概略
来歴
小・中学校時代は剣道部に所属し、高校から当時まだマイナーだったバスケットボール部に入部し主将を務める。その一方で、子供の頃から絵を描くことを好み、高校の終わり頃より漫画家になることを意識するようになる。幼少期から特に好きだった漫画は水島新司 『ドカベン 』で、他にも影響を受けた漫画家に池上遼一 (『男組 』)、小林まこと 等の名を挙げている。
鹿児島県立大口高等学校 3年の時、芸大進学を前提に美術予備校の夏期講習を受けるが、「金がかかる」という理由で進路変更し、地元に近い熊本大学 に進学する。20歳の時に週刊少年ジャンプに投稿した作品が編集者・中村泰造 の目に止まり、本格的に漫画家の道を歩むために1987年大学を中退し上京。当時『シティーハンター 』を連載中の北条司 のアシスタントを10か月ほど務め、ここで漫画制作の基本的な技術を身につけた。1988年、投稿作品『楓パープル』が第35回手塚賞 に入選、漫画家としてデビューする。
週刊少年ジャンプ上で原作付きの初連載『カメレオンジェイル』やバスケの読み切り作品等を経て、1990年より『SLAM DUNK』を連載開始する。当時国内でのバスケットボールの人気度はさほどでなかったが、回を重ねる毎に人気を増し、やがて空前の大ヒットとなる。1993年にはアニメ化もされた。また、連載終了後10年を経た2006年には、文化庁によるアンケート企画「日本のメディア芸術100選 」においてマンガ部門1位に選出されている。
1996年、6年間続いた『SLAM DUNK』が連載終了する。いくつかの小品を経て、1998年より『モーニング 』にて、吉川英治 の小説『宮本武蔵』を原作とした『バガボンド』の連載を開始する。並行して1999年からは本人曰く「TVで観て興味を持った」車椅子バスケットボール を題材にした『リアル』の不定期連載を『週刊ヤングジャンプ 』にて開始、2019年現在、バガボンドは休載中である。この2作品について井上は「漫画の先人が作り上げてきた『マンガ的な手法やマンガ的記号』を『バガボンド』では極力使わないようにし、逆に『リアル』ではそれらを最大限に発揮して描いている。」と語っている。
バスケットボールとの関わり
井上は中学までは剣道部 で活動していたが、高校では球技を始めたかったことや剣道部に実兄がいて照れくさかったことなどからバスケットボール部に入部した。インタビューによれば当初はバスケットにそれほど興味を持っていたわけではなく、友達に誘われて「ふと入った」感じだった、と語っている。自身はそれほど背が高くなかったためガード的なポジションを務めることが多かったという。
漫画家を目指すようになってからは「とにかくバスケット」を描こうと決めており、当時バスケットを題材にした漫画はなかったため「(自分が描くまでは)誰もやらないでくれよ」と思っていたという 。『SLAM DUNK』連載時にもバスケットボールチーム「TAKECHANS」を結成しポイントガード を担った。また『SLAM DUNK』終了後はBS1 放送のNBA 中継にゲストとして何度か出演している。
2004年頃から井上は「バスケットボールそのものに対しての感謝の気持ちを形にしたい」との思いからスポーツ奨学金 の設立を構想、2006年に「スラムダンク奨学金 」を設立した。バスケットボールのプロ選手を目指す日本の高校生を対象にアメリカのプレップスクール (大学入学準備校)への留学を助け、プロスポーツ選手を目指す留学生も多い進学校での勉学の道を支えている。
ちなみに、『SLAM DUNK』において一部の登場人物の顔などは、自身の高校の部活仲間や大学のサークル仲間がモデルとなっている[要出典 ] 。
年譜
作品リスト
連載作品 カメレオンジェイル(『週刊少年ジャンプ 』集英社 、1989年33号 - 44号)渡辺和彦原作 初連載作品。自在に姿を変化させる「危険請負人」カメレオン・ジェイルを主人公とした探偵もの。 SLAM DUNK (『週刊少年ジャンプ』集英社、1990年42号 - 1996年27号) 不良青年だった主人公・桜木花道 が、高校バスケットボールの世界に入り活躍する様を描く代表作。桜木たちがインターハイに挑戦する半年間の1シーズンが6年をかけて描かれた。 HANG TIME(『週刊少年ジャンプ』集英社、1993年45号 - 48号) ボブ・グリーン の『マイケル・ジョーダン物語』を原作にした作品。『SLAM DUNK』連載中に短期集中連載された。 BUZZER BEATER (『月刊少年ジャンプ 』集英社、1997年2月号 - 1998年8月号) バスケットの「宇宙リーグ」の模様を描いたSF・バスケット漫画。1996年よりオンラインコミックとして連載されたのち『月刊少年ジャンプ』に連載。WOWOW 、日本テレビ でアニメ化された。 バガボンド (『モーニング 』講談社、1998年40号 - ) 吉川英治 の小説『宮本武蔵 』を原作とした作品。佐々木小次郎を聾啞者として描くなど、原作にはない独自の視点で描かれる場面も多い。長期休載を挟み2016年時点も不定期で連載中。 リアル (『週刊ヤングジャンプ 』集英社、1999年48号 - ) 骨肉腫 によって片足を失った戸川清春、自分の起こしたバイク事故で同乗者に障害を負わせてしまった野宮朋美、交通事故で半身不随となった高橋久信を中心に車椅子バスケットボール の世界を描く作品。『週刊ヤングジャンプ』に不定期連載され単行本が年1巻のペースで刊行されている。 短編作品 楓パープル(『週刊少年ジャンプ』集英社、1988年32号) 第35回手塚賞に入選したデビュー作。バスケットボールを題材にしており、主人公の流川楓 のほか、後に『SLAM DUNK』に登場することになるキャラクターの原型が表れている。 華SHONEN(『週刊少年ジャンプ』集英社、1988年42号) 演劇部を舞台にした、女の子のような美少年(『楓パープル』の流川楓を流用)と活発な女の子とのラブコメディ。 JORDANみてーに(コミックス『カメレオンジェイル』第2巻描き下ろし、1989年) 高校バスケットの日本選抜を題材にした読み切り作品。 赤が好き(『週刊少年ジャンプ増刊』集英社、1990年サマースペシャル) 『SLAM DUNK』のパイロット版的短編作品。主人公・桜木の人物像のほか、『SLAM DUNK』の主要人物がほぼそのまま登場する。この作品の直後に『SLAM DUNK』の連載が開始された。 BABY FACE(『週刊少年ジャンプ』集英社、1992年3・4合併号) 23歳の孤独な殺し屋を描いた読み切り作品。『SLAM DUNK』連載中に掲載された。 ピアス(『週刊少年ジャンプ』集英社、1998年9号) 海沿いの街を舞台に、小学6年生の少年りょうた と少女あやこをめぐる読み切り作品。後に『週刊ヤングジャンプ』2001年49号にもアンコールとして掲載された。 JUMP少年(『トカイモン―トウキョウワカモノブック』小学館、1999年) I LOVE THIS GAME(『Adidas MANGA FEVER 』、2002年) サッカーを題材にした読み切り作品。 『リアル×リオパラリンピック』(集英社、2016年) リオデジャネイロパラリンピックを取材して出版。 イラスト・デザイン他 1995年、アシックス とのコラボレーションによりバスケットボールシューズ “HIGH TIME” を発表、1996年グッドデザイン賞 受賞 「第1回JBL男子トーナメント大会」ポスター描き下ろし(1996年) 「NBA解体新書」 カバーイラスト描き下ろし(1996年) 「NBA雑学バイブル」 カバーイラスト描き下ろし(1997年) 「FILA素人GAMES」ポスター描き下ろし(1997年) 資生堂「Aleph」CM演出(1998年) 「1on1 」(プレイステーション 用ソフト)キャラクターデザイン&ストーリコンセプト(1998年) 資生堂「uno 」CM演出(2005年) 「PRIDE 男祭り 2005 -ITADAKI-」 イラスト・題字 2005年、ユニクロ のTシャツデザインコンテスト「UTGP」に審査員として参加、同時に自身もコラボレーションTシャツをデザインした。なお大賞には漫画家・内藤曜ノ介による作品「親父超え」が選ばれている。 「ロストオデッセイ 」(Xbox 360 用ソフト)メインキャラクターデザイン(2007年) 『薩摩のキセキ 日本の礎を築いた英傑たちの真実』(2007年、総合法令出版、西郷吉太郎・西郷隆文 ・大久保利泰・島津修久 著)表紙イラスト 「隠し砦の三悪人 」、描き下ろしポスター(2007年) 2007年11月、紀伊国屋書店ニューヨーク 店オープン記念の壁画を制作。 同年11月、集英社と講談社の共同による『バガボンド』『リアル』のリミックス広告を実地。このうち読売新聞朝刊に掲載された広告が第12回読売出版広告大賞を受賞。 2008年から2010年まで東京・熊本・大阪・仙台を巡回し、自ら「最後」と銘打った「井上雄彦 最後のマンガ展 」が開催された。 2009年9月15日 NHK総合テレビ ・プロフェッショナル 仕事の流儀 「闘いの螺旋、いまだ終わらず〜漫画家・井上雄彦」。 2011年5月、ナイキ とのコラボレーションによりバスケットボールシューズ “NIKE AIR ZOOM BRAVE IV IT” と「ナイキ DRI-FIT IT ブカツ S/S Tシャツ」を発表。 2012年3月、エキサイト と共同でスマートフォンアプリ「Smile by Inoue Takehiko」を発表。ダウンロードは無料で、iOS とAndroid に対応している。 同年5月、『空白』を出版。 2013年、式年遷宮 に合わせて伊勢神宮 に絵巻 「承(しょう)」(水墨画 )を奉納、全国巡回展示後、2016年4月27日 - 6月27日にせんぐう館 で公開された。 2015年10月24日、スケッチ集『円空 を旅する』(美術出版社 )発売。 2017年4月、三原カズトによる漫画『巻物ザムライ』(ふんわりジャンプ連載)の題字を担当。 共著 井上雄彦、伊藤比呂美『漫画がはじまる』スイッチ・パブリッシング、2008年6月。全国書誌番号 :21439355 。 冲方丁、井上雄彦(述)「描きながら考え、道が見えてくる」『にすいです。 : 冲方丁対談集』角川グループパブリッシング、2013年。全国書誌番号 :22203192 。 チームリアル(編)『リアル×リオパラリンピック』集英社、2016年。全国書誌番号 :22840984 。別題『Takehiko Inoue,na animação da Paralimpíada Rio 2016! : 井上雄彦、熱狂のリオへ』。 アシスタント経験者
関連番組 脚注 参考文献 主な執筆者の姓の50音順
『ニッポンのマンガ 手塚治虫文化賞10周年記念』朝日新聞社(編)、2006年、60-70頁。 今井栄一「INTERVIEW『スラムダンク』から『バガボンド』へ」『SWITCH』第20巻第3号、スイッチ・パブリッシング、2002年、40-51頁。 ティム・リーマン『マンガマスター』美術出版社、2005年、113-128頁。 関連資料 発行年順
『井上雄彦ぴあ:武蔵、熊本へ』〈ぴあmook〉2009年4月。全国書誌番号 :21728147 。 「『スラムダンク 完全版 全24巻』井上雄彦 集英社 2002年」『最近の中高校生の日常を描いた本のリスト/2000年~2010年発行で登場人物が中高校生もの 』神奈川県学校図書館員研究会、2011年7月13日、国立国会図書館〈レファレンス協同データベース〉。 中村トオル『井上雄彦100+1』東京:雷鳥社、2012年。別題『人生を変える信念の言葉』。ISBN 9784844136354 。 金益見『贈りもの』講談社、2012年、全国書誌番号 :22176809 。別題『安野モヨコ・永井豪・井上雄彦・王欣太ー漫画家4人からぼくらへ』。 Casa BRUTUS特別編集『ガウディと井上雄彦』〈マガジンハウスムック〉、2015年。全国書誌番号 :22552514 。別題『THE GAUDÍ PILGRIMAGE WITH TAKEHIKO INOUE』。 山脇智子「井上雄彦『バガボンド』」『わたしが魅せられた漫画』清水正(監修)、日本大学芸術学部図書館、2015年、333頁。全国書誌番号 :22646600 。 辻惟雄、泉武夫、山下裕二、板倉聖哲(編集委員)「展示風景 井上雄彦(いのうえたけひこ)」『日本美術全集』小学館、2016年。 第四章 80「井上雄彦(いのうえたけひこ)最後(さいご)のマンガ展(てん)」 第四章 81「エントランス・スペース・プロジェクト」 外部リンク
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