植物 アオキ: ガリア科の常緑低木

アオキ(青木、学名: Aucuba japonica または Aucuba japonica var.

japonica)は、ガリア科またはアオキ科Aucubaceaeアオキ属常緑低木。青々とした葉と赤い果実が特徴で、山地の林内に自生するほか、庭木にも使われる。葉は民間薬となり、陀羅尼助の原料として配合される。

アオキ
アオキ
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : キク類 asterids
階級なし : 真正キク類I euasterids I
: ガリア目 Garryales
: ガリア科 Garryaceae
: アオキ属 Aucuba
: アオキ A. japonica
変種 : アオキ A. j. var. japonica
学名
Aucuba japonica Thunb. var. japonica (1783)
シノニム
英名
Japanese Aucuba
変種品種栽培品種
  • ヒメアオキ A. j. var. borealis
  • ホシテンヒメアオキ A. j. var. borealis f. albivariegata
  • ウチダシヒメアオキ A. j. var. borealis f. rugosa
  • ナンゴクアオキ A. j. var. ovoidea
  • シロミノアオキ A. j. f. leucocarpa
  • キミノアオキ A. j. f. luteocarpa
  • アオバナアオキ A. j. f. viridiflora
  • フクリンアオキ A. j. 'Luteo-marginata'
  • ナカフアオキ A. j. 'Picturata'
  • フイリアオキ A. j. 'Variegata'

名称

和名アオキの由来は、四季を通じて常緑で、のほかも常に緑色(青い)であることから名付けられている。別名で、アオキバ、ヒロハノアオキ、ヤマタケとも呼ばれる。

学名は、属名アウクバ(Aucuba)が和名でアオキバ(青木葉)がラテン語読みでそのまま使われており、種名ジャポニカ(japonica)は「日本の…」という意味である。英語ではジャパニーズ・ローレル(Japanese laurel)ともいい、ゲッケイジュ(月桂樹)の葉の形と色から名付けられたという説がある。

花言葉は、「初志貫徹」。

分布・生育地

日本原産。日本の東北地方宮城県以西、関東地方以西の本州四国九州沖縄朝鮮半島に分布する。山地にふつうに生える。日の差し込む低山のスギ林や照葉樹林内に自生し、雑木林などでもよく見られ、日陰でもよく育つ。北海道本州北部の日本海側の多雪地には、積雪に適応した変種ヒメアオキが自生する。

冬の間についている俵形の赤い果実が美しいことから、庭木や公園樹としての利用も多く、園芸品種の栽培もされている。

形態・生態

常緑の低木。高さは0.5 - 3メートル (m) ほどで、枝は太く緑色。幹も緑色で光合成をおこなう。

は有柄で対生し、枝の上部に集まってつき、葉身は厚く光沢があり両面とも無毛である。乾くと黒くなる特性を持つ。葉の長さは8 - 20センチメートル (cm) 程度、形状は長楕円形で先端は鋭く、葉縁にはハッキリした鋸歯が目立つ。葉に斑が入った園芸品種もある。古い葉は、新緑が出て花が咲く春から初夏にかけて黄色に黄葉して、落葉する。

花期は春(3 - 5月)。雌雄異株で、花房が大きいものが雄株、小さいものが雌株である。褐色を帯びた紫色で、枝先の円錐花序に穂のように小花を多数つける。雄花の花序は長さ8 - 20 cm、雌花の花序は長さ2 - 5 cmほどで、赤褐色の4弁花が咲く。子房下位単性花。雄花は淡黄色の葯をもつ4個の雄蕊があり、雌花は緑色の花柱が1個ある。

秋になると、雌株に楕円形の小指大ほどの果実が赤く熟し、12月 - 翌年5月ころまでついている。果実は核果で、大きさ15 - 20ミリメートル (mm) ほどの卵形楕円形で、核(種子)を1個含み、赤色が映えてよく目立つ。熟した果実はヒヨドリがよく食べるが、種子が未熟なうちは果実の色は青く、えぐみや苦味を保持して、ヒヨドリなどの小鳥に食べられないようにしている。アオキの果実は、大きな種子のまわりに薄い果肉がついているだけで、小鳥たちにとって摂食優先度は低く、食べ物がなくなった3月ごろなってから赤く熟した果実が食べられるようになる。

核は、新鮮なうちは楕円形で大きく、褐色を帯びた白色で表面に浅い縦溝がある。時間が経過した核は、黒褐色になり細く硬くなる。まれに、白い果実をつけるシロミノアオキも山地に自生する。

人間との関わり

暑さ寒さに強く、日陰でも育ち、赤い果実や緑色の濃い葉や斑入りの葉の美しさが好まれて、庭園公園の植え込みに植栽され、日本国外でも栽培される。葉は薬用にされ、やけどや膿の吸い出しに用いられていた。

園芸

庭木としての利用も多く、斑入り園芸種もある。葉に白や黄色の多くの斑が入る園芸品種フイリアオキが選抜され、日本国外では非常に人気がある。スウェーデンの植物学者カール・ツンベルクが学名を与えたその翌年(1783年)に、イギリスを経由してヨーロッパに紹介されたといわれ、流行してヨーロッパ各地で植えられた。特に葉に斑が入ったものは貴重で、当初は雌株ばかりが持ち込まれて実はならなかったが、のちに雄株も紹介されて冬に赤い実をつけるようになると、さらにアオキ人気が高まったといわれている。

栽培では、半日陰を好み、耐寒性があり作りやすく、熟した果実から取り出した種子を蒔くか、果実観賞用に梅雨時期に雌木を挿し木して育成する。

薬用

は苦味健胃作用があり、民間薬陀羅尼助の原料の一つとして配合されている。生葉には、配糖体のオークビンなどを含み、膿を出させる排膿作用、消炎作用、抗菌作用がある。果実には、実の色に関係なく苦味配糖体のオークビンを含む。

民間療法では、腫れもの、やけど切り傷おできなどの保護、消炎に、生葉を焦がさないように火であぶるか、アルミ箔に包んで蒸し焼きにして、トロトロに軟らかく黒変したものを冷まして、患部に包帯や絆創膏で止めて貼るなどして用いると、治りを早めるのに役立つ。しもやけには、生葉2 - 3枚を粗く刻み、水200 ccでとろ火で半量になるまで煎じたものを冷まし、患部に1日2 - 3回ほど直接塗る。煎液(水性エキス)は、製薬原料としても用いられるが、苦味配糖体を含むため、直接飲用することは好ましくないと言われている。

家紋

寛政重修諸家譜』に、「青木・丸に青木」・「青木崩し」・「丸に実付き枝青木」が記載されており、使用家は藤原氏系の青木氏、桓武平氏の青木氏が使用している。

下位分類

日本海側産の小型の変種ヒメアオキ var. borealis のほか、果実の色、斑入りなど園芸品種も多い。

アオキ属

アオキ属(アオキぞく、学名: Aucuba)は、ガリア科の一つ。3ほどがあり、ヒマラヤ中国南部から日本照葉樹林帯)に分布する。属名「アウクバ」は、方言名「アオキバ」による(ツンベルクの命名)。

植物 アオキ: 名称, 分布・生育地, 形態・生態  ウィキスピーシーズには、アオキ属に関する情報があります。 植物 アオキ: 名称, 分布・生育地, 形態・生態  ウィキメディア・コモンズには、アオキ属に関するカテゴリがあります。

脚注

注釈

出典

参考文献

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  • 川原勝征『食べる野草と薬草』南方新社、2015年11月10日、98頁。ISBN 978-4-86124-327-1 
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  • 西田尚道監修 学習研究社編『日本の樹木』学習研究社〈ベストフォールド図鑑:vol.5〉、2000年4月7日、113頁。ISBN 978-4-05-403844-8 
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  • 林将之『葉っぱで気になる木がわかる:Q&Aで見わける350種 樹木鑑定』廣済堂あかつき、2011年6月1日、82頁。ISBN 978-4-331-51543-3 
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  • 平野隆久監修 永岡書店編『樹木ガイドブック』永岡書店、1997年5月10日、148頁。ISBN 4-522-21557-6 
  • 茂木透写真『樹に咲く花 離弁花2』高橋秀男・勝山輝男監修、山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑〉、2000年、656-658頁。ISBN 4-635-07004-2 

関連項目

外部リンク

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