センリョウ(千両・仙蓼、学名: Sarcandra glabra)は、センリョウ科センリョウ属に属する常緑小低木の1種である。葉は対生し、葉縁には鋭い鋸歯がある(図1)。花は極めて単純であり、1個の雌しべと1個の雄しべだけからなる。冬に赤く美しい果実をつけるため(図1)栽培され、また正月の飾りに使われる。名前や形が似ていて、同じく冬に赤い果実をつけるマンリョウ(万両; サクラソウ科)と対比されるが、両者は遠縁である。赤い果実をサンゴに見立てて、クササンゴ(草珊瑚)とよばれることもある。果実が黄色い品種もあり、キミノセンリョウと呼ばれている。日本を含む東アジアから東南アジア、南アジアに分布する。
センリョウ | ||||||||||||||||||
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1. センリョウ(大阪府、2006年10月) | ||||||||||||||||||
分類 | ||||||||||||||||||
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学名 | ||||||||||||||||||
Sarcandra glabra (Thunb.) Nakai (1930) | ||||||||||||||||||
シノニム | ||||||||||||||||||
和名 | ||||||||||||||||||
センリョウ(千両、仙蓼)、クササンゴ(草珊瑚) | ||||||||||||||||||
英名 | ||||||||||||||||||
herba sarcandrae, glabrous sarcandra herb |
江戸時代に書かれた生け花の伝書『立花大全』(1683年)や、草木の種類や栽培法を記した『花壇地錦抄』(1695年)では、「
同様に赤い実をつける植物の中には、「百両」(カラタチバナ; サクラソウ科)、「十両」(ヤブコウジ; サクラソウ科)、「一両」(アリドオシ; アカネ科)の名でよばれるものもいる。また、紛らわしいことにセンリョウの別名に「マンリョウ」があり、マンリョウの別名に「センリョウ」がある上、サクラソウ科にはイズセンリョウ属が含まれていて、少し形が似ている。
日本、韓国(済州島)、台湾、中国南部、南アジア(インド)、東南アジア、ニューギニアに分布する。日本では本州(関東西南部、東海、紀伊半島)、四国、九州、南西諸島に生育するが、広く植栽されているため、自然分布域以北で見られることもある。常緑広葉樹林の林床に群生している。暖地の半日陰に生えている。
常緑広葉樹の小低木であり、茎は直立してまばらに分枝し、高さは 50 - 150センチメートル (cm) 、直径は 1.5 cm、樹皮は平滑で緑色である。
センリョウは被子植物でありながら維管束に道管を欠くとされ、被子植物の進化を考える上で注目される存在であるが、後生木部や初期の二次木部からは道管(穿孔をもつ)が報告されている。またセンリョウ科の他の種は、道管をもつ。節はやや膨らんでいる(下図2a)。
葉は対生し、革質で光沢があり、葉身は長楕円形から卵状楕円形、2 - 20 × 1 - 8 cm、表裏とも無毛、先端は鋭く尖り、基部はくさび形、葉縁には先が細く尖る鋸歯がある(下図2a, c, 32a)。葉脈は羽状、側脈は5 - 10対。葉柄は長さ 0.5 - 2 cm。葉柄の基部は広がってく茎を包み、葉鞘となる(下図2b)。托葉は小さく、線形から短剣形、長さ 1.5ミリメートル (mm) ほどある。
日本での花期は6 - 7月、枝先に2 - 3回分枝する長さ 2 - 5 cm のまばらに花がついた穂状花序をつける(上図2c, 下図3a)。花は両性花、花被(花弁と萼片)がなく、楕円形から先が尖った三角形で長さ約 1ミリメートル (mm) の苞(小苞)の腋につく(下図3a)。雄しべは1個、1.3 - 2 x 1 - 1.3 mm、黄白色、葯は雄しべの半分長以上、黄色で2個。雌しべは球形、緑色、長さ 1 - 1.5 mm、その側面(背軸側)に雄しべが直接ついて横に張り出している(下図3a)。
果期は晩秋から冬(11 - 1月)。果実は核果、球形、直径 5 - 7 mm、冬(12 - 1月)に熟して赤くなる(下図3b)。果実表面に黒い点が2つあるが、これは雌しべの柱頭と雄しべがついていた痕である。果実が黄色いものもおり、キミノセンリョウとよばれる(下図3c)。果実の核は直径 3 - 4 mm。
日本などの個体 (Sarcandra glabra subsp. glabra) では葯の長さが雄しべ全長より明らかに短いが、東南アジア産のものは葯の長さが雄しべ全長とほぼ同長であり、亜種 Sarcandra glabra subsp. brachystachys (Blume) Verdc. (1985) に分類される。中国南部からインド北西部には両亜種の中間型があるとされる。さらにこの中で果実が黒いものは Sarcandra glabra var. melanocarpa (Ridl.) Verdc. (1985) とされる。
景気のいい名前で知られ、花の少ない冬に美しい果実をつけるため、正月の縁起物として切枝(果実をつけた枝)が流通している。正月用の飾りに使われる切枝には、サクラソウ科のマンリョウもあるが、正月用切枝としてはセンリョウのほうが人気で、生花市場ではセンリョウ市が開かれ膨大な量が扱われる。マンリョウはセンリョウとよく対比されるが、マンリョウのほうが葉幅がやや狭く、赤色の果実はくすんだ色をしている。2021年の東京都中央卸売市場におけるセンリョウの取引金額は3億6948万円(約200万束、ほとんどが12月)、そのうち56%は茨城県産、31%は千葉県産であった。
センリョウは、庭植え(関東地方以西)や鉢植えでの観賞用としても広く栽培されている。果実が黄色いキミノセンリョウ(上図3c)や、斑入りの園芸品種も流通している。センリョウは少なくとも江戸時代初期から栽培され、生け花などに用いられていた。庭園の庭植えとしては、いわゆる下木、根締めに用いられる。
花言葉は「利益」、「祝福」、「富」、「財産」、「裕福」。
夏に採取し乾燥した若い枝葉や、それを酒で煮出したものを生薬とすることがある。中国では腫節風 (Zhong Jie Feng) や草珊瑚 (Cao Shan Hu)、九節茶などとよばれ、抗菌、消炎、去風除湿、活血、止痛の効能があるとされる。センリョウからはセスキテルペン、フラボノイド、フェノール酸、クマリンなど200種以上の物質が単離同定されており、その中には抗菌、抗ウイルス、抗炎症、抗腫瘍、および抗血小板減少症が確認されたものもある。また、センリョウをお茶として利用する地域もある
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