児童手当(じどうてあて)は、児童を育てる保護者に対して、主に行政から支給される手当のことである。いくつかの国で実施されており、タックスクレジットの形をとることもある。
扶養する児童や家族がいることに対して、政府が金銭の形で手当を支給する制度は、第一世界大戦への参戦により人口の約2パーセントを失い、また世界恐慌の影響によって少子化が懸念されていたニュージーランドで1926年に行なわれた児童手当制度に始まる。ヨーロッパ先進国の中で近代的児童手当制度の端緒となったのはナチス政権下のドイツ国家社会主義公共福祉(ナチス福祉局)によるドイツ児童手当制度 (Das Deutsche Institut für Jugendhilfe e.V.) であり、「児童扶助 (Kinderbeihilfe)」は当時から人口政策的な目的を有していた。当時ドイツ以外のヨーロッパ先進各国においては、労働運動とフェミニストは使用者である資本家の拠出金に基づいて設計された児童手当制度に反対することが多く、制度導入に立ち遅れていた。1950年代以降、先進国各国において少子高齢化の傾向が顕著となり、児童の育成を経済的な面から支援することにより、児童のいる家庭の生活を安定させ出産と子育てを奨励し、また児童自身の健全な成長を促す目的で、児童手当の制度が各国で整備されるようになった。結果、欧州各国では児童を養育する家庭に対する手当制度が制定されたが、アメリカ合衆国では導入は進まなかった。
日本では戦前から国力増強のため多産が奨励されており、労働者もまた、被用者自身から本人拠出金を徴収するという案には反応したものの、企業の拠出金による児童手当については他国の労働組合のような警戒心を持たなかったが、導入の進まないアメリカ合衆国の強い影響下にあった事や財政的制約もあり、1971年5月27日になって児童手当法が制定されている。しかしその後、高度経済成長を経て日本国内で人口増加政策への関心が薄れると、制度縮小が叫ばれるようになり、「日本では養育費の社会的負担 という考え方はなじみにくい」と主張され、労働者の賃金にも家族手当が含まれる年功型が多いことや税制上の扶養控除もあること、被用者に関しては企業の拠出負担があるのに対し、非被用者に関しては全額公費負担となっているのは公平・適正とは言いがたいことから、財政制度審議会や大蔵省は導入からわずか4年後の1975年には児童手当制度廃止も含めた見直しや所得制限の強化を求めるようになった。1977年の「行政改革の推進について」の閣議決定時には、日本はいったん児童手当の縮小・廃止の意向を固めており、1978年には所得制限緩和の据え置きを、また国債残高の累増が問題化していた1979年12月には、財政制度審議会第2特別部会が「歳出の合理化に関する報告」において児童手当制度の根本的な見直しが建議されている。
こうした流れの延長線として2001年11月5日に新聞各紙が、「政府は児童手当制度を廃止する計画」と報じ、3年後に廃止予定が公表されたものの、次第に少子高齢化の急速な進展による産業縮小が顕在化することとなり、半世紀前の多産奨励政策の復活が叫ばれはじめると、制度廃止から一転して、制度維持が決定された。2010年度から11年度は時限立法により子ども手当制度が本手当を包括したが、2012年度から再び児童手当の名称で支給されている。2015年度からは、子ども・子育て支援法に基づく子どものための現金給付として位置づけられるようになった。
子どもの数 | 月額(2021年) |
---|---|
1人 | €140 |
2人 | €280 |
3人 | €420 |
4人 | €560 |
5人 | €700 |
6人 | €840 |
7人 | €980 |
8人 | €1120 |
子どもの数 | 週額(2021年) |
---|---|
第1子 | £21.05 |
第2子以降 | £13.95 |
子どもの数 | 世帯所得に応じた減額率(2021年1月) | ||
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31,711カナダドル未満 | 31,711カナダドル超 68,708カナダドル未満 | 68,708カナダドル超 | |
1人 | 6歳未満 6,765カナダドル 6~17歳 5,708カナダドル (1人当たり/年額) | 超過分の7%減 | 超過分の3.2%減 |
2人 | 超過分の13.5%減 | 超過分の5.7%減 | |
3人 | 超過分の19%減 | 超過分の8%減 |
子どもの数 | 児童手当額 | 多子加算額 | 合計額 |
---|---|---|---|
1人 | 1,250 SEK | 0 SEK | 1,250 SEK |
2人 | 2,500 SEK | 150 SEK | 2,650 SEK |
3人 | 3,750 SEK | 730 SEK | 4,480 SEK |
4人 | 4,000 SEK | 1740 SEK | 6,740 SEK |
子どもの数 | 月額(2021年) |
---|---|
第1子 | €219 |
第2子 | €219 |
第3子 | €225 |
第4子以降 | €250 |
子どもの年齢 | 月額(2020年9月) |
---|---|
6歳未満 | 1,354 NOK |
6歳以上18歳未満 | 1,054 NOK |
子どもの数 | 月額(2021年) |
---|---|
第1子 | €94.88 |
第2子 | €104.84 |
第3子 | €133.79 |
第4子 | €163.24 |
第5子以降 | €182.69 |
子どもの数 | 月額(2020年1月) | ||
---|---|---|---|
年間所得 €69,309 以下 | 年間所得 €69,309 超 €92,381 以下 | 年間所得 €92,381 超 | |
2人 | €131.55 | €65.78 | €32.89 |
3人 | €300.10 | €150.05 | €75.03 |
4人 | €468.66 | €234.33 | €117.16 |
14歳以上の子への加算 | €65.78 | €32.89 | €16.45 |
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日本における児童手当はミーンズテストによる公的扶助に分類され、児童手当法(昭和46年法律第73号)が制定され、1972年度以降支給されている。額の改定や対象となる児童の年齢については数年ごとに改正され、子ども手当制度を経て、2012年からは、中学生(15歳になって最初の3月31日までの者)以下を対象に月1万5千円又は1万円が支給されている。三党合意に基づく子ども・子育て関連3法の制定により、2015年度からは、子ども・子育て支援法に基づく子どものための現金給付として位置づけられるようになり、財源等の条項は子ども・子育て支援法に移行した。
児童手当法は、子ども・子育て支援法(平成24年法律第65号)第7条1項に規定する子ども・子育て支援の適切な実施を図るため、父母その他の保護者が子育てについての第一義的責任を有するという基本的認識の下に、児童を養育している者に児童手当を支給することにより、家庭等における生活の安定に寄与するとともに、次代の社会を担う児童の健やかな成長に資することを目的とする(第1条)。児童手当の支給を受けた者は、児童手当がこの目的を達成するために支給されるものである趣旨にかんがみ、これをその趣旨に従って用いなければならない(第2条)。
児童手当法において「児童」とは、18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者であって、日本国内に住所を有するもの又は留学その他の内閣府令で定める理由により日本国内に住所を有しないものをいう(第3条)。また「施設入所児童」とは、児童福祉法(昭和22年法律第164号)に規定する小規模住居型児童養育事業を行う者又は同法に規定する里親に委託されている児童(短期間(2ヶ月以内)の委託をされている者を除く。)、障害児入所施設、指定発達支援医療機関、乳児院等、障害者支援施設、のぞみの園、救護施設、更生施設若しくは婦人保護施設(以下「障害児入所施設等」という。)に入所している児童をいう。
児童手当は以下のいずれかに該当する者に支給される(第4条)。児童自身に対して支給されるのではない。
通常は児童の親が手当を受けることになるが、両親ともが児童を養育していない場合は、未成年後見人や代わって児童を養育している者に手当が支給される。受給者は国内に居住している必要があり、留学等の事情があり父母がともに国外に在住している場合は、父母のうちどちらを児童手当の受給者とするかについては、同居している者がいる場合は同居者を優先し、それでも決まらなければ児童の生計を維持する程度が高い者が受給者になる。
児童福祉施設に入所していたり里親に委託されていたりする児童については、施設の長又は里親が手当を受ける。この場合、所得制限はない。
児童手当を受ける者がその児童手当を受ける前に死亡した場合、児童本人が手当を受けることができる(第12条)。
児童手当の額は、受給者ごとに児童の人数と年齢によって決定される(第6条)。児童が3歳未満の場合は月額15,000円、中学生であれば10,000円、3歳以上小学生以下の場合、児童を上から数えて3人目以降であれば月額15,000円、1人目・2人目は月額10,000円が支給される。施設入所児童の場合、人数にかかわらず児童が3歳未満の場合は月額15,000円、3歳以上であれば10,000円となる。なお計算に当たって、15歳に達する日以後の最初の3月31日を経過した児童は0円として計算する。
子の年齢 | 順番 | 手当(月額) | 備考 |
---|---|---|---|
2歳 | 一人目 | 15,000円 | 3歳未満 |
合計 | 15,000円 |
子の年齢 | 順番 | 手当(月額) | 備考 |
---|---|---|---|
10歳 | 一人目 | 10,000円 | 3歳以上小学生以下 |
合計 | 10,000円 |
子の年齢 | 順番 | 手当(月額) | 備考 |
---|---|---|---|
8歳 | 一人目 | 10,000円 | 3歳以上小学生以下 |
1歳 | 二人目 | 15,000円 | 3歳未満 |
合計 | 25,000円 |
子の年齢 | 順番 | 手当(月額) | 備考 |
---|---|---|---|
16歳 | 一人目 | 0円 | 15歳に達する日以後の最初の3月31日を経過 |
14歳 | 二人目 | 10,000円 | 中学生 |
7歳 | 三人目 | 15,000円 | 3人目以降なので15,000円 |
合計 | 25,000円 |
子の年齢 | 順番 | 手当(月額) | 備考 |
---|---|---|---|
17歳 | 一人目 | 0円 | 15歳に達する日以後の最初の3月31日を経過 |
16歳 | 二人目 | 0円 | 15歳に達する日以後の最初の3月31日を経過 |
14歳 | 三人目 | 10,000円 | 3人目だが、中学生なので一律10,000円 |
10歳 | 四人目 | 15,000円 | 3人目以降なので15,000円 |
合計 | 25,000円 |
子の年齢 | 順番 | 手当(月額) | 備考 |
---|---|---|---|
19歳 | - | 0円 | 18歳の年度末を経過しているので、「児童」にあたらない |
16歳 | 一人目 | 0円 | 15歳に達する日以後の最初の3月31日を経過 |
8歳 | 二人目 | 10,000円 | |
4歳 | 三人目 | 15,000円 | 3人目以降なので15,000円 |
合計 | 25,000円 |
当分の間、所得制限の規定(後述)により児童手当が支給されないものに対し、中学校終了前の児童1人当たり5,000円が支給される(附則第2条)。
児童手当は、手当を受けようとする者が、自分の住む市町村長に請求することによって、請求の翌月から支給が開始される(第7条)。児童が別の市区町村に居住していても良い。出生届や転入届といった住民票や戸籍上の手続きだけでは支給されず、別に児童手当に関する手続きを行なう必要がある。児童手当を受けようとする者が公務員の場合、それぞれ所属先に請求する(第17条)。
請求の結果、支給が決定されると、市町村長は前述の方法によって計算した額を、毎年2月・6月・10月に前月までの4ヶ月分をまとめて支給する(第8条)。支給は一般的には受給者が指定する金融機関の口座に振り込まれるが、市区町村によっては窓口において直接手渡す。また、児童の数が増減したときには届け出る必要があるほか、年に1回(通常6月)児童の養育状況や前年の所得を確認するための現況届を提出しなければならない(第26条)。正当な理由なく現況届を提出しない場合、児童手当の支払を一時差しとめることができる(第11条)。
令和4年11月支給分より児童手当の制度が一部変更され、特例給付の支給に係わる所得上限が設けられた。また、現況届の提出が一部の受給者を除き不要となった。
給付費の負担は、原則として国:都道府県:市町村=4:1:1で負担し、それに一般事業主からの拠出金が加わる。被用者であるか否か・公務員の区分は、毎年6月1日現在の区分による(第18条6項)。
国 | 都道府県 | 市町村 | 事業主拠出 | |
---|---|---|---|---|
| 16/45 | 4/45 | 4/45 | 7/15 |
| 2/3 | 1/6 | 1/6 | N/A |
| それぞれの所属先が全額負担 |
扶養親族等の数 | 所得額 | 収入額 |
---|---|---|
0人 | 622 | 833.3 |
1人 | 660 | 875.6 |
2人 | 698 | 917.8 |
3人 | 736 | 960.0 |
4人 | 774 | 1002.1 |
5人 | 812 | 1042.1 |
収入額は、所得額に給与所得控除額等相当分を加算した額。実際の適用は所得額で行い、収入額は用いない。
受給者の所得による資格制限(ミーンズテスト)があり、手当を受けようとする者の所得税法(昭和40年法律第33号)上の前年12月31日における所得が一定額以上であると、児童手当は支給されない(第5条)。ただし給付を受ける者が未成年後見人たる法人である場合、所得制限は行われない。
所得制限は受給者(通常は父または母)の1人分の所得で判定し、父母2人の所得を合算するようなことはしない。父母のうち所得の多い者が所得制限にかかる場合は、所得の多い者を受給者として扱い、特例給付の支給となる。
扶養親族等の数とは、税法上の配偶者控除対象者と扶養控除対象者の数(扶養親族、施設入所等児童を除く、16歳以上のみ)、扶養親族等でない児童で前年の12月31日において生計を維持したものの数をいう。扶養親族等の数が6人以上の場合の所得額ベースの限度額は、1人につき38万円(扶養親族等が老人控除対象配偶者又は老人扶養親族であるときは44万円)を加算した額。
所得の算定は、児童手当法第5条及び児童手当法施行令第3条の規定により、次のものを合算する。
株式の譲渡所得は、児童手当法施行令3条に列挙されていないため、立法趣旨は不明であるが、確定申告をした場合であっても所得の算定に含まれない。
所得制限限度額を計算するとき、下記の金額は地方税法上の所得額から控除することができる。
市町村長は、受給資格者が、児童手当の支払を受ける前に、当該児童手当の額の全部又は一部を、学校給食費その他これらに類するものとして内閣府令で定める費用のうち当該受給資格者に係る中学校修了前の児童に関し支払うべきものの支払に充てる旨を申し出た場合には、当該児童手当の額のうち当該申出に係る部分を、当該費用に係る債権を有する者に支払うことができる(第21条2項)。この支払があったときは、当該受給資格者に対し当該児童手当(同項の申出に係る部分に限る。)の支給があつたものとみなす(第21条3項)。
諸外国における児童手当制度の成立・発展の中、日本の社会保障制度を構築するにあたって年金や健康保険と同様に児童手当制度を創設すべきであるという主張は昭和30年代からなされていた。政府は1961年6月に中央児童福祉審議会の特別部会として児童手当部会を発足させ、部会は他国の制度や日本の家庭の実態から児童手当制度の創設を検討し、1964年には中間報告を発表した。この中では「社会保険の制度として」「第1子から」「義務教育終了時までまたは18歳まで」「児童の最低生活費を維持するもの」としての児童手当制度が提言されていた。その後、厚生大臣の懇談会「児童手当懇談会」の報告(1968年)、厚生大臣の審議会「児童手当審議会」の中間答申(1970年)を経て、1971年に児童手当法が成立し、翌年1月1日(沖縄県は日本復帰した同年5月15日)から制度が開始されることになった。成立当初は3人以上の児童がいる場合に、3人目以降が5歳未満の場合に1人月額3,000円を支給する制度であった。
改正年月 | 対象年齢(下線は通称) | 支給月額 | 備考 |
---|---|---|---|
1972年 | 第3子以降 5歳未満 | 3,000円 | 年齢は段階的に引き上げを明示 |
1973年 | 第3子以降 10歳未満 | 3,000円 | |
1974年 | 第3子以降 義務教育修了前 | 4,000円 | |
1975年 | 5,000円 | ||
1978年 | 5,000円(6,000円) | 支給月額のカッコ内は低所得者(市町村民税所得割非課税者)に対する特例 | |
1979年 | 5,000円(6,500円) | ||
1981年 | 5,000円(7,000円) | ||
1986年 | 第2子 - 2歳未満 第3子以降 - 義務教育終了前 | 2,500円 / 5,000円 | 所得割非課税者の特例廃止。支給月額は 第2子 / 第3子以降 |
1987年 | 第2子 - 4歳未満 第3子以降 - 9歳未満 | ||
1988年 | 第2子以降 6歳まで小学校就学前 | ||
1991年 | 第1子 - 1歳未満 第2子以降 - 5歳未満 | 5,000円 / 10,000円 | 支給月額は 第1子・第2子 / 第3子以降 |
1992年 | 第1子 - 2歳未満 第2子以降 - 4歳未満 | ||
1993年 | 第1子以降 3歳未満 | ||
2000年 | 第1子以降 6歳まで(小学校就学前) | ||
2004年 | 第1子以降 9歳まで(小学校第3学年修了前) | ||
2006年 | 第1子以降 12歳まで(小学校修了前) | ||
2007年 | 3歳未満は第1・2子でも10,000円 | ||
2010年 | 第1子以降 15歳まで(中学校修了前) | 13,000円 | 子ども手当、所得制限なし、年少扶養控除廃止 |
2012年 | 15,000円 / 10,000円 | 所得制限あり。支給月額は3歳未満又は第3子以降で小学校修了前 / それ以外 |
この変遷と同時に、手当を受けようとするものの所得制限の額も変遷している。制度発足当初からは平均所得の伸びに伴い、所得の限度額は上昇していったが、1982年の行政改革特例法により所得制限が強化され、限度額は引き下げられた。その後、物価上昇に伴って所得制限額は少しずつ上昇していき、2001年に大幅に引き上げられた。また、国の少子化対策として、支給対象者を全体のおよそ90%に引き上げるため、2006年4月から所得制限がさらに緩和され、2010年以降(子ども手当)は所得制限がなくなった。しかし、2012年から再び所得制限が設定された。
以下は外国人による不正受給の検挙例
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