『レット・イット・ビー』(Let It Be)は、ビートルズが1969年1月に行ったセッション(ゲット・バック・セッション)と、彼らの最後のライブ・パフォーマンスとなった「ルーフトップ・コンサート」の模様を記録した、ドキュメンタリー映画である。「ペイパーバック・ライター」や「レイン」等のプロモーション・フィルムの制作を手がけたマイケル・リンゼイ=ホッグが監督を担当した。
レット・イット・ビー | |
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Let It Be | |
監督 | マイケル・リンゼイ=ホッグ |
製作 | ニール・アスピノール |
製作総指揮 | ザ・ビートルズ |
出演者 | ビートルズ マル・エヴァンズ マイケル・リンゼイ=ホッグ リンダ・マッカートニー ヘザー・マッカートニー オノ・ヨーコ ビリー・プレストン デレク・テイラー |
音楽 | ジョン・レノン ポール・マッカートニー ジョージ・ハリスン リンゴ・スター |
撮影 | アンソニー・B・リッチモンド |
配給 | ユナイテッド・アーティスツ |
公開 | 1970年5月20日 1970年8月25日 |
上映時間 | 81分 |
製作国 | イギリス |
言語 | 英語 |
映画の当初の目的は、ビートルズのリハーサルとライブ演奏を見せることであった。しかし、メンバーの心はバラバラに分かれ始め、結果的に本作は解散に向かうビートルズの姿を記録するものとなった。
クレジットは"APPLE an abkco managed company presents"となっており、ビートルズの会社「アップル・コア」と、当時のビジネスマネージャーだったアラン・クレインの会社「アブコ・レコード」が名を連ねている。本来はテレビ放映のために16mmフィルムで収録されたが、クラインの意向により劇場用の35mmフィルムに焼き直された。
1969年1月2日、ビートルズはロンドンのトゥウィッケナム映画撮影所にてセッションを開始し、映画クルーによってその模様が撮影された。慣れないスタジオでの作業、常に撮影をされていることなど、緊張と不満がビートルズの中に存在し、彼らはトゥイッケナム映画撮影所の状態と仕事のスケジュールも嫌がっていた。彼らは朝早くからセッションを始めるよりは普段、録音していたアビー・ロード・スタジオで、いつものように夜遅くにセッションを行いたがった。
1月10日、ジョージ・ハリスンはバンドからの離脱を告げたが、フィルムには記録されなかった。彼は戻ってくるように説得され、1月22日からはロンドン、サヴィル・ロウにあるアップル・コア内の録音スタジオに場所を移し、セッションを再開した。アップルでのセッションの際、ハリスンは電気ピアノとオルガン演奏をしてもらうためにキーボード奏者のビリー・プレストンを連れてきた。
バンド内での衝突は映画から抜け落ちているが、作品中ではマッカートニーとハリスンの間での口論や、マッカートニーとレノンの噛み合わない会話など、バンド内で漂う不協和音を感じさせる場面も含んでいる。映画で演奏された曲は多くがアルバム『レット・イット・ビー』に収録されたが、1969年夏にバンドが再集合した時のアルバム『アビイ・ロード』の数曲も含まれている。スタジオでのセッションの場面は1969年1月31日、アップルにてビートルズが「トゥ・オブ・アス」、「ザ・ロング・アンド・ワインディング・ロード」、「レット・イット・ビー」のスタジオ・ライブの場面で終了する。
映画プロジェクトの元々の構想では最後にライブ・ショー(1966年8月29日にサンフランシスコのキャンドルスティック・パークで最後のツアーを終えてから初の公式なライブ・パフォーマンス)で終わるというものであった。しかしライブの方法についての意見はなかなかまとまらなかった。ポール・マッカートニーはビートルズが初期に行っていたように小さいクラブで演奏することを主張し、ジョン・レノンはアフリカのような海外で行うことを主張した。リンゴ・スターはイングランドにとどまるよう要求し、ジョージ・ハリスンはどんなライブ・パフォーマンスにもほとんど興味を示さなかった。
結局、ライブの方法はアップル本社の屋上において予告無しでコンサートを行うことになった。ビートルズはプレストンと一緒に1969年1月30日、ゲリラ的にライブ演奏を行った。映画は屋上から大音量で鳴り響く演奏に驚くロンドンの住民たちの姿も記録されている。映画は駆けつけた警察官によって演奏が止められ、コンサートが終了するところで終わる。のちに「ルーフトップ・コンサート」呼ばれるこのコンサートはビートルズの最後の公式なライブ・パフォーマンスとなった。
ビートルズはルーフトップ・コンサート中に5曲演奏している。「ゲット・バック」(3回)、「ドント・レット・ミー・ダウン」(2回)、「アイヴ・ガッタ・フィーリング」(2回)、「ワン・アフター・909」と「ディグ・ア・ポニー」である。(ビートルズは短くしたゴッド・セイヴ・ザ・クイーンと短いリハーサルの「アイ・ウォント・ユー」も演奏したが、その間セカンドエンジニアのアラン・パーソンズがテープの入れ替え作業をしており、この演奏は映画から省かれてしまった)。
最後の曲が終わってから、マッカートニーが"Thanks Mo!"と言うのが聞こえる。これはモーリン・スターキーが大きな拍手と励ましを送ったことに応えたものである。それからレノンがよく知られた言葉である"I'd like to say 'thank you' on behalf of the group and ourselves, and I hope we passed the audition!"で閉じた。このやりとりはアルバム『レット・イット・ビー』の最後に追加された。
特記されている以外のすべての曲のクレジットはレノン=マッカートニーである。
以下の3曲は、セッション最終日(1月31日)のスタジオ・ライブより。
以下6曲はルーフトップ・コンサート(1月30日)より。
ゲット・バック・セッション中に演奏したものの、映画『レット・イット・ビー』では採り上げられなかった曲は主に次のものが挙げられる。「ラヴ・ミー・ドゥ」「アイ・ウォント・ユー」「ストロベリー・フィールズ・フォーエヴァー」「レディ・マドンナ」「オブ・ラ・ディ、オブ・ラ・ダ」「浮気娘」「オール・シングス・マスト・パス」(Harrison)、「バック・シート」(McCartney)、「チャイルド・オブ・ネイチャー」(Lennon) 、「ウォッチング・レインボーズ」「エヴリ・ナイト」(McCartney)、「テディ・ボーイ」(McCartney)、「真実が欲しい」(Lennon)、そして「アイ・ロスト・マイ・リトル・ガール」(McCartney)。
その他にも、膨大なオールディーズ・ナンバーやデビュー前の自作曲が演奏されているが、それらの多くは断片的なものに留まる。
映画はLiverpool Gaumontにて1970年5月20日、プレミアショーが行われ、その年のアカデミー賞の編曲・歌曲賞とグラミー賞の映画音楽賞を受賞した。 ビートルズは誰もアカデミー賞の授与式に参加しなかった。
映画は1980年代の初め、アブコ・レコードが主導してソフト化された。VHS、ベータマックスビデオ、RCA SelectaVision videodisc、レーザーディスクなどでのリリースが確認されているが、アップル・コアの許諾を得ていなかったため、程なく販売中止となった。以降はテレビやファンクラブの上映会などで公開されることはあっても、正式にソフト化されることはなかった。
2004年以降、ポール・マッカートニーを含め、複数の関係者の口からDVD・ブルーレイ化に向けての作業が進められていることが語られているが、2024年4月時点で正式に入手できるのは、抜粋が収録された映像版『ザ・ビートルズ・アンソロジーVo.8』のみであった。
2019年1月31日、ピーター・ジャクソンの手により、ルーフトップ・コンサートを含む60時間の未公開フィルムと140時間の未公開音源を元にした新編集版が現在制作中であることが発表された。同時にオリジナルのレストア版も発売される予定であることが発表された。新編集版の『ザ・ビートルズ: Get Back』は当初2020年9月劇場公開を予定していたが、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の世界的流行などの影響で、2021年8月27日公開予定に延期された。さらに2021年6月23日になって、配給元であるディズニーは劇場での公開を取りやめ、ディズニーの動画配信サービスであるDisney+(ディズニープラス)にて、2021年11月25日、26日、27日の三日間にわたり3部に分けて動画配信の形で公開することを発表した。2022年より順次セル版がリリースされた。
2024年5月8日、オリジナルのレストア版が『ザ・ビートルズ:Get Back』と同じ技術でリマスターされたオーディオを採用して、Disney+で配信されることが正式に発表された。
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