ベーオウルフ(英: Beowulf、古英語: Bēowulf、慣習的発音 英語発音: 、古英語的発音 英語発音: ベーオウルフ)は、英文学最古の伝承の一つで英雄ベーオウルフ(ベオウルフ)の冒険を語る叙事詩である。約3000行と古英語文献の中で最も長大な部類に属することから、言語学上も貴重な文献である。
デネ(デンマーク)を舞台とし、主人公である勇士ベーオウルフが夜な夜なヘオロットの城を襲う巨人のグレンデルや炎を吐くドラゴンを退治するという英雄譚であり、現在伝わっているゲルマン諸語の叙事詩の中では最古の部類に属する。
作品内部にも外部の言及としても成立の時期を特定する記述が存在しないため、必ずしも明らかではないが、8世紀から9世紀にかけての間に成ったと考えられている。
ファンタジーの源流とも言える内容であり、たとえば研究者の中にはJ・R・R・トールキンがおり、その著作『ホビットの冒険』や『指輪物語』への影響はつとに指摘されているのみならず、彼の研究がその後のベーオウルフ研究に与えた影響も大きかった。トールキンが1920年代に行った『ベーオウルフ』の現代英語への翻訳は、生前には出版されることがなかったが、没後の2014年になって出版された。
ベーオウルフを現在まで伝える写本は1000年頃に筆写されたと思われるノーウェル写本ただ一冊である。この写本は12世紀に筆写された別の写本であるサウスウィック写本と一つにまとめられ、この合本はCotton Vittelius A xvと呼ばれている。古書研究家であるコットン卿が彼の図書館にこの合本を保有していたのであるが、1731年同図書館の出火に遭い、外側が焦げてしまった。このため徐々に合本の劣化が進むこととなる。1753年には大英博物館へと移管。1783年には古書研究家のG・J・ソルケリンとその助手がそれぞれ1部ずつ写しを転写した。元となった合本は火災の損傷が原因となった劣化のため現在では読めない部分が存在するが、ソルケリンらの写しのおかげで消失部分をある程度補うことが可能である。
叙事詩の登場人物の一人、フロスガール王の祖父の名を写本は「ベーオウルフ」と記す。 しかし史実と照らしあわせた結果、この「ベーオウルフ」は「ベーオウ」の誤記とする解釈が主流である。 このデンマーク王ベーオウルフ(ベーオウ)は、叙事詩の主人公である後のイェアータ王ベオウルフとは基本的には別人である。 しかしこの叙事詩の前半部分で語られるグレンデルとその母親の討伐は元来はデンマーク王ベーオウルフの物語であったのかもしれないという説がある。
『ベーオウルフ』は、主人公の勇士ベーオウルフの若い時を描いた第一部と、それから時代が飛び、老域に入ったベーオウルフ王の最期までを描いた第二部に分かれている。それゆえに二つの物語を一つにしたものではないか、とする声もある。 第一部でベーオウルフは巨人(ドラゴンとも言われている)グレンデルとその母親と戦い、第二部では炎を吐く竜と死闘をかわす。 なお、インパクトが強くかつ謎の多いグレンデルとその親に関しては言及されることが多いが、炎を吐く竜に関してのものは少ない傾向にある。なお、特徴として「財宝を蓄え守っている」「翼を持って空を飛ぶ」「火を吐く」など、現代における典型的なドラゴン像を持ち合わせている。
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