『夜明け告げるルーのうた』(よあけつげるルーのうた)は、2017年に公開された日本の長編アニメーション映画。湯浅政明が監督、吉田玲子・湯浅政明が脚本を務めるオリジナル作品。サイエンスSARU制作。
夜明け告げるルーのうた | |
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Lu over the wall | |
監督 | 湯浅政明 |
脚本 | 吉田玲子、湯浅政明 |
出演者 | 谷花音 下田翔大 篠原信一 柄本明 斉藤壮馬 寿美菜子 千鳥(大悟、ノブ) |
音楽 | 村松崇継 |
主題歌 | 斉藤和義 「歌うたいのバラッド」 |
制作会社 | サイエンスSARU |
製作会社 | フジテレビジョン 東宝 サイエンスSARU BSフジ |
配給 | 東宝映像事業部 |
公開 | 2017年5月19日 |
上映時間 | 107分 |
製作国 | 日本 |
言語 | 日本語 |
2017年アヌシー国際アニメーション映画祭長編部門クリスタル賞(最高賞)、毎日映画コンクール大藤信郎賞、文化庁メディア芸術祭アニメーション部門大賞受賞作品。
キャッチコピーは、「君の"好き"は、僕を変える」。
『劇場版クレヨンしんちゃんシリーズ』に初期より参加し、その後『マインド・ゲーム』や『四畳半神話大系』、『ピンポン THE ANIMATION』などを手がけ、数々の受賞歴を持つ湯浅政明によるオリジナル長編アニメーション作品。
キャラクターデザイン原案は漫画家・ねむようこが担当。キャラクターデザイン・作画監督は、これまでの湯浅監督作品で同様にタッグを組んできた伊東伸高が務める。また、脚本は湯浅と共作で吉田玲子が、音楽は『思い出のマーニー』の劇伴を担当した村松崇継が手がける。
本作は、湯浅が抱いていた「心から好きなものを、口に出して『好き』と言えているか?」という現代への疑問を着想の源に、主人公の少年による"心の解放劇"が物語の主軸となっている。
この映画の具体的な原型作品として、1999年に監督したパイロットフィルム『なんちゃってバンパイヤン』を挙げている。イベント上映の『スライム冒険記 海だ、イェ~』で水を描いたが、「描き足りない。いつか水をメインに据えた作品をしっかりやりたいと思っていた。できるだけシンプルに、空間を感じさせるような「動いて面白い表現」」を追求した。
同じく人魚を描いたアニメーションに『崖の上のポニョ』があるが、監督自身も宮崎駿作品に影響を受けており、ポニョとは絵柄が似ることを避けるため、ルーは丸くならないように描かれている。湯浅によると、当初は『ポニョ』の存在を失念しており、「競合がいないと思って」人魚を題材にしたという。また、ルーのパパの描写は『パンダコパンダ』のパパンダなどを意識したと述べている。
公開までの経緯は以下の通り。
東京出身の中学三年生である足元カイは、日無町の父の実家で、父・祖父と三人で暮らしていた。日無は人魚の伝承のあるひなびた漁港だった。カイは感情を表に出さず、学校の進路調査には何も書かずに提出した。
夏休みが近づいた頃、カイは自作の打ち込みを動画投稿サイトにアップする。それがきっかけで、同じクラスでバンド「セイレーン」を組んでいる遊歩と国夫からメンバーに誘われる。湾を遮るお陰岩の外側にある人魚島でのバンドの練習にカイは同行する。カイが遊歩の歌い方を注意すると、怒った遊歩はその場から立ち去ったが、そのあともカイと国夫は誰かの歌声を聞く。帰路、3人は密漁中の青年2人と遭遇、因縁をつけられてカイのスマートフォンは海に捨てられる。しかし青年の乗る船は突如盛り上がった海水に転覆、難を逃れた3人は港に帰り着いた。帰宅したカイは離れの舟屋で父が昔録音した音楽テープを見つけて再生する。そこに、海水の塊に入った少女の人魚が現れる。人魚はルーと名乗り、カイのスマートフォンを渡した。音楽を流すとルーの下半身が鰭から足に変わることをカイは知る。
翌日、カイはバンドに加わり、3人が人魚島で練習をしていると、ルーが現れて下半身を足に変えて踊った。港に戻った3人はルーの存在を自分たちだけの秘密にすることを決める。2人と別れたあと、カイは近くにルーがいることに気づく。カイは音楽を流したカセットデッキを持って、パーカーを着せたルーと夜の町を歩く。公園でカイは両親が離婚していることをルーに打ち明け、この町も誰も好きではなかったと述べる。野犬や捨て犬の収容施設に来たルーは、海水を召還して中にいる犬を流出させると片っ端からかみついて下半身が鰭となった「犬魚」にしてしまう。夜明けとともにルーは「犬魚」を連れて海に去った。
翌日、カイは国夫の実家である神社で人魚の伝承について聞く。それは捕らえた人魚を日に当てると燃えだしてしまい、その後に「お陰様のたたり」によって湾内だけ水位が上昇し、人魚の遺体を持ち去ったというものだった。
海で亡くなった人を浜辺で慰霊する「灯篭祭」での演奏を「セイレーン」は許される。国夫はルーにボーカルをさせようと提案、当日クーラーボックスの中にルーを入れて待機する。だが、ルーは自分で音楽を流してビーチパラソルで日光を防ぎながら外に出て踊り、周囲の人々も勝手に踊り出してしまう。音楽が止まった瞬間にルーの下半身が鰭に戻り、その様子は居合わせた人々のスマートフォンなどに捉えられる。その映像はSNSなどで瞬時に広がり、人魚騒動が持ち上がる。遊歩の祖父である町内会長は、これを契機にかつて閉鎖した人魚島の「人魚ランド」を再開させることを決める。漁民たちは人魚の言い伝えを恐れてそれに反対した。カイはもうバンドをやらない、ルーをバンドに巻き込むことにはかかわらないと口にした。「人魚ランド」の仮オープンに「セイレーン」は出演することになり、国夫から誘われたルーは好意的な反応を示すが、カイの気持ちは変わらなかった。
仮オープン当日、カイ抜きで「セイレーン」の演奏が始まり、やがてルーが登場して踊り始める。遊歩は舞台でダンサーに接触して転倒したが、音楽は止まらなかった。遊歩の祖父は、「保険」としてプロのバンドを呼んでいた。遊歩と国夫は途中で退出し、ひそかに来ていたカイからきつい言葉を聞いた遊歩はそのまま姿を消してしまう。ルーも演奏しているのがカイたちではないことを知り、さらにステージライトや大量のフラッシュに驚き、海水を召喚してその場から逃げ去った。カイは島から戻る船でスマートフォンを海に投げ捨てる。
町では様々な怪現象から、人魚に対する不安の声が上がる。ルーはカイのスマートフォンを届けに舟屋に現れたところを捕獲され、水産会社の屋内プールに閉じ込められた。遊歩が「人魚に襲われる」という書き込みをSNSに残したことで、ルーは失踪の犯人と疑われる。実際には遊歩は先輩と慕う伊佐木の家にいた。書き込みと失踪はルーに嫉妬した故の行動だったが、騒ぎになっていることを伊佐木から知らされ、プールに潜入する。そのとき、ルーを駆除するために天井が開かれ、日光が差し込んだ。ルーは叫び声を上げ、街の中でそれを聞いたルーの父は体から火を出しながらルーの元に駆けつける。だが、ルーともども釜の中に閉じ込められた。国夫の発案で、遊歩は町内放送を通じ、自分の無事とカイにルーを助けてほしいことを訴えた。
自宅にいたカイは放送を聞き、さらにルーが届けたスマートフォンに自分やルーの写真が入っているのを見る。カイはギターを持ってルーが閉じ込められたプールに向かう。そこにカイの父も現れ、自分の思った通りにやれとカイを励ました。カイ・遊歩・カイの父・遊歩の祖父はプールの排水口を開き海水を入れる。カイがギターを奏でると、元気を取り戻したルーの父は釜を破り、さらに海水を召喚すると空中に浮上させ、カイと遊歩もその中に招かれてルーと再会した。その後、遊歩の祖父が操縦するヘリコプターにカイと遊歩は引き揚げられた。
町では「お陰様のたたり」によって水没が始まった。伊佐木は国夫に避難放送をさせ、バスで町民を高台に避難させる。人魚たちも町民を自分の体に乗せたり、人のいる水塊を飛ばしたりして避難に協力した。だが、人魚たちは体力を消耗し、動けなくなっていった。夜明けが近づいたとき、カイはギターを携えてヘリコプターから人魚島に下り、歌を歌う。力を取り戻した人魚たちは海水を押し戻し、漁師たちも傘で日光を防いで人魚たちに協力した。町は救われ、お陰岩は崩壊してなくなった。カイはルーの前で、ルーのことが大好きだからずっとそばにいてほしいと叫ぶ。人魚たちは、町民の用意した傘を持ち、音楽に合わせて踊り出したが、まもなく一斉に姿を消す。日光を遮るお陰岩がなくなったため、人魚はこの海域にいられなくなったのだ。
夏休み明け、カイは父親に、「山向こう」の高校に進学していつかこの町に戻り、世界の海に出たいと告げる。登校の途中、遊歩は東京の高校に進学すると国夫とカイに話すのだった。
本作の登場人物にはフグ田や伊佐木、タコ婆、亀田、鯨井、椎羅のほかに「能登黒」がおり、魚介類からもじった名前が複数設定されている。
本作の人魚は、日光に当たると体が燃え上がるという設定である。のみならず、それに近い強力な光におびえる。このため、人魚は晴れた日中には姿を見せない(雨の日は問題なし)。日無町では「人魚は人を食べる」という伝承がある。人魚よけのため、太陽を似せて白く塗ったウニの外殻を軒先につるす風習があり、実際に目撃したルーはおびえて目を背けた。
人魚には一定サイズの海水をキューブ状にしてコントロールする能力(魔法)があり、持ち上げたり宙に浮かせたりすることができる。人魚がコントロールしている海水は、画面では緑がかった色で描写されている(監督の湯浅は「反自然的な力で動いている」ことを示していると述べている)。
また、人魚に噛まれた動物は人魚となる(ルーの父親は牙で傷をつけても「人魚化」できる)。魚の場合、活け締め状態になるが、身をおろした後の骨と頭だけになっても生きており、それが夜間に街中を行進する描写がある。
人魚の伝承をまとめた『日無町奇談』という書籍があり、カイが目を通していた。
日無町は架空の「踊木県」にあるという設定。作中では「フカヒレと人魚の町」というキャッチフレーズがつけられている。カイの家の離れとして建てられている舟屋は京都府伊根町の舟屋をモデルとしており、エンドロールには「制作協力」として伊根町観光協会の名前が記載されている。このほか、街並みは愛知県の島や倉敷市の商店街も参考にされている。
お陰岩は漁港のある湾口にあり、日光を遮っていた。岩には外海との間にトンネル状の水路が存在する。その出口の先に人魚島があり、海の難所として多くの船が沈んでいる。
2018年1月2日、アメリカの映画配給会社GKIDSは、湯浅政明監督の3本の劇場映画の米国配給権を獲得したことを明らかにした。吹き替え版での製作もされており、2017年8月にはフランス語版を製作、上映され、2018年1月には北米に進出において米国人キャストによる英語吹き替え版も製作された。
フジテレビ及びBSフジが制作に関与したものの、2023年時点で両局では放送されていない。
回 | 放送日 | 放送時間(JST) | 放送局 |
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1 | 2020年1月2日 | 木曜22:35 - 翌0:40 | NHK Eテレ |
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