井上 博允(いのうえ ひろちか、1942年(昭和17年)7月 - )は、日本のロボット工学者。東京大学名誉教授、工学博士。鹿児島県鹿児島市出身。
井上 博允 | |
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生誕 | 1942年7月??日 日本 鹿児島県鹿児島市 |
研究分野 | ロボット工学 |
研究機関 | 東京大学藤井澄二研究室 電子技術総合研究所、MIT 東京大学情報システム工学研究室 日本学術振興会 産業技術総合研究所 |
出身校 | 東京大学 |
博士課程 指導教員 | 藤井澄二 |
博士課程 指導学生 | #主な課程博士の節参照。 |
主な業績 | 人工の手の計算機制御、1インチはめあいロボット、Lispによるロボット総合システムCOSMOS、ヒューマノイドロボットHシリーズ |
主な受賞歴 | 日本学士院賞(2016年) |
プロジェクト:人物伝 |
1969年に計算機で制御される双動性を備えたマニピュレータの開発に世界で初めて成功、クランクの回転・ピンを穴に抜き差し・直接教示など、触覚と力覚を使う重要な動作機能を実現した。1970年電子技術総合研究所の知能ロボットプロジェクトに加わり、ハンドアイシステムで視覚フィードバックによる組み合わせ作業を実現、客員研究員で訪れたMITにおいてロボットによる千分の一インチのはめあい作業を実現する。
1978年東京大学助教授に着任し情報システム工学(JSK)研究室を開設、84年教授。JSKでは知能ロボットプログラミングシステム、視覚と知能を持つマニピュレータ、実時間視覚システム、移動ロボット総合システム、パラレルマニピュレータ、ヒューマノイドロボット等、知能ロボット全般にわたり多数の顕著な研究業績を上げる。40年に及ぶ一連の研究は「感覚と知能を持つロボットの基盤技術の開拓」として第106回日本学士院賞を受賞した。ロボット工学の黎明期から誕生期・発展期を通してロボットの研究開発を牽引し、ロボティクスの誕生と発展に貢献した世界的パイオニアとして知られる。
1965年東京大学大学院に進学し、手作業の自動化を目的とした人工の手の研究に着手、修士論文で論理機械によって制御される人工の手を開発[1]。1969年博士論文として計算機で制御される双動性を備えたマニピュレータの開発に世界で初めて成功。触覚と反力の感覚を用いて、クランクの回転、ピンを穴へ抜き差しする動作等を実現。双動性を利用した位置目標値の教示やプログラムの作成と実行を含むロボット計算機制御システムの原型を開発した[2]。
1970年電子技術総合研究所に入所。知能ロボット開発プロジェクトに参加、ETLロボットマーク1のマニピュレータ制御を担当し、視覚チームと共同でハンド・アイ・システムを開発、ビジュアルフィードバックによる物体の組み合わせ作業を実現した[3]。マニピュレータとTVカメラを搭載した移動ロボットの知能制御、磁気粉体クラッチを用いたトルク制御マニピュレータ開発、滑らかな力ベクトル制御を実現するなど、世界のハンドアイシステム開発プロジェクトと競い、我が国の知能ロボット先端研究に携わる。1973年より1年間MIT・AIラボにて客員研究員として長期在外研究、力センサーを組み込んだロボットハンドを用いて、1000分の1インチ隙間の精密組み立て作業を実現した。[4]
1978年東京大学機械工学科助教授に着任、情報システム工学(JSK)研究室を開設、84年教授。JSKでは手と目と頭脳を統合したロボット=知能ロボットシステムを研究室のテーマとした。最初の5年間でマニピュレータとテレビカメラをインターフェイスしたコンピュータにLISP処理系を実装し、知能ロボット研究プラットフォームとして、総合プログラミングシステムCOSMOSを開発[5]。以後、初期のJSKの研究はCOSMOSを用いて行われ、個々の研究結果は実際に走るプログラムとしてCOSMOSに統合していくという循環型研究で、知能ロボット=ロボット研究プラットフォームを年々成長させていった。COSMOSはCOgnitive Sensor Motor Operations Studyの頭辞語であるが、コスモスはキク科の1年草であり色とりどりの花を咲かせ続ける為には毎年種を蒔く必要があることから、大学における基礎研究を継続的に育てるシステムの名前にしたとされる。JSKにおける研究はロボットの全分野をカバーしており、次の4分野に整理される。
(1)マニピュレーション
研究用標準型マニピュレータ開発
ロボット言語の研究
パラレルマニピュレータの開発[8]
グラスプレスマニピュレーションの研究、等。
(2)ロボットビジョン
視覚による柔軟物体(紐)のハンドリング[6]
マルチウインドウ視覚システム用LSIの開発[7]
相関演算に基づく実時間トラッキングビジョンシステムの開発
移動ロボットの視覚誘導の研究
触覚センサースーツの開発[12]、等。
(3)ソフトウエア及び実世界の人工知能
知能ロボット研究開発プラットフォームCOSMOSの構築[5]
物体の見方と見え方に関する人工知能の研究[9]
人間の動作を観察し理解し模倣することによりロボット動作を自動獲得する研究[10]、等。
(4)ヒューマノイド研究: JSKのヒューマノイド研究はリモートブレイン方式の人型ロボット研究からCOSMOSを引き継ぐ知能ロボット研究プラットフォームであるH5、H6、H7など、眼と手足を備えた知的認識行動システムとして進化し、その知見はプラットフォーム提供型ヒューマノイド開発というHRPプロジェクトの企画設計に生かされた。
2004年3月定年退官と共に研究の最前線から退く。最終講義は「ロボティクスの誕生と発展」と題し、40年に亘る研究を年表に纏めつつ振り返った。この講義内容は、国立情報学研究所発行の書籍「知と美のハーモニー3」にビデオとともに紹介されている。退官後JSKは知能機械情報学専攻稲葉雅幸教授に引き継がれ現在に至る。
ロボットの新分野開拓を目指して多数の研究協力者と共に行なった代表的な大型共同研究は次のとおり。
日本学術振興会監事として科学研究費等の学術研究振興と人材育成に携わる。東大IRT研究機構の特別顧問、産総研デジタルヒューマン研究センターの研究統括のほか、フリーランスのロボティシストとして企業等のロボット技術開発を指導助言。愛・地球博では経産省NEDOのロボット開発プロジェクトを陣頭指揮して万博の目玉展示「2030年ロボットと暮らす街」を成功に導いた。
小笠原司(後 電総研、NAIST)
溝口博(後 東京理科大学)
稲葉雅幸(後 東京大学)
津坂祐司(後 (株)豊田中研)
國吉康夫(後 電総研、東大)
相山康道(後 東大、筑波大)
森武俊(後 東京大学)
柴田智広(後 NAIST、九工大)
岡哲資(後 福岡工大、日大)
加賀美聡(後 産総研)
松本吉央(後 大阪大、産総研)
稲邑哲也(後 東大、NII)
長坂憲一郎(後 (株)ソニー)
但馬竜介(後 (株)豊田中研)
西脇光一(後 産総研)
大武美保子(後 東大、千葉大)
(講演動画など)
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