三党合意(さんとうごうい)とは、2012年の野田内閣下において民主党、自由民主党、公明党の三党間において取り決められた、社会保障と税の一体改革に関する合意。2012年(平成24年)6月21日に三党の幹事長会談が行われ、三党合意を確約する「三党確認書」が、作成された。
かつての自民党政権においては、2007年の福田康夫内閣により社会保障国民会議が開催され、社会保障制度改革の提言が行われていた。ところが民主党マニフェストでは「現在の政策、支出を全て見直す」と公約され、政権交代が行われることで方針の変更が予想されていた。しかし本合意により野党自民党と公明党とで社会保障制度改革の方針のすり合わせが行われた。
合意に基づき第180回国会において、以下の8法案が2012年6月26日に衆議院で三党の賛成により可決、同年8月10日に参議院で可決成立した。
法成立により、社会保障制度改革の提言は社会保障制度改革国民会議に委ねられた。その後、自民党への政権交代(第2次安倍内閣)においては新たに社会保障制度改革推進会議が設置され継承されている。
三党合意は、社会保障と税の一体改革に関する三党間の合意である。同合意は、2012年(平成24年)3月30日に野田内閣 (第1次改造)が提出した消費税増税法案等の法案について三党が修正協議を行い、その結果をもって法案成立させるために行われた。同年6月初めから、社会保障分野と税制分野に分けて三党の実務者が断続的に協議を行い、同年6月15日には三党の実務者間で「社会保障・税一体改革に関する確認書」(社会保障・税一体改革に関する三党実務者間会合合意文書)が交わされた。同年6月21日には、民主党の輿石東民主党幹事長、自由民主党(自民党)の石原伸晃自由民主党幹事長、公明党の井上義久幹事長が合意文書を「誠実に実行」することなどについて合意し、「三党確認書」に署名した。
三党合意を示した「三党確認書」の本文内容は以下の通り。
三党確認書 民主党、自由民主党及び公明党は、平成24年6月15日の社会保障・税一体改革に関する三党実務者間会合合意文書(以下「合意文書」という)を誠実に実行するものとし、以下を確認する。
平成24年6月21日 民主党 幹事長 輿石東 |
2012年(平成24年)6月15日に三党の実務者間によって合意した「社会保障・税一体改革に関する三党実務者間会合合意文書」は、「社会保障・税一体改革に関する確認書(社会保障部分)」及び「別紙」、「確認書」、「税関係協議結果」の各文書から成り、まとめて合意文書とも呼ばれる。
社会保障・税一体改革に関する確認書(社会保障部分)の冒頭内容は、三党の実務者間会合で合意したことを記載している。また、別紙には、「社会保障制度改革推進法案を速やかにとりまとめて提出し、社会保障・税一体改革関連法案とともに今国会での成立を図る」こと、および、「政府提出の社会保障改革関連5法案については、以下の通り修正等を行い、今国会での成立を図る」ことを記載している。関連5法案とは、子育て関連の3法案および年金関連の2法案のことである。また、「社会保障制度改革推進法案骨子」が別添されている。
確認書(三党実務者確認書)の内容は以下の通り。
確認書 別添の「社会保障・税一体改革に関する確認書」に加え、以下を確認する。
平成24年6月15日 民主党 |
「税関係協議結果」には、政府提出の税制抜本改革2法案の修正・合意内容が記載され、「今国会中の成立を図ることとする」と定めている。
主な事項は、所得税について最高税率の引上げなど累進制の強化に関する項目の削除、資産課税の見直しに係る規定の削除、低所得者に配慮した施策等の検討、いわゆる「景気弾力条項」の解釈指針などである。
衆議院にて本法案が可決されたことを受け、民主党ではこれに反対した小沢グループの除籍、鳩山グループの党員資格停止が行われた。小沢グループは新党国民の生活が第一を結成した。
また民主党と連立を組む国民新党では本法案を理由に連立離脱を表明したが、しかし亀井静香代表および亀井亜紀子政調会長が党内で解任され、同党は連立にとどまった。その後、亀井静香と亀井亜紀子は離党した。国民新党の離党者は、新党みどりの風を結成した。
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法の一部を改正する等の法律 | |
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日本の法令 | |
法令番号 | 平成24年法68 |
効力 | 現行法 |
主な内容 | 税制改定 |
関連法令 | 財政法 |
条文リンク | 社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案 |
本法は以下の改定を行うものである。
従来5%の消費税率(国及び地方を含む)を、2014年(平成26年)4月1日から8%、2015年(平成27年)10月1日から10%とすることが定められている。ただし、1の法案の附則第18条には消費税率の引上げに当たっての措置が定められ、1項には「平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度」という具体的な経済成長率の目標値を定めるとともに、同条3項で「経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。」と定められた(いわゆる景気弾力条項)。同条の解釈については幅があるため、三党合意により、「第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。」、「消費税率(国・地方)の引上げの実施は、その時の政権が判断すること。」、「消費税率の引上げにあたっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進すること」、経済の成長等に向けた施策の検討を求める規定を定めることなどが確認された。
景気弾力条項とは、「社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律案」の附則18条のことである。なお、以下の内容は、三党合意による修正を経た後の法文である。
社会保障の安定財源の確保等を図る税制の抜本的な改革を行うための消費税法等の一部を改正する等の法律
附 則
- (消費税率の引上げに当たっての措置)
- 第18条 消費税率の引上げに当たっては、経済状況を好転させることを条件として実施するため、物価が持続的に下落する状況からの脱却及び経済の活性化に向けて、平成23年度から平成32年度までの平均において名目の経済成長率で3パーセント程度かつ実質の経済成長率で2パーセント程度を目指した望ましい経済成長の在り方に早期に近づけるための総合的な施策の実施その他の必要な措置を講ずる。
- 2 税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略並びに事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する。
- 3 この法律の公布後、消費税率の引上げに当たっての経済状況の判断を行うとともに、経済財政状況の激変にも柔軟に対応する観点から、第2条及び第3条に規定する消費税率の引上げに係る改正規定のそれぞれの施行前に、経済状況の好転について、名目及び実質の経済成長率、物価動向等、種々の経済指標を確認し、前2項の措置を踏まえつつ、経済状況等を総合的に勘案した上で、その施行の停止を含め所要の措置を講ずる。
合意文書の「税関係協議結果」に示された同条の解釈は、以下の通りである(文中の「(*)」は、法改正に係るものを意味する。)。
○ 附則第18条について
- 以下の事項を確認する
- (1) 第1項の数値は、政策努力の目標を示すものであること。
- (2) 消費税率(国・地方)の引上げの実施は、その時の政権が判断すること。
- 消費税率の引上げにあたっては、社会保障と税の一体改革を行うため、社会保障制度改革国民会議の議を経た社会保障制度改革を総合的かつ集中的に推進することを確認する。
- (*)「税制の抜本的な改革の実施等により、財政による機動的対応が可能となる中で、我が国経済の需要と供給の状況、消費税率の引上げによる経済への影響等を踏まえ、成長戦略や事前防災及び減災等に資する分野に資金を重点的に配分することなど、我が国経済の成長等に向けた施策を検討する」旨の規定を第2項として設ける。
原案の第2項は第3項とし、「前項の措置を踏まえつつ」を「前2項の措置を踏まえつつ」に修正する。
以上の税率改定のほか、次に定める基本的方向性によりそれらの具体化に向けてそれぞれ検討し、それぞれの結果に基づき速やかに必要な措置を講じなければならないとされている(第8条)。
被用者年金一元化、およびパートタイマーの厚生年金適用拡大の法案である。
三党合意によって社会保障制度改革推進法が成立し、今後の社会保障制度の基本理念が定められた。
第二条 社会保障制度改革は、次に掲げる事項を基本として行われるものとする。
— 社会保障制度改革推進法
- 一 自助、共助及び公助が最も適切に組み合わされるよう留意しつつ、国民が自立した生活を営むことができるよう、家族相互及び国民相互の助け合いの仕組みを通じてその実現を支援していくこと。
- 二 社会保障の機能の充実と給付の重点化及び制度の運営の効率化とを同時に行い、税金や社会保険料を納付する者の立場に立って、負担の増大を抑制しつつ、持続可能な制度を実現すること。
- 三 年金、医療及び介護においては、社会保険制度を基本とし、国及び地方公共団体の負担は、社会保険料に係る国民の負担の適正化に充てることを基本とすること。
- 四 国民が広く受益する社会保障に係る費用をあらゆる世代が広く公平に分かち合う観点等から、社会保障給付に要する費用に係る国及び地方公共団体の負担の主要な財源には、消費税及び地方消費税の収入を充てるものとすること。
具体的な個別政策については以下と定められた。
三党合意により成立した社会保障制度改革推進法を根拠として、野田内閣は社会保障制度改革国民会議(しゃかいほしょうせいどかいかくこくみんかいぎ)を設置した。この会議は施行から1年を越えない範囲の2013年8月21日までに会議としての結論を得て、その後会議の設置は解かれる(13条)。課された議題は、今後の公的年金制度(第5条1)、および高齢者医療制度(第7条4)である。
2012年11月27日、委員15人を発表した。会長は清家篤。初回の会合は2012年11月30日に開かれた。2013年8月6日、安倍晋三内閣総理大臣に最終報告書を提出。
委員は次の通り
報告書では、全世代型の社会保障の方針が以下に示された。
少子高齢化の進行と現役世代の雇用環境が変化する中で、これまでの日本の社会保障の特徴であった現役世代への給付が少なく、給付は高齢世代中心、負担は現役世代中心という構造を見直して、給付・負担の両面で世代間・世代内の公平が確保された制度とすることが求められる。
(略) こうした観点から、若い人々も含め、すべての世代に安心感と納得感の得られる全世代型の社会保障に転換することを目指し、子ども・子育て支援など、若い人々の希望につながる投資を積極的に行うことが必要である。こうした取組を通じて、若い人々の負担感ができる限り高まることのないようにすることが重要である。—社会保障制度改革国民会議 報告書 (2013年)
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