油揚げ(あぶらあげ、あぶらげ)は、薄切りにした豆腐を油で揚げた食品。厚揚げ(生揚げ)とは異なり、薄切りをした豆腐を使用するので内部まで揚がっている。「あげ」(または女房詞が付いて「おあげ」とも)と略されることもある。別称は「稲荷揚げ」「狐揚げ」「寿司あげ」。厚揚げに対して「薄揚げ」と呼ぶ地域もある。
油揚げは豆腐を薄く切って油で揚げたものとして説明されるが、普通の豆腐の製造法と違った方法で豆腐を作り、これを適温の油で揚げて製造される。具体的には、豆腐の前段階である「ご(大豆汁)」の加熱を控えめにし、その豆乳を激しく攪拌しながら凝固物にする。凝固物を型箱に入れて圧搾し、水分85%前後の豆腐を作り、豆腐の重量が原料大豆の2倍くらいになるまで水を絞る。その後、低温の油に生地を投入して2~3分間揚げて生地を膨化進展させた後、高温の油に移して表面の水分を蒸散させる。大豆たんぱく質の性質を合理的に使った方法として評価される。
2度揚げのうち、1度目の加熱で脱水され、タンパク質が固まった部分を水蒸気が通り抜けて逃げ、穴が開き、全体が膨らむ。2度目の加熱で、タンパク質の皮膜ができ、穴が塞がるので、冷めてもしぼまずにスポンジ状になる。
油揚げの大きさ、形状、厚みは、豆腐と同様で地域によって差がある。
油揚げは調理前にゆでるか熱湯をかける「油抜き」をしてから料理に用いられることが多い。これにより油臭さが取り除かれて調味料の吸収がよくなる。下ゆでは切ってからだと切り口から油を吸収してしまうため切る前に行う。なお、油揚げは冷凍庫で冷凍すると長期保存できる。
油揚げを用いた食べ物について「しのだ」と呼称されることがある。漢字では「信太」のほか「信田」あるいは「志乃田」とも表記される。これは信太の森の伝説にちなんだものである(葛の葉を参照)。
油揚げそのままで、コンロの火でさっと炙って湿気を抜き、醤油を付けてパリパリとした食感を楽しむ場合もある。
油揚げの内部に具材を詰め、口を爪楊枝で閉じるかカンピョウで縛ったものを、その形状が似ていることから巾着(きんちゃく)と呼ぶ。おでんや煮物の具として使用されることが多い。
なお、油揚げを裏返して具を詰めて調理したものは「裏巾着」と呼ぶことがある。稲荷寿司にも裏返しで詰めたものがある(長野県の「からしいなり」など)。
巾着は東京本郷の「呑喜」で開発されたといわれる。「呑喜」の主人曰く、本来は季節の数品目を入れ、袋からつまみつつ日本酒をゆっくり飲めるように考案されたが、腹が減ってたちまち平らげる学生客のため、牛肉やしらたきなどの具入りに移行したという。
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