第12特務旅団アゾフ(だい12とくむりょだんアゾフ、ウクライナ語: 12-та бригада спеціального призначення «Азов»)、アゾフ旅団(ウクライナ語: Бригада НГУ «Азов»)、または単にアゾフは、ウクライナ国家親衛隊の旅団で、アゾフ海沿岸のマリウポリを拠点とする。
第12特務旅団アゾフ | |
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創設 | 2014年5月5日 |
所属政体 | ウクライナ |
所属組織 | ウクライナ国家親衛隊 |
部隊編制単位 | 旅団 |
兵科 | 国家憲兵 |
兵種/任務/特性 | 治安部隊 |
人員 | 900 - 1,500人 |
所在地 | ドネツィク州マリウポリ |
愛称 | アゾフ メン・イン・ブラック |
彩色 | 青と金 |
上級単位 | 第12特務旅団(2014年 - 2023年) →東部作戦地域司令部(2023年 - 現在) |
主な戦歴 | ドンバス戦争(義勇軍として)
国家警備隊として
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現司令官 | デニス・プロコペンコ中佐 |
2023年に旅団に拡充される以前のアゾフ連隊(ウクライナ語: Полк Азов)は通称で、ウクライナ国家親衛隊での正式な部隊名は、東部作戦地域司令部第12特務旅団隷下のアゾフ特殊作戦分遣隊(ウクライナ語: Окремий загін спеціального призначення «Азов»)だった。
2014年ウクライナでの親ロシア派騒乱で親ロシア派に対抗するため発足した。ゼレンスキー大統領の政治支援を行っているウクライナ・オリガルヒのユダヤ人、イーホル・コロモイスキーもアゾフ大隊にも資金提供したとみられている。同年5月の創設当初は義勇兵部隊であったものの、ドンバス戦争で対親露派・分離主義者の戦闘で名をあげ、ドンバス危機以降の11月からは国家親衛隊として機能するようになり、2014年11月11日のウクライナ内務大臣アルセン・アバコフの署名によってアゾフ大隊は正式にウクライナ国家親衛隊に編入された。
創設当初は極右・右翼やネオナチ、ナショナリストとして報じられた。2022年4月時点の日本では、白人至上主義者や反イスラーム主義者は排除され、ウクライナ民族主義に基づく精鋭部隊として報じられている。一方、国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、2022年2月27日にウクライナ国家親衛隊のTwitter公式アカウントに投稿された動画によるアゾフ連隊のイスラム教徒への差別、並びにネオナチ賞賛を批判している。
2022年ロシアのウクライナ侵攻では、ロシア政府はアゾフ大隊の存在を侵攻のプロパガンダの対象の一つとした。ルポライターの清義明やワシントン・ポストは、ロシア政府の侵攻プロパガンダを問題視した上で、侵攻後のアゾフ連隊志願兵に白人至上主義等のネオナチとして知られる人物らの参加、またナショナル・コー(国民軍団)やS14(C14)等のアメリカ合衆国国務省から国家主義的なヘイトグループ、またテロ組織登録されている極右・ネオナチと呼ばれる勢力の政権、行政、司法への関与がホワイトウォッシュされているとして、ウクライナ政府のプロパガンダに関しても警告している。
アゾフ連隊の歴史は、ハルキウのサッカークラブFCメタリスト・ハルキウのウルトラス(熱狂的なサポーターグループ)として1982年に設立された「Sect 82」にまで遡る。またこの団体は設立当初から少なくとも2013年9月まではロシア連邦のFCスパルタク・モスクワのウルトラスと同盟を組んでおり、友好関係を築いていた。両グループはスタンドやウルトラクラブ間の「戦い」でお互いを支え合った。スパルタクスのウルトラスの中でも特に過激派グループのシュコラに近かった。最後にこの協力関係が確認されたのは2013年9月15日で、この日、スパルタクのウルトラスが、ハルキウのメタリストと、キーウのダイナモのファンの間の戦いに参加し、メタリスト側に加勢した。
アゾフ連隊設立の背景には、2014年2月から4月にかけてハルキウでも激化していた2014年ウクライナでの親ロシア派騒乱がある。騒乱の際、ハルキウ州庁舎ビルを巡り、親ロシア派とウクライナ政府支持側が争っていた際。ユーロマイダン側の国家支持の勢力として、Sect82メンバーを中心とする、地元側の自警団として機能した「東部中隊」が結成された。東部中隊が出現したと同時に、アゾフ大隊のバックボーンはアンドリー・ビレツキーの周りに形成された。その後、構成員の制服の色から「Black Men」と呼ばれた。
この組織はアルセン・アバコフ内務大臣と当時のドネツク知事のセルヒ・タルタの支持を得てすぐに内務省の一部のボランティアの警察大隊となり、その地域で戦争が発生した場合にハルキウを保護する役割を課された。アルセン・アバコフ内務大臣は、集団を「ハリコフの黒百人組」と呼んだ。ハルキウでは戦争は起こらなかったため、「東部中隊」はドンバスに行き、志願兵は2014年6月にマリウポリの解放に参加し、イロヴァイスクとシロキノの戦いに参加した。
アゾフ連隊は、その中核となったグループのほぼ発足当初から、2014年3月にドネツィク地方行政の長となった実業家セルヒイ・タルタによって支援された。アバコフ内務大臣の指示で、アンドレイ・ビレツキーとヴァディム・トロイアに面会したタルタ知事は、自身の生まれ故郷のマリウポリに適当な拠点を作る事を約束し、その前にアゾフをキーウ近くのノヴィ・ペトリヴツィにある国家警備隊の訓練場に送り、ジョージア軍退役軍人の教官の元、ここでアゾフは最初の訓練を開始した。
支援者の中には、2014年3月から2015年3月までドニプロペトロウシク州知事を務め、オルガルヒでもあるイーホル・コロモイスキーも含まれているとの声もある。実際、コロモイスキーはドニプロペトロウシク州知事の時代には、2014年4月、ロシア側が支援する東部の武装勢力の捕獲に懸賞金を掛け、武器の引き渡しに対しても報奨金を出しており、ウクライナでの2014年の親ロシア派騒乱への対応として、2014年4月に自州に「ドニプロ-1」特別任務パトロール警察大隊として最初に設立、この他にこの時、アイダール大隊、アゾフ大隊、ドニプロ1、ドニプロ2、ドンバス大隊の各部隊にも資金提供したとみられている。
以降、マリウポリやその周辺で活動を展開。当初から白人至上主義者のタトゥーをいれ、エンブレムはナチスのトーテムコップ(髑髏マーク)や「黒い太陽」などナチス的なシンボルを旗に掲げていた為、ネオナチと目された。
2014年4月、アルセン・アバコフ内務大臣は、 ウクライナでの親ロシア派騒乱を受けて特別警察大隊を創設するよう命令を出し、5月にアゾフ大隊はそれを受けて発足した特別パトロール警察大隊(ボランティア大隊)うちの一つとなった。
アゾフ大隊などの特別パトロール警察大隊は、ウクライナやロシアなど旧ソ連圏に多いミリツィア(民警、「ミリシア」の項目の「ミリツィア」の解説を参照)に近い組織と目され、特に英国メディアでは、National Militiaと表現される事も多かった。
2014年11月以降はウクライナ国内軍を改編して創設されたウクライナ国家親衛隊の東部作戦地域司令部(本部ハルキウ)の第12特務旅団(本部マリウポリ)隷下のアゾフ特殊作戦分遣隊(通称アゾフ連隊)となっている。その作戦行動と訓練は東部作戦地域司令部12特務旅団長の指揮下にある。連隊の兵士は政府から給料や戦闘用車両と戦車などの装備が支給されており、内務大臣の指令の元、ウクライナ陸軍とともに、ロシア軍や分離独立派との戦闘に参加している。
2022年のウクライナ侵攻では、ロシア側が「特別軍事作戦」を行う目的として掲げるウクライナの「非ナチ化」の口実としている。捕虜となったロシア兵からは、ロシア当局から「黒い制服を着た奴はナチス」と言われていたなどの証言が得られている。
ウクライナ国家親衛隊の東部作戦地域司令部第12特務旅団アゾフ特殊作戦分遣隊として戦闘に参加、ウクライナ軍の他、「カストゥーシュ・カリノーウスキ大隊」など、ウクライナ領土防衛部隊外国人軍団に参加した外国人義勇兵とも連携している。
2022年3月14日に主要メンバーの一人であるミコラ・クラフチェンコがマリウポリで戦死した。3月16日にはロシア軍将官としては4人目の戦死者となるオレグ・ミチャエフ少将を殺害したと発表している。
同年2月24日、緊急で工場を停止したアゾフスタリ製鉄所に侵入したロシアの破壊工作員が従業員に発砲し、ウクライナ軍に逮捕された。以降、ウクライナ軍とともに製鉄所に留まり、地下通路に避難した従業員やマリウポリ市民とともにロシア軍に包囲された。国連と赤十字国際委員会(ICRC)の仲介と支援によって民間人の避難が行われた後、5月16日に降伏し、バスでドネツク人民共和国に移送された。捕虜はロシア軍によって非人道的な扱いを受けているが、特にアゾフのメンバーは扱いが酷く虐待の他にも虚偽の罪を自白させられるなどしている。捕虜の実態について内部告発者からグラグ・ネットに情報が寄せられている。
同年6月29日、ロシアとウクライナ間で捕虜交換が行われ、ロシアの捕虜になっていた144人のウクライナ兵士が戻った。うち半数近くがアゾフ連隊の所属であった。ほとんどは銃弾や砲弾、爆発による負傷をしており、重症者であるため、すぐに前線に戻る可能性は低いと報じられている。
同年9月1日、アゾフスタリ製鉄所で捕虜となり、捕虜交換でウクライナ側に戻ってきた隊員3人のインタビューがザ・インサイダーに掲載された。3人によると、製鉄所で戦闘任務を続けられる隊員はほとんどいなかった。兵士の死亡率は40~80%と推定している者がいるほか、少なくともアゾフ連隊では3人に1人が死亡したとしている者もいる。戦闘での死傷者以外に、少なくとも5人が自殺している。また1週間ノンストップでのハードワークでよく眠れず、アドレナリンが出ている状態で動き続け、体調が悪化して死亡する者もいた。身体に負荷をかけすぎた結果であるという。アゾフスタリからは、安定した治療を必要とする重傷者、すでに安定した歩行困難な負傷者、軽症者、生き残った者たちと指揮官たちと4つにグループ分けしてノボアゾフスクに運ばれたと話している。
マリウポリが壊滅したことについて「恥ずかしくないのか?」と口々に言ってきたドネツク人民共和国(DNR)の兵士に、「なぜ、恥ずかしくなければならないのか?自分の街を守ったから?私はマリウポリ出身だが、私が自滅していたとでもいうのか」と自らがマリウポリの住民であることを説明した。DNRの兵士たちはロシアが街を地球上から消したことを理解しており、以降、何も言わなくなった。DNRのマスコミは「ロシアを滅ぼす」「ナチス」の画を撮りに訪れたが、マリウポリの住民であることをありのままに話す以外にはなく、彼らには「私たちの連隊では、兵士の6〜7割がロシア語を話しているのに、ロシア語を話す人たちを侵害していると言うのですか」と言ったという。DNRのマスコミは、ファシスト・ナチスであるという話にすり替えようとしても何ら立証できなかった。
DNR当局は捕虜交換に影響するとも言って、連隊の司令官たちについての不利な証言を要求した。民間人を殺害したことを自白するよう求めてきたが「武装していない人に発砲することは決してない」と主張したという。
またDNRの兵士たちの言葉から察するに、彼らはDNRとルガンスク人民共和国(LNR)の国境を守ってくれることをロシア軍に期待していたようであると話している。しかしロシア軍の答えは「私たちには独自のタスクがあります。ドネツクを確保するという目標はありません。別の方向性があります」といったものであった。
同月22日、ロシア兵56人(兵士55人とヴィクトル・メドヴェドチュク)とウクライナ兵ら215人が交換されたことが公表された。トルコとサウジアラビアの仲介により、ウクライナ兵205人と戦闘に加わった外国人10人が解放された。アゾフスタリ製鉄所で投降したアゾフ大隊の司令官5人が含まれており、この5人についてはロシアとの交戦が終わるまでウクライナに帰還せずにトルコに留まることが条件であるという。この内の1人は通称「レディス」という人物とされる。
捕虜交換には、水面下でバチカンが尽力したことが分かっている。
2023年6月14日時点ではマリウポリ陥落後の生存者と捕虜交換で戻ったメンバーは600人~700人ほどとされ、補充のために新兵を募集した。開放された捕虜の1人でレディスの部下だったアナトリー・イエホロフは復帰してキーウで新兵教育を行っている。
2023年1月、部隊増強に伴い、第12特務旅団アゾフに改編され、第12特務旅団の旅団番号を継承し、アゾフ連隊自体が第12特務旅団となった。
2022年2月27日、アゾフ連隊の兵士とされる人物が豚の脂肪を弾丸に塗りながら、「親愛なるイスラム教徒の兄弟たち、私たちの国では、あなたは天国に行かないだろう。あなたは天国に入ることが許されない。家に帰ってください。」などと述べる動画がウクライナ国家親衛隊のTwitter公式アカウントに投稿され、非難を浴びた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)は、豚肉を食のタブーとするイスラム教徒への差別、並びにネオナチ賞賛だとして批判している。
初代司令官は、アンドリー・ビレツキー(2014年5月から10月)。イーホル・ミハイレンコとマクシム・ゾリンが司令官を務めた後、2017年3月からの司令官はデニス・プロコペンコ。2022年4月時点では、マリウポリのアゾフスタリ製鉄所での抗戦を指揮する司令官はマクシム・ゾリンである。
連隊のメンバーはドンバス地域を中心とした、ウクライナ東部のロシア語話者達によって構成されている。これらウクライナ東部地域は現在親ロシア派の「ドネツク人民共和国」や「ルガンスク人民共和国」の支配地域となっている地域もあり、当地の反分離独立派、親ウクライナ政府支持者からも人員を集めている。ただし、現在はキーウなどウクライナ西部の住民も紛争の激化から多く参加している。多くの者がマリウポリに暮らし結婚しているマリウポリ市民であるという。
外国人戦闘員の募集と誘致を行なっているともされる。デイリー・テレグラフによると、ブラジル、イタリア、イギリス、フランス、米国、ギリシャ、スカンジナビア半島、スペイン、スロバキア、チェコ、そしてロシアの人々を含む外国人メンバーがおり、約50人のロシア国民がアゾフ連隊のメンバーとなっている。
2023年6月14日時点で兵力規模は7000人、内6300人はマリウポリ陥落後に募集した新兵とされる。
当初から装備の多くはウクライナ政府軍と同じであり、その大部分は自動小銃AK-74であるが、中にはIMI タボールやウクライナの国内軍需産業であるRPC Fort社製の銃器、豊和M1500といった西側諸国の武器も見られていた。また、以前はFASTヘルメット、イギリスやドイツの軍服が使用される場合もあった。ウクライナ国家親衛隊に統合されて以降は、ウクライナ政府から装備の提供を受けている。
義勇兵時代には黒い制服で活動しており、ウクライナ軍の軍服を着用するようになってからも、ロシア側では「黒い制服」がイメージとして残っている。
キーウで募金活動を行うなど、ウクライナ国内で社会的福祉事業にも従事している。最近では、子供達やティーンエイジャーを含め、「愛国教育プロジェクト」の一環としてC14と共にブートキャンプを実施している。キャンプについては欧米のメディアに公開・密着取材が許されており、各メディアのYouTubeチャンネルでもその様子が確認できる。2022年2月には、戦時下のマリウポリで市民に銃の扱いなどを講習したと報じられている。
アゾフ連隊の前身のアゾフ大隊はしばしば極右のナショナリストの民兵と説明されてきた。設立時のメンバーの素性からネオナチや極右との関わりが強い団体として語られることが多い。しかし、ウクライナ国内軍の組織である国家警備隊編入に伴い、政府は組織の非政治化を図り取り組んでいる。
士気は非常に高く、上官の命令にも絶対服従するとされる。
極右思想や反ユダヤ的思想を持っていると見られていた創始者アンドリー・ビレツキーら創始メンバーや元司令官は、独自の活動を行うため国会議員、キーウ州警察、内務省の役人などに転身した。このため、アゾフ連隊に在籍し続けることが法律上不可能になった。
2016年、アゾフ連隊を去った創立者ピレツキーは、元創立メンバーや元司令官たちと白人至上主義・極右政党「ナショナル・コー(国民軍団)」を設立した。
2018年時点での党員数は1万人から1万5000人。党の中心的な支持基盤は、ウクライナ国家親衛隊の傘下にあるネオナチのアゾフ大隊の古参兵と、アゾフ大隊に所属する民間の非政府組織であるアゾフ市民軍団のメンバーであるとされる。
同年、BBCは国家警備隊を国家が承認している民警組織として紹介し、業務に帯同するなどの取材をした。その中で、極右思想と強い繋がりがある団体や人物と見られていた、義勇軍時代のアゾフ大隊や初代司令官で当時は既にアゾフ大隊から退いていた創始者のビレツキーと結びつきを示す動画の中で紹介した。その際、その中でアゾフ大隊のロゴがナチスのモチーフに酷似している事に対するBBC側の指摘や、ウクライナでの反ユダヤ主義の活動を監視する団体National Minority Rights Monitoring GroupのVyacheslav Likhachevが、過去にウクライナ建国神話に関連して、ビレツキーが白人至上主義的な言動をしていたとする引用証言を用いて、アゾフ大隊の創設者のアンドレイ・ビレツキーは過去に人種差別的思想が疑われる言動をしていたとの疑惑を報じた。ただし、BBCはこの番組内において、現在は少なくとも公には反人種主義が愛国主義に置き換わっていると報じている。
同年、アメリカ合衆国国務省はナショナル・コー(国民軍団)を国家主義的なヘイトグループであると認定した。
2021年3月5日、アメリカ合衆国国務省はウクライナ・オリガルヒのユダヤ人、イーホル・コロモイスキーとその家族を知事時代の不正蓄財容疑で入国禁止処分とした。米国務長官アントニー・ブリンケンは、「今回の指定は在任中の行為に基づくものだが、コロモイスキーが現在行っているウクライナの民主的プロセスと制度を弱体化させる取り組みについても、その将来に深刻な脅威を与えるものとして懸念を表明する」としている。
2022年ロシアのウクライナ侵攻では、ロシア政府はアゾフ大隊の存在を侵攻のプロパガンダの対象の一つとした。ワシントン・ポストやアンチレイシズムに関わるルポライターの清義明が、ロシア政府の侵攻プロパガンダを問題視した上で、侵攻後のアゾフ連隊志願兵に白人至上主義等のネオナチとして知られる人物らの参加、またナショナル・コー(国民軍団)やS14(C14)等のアメリカ合衆国国務省から国家主義的なヘイトグループ、またテロ組織登録されている極右・ネオナチと呼ばれる勢力の政権、行政、司法への関与がホワイトウォッシュされているとして、ウクライナ政府のプロパガンダに関しても警告している。
2014年以降、多くのメディアがナチスとの関連性を報じてきた。
2014年9月8日、ZDFが夕方のニュース番組の中でモスクワ特派員の報告として、一名が「SS」(ナチス・ドイツ親衛隊の略号)マークを、もう一名が兵士が鉤十字が入った戦闘用ヘルメットをかぶっている姿を実際の映像付きで報じた。この映像はTV2によってウズルフのアゾフ大隊の駐屯地で撮影されたものだが、リヒテ特派員は「疑わしい政治的背景を持つ戦闘員がウクライナ側にも見られる」ことを示すために用いた。
2015年、産経新聞は、米通信社ブルームバーグやロシア国営メディアでニュース専門局RT(いずれも電子版)が『アゾフ連隊はナチス・ドイツの象徴であるハーケンクロイツの旗を掲げ、部隊章にはナチス親衛隊が用いた紋様「ヴォルフスアンゲル」を反転した紋様を用いている』と報じたとしている。
ヴォルフスアンゲルは歴史的なオオカミ狩りの罠に触発された1000年以上の歴史の持つ古い紋章であり、15世紀には為政者の抑圧に対する農民反乱の紋章として採用された歴史がある。だが、前述の『産経新聞』の記事で指摘されている通り、ヴォルフスアンゲルの印章はナチス親衛隊のみならず、鍵十字も軍旗に採用していた、ナチス時代のドイツ国防軍の部隊も用いた。また、背景に描かれた黒い太陽は、紛れもなくハインリッヒ・ヒムラーが考案したと考えられている象徴であり、ヴォルフスアンゲル自体も、ナチスと無関係の仏教団体が使用している卍とは異なり、現代において使用している団体のほぼ全てはネオナチ団体である。ユダヤ人虐殺の中心となった一般親衛隊のほかに、ウクライナ人独立運動家も参加して前線でソ連軍と戦った武装親衛隊があった、アゾフ大隊が気軽に部隊章などに取り入れた一因とみる見方もある(武装SSのウクライナ人部隊については「第14SS武装擲弾兵師団」参照)。
なおアゾフ大隊側は、これは反転したヴォルフスアンゲルではなく、ナチズムに無関係なNとIの融合であるとしており、「国家思想"National Idea"」や「国家連帯"united nation"」を表しているとしている。
使用シンボルについて、人種差別・ネオナチズム的思想の影響の疑惑や指摘をする報道が相次ぎ、2015年6月、カナダの国防大臣は、カナダ軍がアゾフ大隊に訓練や支援を提供しないことを宣言した。同年7月、米国のジョン・コニャーズ下院議員らが「ネオナチのウクライナ民兵への武器、訓練、その他の支援を制限する」として国防予算法案(HR 2685)の修正案を作成し、米国下院はこのアゾフ連隊に対して訓練および対空ミサイルを供与する計画を取りやめた支出法案の修正案を全会一致で一度可決した。しかし、12月までに最終的に援助を認める更なる修正案を最終決定の予算案として改めて可決したため、アゾフ連隊への軍事支援はしばらくの間継続した。
翌2016年以降も毎年、下院通過支出法案には、ウクライナへの米国の援助によるアゾフ連隊への禁止が盛り込まれ続けたが、国防総省らの要請により毎年最終通過前にその条項が取り除かれた。
同年1月、ユダヤ系の人権団体サイモン・ヴィーゼル・センターはカナダと米国でアゾフ連隊の新兵の訓練が禁止されていることからアゾフ連隊をネオナチ認定する発言を行った。同月16日にフランスのナント市で開催予定のイベントを阻止するよう、ナント市長に要請している。
2018年、アメリカ議会でアゾフ大隊への援助禁止を盛り込んだ支出法案が成立し、アゾフ連隊への支援が見合わせられるようになった。ただし、米国政府はウクライナ政府とアゾフ大隊への支に軍事援は区別しており、いわゆるリーヒ法の下での必要な審査が、米国がアゾフを支援することを防いでいるとして(リーヒー法は、「国務長官が特定のユニットが重大な人権侵害を犯しきたという信頼できる情報を持っている」場合、米国の支援がそのグループに行くことを禁止している)、ウクライナへの同様の支援は継続している。
アゾフ連隊は公に外国人排斥を主張しているわけではないとされる他、「自分達はネオナチではない」と主張しているとされる。また、ユダヤ系ウクライナ人のヴィタリー・チェルボネンコは「ウクライナで反ユダヤ主義が拡大しているという主張は非常に誇張されている」と述べている。
2018年7月、40人以上のイスラエル人権活動家がウクライナへの武器販売を停止するための請願書をイスラエル高等法院に提出し、ウクライナへのイスラエルの武器輸出の停止を要求した。イスラエルはこれらの武器のいくつかが右翼のアゾフ連隊の手に渡ることを知り、輸出差し止めを求めた。
フェイスブックはアゾフ大隊を2022年ロシアのウクライナ侵攻以前においては、危険組織としてプラットフォームから排除し、賞賛したりすることを禁じていた。
侵攻前には、ウクライナ国外の極右・ネオナチの政治団体とのつながりが指摘されていた。アゾフ大隊と交流もあったドイツの極右・ネオナチの政治団体Der III. Wegは、ドイツのネオナチの中でも立場が分かれる中、ウクライナ民族主義支持を表明している。SITE Intelligence Groupによると、侵攻後には、西欧を中心としたネオナチのチャットトークなどで、アゾフ大隊加入などに関する話題が急上昇しているという。
2019年にニュージーランドで発生した「クライストチャーチモスク銃乱射事件」や米国カルフォルニア州の極右団体の事件など2020年3月時点までに関与を疑われた事件は複数あり、複数のメディアからも白人至上主義との関わり合いを疑う報道が出ているが、2022年4月29日時点では、それらの白人至上主義者の犯罪に対してアゾフが具体的に関与し、それを支援したことを立証出来た事件は一件もない。
これまで国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)がウクライナ東部の武力紛争に関して発表している報告書によると、ロシア側とウクライナ側の双方の勢力の一部が暴行、略奪、レイプ等の犯罪を行っており、戦場だけでなく住宅街での民間人への暴力行為もあったとされている。アイダール大隊(aider)、アルテミフスク(Artemivsk)、アゾフ (Azov)、ドニプロ1(Dnipro-1)などの志願部隊だけでなく、ウクライナ保安庁(SBU)、ウクライナ軍の様々な部隊、ウクライナ国家親衛隊、国家警察、ウクライナ国家国境庁といったウクライナの幅広い公的機関も紛争中の恣意的な拘束や拷問・虐待に関与しているとされた。
また、アイダールやアゾフなどの志願部隊は各公的機関に正式編入される以前にも以後にもそれらの拷問や虐待に関与していたとされ、どの組織にも編入されなかった右派セクターもそれらの行為に関与したとされた。これらの事件は多くの場合、被害者は自分に危害を加えた人物の所属を特定することが出来ず、加害者が複数の組織に所属し一緒に行動していた為に一人の個人が複数の加害者による複数の侵害の犠牲者になっていた事例もあった。
ただし、OHCHRからはこれらの人権侵害行動は東部武装勢力側でもほぼ同様同等に起こしている事が報告されていて、アゾフだけを特筆してあげる言説や開戦の理由として挙げる言説は単なる陰謀論の印象操作に過ぎない
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