新型インフルエンザ(しんがたインフルエンザ)はインフルエンザウイルスのうち、ヒト-ヒト間の伝染能力を新たに有するようになったインフルエンザウイルスを病原体とするインフルエンザウイルス感染症である。略称は新型インフル。
日本の法律による定義は、「新たに人から人に伝染する能力を有することとなったウイルスを病原体とするインフルエンザであって、一般に国民が当該感染症に対する免疫を獲得していないことから、当該感染症の全国的かつ急速なまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるもの」(感染症予防法第6条第7項第1号)である。
20世紀をはじめとした過去の新型インフルエンザウイルスは、すべて鳥インフルエンザウイルスに由来しているものの大きく報道されてこなかったが、1918年のスペインかぜと呼ばれたインフルエンザの流行(数千万人が死亡)は鳥インフルエンザの変異だとされるようになった。21世紀に入ると2008年頃までには、鳥インフルエンザウイルスは人間には感染しにくいが変異しやすいため、種を超えて感染し再びスペインかぜのようなパンデミックを引き起こしかねない、国家レベルで抗ウイルス薬を備蓄すべきという世論が煽られるようになった。
2009年にはそれまで危険性が煽られていた鳥インフルエンザではなく、豚インフルエンザに由来する新型インフルエンザのパンデミック宣言が世界保健機関 (WHO) よりなされた(#2009年に新型インフルエンザとして流行したH1N1亜型ウイルスも参照)。ただし、この時の新型インフルエンザについてアメリカ疾病予防管理センター (CDC) は、健康な人、大人でも子供でも大部分は抗ウイルス薬がなくても休養すれば治るもので、抗ウイルス薬による治療は必要なく、薬の備蓄には限りがあり、過剰に投与すれば耐性ウイルスの危険性があるとしている。
インフルエンザウイルスは連続変異・不連続変異などの性質から新型のインフルエンザウイルスが過去にも出現し、ヒト間でも度々大きな流行を繰り返した(詳しくはインフルエンザウイルス#前史を参照)。ヒト間での流行は10-40年ごとである。
2003年から新型のH5N1亜型と呼ばれるウイルスによってヒトが死亡する事例が報告され、そのウイルスが世界的流行を引き起こすと日本でも多くの死者が出ると言われたために、厚生労働省は新型のウイルスに対する危機管理の必要性に迫られた。厚生労働省は2006年6月に1年の期限付きでH5N1亜型を指定感染症とし二類感染症と同じ扱いをすることを定めた。2007年6月にさらに1年継続したが、その後も状況の好転はみられず、2008年5月に感染症予防法を改正し「新型インフルエンザ」が法律に明文化された。また、2009年の世界的大流行の際に対応が混乱したことを踏まえ、新型インフルエンザ等対策特別措置法が2012年に制定された。
感染症予防法によると新型インフルエンザは一類~五類に属さない「新型インフルエンザ等感染症」の一つとして取り扱われる。新型インフルエンザの発生が危惧され致死率が高くなると予想される鳥インフルエンザは、インフルエンザA属インフルエンザAウイルスであってその血清亜型がH5N1であるものに限る場合は二類感染症、血清亜型がH5N1以外の場合は四類感染症に分類される。ちなみに、新型インフルエンザとトリインフルエンザを除いたインフルエンザ全般は五類感染症に分類される。
特定病原体に関しては新型インフルエンザウイルスは「四種病原体等」である。ちなみにインフルエンザA属インフルエンザAウイルスであって血清亜型がH2N2・H5N1・H7N7も「四種病原体等」である。この意味に関しては病原体を参照。
学校保健安全法では、血清亜型がH5N1であるものに限っては第一種の感染症、その他の新型を含めたインフルエンザは第二種の感染症と分けられている。一方、「感染症予防法第6条第7項に規定する指定感染症は第一種の感染症とみなす。」と定められており、H5N1亜型に限らずすべての新型インフルエンザを第一種の感染症に相当するものとして対応することは、法律上可能となっている。この意味に関しては学校感染症を参照。
2009年にA型のH1N1亜型に属するウイルスが原因で、ヒトからヒトに感染し流行した。
このウイルスは、豚経由と見られたことから当初、「豚インフルエンザ」(英語: swine influenza 又は swine flu)と呼ばれた。2009年7月時点で、毒性は季節性インフルエンザより強くアジアかぜ並みと考えられており、基礎疾患が発現されていない10代の死亡例が多くあり警戒されている。ただし、現在の日本では季節性インフルエンザとほぼ同等の扱いとしている。
WHOの発表によると、2009年8月29日までの死者数は2,185人で、最も多かった国はブラジルの577人、次にアメリカの522人だった。特にブラジルでは死者数が8月13日から22日までの間に倍以上に増え、警戒が広がった。
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