『街の灯』(まちのひ、City Lights)は、1931年のアメリカ合衆国の映画。チャールズ・チャップリンが監督・脚本・製作・主演したコメディ映画。サイレント映画だが音楽付きのサウンド版として公開された。
街の灯 | |
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City Lights | |
監督 | チャールズ・チャップリン |
脚本 | チャールズ・チャップリン |
製作 | チャールズ・チャップリン |
出演者 | チャールズ・チャップリン ヴァージニア・チェリル |
音楽 | アルフレッド・ニューマン チャールズ・チャップリン |
撮影 | ローランド・トザロー ゴードン・ポロック |
編集 | チャールズ・チャップリン |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 | 1931年1月30日 1934年1月13日 |
上映時間 | 87分 |
製作国 | アメリカ合衆国 |
言語 | 英語 |
製作費 | 150万ドル |
配給収入 | $4,250,000(世界配給収入) 3億2000万円(1973年リバイバル) |
前作『サーカス』に引き続きユナイテッド・アーティスツで製作・配給した作品で、製作に3年余りの時間を要した。冒頭には「コメディ・ロマンス・イン・パントマイム」というタイトルを掲げている。本作はトーキー映画反対論者であったチャールズ・チャップリンが、基本的にサイレントだが伴奏音楽と音響が入ったサウンド版として製作した初めての作品である。ある浮浪者が盲目の花売り娘の目を治すためにあれこれ奮闘する物語で、ユーモアとペーソスが織り交ぜられたコメディ映画となっている。現在もチャップリンの代表作として高く評価されている。1991年にアメリカ国立フィルム登録簿に登録された。
主人公はとある浮浪者の男。
ある日、男は街角で盲目の花売り娘から花を買う。夜、男は泥酔して自殺しようとしていた富豪を助ける。富豪は男を命の恩人として家に呼び酒を酌み交わす。二人は街へ繰り出し朝まで店で飲み明かす。朝になって富豪の家に戻ると、その家の近くの街角で盲目の娘が花を売っている。男は富豪からもらった金で娘の花をすべて買った上、富豪の高級車に娘を乗せて家まで送り、手を握って別れる。娘は男を親切な金持ちと思い込んで慕うようになる。
一方、酔いの醒めた富豪は昨夜のことをすっかり忘れていて男を追い出してしまう。その夜、また酒に酔った富豪と街で偶然再会すると彼は男を覚えていて歓待するが、その翌日はまた男のことを忘れていて追い出す。
娘は体の弱い老婆と共に狭い部屋で暮らしているが、彼女が家賃を滞納して立ち退きを迫られていることを知った男は、その金を工面しようとしてボクシングの試合に出場するがあえなく敗れてしまう。
男が途方に暮れていると、街で偶然酒に酔った富豪とまた再会する。酔ったときだけ男を覚えている富豪は喜んで男を自宅に招いた上、娘の事情を聴くと気前よく1,000ドルもの大金を手渡してくれる。しかし室内には2人組の強盗たちも居合わせており、富豪は強盗たちに頭を強打されて気を失う。男は大慌てで警察を呼ぶが、警官が到着した時には強盗たちは逃げてしまい、男が犯人と勘違いされてしまう。意識を取り戻した富豪も男のことをすっかり忘れていて弁護してくれない。なんとか富豪の家から逃げ出した男は娘の家に行き、1,000ドルを手渡して立ち去るが、その直後、街で刑事に見つかって逮捕されてしまう。
時は流れ、娘は手術により視力を取り戻し、花屋の店を開いて幸せに暮らしていた。花を買いに来るお金持ちの男性を見ては、あの人ではないかと考えてしまう日々を送っていた。
一方、刑務所から出てますますみすぼらしい姿になった男はあてもなく街を歩いていた。偶然その花屋の前を通りかかり、ショーウィンドー越しに娘の姿を見かけて立ちすくんでしまう。みすぼらしい恰好の男を見て最初は笑っていた娘だが、自分をじっと見つめる男に対して哀れみの気持ちから男を呼び止め、一輪の花と小銭を手渡そうとする。しかし、小銭を握らせるために男の手を取ったその感触から、娘はこの浮浪者こそが自分の恩人であることに気づき、男も恥ずかしそうに笑みを浮かべるのだった。
その他、レストランのシーンでは、ブレイク前のジーン・ハーロウも出演している。
1928年5月に準備が行われ、同年12月に撮影が開始された。しかし、1929年6月に水に飛び込もうとする富豪役を演じていたヘンリー・クライブが水に飛び込むことを躊躇したため、チャップリンは彼を解雇し、代わりにハリー・マイヤーズを立てて登場シーンの撮り直しが行われた。さらに同年11月、盲目の花売り娘を演じていたヴァージニア・チェリルが「美容院に行くから」と言って撮影を早退したため、チャップリンは激怒し彼女を解雇した。代わりに『黄金狂時代』でヒロインを演じたジョージア・ヘイルが盲目の花売り娘を演じることになったが、側近の忠告で10日後にヴァージニアを復帰させることになった(この件の顛末についてはヴァージニア・チェリル#映画界が詳しい)。
完璧主義者のチャップリンは、ヴァージニア演じる花売り娘との出会いのシーン(正味3分ほど)に342回のNGを出し、1年以上かけて撮り直しされた(撮影日数534日のうち、このシーンの撮影だけで368日をかけている)。喜劇映画研究会の新野敏也は、「【オープニング・タイトルのCITY LIGHTとクレジットされる夜の街】と【オープニング・シークエンスで彫像の除幕式が行われる朝の街】は同じセットでほぼ同じカメラ・アングルながらも、【オープニング・タイトル】では題名に合わせて街路灯が左端に配置されている」、「オープニング・シークエンスの彫像で繰り広げられるチャップリンのパントマイムでは、足捌きに合わせて靴裏のあたる彫像の部位が削られ微調整されている」などの事例を挙げて、この画面構成を「数限りなくリハーサルや撮り直しを繰り返した事が推察され、商業映画の製作コストをまるっきり無視した、完璧以上を求める天才ぶり」と表現している[要出典]。結局撮影を完了したのが1930年10月5日のことで、2年以上の月日が費やされた。さらに編集と作曲作業に3か月をかけた。音楽は20タイトル以上を作曲した。
翌1931年1月30日にロサンゼルスの劇場でプレミア公開された。その際チャップリンの隣りにはアルベルト・アインシュタインが座った。本作の製作経緯、残存するNGシーンについてドキュメンタリー『知られざるチャップリン』で紹介されている(#外部リンク参照)。
出典:
アメリカ合衆国では1931年2月6日に封切られ、映画は大ヒット。興行収入は500万ドルに達した。
1934年1月13日には日本でも封切られ、1か月を超えて続映されるほどの人気作となった。 同年度のキネマ旬報ベストテンでは第10位にランクインされた。
2005年の米タイム誌の「ベスト映画100本」(ランキング形式ではなく100作品のリストアップ)の1本に選出された。
2012年の英エンパイア誌は、「最高のスラップスティックシーン16」(16 Of Cinema’s Greatest Slapstick Moments)の一つに本作のボクシングシーンを挙げている。
以下は日本でのランキング
その他、個人のランキングではオーソン・ウェルズが1950年代初頭に選んだ好きな映画ベスト10で、第1位に挙げている。映画監督では他にフェデリコ・フェリーニが好きな映画の第1位に(『Sight&Sound』2001年。『サーカス』『殺人狂時代』と同位)、ホセ・ルイス・ゲリンが、好きな映画の第2位に、ギレルモ・デル・トロも第2位(上記『Sight&Sound』2022年)に、ウォルター・サレスが第4位に挙げている。
1934年(昭和9年)1月13日、オープン直後の日本劇場で特別料金(上から5円、3円、1円50銭、1円)で封切られた。その際、活動弁士を務めたのは徳川夢声と山野一郎だった。
同年1月30日に映画を見た古川ロッパは日記にこう記している。
要するにチャップリンものとしては筋が持廻(もってまわ)りすぎてゐる。然(しか)し、チャップリンの横顔見てたら何となく涙が出さうになった。 — 「一月三十日(火曜)」『古川ロッパ昭和日記〈戦前篇〉』(晶文社、2007年)新装版
また、2月2日に昭和天皇が香淳皇后とともに鑑賞したと『昭和天皇実録』に記述がある。
その後、1970年代のリバイバル・ブーム到来まで陽の目を見ることがなかったため、幻の名作とされていた。1973年にリバイバル上映され興行的に成功した(この年の洋画配給収入第5位。「1973年の映画#日本配給収入ランキング」参照)。このときのキャッチコピーは「街角に咲く一輪のバラが灯した恋の灯!笑いとペーソスに描くチャップリン名作!」。
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