Xジェンダー(エックスジェンダー、X-gender)は、男女のいずれにも属さないと考える性自認を持つ人を指す用語・アイデンティティである。
Xジェンダーは、男女どちらとも異なる性自認を持つ人を包括的に含んでおり、女性か男性かといった自己の性自認がその時々で定まりきらなく、流動的である場合もある。広く知られるLGBTという言葉で分かりやすくすると、LGBが性的指向の分類であるのに対して、Tと同じく性自認の分類の一つである。したがって、当事者の性表現・性的指向については必ずしも含まない。
出生時身体女性で性自認Xジェンダーである人を「FtX」、出生時の身体男性で性自認Xジェンダーである人を「MtX」と表現する。両性具有など男女双方の生殖器官を持つなど身体的にもどちらに区分が困難な体(性分化疾患)で出生し、かつ性自認もXジェンダーである人を「XtX」と表現する。
用語としては、遅くとも1990年代後半に日本で使われ始めた。英語圏を始めとした日本語以外の言語圏においては、Xジェンダーと近しい意味を持つ用語としてジェンダークィア(genderqueer)やノンバイナリー・ジェンダー(non-binary gender)、サード・ジェンダー(第3の性別、third gender)などが存在するが、これらは完全に同義というわけではない。
Xジェンダーに含まれる代表的な性同一性には、中性・両性・無性・不定性があるが、これらにおさまらない様々な性同一性も含まれうる。これらの代表的な性同一性について、レインボー・アクションXラウンジは次のように述べている。
上記に限らずXジェンダーにまとめられる性同一性について複数の説明があり、中性のバリエーションとして「男性寄りの中性」や、男女二元論以外の性同一性との中性、両性であってもどちらかの性に優位性を感じる例などが示されており、表面上は同じ言葉であっても当事者によって認識には幅がある。
他の性同一性と同様に、Xジェンダーと特定の性的指向が関連づくことはない。Xジェンダーの当事者は、身体的な性別からみて異性愛者・同性愛者・両性愛者・無性愛者もしくはそれ以外であることがあり得る。そのため、Xジェンダーでレズビアン、Xジェンダーでゲイなど、性的少数者と捉えられる特徴が複数当てはまる性的なダブルマイノリティの状態にある人もいる。
男女に二極化した性同一性を持たないXジェンダーにとって、性自認から性的指向を説明しようとすると、少なくとも異性愛または同性愛の起点となる性別を規定しにくいことから、自らの性的指向についての説明が困難に感じることがある。
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男女のいずれかのアイデンティティを持たないXジェンダーが、アイデンティティの拡散・混乱ではなく固定的なあり様とみなせるかを考察した研究 では、当事者に対して自らの性自認について目標の姿を尋ねた自由記述のアンケートから、過渡型・揺曳型・積極型の3つのクラスタが抽出でき、過渡型と積極型は一つの固定的なアイデンティティであるとみなせる可能性を指摘している。
一方、そういった分類とは異なり、Xジェンダー本人の一人一人の主観的体験を焦点に合わせた研究もされている[要出典]。例えば、出生時に割り当てられた性別では生きようとは思わないが、他方の性別がよいというわけでもないためXジェンダーだと名乗るといった場合や、その時々によって自らが認識する性別が男性と女性とで変わっていく、あるいは男性でも女性でもないという時があり、そのためXジェンダーだと名乗る場合がある。このような体験などからXジェンダーを名乗るに至るとされるが、分類されることだけでは分かることのできない、本人たちの生きてきた道に沿った人間理解の方法としてXジェンダーを理解することができるだろう。
Xジェンダーは遅くとも1990年代後半には日本国内で独自に使い始められた言葉である。英語圏における男女二元論から外れる性同一性を包括的に表す言葉として、1980年代には「ジェンダークィア(genderqueer)」あるいは「サード・ジェンダー(第三の性、third gender)」が、2010年代以降では「ノンバイナリー・ジェンダー(non-binary gender)」 が近い言葉にあたると考えられる。しかし、Third genderは身体的な性別を意味する場合があることや、Queerはセクシュアル・マイノリティ全体を示すことがあってより広義である場合がある。よって、ノンバイナリーが最も適切だが、そもそもノンバイナリーという方が世界共通である。
また、インドのヒジュラーや、アメリカ先住民のトゥー・スピリット、タヒチのマフーといったカテゴリーにも似通った部分がある。それまでの日本では、出生時に割り当てられた性別とは異なる性別として生きようとする人々をトランスジェンダーという言葉で表現することができていたが、女性でも男性でもいずれかでもない人々を指し示す言葉がなかった。ある書籍に掲載されたトランスジェンダーのインタビューによれば、目指す(性別の)ゴールが明確にできない人々を表す言葉が存在しないことから、X-ジェンダーと名乗り始めたことが最初だとされる(この書籍では「X-ジェンダー」であった)。
更にXジェンダーに含まれる性同一性の訳語として、中性(gender-neutral)・両性(bi-gender)・無性(A-gender)・不定性(gender-fluid)などがあると考えられている。
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