研究会」を開催し公共施設における携帯電話等の通信抑止について検討した。6月に研究会は、通信抑止に対する社会的ニーズと携帯電話等の利用者の利便性とを比較検討し、使用条件と使用場所を限定した上で、携帯電話等の通信抑止機能を有する無線局の開設を認めることを報告した。
報告書の中で、電波法令上の存在及び無線局の免許と検査については、次のように述べている。
電波法の目的は電波の公平かつ能率的な利用を確保することにより公共の福祉を増進することであり、電波を利用して通信を阻害するという物理的現象のみをとらえるのではなく、そのことにより公共の福祉を増進することとなるのか否かにより法目的への適合性を判断する必要があるとしている。利用にあたっては、特定の空間における静謐の確保等公共の福祉の維持のため『携帯電話等通話機能抑止装置の利用条件』に従って運用する限り電波法の目的に反するものではないと考える。
(1) 無線局免許
(2) 検査の要否
12月に郵政省は、報告をふまえ次のような条件で実験局の免許申請を受付開始した 。
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2について開設の条件
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上記の設置場所2は興行場を想定しており、開設の条件にあるのは次のことである。
ということである。
「実験試験用」として空中線電力(出力)最大10mWの実験局(現・実験試験局)として免許されることとなったが、簡易な免許手続の対象ではない為、予備免許を取得し落成検査に合格しないと付与されない。
免許の有効期間は免許の日から5年。 通信事項は「実験、試験又は調査に関する事項(アルゴスシステムデータ伝送に関する事項、教育に関する事項を除く。)」、通信事項コードはEXP、通信の相手方は「免許人所属の受信設備」である。周波数帯と出力により第三級陸上特殊無線技士以上の無線従事者による管理を要する。定期検査は、電波法施行規則第41条の2の6第20号により行われない。
電波法別表第6第8項の「実験等無線局及びアマチュア無線局」が適用される。変遷は次の通り。
年月 | 料額 |
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1998年(平成10年)12月 | 500円 |
2006年(平成18年)4月 | |
2008年(平成20年)10月 | 300円 |
2011年(平成23年)10月 | |
2014年(平成26年)10月 | |
2017年(平成29年)10月 | |
2019年(令和元年)10月 | |
2022年(令和4年)10月 | |
注 料額は減免措置を考慮していない。 |
2007年(平成19年)初頭には、帝国劇場、国立劇場、東京宝塚劇場、NHKホールなどで導入されていた。
興行場での有用性が認められ、次の場所にも利用が広がった。
2018年(平成30年)に電波有効利用成長戦略懇談会の報告書で「実験試験局としての運用実績(社会的必要性の認知向上や技術的知見の蓄積)を踏まえ実用局化を進める」との考え方が示された。
これを受け2020年(令和2年)6月に総務省令・告示が改正 され、特別業務の局として免許されることになった。
「携帯無線通信等を抑止する無線局」の文言は、電波法施行規則第8条第2項第14号、無線局免許手続規則第24条第2項第3号、無線局運用規則第140条、無線設備規則第54条の4に「無線局(基幹放送局を除く。)の開設の根本的基準第7条の3に規定する無線局」とある。 この基準第7条の3では、「特別業務の局であつて、既設の無線局の通信を抑止する業務に供するもの」と規定し、既設の無線局とは同条第2号で次の三種としている。
同条第3号では、同一周波数帯を使用する無線局の運用者から同意を得ていることとされる。
引用の促音の表記は原文ママ
また、総務省訓令電波法関係審査基準では、「携帯無線通信等抑止局」を「無線局根本基準第7条の3に規定する無線局」と意義付けている。
無線設備規則第54条の4に、
と規定している。
携帯電話、PHSと移動無線アクセス(BWA)の通信が抑止の対象であり、「同一周波数帯を使用する無線局の運用者」すなわち電気通信事業者の同意を要する。
電波法関係審査基準では「携帯無線通信等の基地局又は陸上移動中継局から発射する電波を抑止する範囲」を抑止エリアと規定し、「抑止する範囲が妥当であると考えられる範囲内であり、根拠を示した資料が添付されていること」と規定している。
通信事項は「携帯無線通信等の抑止に関する事項」、通信事項コードはJMR、通信の相手方は「本無線局の発射する電波が受信可能な無線設備」である。
電波利用料は電波法別表第6第2項の「移動しない無線局」が適用されるが、料額は周波数と出力により異なる。
年月 | 周波数 | 出力 | 料額 |
---|---|---|---|
2020年(令和2年)6月 | 470MHz超 3.6GHz以下 | 10mW以下 | 2,600円 |
10mW超 | 10,900円 | ||
3.6GHz超 6GHz以下 | 10mW以下 | 2,600円 | |
10mW超 | 5,900円 | ||
2022年(令和4年)10月 | 470MHz超 3.6GHz以下 | 10mW以下 | 3,100円 |
10mW超 | 22,800円 | ||
3.6GHz超 6GHz以下 | 10mW以下 | 3,100円 | |
10mW超 | 6,400円 | ||
注 料額は減免措置を考慮していない。 |
経過措置として、免許の有効期限が「令和3年3月31日」までの既設局は実験試験局として再免許申請可能とされた。
無線局運用規則第140条の2に、
と規定している。
操作は従前の実験試験局と同様。 但し、無線従事者を要しない「簡易な操作」を規定する電波法施行規則第33条第8号に基づく告示により「電源を切断する操作」のみ無線従事者は不要となった。
落成検査に加え、電波法施行規則第41条の2の6第26号により定期検査も要求される。 周期は同規則別表第5号第32号により5年。
総務省は「設置場所がいたずらに広がらないよう」と開設に要件をつけている。
通信抑止を必要とする施設の所有者又は管理者(これらの者から委託された者を含む。)で、運用にある事項に責任を持つことができる者に限られる。
技術基準により次の通りとされる。
総務省
全国公立文化施設協会
メーカー
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