国際信号旗(こくさいしんごうき、international maritime signal flags)は、海上において船舶間での通信に利用される世界共通の旗である。その使い方は国際信号書(英語版)(こくさいしんごうしょ、International Code of Signals; INTERCO)によって定められており、国際信号旗による信号を旗旒信号(きりゅうしんごう、Flag Signalling)と呼ぶ。
中世ヨーロッパでは、船舶間の通信に旗を用いることが行われてきていた。18世紀にはイギリスのリチャード・ハウが主に数字を意味する複数の信号旗を用い、その数字を符号として単語に置き換え、旗の掲揚を繰り返すことで、文章も含めた通信を行なう方法を考案した。これはホーム・リッグス・ポップハムによって改良され、トラファルガーの海戦でも通信に使用された。これらが発展し、1857年に国際信号書として、国際信号旗が定められた。
旗旒信号は、1つの旗が一つのアルファベット、数字(またはひらがな)に対応している。さらに符字として、1つの旗にある特定の意味をもたせており、例としては、ダイビング[要曖昧さ回避]支援船は“A旗”を掲げて、自船が現在潜水作業を実施している旨を他船に知らせる。このほか、ヨットやディンギー競走においては特別なコードが用いられる。例としてP旗は「準備せよ」、S旗は「コースの短縮」を意味している。また、砕氷船と被援助船の通信においても、特別なコードが用いられる。例として砕氷船によるA旗は「前進せよ(氷間水路を進行せよ)」、被援助船によるA旗は「本船は前進し(ようとし)ている、本船は氷間水路を進行し(ようとし)ている」を意味している。日本では、U旗を津波を知らせる津波フラッグとしても使用している。
取り出しやすいように通常は甲板上に専用のラックを設けている。
NATOでは別途、専用のコードを用意している。
本来ならばA,B,C(エー、ビー、シー)と読むが、『B』や『D』(ビーやディー)などの誤解を招くため、このコードが使われている。尚、このコードは航空無線にも利用されている。
文字 | NATOフォネティックコードによる発音 | 旗 | 意味 |
---|---|---|---|
A | アルファ (Alfa) | 本船で潜水夫が活動中。徐速して通過せよ。 | |
B | ブラヴォー (Bravo) | 危険物の運搬、積み降ろし中(英国海軍で弾薬の積み込みにおいて使用されていた)。 | |
C | チャーリー (Charlie) | 肯定。イエス。 | |
D | デルタ (Delta) | 注意せよ。本船は操縦が困難である。 | |
E | エコー (Echo) | 本船は右に針路変更中。 | |
F | フォックストロット (Foxtrot) | 本船は操縦不能。本船と通信をせよ。 | |
G | ゴルフ (Golf) | 水先人を求む。 本船は揚網中である(漁場で接近して操業している漁船によって用いられた場合)。 | |
H | ホテル (Hotel) | 水先人が乗船中。 | |
I | インディア (India) | 本船は左に針路変更中。 | |
J | ジュリエット (Juliett) | 本船を十分に避けよ。本船は火災中で、積荷に危険物がある、または危険物を流出させている。 | |
K | キロ (Kilo) | 本船は貴船との通信を求める。 | |
L | リマ (Lima) | 貴船はただちに停船されたい。 | |
M | マイク (Mike) | 本船は停船中。行き足なし。 (スコットランド旗と似ているが、青の濃度や縦横比が異なる) | |
N | ノヴェンバー (November) | 否定。ノー。 | |
O | オスカー (Oscar) | 海中への転落者あり。 | |
P | パパ (Papa) | 港内 - 出航準備中にて乗務員は帰船せよ。 洋上 - 本船の魚網が障害物に絡まっている(漁船が使用した場合)。 | |
Q | ケベック (Quebec) | 本船乗組員の健康に問題なし。検疫に関する通行許可求む。(Quarantineから) | |
R | ロメオ (Romeo) | ラジャー、信号を確認した(肯定否定は無関係)。 | |
S | シエラ (Sierra) | 本船は機関を後進にかけている。 | |
T | タンゴ (Tango) | 本船を避けよ。本船は2艘引きのトロールに従事中。 | |
U | ユニフォーム (Uniform) | 洋上-貴船の進路に危険あり。 港内-津波の危険あり。 | |
V | ヴィクター (Victor) | 援助を求む。 | |
W | ウィスキー (Whiskey) | 医療の助力を求む。 | |
X | Xレイ (X-ray) | 本船の信号に注意せよ。 | |
Y | ヤンキー (Yankee) | 本船は走錨中である。 | |
Z | ズールー (Zulu) | 本船にタグボートを求む。 本船は投網中である(漁場で接近して操業している漁船によって用いられた場合)。 |
1字信号には、以下のように数字を伴って使用する補足的な用法がある。
文字 | NATOフォネティックコードによる発音 | 直後に置かれる数字 | 意味 |
---|---|---|---|
A | アルファ (Alfa) | 3桁 | 方位角または方位 |
C | チャーリー (Charlie) | 進路(針路) | |
D | デルタ (Delta) | 2桁、4桁、6桁 | 日付 |
G | ゴルフ (Golf) | 4桁、5桁 | 経度(最後の2けたは分、前の2けたまたは3けたは度を表す) |
L | リマ (Lima) | 4桁 | 緯度(最後の2けたは分、前の2けたは度を表す) |
R | ロメオ (Romeo) | 1桁またはそれ以上 | 距離(単位:海里) |
S | シエラ (Sierra) | 速度(単位:ノット) | |
T | タンゴ (Tango) | 4桁 | 地方時 (Local Time) |
V | ヴィクター (Victor) | 1桁またはそれ以上 | 速度(単位:キロメートル毎時) |
Z | ズールー (Zulu) | 4桁 | 協定世界時 |
ただし、発音のイントネーションは通常の英単語でのものとは大きく異なる。
種類 | 0 | 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
旗 | ||||||||||
NATO旗 |
第1代表旗 (1st SUB) | 第2代表旗 (2nd SUB) | 第3代表旗 (3rd SUB) | 第4代表旗 (4th SUB) |
信号旗が1組しかない場合に重複する信号旗の代用として使用する旗。第○代表旗は「第○番目と同じ信号旗」として解釈する。
"N" | |||||
"O" | |||||
"NO" | |||||
"NON" | |||||
"NOO" | |||||
"NOON" | |||||
"NONO" | |||||
"NONON" | |||||
"NONNN" |
回答旗 (CODE or ANS) |
NATO加盟諸国が使用する海軍信号旗。海上自衛隊信号旗も同様。
STATION(占位) | PREP(準備) | INT(疑問) | NEGAT(否定) |
PORT(取舵) | STBD(面舵) | SCREEN(直衛) | DESIG(指示) |
FORM(陣形) | TURN(斉動) | CORPEN(方向) | SPEED(速力) |
FLOT(群) | SQUAD(戦隊) | DIV(隊) | SUBDIV(小隊) |
EMERG(緊急) |
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