概要
1964年東京オリンピック競歩50km折り返し碑(府中市 (東京都) ) 後述のルールに沿った歩形(フォーム)を維持しながら歩かなければならず、順位やタイムだけでなくルール(失格)との戦いがある。競歩のルールは幾度か改正がされている。
以前は、男子20km・男子50km・女子20kmがオリンピックの競技種目で実施されていたが、男子50kmは2021年の東京大会 が最後となった。50キロメートル競歩 は陸上競技 種目の中で最長種目であった。オリンピックでは1906年アテネ中間大会 での男子トラック競技として始まり、1932年ロサンゼルス大会 から道路競技となった(50km)。戦後、1948年ロンドン大会 と1952年ヘルシンキ大会 は50kmとトラック10000mが行われ、1956年メルボルン大会 で10000mは道路の20kmとなり、それ以降は1976年モントリオール大会 で50kmが行われなかったのを除き、男子は50kmと20kmが実施されていた。1964年 の東京オリンピック では20kmと50km競技が実施となり、50kmでアブドン・パミッチ が2大会連続でメダルを獲得している。
女子種目は1992年バルセロナ大会 から10kmが実施され、2000年シドニー大会 から20kmに延長された。世界陸上 においては2017年ロンドン大会 と2019年ドーハ大会 において50kmと20kmが実施された。
2019年2月6日、国際陸連は、五輪や世界選手権などの競歩の実施種目を、現行の「50kmと20km」から「30kmと10km」に短縮する案を3月の理事会に諮ると発表した。合わせて、歩型違反を判定する靴底の「電子チップ導入」も提案された。3月11日の理事会での協議の結果、電子チップ導入は見送られたが、2022年より競歩の距離は「10kmから35kmまでの間の2種目」と定められた。2022年世界陸上競技選手権大会 からは50km競歩は廃止され、男女とも20km競歩と35km競歩 が行われた。
また、2024年パリオリンピック では、42.195kmの男女混合競歩リレーが開催される予定である。
歩く競技とはいえ、一流競技者となるとその速度は一般人の走っているものにも劣らない。2014年現在、男子50kmの世界記録 は3時間32分33秒であり、これをマラソン の距離である42.195kmに換算すると2時間59分20秒である。この換算タイムはいわゆるサブスリーと呼ばれ、マラソンのセミプロランナーレベルである。また、体力の消耗が激しい場合、マラソンならば速度を落として「歩きだす」といった光景が見られるが、競歩の場合は(スピードは速いが)競技自体が歩いている状態であるうえ、日常生活における普通の歩行法を行うと「ベント・ニー」の反則(後述)と判定され失格になる可能性もあるため、バテてしまうと歩行すら困難になってしまい完歩すら出来なくなるなど、イメージとは裏腹にかなり過酷なスポーツである。近年日本男子勢が強化策の一環としてサロマ湖100キロウルトラマラソン を完歩するという過酷なチャレンジをしている。国際陸連は非公認であるが、2時間などの一定時間で歩いた距離を競う競技や、欧米では100km競歩の競技会も行われ、世界記録も存在する。
道路で実施する競技会の場合、マラソンなどと比べて周回コースで行われることが多いため応援しやすく、国際大会ともなると時間とともに多くの観衆でコース周辺が埋め尽くされる(マラソンと同様、コース上での観戦は入場料はかからない)。競歩だけの国際大会も盛んで、2年に一度開催される世界競歩チーム選手権大会 はまさに世界最大の競歩競技会である。
全国高等学校総合体育大会 には2001年 熊本大会から導入された。それまでは普及度の関係で混成競技 等と共に別日程(3週間遅れくらい)で全国高校選手権として実施されていた。導入後も普及・競技人口の関係で競歩と混成競技は各地区上位4名まで(2009年 までは3名)が全国高等学校総合体育大会 へ出場となる(他種目は上位6名まで)。
主なルール
歩型と反則 競歩競技の歩型には以下2つの定義が定められている。 常にどちらかの足が地面に接していること(両方の足が地面から離れると、ロス・オブ・コンタクト という反則をとられる。以前はリフティングという名称だった)。 前脚は接地の瞬間から地面と垂直になるまで膝を伸ばすこと(曲がるとベント・ニー という反則をとられる)。 この2つの定義に違反しているおそれがあると競歩審判員が判断したときに、競技者はイエローパドルを提示される(ロス・オブ・コンタクトの時は波型の書いてあるものを、ベント・ニーの時はくの字が書いてあるもの)。定義に明らかに違反している場合はレッドカードが発行される。ある競技者に対してのレッドカードが累積3枚になると、競技者は主任審判員より失格を宣告される。ただし、主催者などが「ペナルティゾーン」を採用した場合は、レッドカードが累積3枚になった競技者はペナルティゾーンにおいて所定の時間(20km競歩では2分、35km競歩では3分30秒など、レース距離10キロに対して1分)待機し、レースに復帰することができる。この場合は4枚目のレッドカードで失格となる。リレーの場合は、レッドカードがチーム3枚で3分待機し、以後1枚ごとに1分待機し、レッドカード7枚でチーム失格。 たとえ競技者がフィニッシュした後でも、レッドカードが3枚揃ったことが判明した場合は失格(ペナルティゾーンありの場合は3枚で待機時間加算、4枚で失格)となる。この場合、主任審判員は速やかに対象の競技者を探し、失格の宣告を行う。そのため先着者が失格になってしまい下位でフィニッシュした競技者が繰り上げ入賞になる場面が度々見られる。1992年バルセロナオリンピック の女子10km、2000年シドニーオリンピック の男子20kmでは最初1着でフィニッシュした競技者がフィニッシュ後に失格となった。いずれもフィニッシュ前の競り合いで3枚目のレッドカードが発行されたものである。現在は、失格の告知の遅れを防ぐために主任補佐を配置することができるようになっている。国内競技会では、全国高校総体 や国民体育大会 において、ラストスパートの競り合い時等に歩型を乱し、フィニッシュ後の失格が度々起こっている。競技会では途中棄権よりも失格者の方が多いということもしばしばである。途中棄権が少ないのは失格によって順位が変動することもあるため、諦めずフィニッシュへ向かうためと言われている。 競歩の場合、何度イエローパドルを提示されても失格には直接関係しない。一方で、一度もイエローパドルを提示されずにレッドカードが発行されて失格になるケースも稀だが発生することがある。 審判員 競歩審判員は道路種目では主任を含め6名以上9名以内、トラック種目では主任を含め6名で審判にあたる。主任審判員はレッドカードのとりまとめや失格の宣告等役員の監督に専念し、特定の状況を除き競技者の判定には加わらない。ただし、WA が開催または認可する競技会、エリア陸連(アジア陸上競技連盟 など)が開催または認可する競技会、国内では日本陸連主催・共催競技会において、「特定の状況」であるラスト100mでは主任審判員が判定を行い、ここで違反した競技者は累計レッドカード数に関係なく失格となる。これは無茶苦茶なラストスパートを抑制する目的で定められたものである。 オリンピック、世界選手権、世界競歩チーム選手権大会等では、WAゴールドレベルの競歩審判員が任命される。複数エリアからの参加者による競技会や、エリア陸連が開催または認可する競技会では、WAゴールド、シルバー、ブロンズレベルの競歩審判員が任命される。 日本陸上競技連盟主催および共催の競技会は、JRWJ(日本陸連競歩審判員、Japan Race Walking Judges)または日本陸上競技連盟が指名した競歩審判員が判定を行っている。 1人の審判員は1人の競技者に対して、イエローパドルの提示はそれぞれの反則について1回ずつ、レッドカードはどちらかの反則について1回のみ出すことができる。つまり一人の審判員が何枚もレッドカードを発行することができず、主任審判員はレッドカードが3枚そろった時点でそれぞれのカードが異なる審判員のものであることの確認を行う。また国際大会ではレッドカードがそれぞれの違う国籍の審判員のものでなければ失格にならない。 競技中、どの審判員がレッドカードを出したかは競技者本人には知らされない。審判員はレッドカードを発行すると連絡員を通じて主任審判員に提出する。その内容が競歩掲示板に表示される(国際大会では、通信装置が併用される)。掲示板には競技者のナンバーと違反した反則の記号が表示される。 審判の判定は必ず各審判員の目視のみで判定する。ビデオ判定は行われていない。また、周りの言動や野次などに惑わされることなく、自分の意思で判定を行う。また、審判員の中には、個人で判定基準を設けていることがある(1.踵からしっかり着地できているか、2.蹴った後の後足の高さ(巻き足)、3.集団の中の上下動、4.左右の膝の高さなど)が、正しくは定義についての違反があるかどうかが判断の基準であり、1.から4.などは注視するための目安でしかない。競歩審判員を行うに当たり、前述のIRWJ及びJRWJを除き、特別な資格は要せず、国内競技会においては、日本陸連公認審判員であれば、S級・A級・B級のいずれであっても競技規則上の資格制限はない。 各審判員のイエローパドル及びレッドカードの記録は集計用紙(サマリーシート)にまとめられる。そこには各審判員がどの競技者にイエローパドルやレッドカードと判断したのか、反則の種類、時刻が明記されている。集計用紙は、競技者・関係者は閲覧することができる。また判定に対して抗議がなされた場合は、これに基づいて説明が行われる。 コース 道路の場合は、日本陸上競技連盟主催および共催の競技会は1周最短2km - 最長2.5km、それ以外の競技会は1周最短1km - 最長2.5kmに設定しなければならない。コースレイアウトは周回コースでも直線折り返しコースでも構わない。 記録 途中計時のタイム(10km、15km、30kmなど)もその競技者がフィニッシュして記録が成立すれば、個人の記録として公認される。現在の男女10km・15kmの日本記録はいずれも各20km競歩の途中計時である。 種目
日本の大会
各競技会では一般の部のほかに、ジュニア(高校生、中学生)の部が開催されている。5月の日本ジュニア選手権競歩大会 はトラックで行われる。
日本の競歩選手
国際大会
脚注 関連項目 外部リンク
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