手旗信号(てばたしんごう)は、手旗を使い、望遠鏡・双眼鏡で見える可視範囲で遠方への通信を行う手段。その成り立ちから、おもに海上で用いられる。
海上自衛隊では、特別な機材や電源を必要とせず、電波を発することのない簡便で合理的な通信手段として利用している。
日本で手旗信号が考案されたのは帝国海軍においてである。1893年(明治26年)頃、海軍の釜屋忠道が部下の道本場声とともに考案したとされる。カタカナの裏文字を両手を使って書いて見せ、ほぼ誤りなく読み取ることができたことから、近距離の通信では実用信号として使えると判断し、海軍に進言し、正式に採用された。これが「海軍手旗信号法」になったといわれる。海軍の手旗信号法は、1893年には陸軍によっても採用された。
その後、海軍で覚えた信号法を商船でも海軍手旗信号法を準用して使うようになり、1936年(昭和11年)に海軍と統一した「日本船舶手旗信号法」として定められた。
太平洋戦争後になり、海軍が消滅したことなどもあり、海軍が規定していた発光信号とまとめる形で1952年(昭和27年)に運輸省(当時)告示により「日本船舶信号法」が制定され、手旗信号は引き続き日本の船舶信号として採用されている。
無線や光などの通信手段の発達などにより、商船や漁船の通信として使われることはないが、海上自衛隊ではもっとも基本的な特技であり、入隊時に全員が訓練を受けるほか、海上保安庁でも訓練を受ける。
海洋少年団においては、手旗信号を不自由なく使えるよう訓練を行い、全国大会などの大会競技として能力を競う。また、ボーイスカウトの訓練の一つに手旗信号があるため、ボーイ隊以上の「携帯品」の一つに信号用の紅白旗が含まれる事が多い。
右手に赤旗、左手に白旗を持つ。
基本姿勢(原姿) |
(0) - 赤を基本姿勢から時計回りに回す - ○ | (1) - 一 | (2) - | | (逆2) | (3) - ノ | (4) - \ |
(5) - ・ | (6) - ニ | (7) - L | (8) - ┐ | (9) - フ | (10) - ハ |
(11) - ク | (12) - リ | (13) - ゙ | (14) - ゚ |
日本の手旗信号は、受信者から見て正位置になるように、概ねカタカナの形状を反転して振るようなアクションを行う。ただし、「ス」は「寸」を模した形、「ネ」は「子」を模した形などというように工夫がされている。
数字を送信する場合、零原画から九原画をそのまま数字の0~9に充てるほか、以下の数字傍訓も必要に応じて併用される。
句点 文章の区切りに使う。半濁点と区別するため3倍程度の時間保持する。 | 数字 通信文中に数字を入れる際、数字の前後に使う。濁点と区別するため3倍程度の時間保持する。 | 掃除線 数字の中で分数を送信する場合、分子と分母の間に送信する。 | 括弧 通信文中に注釈など括弧を入れるときの前後、または数字を送信する際、数字傍訓の前後に送信する。 | 新章 2つ以上の通信分の区切りに送信する。 |
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日本船舶信号法による手旗信号の通信方法は以下の通り。
日本海洋少年団連盟競技実施要綱による通信手順は以下の通り。
この手順に基づく、無意味50文字の送信手順はこの動画のような形式となる。 【手旗信号】無意味50文字 №1【受信】 - YouTube
日本船舶信号法には、暗語または略語に相当する通信の手順は定められていないが、それぞれの組織内で略語を取り決めて使用することがある。一例として昭和8年の『学校教練必携. 術科之部 前篇』には以下の略符号が掲載されている。
1866年に、イギリス海軍の将官Home Riggs Pophamが陸上で使用していた腕木通信を大きなシステムを用いずに、手軽に人間が行えるようにして船から船・陸上に通信できるようにしたのを皮切りに、Charles Pasleyが改良を行った。
1933年に国際信号書として種々の通信法が定められたが、通信技術の発達により、旗りゅう(旗旒。旗や吹流し)を用いた信号の利用範囲が限定されることとなった。このことから、1961年に政府間海事協議機関(IMCO。1982年に現在のIMOこと国際海事機関となる)により国際信号書の改定計画が立案、承認され、1968年に新しい国際信号書が使用されることとなった。
この新しい国際信号書では、下記のセマフォア信号ではなく、モールス符号を旗手または徒手にて送信する方法が定められている。
セマフォア(英語:semaphore)とは古代ギリシャ語σῆμαφέρωから来たもので「腕木」という意味である。日本では、セマホアとも表記され、20世紀以降でも諸外国海軍等で使用されている。
下記引用部分における、文字をカギ括弧で囲んだ部分の符号は、それらの文字が結合したひとつの符号のように送信する。
手旗または徒手によりモールス信号を行なうときには、次によるものとする。
(1)呼出し
いかなる信号方式でもよいから、信号”K2”を送信する。またこれにかえて、呼出し信号”「AA」「AA」「AA」”を表示してもさしつかえない。
(2)応答
受信局は、呼び出しを受けたときは、応答信号”T”を使用する。ただし、手旗または徒手によるモールス信号で通信ができないときは、信号”YS2”を可能な方法で送信する。
(3)呼び出し信号および応答信号の使用
呼出し信号”「AA」「AA」「AA」”および応答信号”T”は、送信局および受信局においてそれぞれ使用する。
(4)送信の要領
両手を使用して送信することを原則とするが、困難な場合は、片手で送信することができる。
(5)終信信号
信号は、すべて終信信号”「AR」”で終了する。
(1)両手を真上に上げる。短符
(2)両手を肩の線で水平に伸ばす。長符
(3)両手旗または両手を胸の前に持ってくる。短符と/または長符との区切り
(4)両手を下方45°の方向に伸ばす。文字、符字または語の区切り
(5)両手で頭上に円を描く。・送信側でなされたときは、消信信号を示す。
・受信側でなされたときは、再送要求を示す。
注意 各符間の間隔および文字と文字、符字と符字、語と語の間隔は、正しく受信しやすいように配慮して適当にとること。
--海上保安庁監修 国際信号書 第八版(1990/9/1発行)
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