尊厳死(そんげんし、英語: death with dignity)とは、人間が人間としての尊厳 (dignity) を保って死に臨むことであり、インフォームド・コンセントのひとつとされる。安楽死や蘇生措置拒否 (DNR) と関連が深い。
尊厳死と安楽死(euthanasia)の区別は、国によって判断が様々である。例えば医師による自殺幇助(Physician-Assisted Suicide/PAS)は、米国では尊厳死に含まれるが、日本では安楽死に含まれるのが通常である。日本国内に限った場合でも定義が混乱しているケースがある。日本に絞って言えば、「尊厳死」は延命治療の停止(消極的安楽死)を指すとの見解が一般的である。
末期がん患者など治癒の見込みのない人々が、クオリティ・オブ・ライフ (quality of life, QOL) と尊厳を保ちつつ最期の時を過ごすための医療がターミナルケア(end-of-life care、終末期医療)である。QOLを保つための手段として、胃瘻の除去、苦痛から解放されるためにペインコントロール技術の積極的活用が挙げられる。無意味な延命行為の拒否 (DNR) については、実際に死を迎える段階では意識を失っている可能性が高いため、事前に延命行為の是非に関して宣言するリビング・ウィル (living will) が有効な手段とされる。
後述のように当人の意思さえあれば尊厳死が法制化されている国がある一方で、国民的な支持はあるものの日本では事前に本人による嘆願・希望で治療を止めたことで、親族などから殺人だと訴えられる可能性がある。日本では尊厳死を認める法律がなく、当事者本人が尊厳死を事前に希望する自発的安楽死を認めるべきとの声は多い。
イタリアでは2018年1月31日、尊厳死を認める法律が施行された。法制化の背景としては、交通事故の後遺症による苦痛をインターネット動画で訴えた末に、安楽死が認められているスイスで自ら死を選んだ男性ディスクジョッキー(DJ)らの活動が世論に影響したこと、イタリア社会に強い影響力を持つローマ教皇フランシスコが2017年11月に「尊厳死は道徳的に正当」と語ったことなどが挙げられる(ただしカトリック教会全体としては反対論も依然多い)。
イタリアの団体「オープンポリス」の調査によると、ヨーロッパではこれ以前にイギリス、オーストリア、クロアチア、スペイン、ハンガリー、フィンランド、ポルトガル、ドイツ、フランスが尊厳死を認める法律や規定を持つ。医師による安楽死は、2001年に世界で初めて認めたオランダ、上記のスイスのほか、ベルギーとルクセンブルクが合法化している。
アメリカでは、患者本人の希望により人工呼吸器を取り外すことは、1970年代にインフォームド・コンセントとして確立している。アメリカやイギリスでは「患者が冷静かつ明確に望まない医療を拒否しているのであれば、それに従うのが医療倫理である」とされ、強制すれば医師は傷害罪に問われうる。周囲が裁判所に訴え出ても、それを裁判所が認めることはない。
韓国では、1997年に医師が家族の要請に基づいて、患者の人工呼吸器を外したため、殺人罪で起訴された事件をきっかけに、尊厳死に関する議論が起こり、2016年1月に尊厳死に関する法案が成立した。
(基本的理念)
第二条 終末期の医療は、延命措置を行うか否かに関する患者の意思を十分に尊重し、医師、薬剤師、看護師その他の医療の担い手と患者およびその家族との信頼関係に基づいて行われなければならない。
2 終末期の医療に関する患者の意思決定は、任意にされたものでなければならない。
3 終末期にあるすべての患者は、基本的人権を享有する個人としてその尊厳が重んぜられなければならない。 — 終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(仮称)
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