ベル モデル 212(Bell Model 212)はベル・ヘリコプターが開発した汎用ヘリコプター。モデル 205A-1(UH-1H)をもとに双発化したモデルであり、アメリカ軍でもUH-1Nとして採用された。
ベル社では、まず同社初の双発タービン・ヘリコプターとしてモデル 208を開発し、1965年4月27日に初飛行させた。これはUH-1D(モデル 205)を元にエンジンをXT67-T-1(離昇出力1,400 shp、常用出力1,200 shp)に変更したものであり、小型ヘリコプターの双発化に関する研究のため、同社の自社資金によって製作された機体であった。
1968年5月1日、ベル社とカナダ政府はUH-1双発型の開発について合意した。これによって開発されたのがモデル 212であり、1969年9月19日には50機が発注された。発注当初、カナダ軍ではCUH-1Nと呼称していたが、後にCH-135と改称された。またこれと並行してアメリカ軍も同機を発注しており、こちらはUH-1Nと称された。
民間機仕様はツイン・ツー・トゥエルブ(Twin Two-Twelve)として知られており、1970年10月に連邦航空局(FAA)の型式証明を取得した。
アメリカ国外でも、従来よりヒューイ・ファミリーのライセンス生産を行ってきたイタリアのアグスタ社による生産が1971年春より開始された。ベル社での生産も、1988年8月よりカナダの工場に移管された。
機体構造は、動力系統を除いてモデル 205A-1(UH-1H)のものが踏襲された。操縦士のほか14名までの乗客が搭乗可能で、貨物輸送に用いる場合はテイルブーム内の手荷物スペースを含めて7.02立方メートルの容積に181 kg(400ポンド)までの貨物を搭載できる。
軍用機・民間機仕様とも基本的に同じ構造で、ミッションシステムやアビオニクスのみが変更されている。またアグスタ社では、対潜戦・対水上戦に対応したミッションシステムを搭載するとともに、艦載ヘリコプターとしての運用に対応して構造の一部を強化した派生型としてアグスタ-ベル 212ASWを開発した。なお民間機仕様でも計器飛行方式(IFR)に対応させることも可能で、1977年6月にはFAAから操縦士1人でのIFRを承認された初のヘリコプターとなった。
双発化に際し、モデル 208で用いられていたXT67の出力を1,600 shpに強化したモデルも俎上に載せられていたが、1968年10月、プラット・アンド・ホイットニー・カナダ PT6Tの採用が発表された。これはPT6A-27を元にしたエンジンを双発に配し、共通の減速機を介して単一の出力軸を駆動するもので、初期モデルのPT6T-3は1970年7月に離昇出力1,800 shpとして認証された。常用出力は1,130 shp、またエンジンに異常が発生した場合も残る1基で常用出力800 shp、30分間は970 shp、2分半なら1,025 shpの出力を発揮できる。またPT6T-3の軍用モデルがT400-CP-400だったが、後にアメリカ軍向けに離昇出力を1,875 shpに強化した-402が開発され、これはPT6T-6として民間機や輸出にも供された。
主ローターは半関節型(semirigid)で、金属製の2枚のローターブレードはハブによってローターシャフトに吊り下がり、上部にはローターブレードに直交した短い安定棒を備えている。この形式は地上との共振が少なく、格納する場所をとらない利点がある一方、高速飛行において固有振動を生じるという問題がある。このため飛行速度は100ノット以下とされる場合が多いが、燃料を消費するにつれて120ノットほどまでは速度を出せるようになる。
出典: Lambert 1991, pp. 18–19
諸元
性能
最初の発注分のうち、79機がアメリカ空軍向け、40機がアメリカ海軍向け、22機がアメリカ海兵隊向けであり、空軍への引き渡しは1970年から、海軍・海兵隊への引き渡しは翌1971年から開始された。これらは全てUH-1Nと称された。その後も順次に発注が重ねられ、空軍は合計79機、また海軍・海兵隊は1978年までに合計221機を導入した。
モデル 212の開発に資金を拠出していたにもかかわらず、カナダ軍への引き渡しはアメリカ軍よりも遅れて、1971年5月3日からとなった。当初はCUH-1Nと呼称していたが、後にCH-135と改称された。
カナダ国内にとどまらず、国際連合平和維持活動でも活用されたが、老朽化・陳腐化に伴ってベル 412(CH-146)に更新されて退役が進み、1997年7月までに運用を終了した。退役機のうち40機は、アメリカでリファビッシュされたのちコロンビア軍・国家警察で運用されている。
運用部隊一覧
海上保安庁では、1963年頃より大型ヘリコプターを導入して吊り上げ救助に活用することを検討しており、機種としてはシコルスキー S-61Rを選定していた。しかし予算が獲得できるか不安視されたことから、より低コストながらも優れた速度・航続性能・吊り上げ救助能力を備え、洋上での運用に適した双発機という観点から本機種が導入されることとなった。海上保安庁の仕様として、補助燃料タンク、エマージェンシーフロート、吊り下げ救助用ホイスト、機外荷物吊り下げ装置、サーチライト、拡声装置などが搭載されたほか、MH-562以降は機首の先端に気象レーダーが装備され、これ以前の機体も改修された。
まず黎明期に導入していたシコルスキー S-55の代替機として1973年12月28日に2機が導入されたのを皮切りに、新海洋秩序時代の到来を背景としたヘリコプター搭載巡視船(PLH)の整備もあって順次に追加発注が行われ、最終的に合計38機を取得した。これらの機体は全航空基地およびPLHに展開し、警備救難に活用されたが、老朽化・陳腐化に伴って2015年までに運用を終了した。後継機としては、シコルスキー S-76C/Dおよびベル 412が導入された。
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